隠居したわたしが訳あり少女に"幸せ"を教えようと思う   作:けーか

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どうも百合豚です。賛否両論ですし、否定意見の言い分もわかりますが、個人的には"死亡遊戯で飯を食う。"好きです。


え、服?わたしは別にいらない……そういえば自分のも買えって言われたんだった……。

 みしろが見事クレーンゲームでペンギンを取った後。

 残りの五回でラッコの方まで取ってしまったので、もしかしたらみしろにはクレーンゲームの才能があるのかもしれない。

 そこまで大きいものでもないから荷物として気になるほどではないので、そのまま服屋さんに戻ってきた。

 のだが。

 

「わぁ!かわいいですよ~!」

「とっても似合ってます……!」

 

 ――試着室にいるのは、わたしだった。

 

「うーん……確かにちょっといいかも……」

 

 気持ち暗めの色のニット素材で編まれたワンピースと、丈の短いコート。

 落ち着いた雰囲気でかわいすぎず、あまり動きが阻害される感覚もないので、正直、悪くない。

 どっちにしろ、買ってこいと言われたのだ。

 爺さんに嘘をつくのは忍びないし、もとよりお金は突き返すつもりなので、まあ。

 荷物にならない範囲でなら、自分のものを買ってもいいかもしれない。

 ただ――。

 

「……先に、みしろのちゃんと見ようよ。今日はみしろの服を買いに来たんだからさ」

「もったいないですよ……!私のもいいですけど、暮澄さんの色んな服を着たところも見たいです!」

 

 むむ。

 みしろからの、要望。

 となれば……できれば、こたえたい。

 

「……みしろのも、選びながらなら、まあ」

 

 そう言うと、みしろの顔が"ぱあ"と笑顔になる。

 

「て、店員さん……!暮澄さんに似合いそうなものも選んでもらえますか?」

「みしろのもちゃんとお願いしますよ……?」

「もちろんでございます!」

 

 また先ほど同様、店員さんが別の店員さんに声をかける。

 複数の人があわあわと行き来しているのは、昔の忙しかった星堕対策機関(Stelladusk Eradication Agency)を彷彿とさせる。

 あまりいい思い出とは言えないが、人生の半分近くSEAに所属していた以上、仕方のないことだろう。

 待っていた時間としては、数分ほどだろうか。

 "どさっ"というより"どんっ"という擬音が似合うような、そんな量の服が入ったかごが四つほど目の前に置かれる。

 

「お待たせしました!」

 

 見たところ、二つがみしろのもので、二つがわたしのもの。

 たくさん持ってきてくれるのは、ありがたいことではあるのだが……。

 こう多いと選別が大変だ。

 さっきのみしろの秋服の山ですら一時間以上かかったので、この冬服の山はそれ以上の時間がかかるのは間違いない。

 

「お二人で合わせられるものも用意いたしましたのでご確認ください!」

 

 合わせられるもの、というと……ペアルックとかだろうか?

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 グレーのニットに、濃い紺色のコート。

 これだけだと着られているように見えるが、勧められたブーツを含めるといい感じになるのではないだろうか。

 溜まっていた服の山のうちの最後のものだ。

 

「わー!とても素敵ですよ!」

「あ、ありがとうございます……」

 

 みしろが先に着替えを済ませたのだろうか。

 店員さんの声が試着室のカーテンを貫通する。

 わたしもみしろも、いろいろな服を着た。

 どれも素敵な服で非常に悩んでいるのだが、どうやらこの服はみしろと合わせたものらしい。

 であればよほどのことがない限り購入したいので、少し期待だ。

 

「暮澄さんも着替えられましたか?」

 

 試着室の外からみしろが問いかけてくる。

 もうだいぶ時間が経ってしまっているので、早く済ませなければ帰りが遅くなってしまう。

 

「うん、今開けるね」

 

 シャ、とカーテンを開けてまず目に入ったのは「(あお)」だった。

 中に着こまれているものはわたしと同じ……いや、少し明るいグレーのニット。

 じゃあどこに「(あお)」を感じたのかというと、コートだ。

 わたしと同じ紺色だが、こちらもニットと同じで明るい色になっている。

 

「はわ、暮澄さんとってもお似合いです……!」

 

 もちろん、みしろは本心から言ってくれているのだろう。

 きっとわたしに対する贔屓目のようなものが、みしろには芽生えてしまっている。

 

「ありがとう。みしろもすごく素敵だよ」

 

 みしろの、長く白い髪から透けるようにして見える紺色が(あお)の瞳とも非常にマッチしている。

 

「あ、ありがとうございみゃす……」

 

 さて、この服はみしろと合わせたものだと聞いていたが。

 わたしは服を合わせる、というと安直にペアルックくらいしか思いつかなかったのだが。

 コートとニット。

 それぞれの明度を変えるだけで、きっちり合わせながら、こうも雰囲気をそろえられるものなのか。

 ……いや、少し考えればわかることのような気もするが。

 いかに自分がファッションというものに疎いかを痛感する。

 

「お二人とも、とってもお似合いですよ~!」

 

 店員さんが褒めてくれるのは、順当だ。

 そういう仕事なんだから。

 同様に、みしろが褒めてくれるのも順当なんだろう。

 みしろにとってのわたしという存在が、わたしが思うより大きなものになってしまっているんだろう。

 ああ。

 そんなことで、わたしは――。

 

「これは買おっか」

「はいっ、お願いします……!」

 

 事前に"買う服を入れる方"と決めておいたかごに仕分ける。

 ……だれか、車で持って帰ってくれる人を呼ばなければいけないかもしれない。

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