隠居したわたしが訳あり少女に"幸せ"を教えようと思う 作:けーか
「
「は、初めまして! 本日付で
「……聞いてないんだけど」
いきなり事務員の
パートナー、というのは現場で
わたしもエスキューに上がるまで、確か一週間ほどではあるが組んでいた。
しかし――。
「なんでエスキューにパートナーが?」
エスキューは全員、単独で制圧にあたる。
理由は単純で――強いからだ。
エスキューには現在七――いや、六人いるが、その誰もがS級の星堕を単独で十分以内に制圧できる。
それだけ強力な存在であれば下手に組ませるより、配置を分けて単独で運用した方が効率がいい。
「ああ、絵原の固有能力は直接攻撃に向いていなくてな。ただ能力的にA級に置いておくのももったいない。だからエスキューのなかでも特にS級の星堕の制圧頻度の高い暮澄と組ませることとなった――異論は認めない」
丁重に断ろうとしたら読まれていた……。
「それでは、私は仕事があるのでこの辺りで失礼。いつでも出られるよう、準備しておけ」
それだけ言い残し金近さんが去っていく。
……まあ、上からの指示であるなら仕方がない。
「……とりあえず、あなたのパートナーになったらしい、暮澄
「はいっ! よろしくお願いします! 暮澄さん!」
キラキラとした瞳が眩しい……!
SEA所属の人は日夜、星堕による被害の対応に追われていてこういう目をしている人はいないため、すごく新鮮な気分だ。
「……とりあえず、固有能力がどんなものなのか教えてもらってもいい? あと、敬語はいらないよ。パートナーなんだし、戦場ではその少しの無駄が隙になるから」
「――お言葉に甘えて、そうさせてもらうね!
――距離感の詰め方が、すごい。
まあ、少し驚いたが、別に嫌というわけでもない。
"固有能力"とは十歳になったときにすべての人に発現する、誰でも使うことのできる汎用能力に分類されない能力のことだ。
「それで、固有能力だったよね。えっと、私の固有能力は単純に言うと"惹き寄せ"だよ」
「
「ううん、そうじゃなくって、
一瞬だけだけどね、と絵原さんは付け足す。
――確かに、強い固有能力だ。
そして同時に、エスキューに配属された
能力的にA級に置いておくのがもったいない、と金近さんは言っていたが……多分、
複数人で動くことが前提になっている
恐らく目的は、エスキューでのパートナー制度の実験のようなものか何かだろう。
別に、そう言ってくれればいいのに。
「――うん、いい能力だね。今までの星堕の制圧経験は?」
「
「なるほど……」
わたしがエスキューになったときと、だいたい同じか。
「現場では多分、今まで通り。絵原さんが固有能力での補助をしてその間にわたしが星堕を叩く、って形になると思う。それでいい?」
「うん、りょうかい!」
――元気な人だ。
同じ大人の人……だと思うが。
大人の人でも刀坂や金近さんとこうも変わるものなのか。
わたしの中での大人のイメージというと、そのほとんどがSEAの人になるので、やはり偏りがあるのだろうか。
……いや、わたしがこんな感じになるのは想像できないな。
――――――――――――――――――――――――――――――
――暮澄澄色。
SEAに所属している者で、その名前を知らない者はいない。
四年間で千六百体以上の星堕を制圧したエスキュー戦闘員。
子どもだとは聞いていたけど、想像以上に小さかった。
おそらく固有能力が発現してすぐに戦闘員になったのだろう。
そうじゃないと説明がつかないほどに――いや、そうだとしても幼く見える。
しかし彼女があの暮澄澄色であることは間違いない。
理由はふたつ。
まずは髪の色だ。
くすんだ黒色。
これは星堕が絶命した際に散る粒子を何回と被った結果、変わったときの色だ。
今までに見てきた班長さんたちも、同じ髪色をしていた。
根拠としては薄いが、SEAの戦闘員であることは断定できるし、これがひとつ。
そして次、こっちが本命……というか、納得するしかない理由。
――とてつもないエナジー量だ。
私はあまりエナジーの感知が得意ではないのだけど、それでもわかる。
この人のエナジー量は、異常だ。
対面したときに自分のエナジーを感知できなくなった。
混ざってしまって、私のものと区別がつかなくなるような、そんな感覚。
正直に言うと、少し怖かった。
情けない話だ。
二回りは小さい子どもに恐怖心を覚えるなんて。
まあ、そういった恐怖心を紛らわせるためにも、少し虚勢を張ってみていたのだけども。
「現場では多分、今まで通り。絵原さんが固有能力での補助をしてその間にわたしが星堕を叩く、って形になると思う。それでいい?」
「うん、りょうかい!」
――と一通り、話したところで気になっていたことを聞いてみる。
「あの、澄色ちゃんの固有能力って、どんなの? 一応、知っておきたくて」
同じ班である以上は固有能力を知っておきたい、というのは何もおかしくないだろう。
それを抜きにしても、エスキューのトップに立つ者の固有能力がどのようなものなのかというのは、単純に気になる。
「――ああ、そうだね、確かに。知っておいた方がいっか」
どうやら特段、隠しているというわけでもないようだ。
なぜかエスキューの能力ってあんまり公開されてないんだよねぇ……。
「といっても、わたしの固有能力。異能じゃないんだ」
「?」
どういうことだろう。
一瞬疑問に思う。
――ああ、そういえば、あんなものがあったはず。
「常時身体強化……とか、そんな感じかな?」
そんなものがある、はず。
オンオフではなく、常にオンになっている自己強化のようなもの。
しかし、そういう固有能力というのほとんどは効力があまりなく、戦闘員として戦えるほどのものではない。
というのが私の認識だ。
――まあ、次の澄色ちゃんの言葉で、その認識を改めざるを得なくなるのだけれど。
「うん、常時発動の自己強化ってのはあってるかな。わたしの固有能力は
「ふぅぃ?」
何と、言ったんだこの人は。
――異能の効力というのは、込められたエナジー量に依存する。
それでだ。
エナジー量が無限ということは、一つの異能に本来ならば不可能な量のエナジーを込めることができるわけだ。
エナジー切れを気にしなくていいのだから。
そうだとすれば固有能力なんてなくても、誰でも使えるが星堕との戦闘に使えるほどの効力を持たないされている汎用異能で十分というか。
それでも過剰な効力を期待できてしまうだろう。
……確かに、エナジー量が多いとは思っていたけど。そうきたかぁ。
今、目の前で「それどうやって発音したの?」なんて言っている澄色ちゃんは、見た目だけであれば無造作に落ちた髪が少しくすんでいるだけの少女だ。
いやはやしかし、まさに規格外にふさわしい固有能力。
「まあ……とは言っても、出力するわたしの身体の
それにも限度はある、と付け加える。
「だとしてもすごいよ!」
そんなに強い人と組まされて大丈夫なのだろうか。
――そんな驚きが、私と澄色ちゃんの出会いだった。
どうも百合豚です。好きな2025秋アニメは"私を喰べたい、ひとでなし"です。