深淵の逃亡者   作:雷炎

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女王への挑戦

 「ティアラ路線ですか!?いや無理無理ですって!!ティアラ路線ってG1じゃないですか!わ....私みたいなのが走れるわけないじゃないですか.....」

「いや走れる。君にはその才がある。ティアラ路線にしたのには理由があってだな...」

 

 そう言いながら必死に抗議する担当を無視して、ホワイトボードに書き込んでいく。

 

 「テイエムオペラオー、アドマイヤベガ、ナリタトップロード。この3名は世代の中でもミヤビに匹敵する才能がある。遅かれ早かれ彼女らと走ってもらうことになるが.....走れるか?」

 「無理ですって...あんな凄い人たちと勝負するなんて。走って後方で負ければ話は別ですけど....」

「そう、今の君には彼女らと走って競い合うのは難しい。おそらくいつもの走りをしても、後方に気を取られすぎてペースが乱されて負ける。」

 

 アヤメミヤビの走る際の集中力は目を見張るものがあるが、無意識下でも自分では勝てないと思っている相手が出走する時、その集中力が落ちるとトレーナーは判断した。

 

 「おそらく彼女らはクラシック路線に進むはずだ。なら君はティアラ路線に進めばいい。何も無理に戦う必要はない、それにG1を取った後なら彼女らとも並べたと思うとは思わないか?」

 「まあ....確かに、確かにそうです?並べたとは全然思いませんけど、ちょっとはマシになるかもしれないですね....。でもそれって私が勝つ前提ですよね」 

 「勝つさ。アヤメミヤビなら必ず勝つ」

 

 真っ直ぐで真剣な瞳がこちらを見つめる。思わず頬が熱くなり顔を背けてしまう。

 

 「もー分かりました!目指すことはタダですからね!じゃあ次は1勝クラスのレースですか?」

 

 恥ずかしさからか早口で捲し立てるミヤビを見て、トレーナーは驚く。まさか担当から次走の話が出るとは思わなかった。レースに勝ったことで心の奥底で自信が芽生え始めたのだろう。予想外の成長を噛み締めながら答える。

 

 「いや次走は新潟ジュニアステークスだ」

 「.......イヤチョットマッテクダサイ。いまなんていいましたか???」

 

 

 

 

翌日

 

 ミヤビのトレーニングは一段と厳しさを増した。最後の直線が658mあるこのレースは、末脚勝負になる。そのため逃げのミヤビにとっては、若干不利な戦いになる。ラストスパートの加速はこちらも持っているが、やはり差しや追い込みに比べると弱い。そのためトレーナーが出した結論は、とにかくスタミナをつけてゴリ押しで勝つことだった。

 

 

 「坂路あと2本追加だ!フォーム乱れてきてるから修正も忘れるなよ」

 「はぃぃぃぃ〜足がもうぱんぱんで辛い....」

 

 夏の間はクラシック以降のウマ娘が学園からいなくなる。皆合宿へと向かっているからだ。そのため人がまばらであり、朝からトレーニングが開始できた。トレーナーは逐一様子を確認して記録をつける。

 

 (あづぃよおおおお!!!暑くて干からびそうだよ〜〜!!)

 

 

 

 季節は8月。ウマ娘生史上最も暑い夏が訪れようとしていた。

 

 

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