隠居したわたしが訳あり少女に"幸せ"を教えようと思う   作:けーか

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どうも百合豚です。ぶっちゃけ小説読んでるときはトァンのこと男の子だと思ってました。


わたしのものであれば適当でもいいが、みしろのものとなれば少し真面目に考えようと思う(2)

 場所は試着室。

 あの後、私が声をかけた店員さんが別の店員さんに何か言った後に、わたしとみしろは試着室へと連れていかれた。

 それから数分待っていると、かごの中に様々な服がこんもりと積まれた状態で運ばれてきた。

 「とりあえず秋物です!」と。

 わたしは秋物は少しでいいといったはずなのだが。

 現在はみしろがその秋服の試着をしているところなのだが、この後さらに冬物が来るのか……。

 

「どうでしょうか……?」

「わぁ~!とってもお似合いですよ!」

 

 今みしろが着ているのは、長袖の白いTシャツにグレーのロングワンピース。

 みしろの透き通るような白髪がよく映える。

 服装などにあまり頓着しないわたしでも、これが似合っているということはわかる。

 もしこのレベルで似合うものがたくさんあるのだとすれば。

 わたしにはどれを買うか選び取ることができないかもしれない。

 買うのは問題ないが、持って帰るのが大変だ。

 なんてことを考えていると小さく、しかし強いようにも感じる、抗議するような声が耳に入る。

 

「あの!暮澄さんは、どう思いますか……!」

「ん、ああ。すごく似合ってるよ」

 

 ――確かに。

 自然に考えれば、わたしに聞いていたのだ。

 私が「似合ってる」と言えばみしろがぱあ、と笑う。

 

「あ、あの、えっと」

「とりあえずこれは買おっか」

「!ありがとうございます……!」

 

 みしろが喜んでいるようで、それは何よりなのだが。

 ――いやしかし。

 このままだと本当にぜんぶ買うルートに入ってしますのではないだろうか……?

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

「すみません。いっぱい買ってもらっちゃって。まだこの後もあるのに……」

「ううん、いいんだよ。これでも結構減らした方だし。爺さんに言われちゃったからね」

 

 あの後――みしろに秋服を一通り試着してもらって、その選別に一時間半ほどかかった。

 時間も時間なので一旦お昼ご飯を済ませて、今から冬服と爺さんに言われた自分の服を買いに戻るつもりだ。

 ショッピングモールに入っているチェーン店のレストラン。

 みしろは昨日のおかゆがお気に召したらしく、近いものがあるかということで、ドリアを美味しそうに食べていた。

 

「あ、みしろ。さっきのところ戻る前に、ちょっと寄り道していこっか」

「寄り道……ですか?」

「うん。ちょっと遊んでいこう」

 

 服を選ぶのもいいが――子どもは、遊ぶのも大事だろう。

 

 

 

 音と、光。

 服屋さんに向かわずに、一旦の寄り道先。

 

「ゲームセンター、というんですね……!」

 

 ――そう、ゲームセンターだ。

 みしろはもちろん、わたしも初めて来たのでよくわからないが、遊ぶと言ったらここなんじゃないだろうか……!

 入ってすぐのあたりにはクレーンゲームがたくさんあり、これならわたしでも少しはわかるので、クレーンゲームの方に少し近づいてみる。

 

「えっと、これは……?」

「これはクレーンゲームって言って、あのアームで景品をとるゲーム……のはず」

「はず?」

「実はわたしもやったことないんだよね」

 

 目の前にあるのは、小さめのもので中にはたくさんのぬいぐるみが積まれている。

 ぬいぐるみの種類は、ラッコとペンギン。

 あまり大きいサイズではないので、このくらいなら増えても問題ない。

 ぬいぐるみなら、すでにペンギンとミーアキャットが玄関にいるが――。

 一瞬、ぬいぐるみを見たみしろの目が"甘い"という言葉を聞いたときのものと重なった。

 ……昨日みしろに寝てもらった客間には、ぬいぐるみがひとつもない。

 普段あまり使わない部屋で殺風景だから、少しくらい置いといてもいいんじゃないだろうか。

 

「あれ、とってみようか」

「いいんですか……?」

「うん、もちろん」

 

 やったことはないが大人として、軽く済ませるとしよう。

 

 

 

 

「む、むずかしい……」

 

 果敢に"くれーんげーむ"に挑んだ暮澄さんが少ししょんぼりとしている。

 暮澄さんは「任せて」と言ってお金を五枚投入(これで六回できるらしい)したけど、結果はこの通り。

 

「流石に汎用異能を使うわけにもいかないし、もう五百円分だけ……!」

「あ、あの……!」

 

 そう言って、またお金を投入しようとする暮澄さんを止める。

 

「わ、私やってみても、いいでひゅか……!」

 

 私がやってみたい、という気持ちも、もちろんある。

 しかしそれ以上に、非常に言いにくいけど――これ以上、暮澄さんが挑戦しても景品をとれるとは、あまり思えない。

 頑張って取ろうとしてくれていたのはわかるけど、景品の位置はお金を入れる前から一切動いていない。

 そう――暮澄さんは、アームを一回も景品に当てられなかったのだ。

 

「あ、うん、もちろん……やり方とか大丈夫?」

「はい、見てたので何となくわかりました」

「じゃあ……」

 

 そう言って暮澄さんがお金を投入してくれる。

 

「むむ」

 

 狙うは少し奥の方に位置する、立っている鳥のような動物。

 元から少しだけ傾いていて、アームに引っかかりやすいように見える。

 

「あれなら……」

 

 手元にはボタンがふたつ。

 左側のボタンを押すと、右に動く。

 右側のボタンを押すと、奥へ動く。

 一度ボタンから手を放してしまうと、そのボタンは使えなくなる……で、合っているはず。

 ――左側のボタンを押す。

 二秒で離す。

 位置は、ちょうどいいくらい。

 続いて右側のボタンを押す。

 奥の方なので少し長めに――ここ。

 ボタンから手を離すと、アームが降りていく。

 そして爪の部分が、上手く鳥の脇の部分に引っかかる。

 

「……!」

 

 ぬいぐるみが持ち上がり、そのまま景品を落とす穴のあたりまでゆっくりと移動している。

 その間、ぬいぐるみは、落ちない。

 ついに穴の上までたどり着き――。

 

「とれました……!」

 

 かしゃん、と。

 物が落ちたにしては、少し軽い音のように感じる。

 アームの入り方を見るに、ぬいぐるみというのは柔らかいものなのかもしれない。

 取り出し口に手を入れてみると、ふわっという感触とともに鳥を取り出すことができる。

 

「かわいい……」

 

 目の前にある鳥のぬいぐるみは、クレーンゲームの中にいたときよりも愛らしいように見える。

 もちろん、ぬいぐるみがかわいいのもあるけど。

 お金は暮澄さんが払ってくれたとはいえ――初めて自分の手で、何かを手に入れたから。

 私にはそのペンギンが、とっても輝いて見えた。

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