隠居したわたしが訳あり少女に"幸せ"を教えようと思う   作:けーか

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どうも百合豚です。好きなボカロPは"ユリイ・カノン"です。


年上のおねーさんとしてわたしがみしろに色々教えてあげなければ……!(1)

 とりあえずおかゆを食べ終わったみしろに入浴を促した。

 少し休んだことにより、力が入らないという問題も解決したようだ。

 多分、精神的な疲弊(ひへい)が大きかったのだろう。

 前にいた場所でも正常な形で身体を洗うことはできていたようなので簡単に説明をして一人で入ってもらった。

 ――今の間に一本吸ってしまおうと思い外に出て、ライターを家の中に忘れてしまったことに気づく。

 まあ、元素操作で火をつければいいのでわざわざ取りに戻りはしない。

 

「ふぅ……」

 

 それにしても。

 みしろはわたしのことを知っていた。

 "ERROR級討伐の暮澄 澄色(くれすみ くれあ)"だと。

 世間から隔絶されていた彼女が、どのような経緯で知ったのか。

 それはきっと、違法異能研究の一環で犯罪行為に利用されていたからだろう。

 もちろん、みしろには一切の非がない。

 おそらく簡単なカウンセリングを受けて、特段これといった処罰を受けることはないだろう。

 

「本当に――」

 

 わたしも子どものころから、十歳の頃から星堕対策機関(Stelladusk Eradication Agency)に所属して活動していた。

 それはいいのかというと、そうではない。

 しかし結果として星堕(ほしおち)の襲来数が減り、異能犯罪の件数が増えたとはいえ。

 わたしたちの行いに間違いはなかった。

 子どもが利用されていたことには思うところがある。

 それでも、当時はそうでもしないと星堕を止められなかった。

 それに今のSEAは子どもを使うなんてことをしていない。

 B級以上の星堕が来ることはあまりないし、それに比べれば異能犯罪の制圧なんて大した仕事ではない。

 

 ――ジュッ

 

 微かに浴室の扉の開く音が聞こえたため煙草の火を消す。

 ……楽しいを、幸せを教えるなんて言っておいて、この思考はよくないな。

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 ――暮澄 澄色。

 施設にいた大人に何度も、何度も言われた。

 "埒外のエナジー量のものがいたらそれはERROR級討伐の暮澄 澄色だ、仕事のときに存在を検知したら必ず伝えろ"と。

 ――ERROR級。

 同じ年頃の子が受けるような教育は受けてないが、ERROR級の存在を知らない者はいないだろう。

 星堕は基本的にD級からS級までに区分される。

 その一番上であるS級相当の強さを持っていて、その上で2つ以上の固有能力を持っている星堕。

 世界で過去三体だけ確認された存在。

 そのうちの一体は四年前に日本に堕ちてきた。

 それを討伐したSEAの戦闘員が、暮澄 澄色。

 話のスケールが大きすぎて、私にはピンと来ない。

 ――何より、暮澄さんが昔何をしたかなんて言うのは正直どうだっていい。

 だって、彼女は私に名前をくれたのだから。

 

「みしろ、みしろ……ふふっ」

 

 ああ。

 多分、少し変なんだろうけど。

 拾われたばかりなのに、もう私は、暮澄さんのことがこんなに好きになってしまった。

 身長は私よりも小さかったけど、その纏っている雰囲気といい優しい表情といい。

 きっと"おねえちゃん"というのは、こういう人のことを指すのだろう。

 

「んぅ……」

 

 少しのぼせたかもしれない……。

 服は暮澄さんが貸してくれるって言っていた。

 身長はそんなに変わらないし、問題なく入るはず。

 

「タバコの匂い……?」

 

 施設にいた大人の人が吸っていたものとは少し違うけど、多分タバコの匂い。

 それに近い匂いがあるとは感じていた。

 確かタバコは二十歳を超えないと吸えないはず。

 ということは暮澄さんは――。

 

「あ、あんなにかわいいのに……!?」

 

 四年前にERROR級を討伐していることや雰囲気から見た目通りの年齢じゃないとは思ってたけど、いったいいくつなんだろう……。

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

「うん、やっぱり。ぴったりだったね」

 

 とりあえず、みしろにはわたしの服を着せておくことにした。 

 こうして立ってみるとみしろの身長はわたしより少し高かった。

 ……仕方がない。

 わたしは十歳で成長が止まってしまっているのだから。

 悔しくなど、ない。

 

「お風呂に服まで、ありがとうございます……!」

「お礼なんていいよ。こっちおいで。髪、乾かすから」

「ふぇ!?」

 

 目を見開いて、カクカクと不思議な動きでわたしの目の前まで来る。

 ……ロボット?

 

「お、お願い、します……!」

「ん」

 

 元素操作で温風を流せばドライヤー要らずである。

 

「熱くない?」

「だいじょうぶです……」

 

 気持ちよさそうな声だ。

 確かに、人にシャンプーとかドライヤーとかしてもらうのって、頭という大事な部位を他者に委ねているという状況にもかかわらず、不思議な心地よさがある。

 ――それにしてもだ。

 先ほどまでは少し汚れてしまっていたがそれでもなお、きれいであることがわかるみしろの白髪は水分を含み先ほどとは違った透明感がある。

 根元の部分に手をいれると透けて見えてしまいそうな。

 そんなきれいな髪だ。

 

「冷風に変えるね」

 

 一応ひと声かけたのだが、驚いたのか少し肩を震わせる。

 

「だ、大丈夫?」

「ふぇ、平気です……」

 

 ……多分、大丈夫そうだ。




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