話の都合、この作品ではクラスメイトで行かせていただきます。
ガバガバ設定ですまねえ.....
翌日。衝撃の初日が終わり、いよいよトレセン学園の一日が始まろうとしていた。
トレセン学園ミヤビのクラス。
彼女にとって、学校生活は戦場そのものだった。今まで存在感を無くしひっそりと生きてきた。だが今回のクラスではそううまくいかないと諦めた。このクラスは、「濃すぎる」のだ。
「ハーッハッハッハ! 見たまえ諸君! 今日の太陽も、このボクの輝きを祝福しているかのようだ!」
教室の中央で、まるで舞台俳優のようにポーズを決めているのは、テイエムオペラオー。栗毛の髪をなびかせ、圧倒的なカリスマ性と自信を撒き散らす彼女は、クラスの中心そのものだった。
その周りには、少し困ったように、でも優しく微笑むナリタトップロードがいる。
「あはは、オペラオーさんは今日も元気ですね。さ、ホームルーム始まりますよ」
そして、教室の後ろの席で、誰とも群れずに静かに窓外を見つめるアドマイヤベガ。彼女の纏う空気は冷たく鋭利で、誰も容易には近づけない。背もたれにカバーがふわふわ素材なのは何故だろう。
(…すごい。みんな、主人公みたい)
ミヤビは、教室の最前列の端っこ、教卓の影になる「特等席」で、気配を完全に消していた。みじろぎ一つせず教科書に視線を落とす。
オペラオーのような圧倒的な「陽」。
トップロードのようなひたむきな「光」。
アドマイヤベガのような研ぎ澄まされた「影」。
どれもが、ミヤビにはないものだった。自分はただの背景、モブキャラクター。このきらびやかな世代の中で、自分が走るなんて想像もつかない。
「ねぇ、大丈夫?えーっと、誰だっけ?」
突然、声がかかった。ミヤビは心臓が止まるかと思った。振り返ると、隣の席のウマ娘が不思議そうにこちらを見ていた。
「あ、アヤメ…アヤメミヤビ、です…」
「 わたし、ハルウララ! よろしくね!」
(眩しい!?)
元気いっぱいのウマ娘、ハルウララ。彼女の純粋な笑顔に少しだけ救われた気がしたが、同時に、教室中の「才能の圧」に押しつぶされそうだった。
夕方。一人ずつ挨拶と一言話すという地獄の時間を乗り越え、フラフラとした足取りでトレーナー室へと向かう。部屋に入るとすでにトレーナーは待っていて、紙を手渡してきた。
それは担当契約書だった。
これを結ぶことではれてトレーナーと担当バの関係になれる。震える手で受け取り、中身を確認する。
「アヤメミヤビ。早速本題に入ろう。君は走りたいが、注目はされたくない。矛盾しているようだが、それが君の本心だ。それは間違いないな?」
「はい…契約したら、レースに出なきゃいけなくて…それはまだなんとかなるんです。ただウイニングライブとか、インタビューとか…私、そういうの絶対に無理です。気絶しちゃいます」
「だからこその、私だ」
彼は力強く断言した。
「私が君の防波堤になる。昨日も伝えたが、君と光の間に立つ盾となり全力でサポートする。面倒な取材、ファンへの対応、メディアの露出…全て私がシャットアウトする。君はただ、スタートゲートからゴール板までの間だけ、その脚を使えばいい。走り終わったら、無理にファンサービスする必要もない。流石にウイニングライブは出てもらうが、踊れないということがないようにコーチも用意する。」
「…本当にそれで良いんですか?トレーナーさんの負担が凄いことになりそうですけど。」
「それがトレーナーだ。その対価として君のトレーナーになれるならあまりにも安い。それに君たち生徒が負担にならぬように努めるのもトレセン学園の職員としての勤めた。少し吹っ飛んだ考えだと君を『謎の覆面ウマ娘』として売り出すのも考えたが、それは余計に目立つな」
その冗談に、ミヤビはわずかに口元を緩めたが、すぐにまた真顔に戻った。
「…私、本当に走るのが好きなんです。それだけなんです。それでも、いいですか?」
「それが一番大事な資質だ。サインしてくれ」
ミヤビは迷いながらも、トレーナーの目にある真剣な光を信じ、震える手でペンを取った。こうして、最も地味なウマ娘と、崖っぷちの中堅トレーナーの奇妙な二人三脚が始まった。