SRTの生徒が転生者を拾う話   作:メリル´

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不相応な装飾

 

「アイスブレイクはこのへんでいいでしょう。そろそろ、ここに訪れた本題を話すとするわ」

 

「他にも用事が?」

 

「このままだと増え続ける書類に押しつぶされ、あなたが窒息してしまう『おそれ』があるからね。そうならないように妙案を持ってきたの」

 

「役員たちの努力のおかげで、これでも数日前より減った方ですよ」

 

「……こんなに積みあがっているのに?」

 

 数千もある自治区からの苦情や嘆願が来ているなら、そうなってもおかしくないのかもしれないが……じゃあリンの妬ましいボディ図体でどうやって部屋に入ったんだ?今だってペンを動かす隙間にだって苦慮しているのに。

 

「まあ、まだ油断は禁物だわ。これ以上増えるかもしれないし、この紙の山があなたの『墓標』とならない保証はないでしょう?」

 

「……リーザ、先ほどから例えに悪意を感じるのですが。まるで私が過労死するように話していませんか?」

 

 仕事が目の前にあると延々とやり続けるタイプなんだから、別にそこは間違っていないだろ。

 

「主席行政官の心身を心配してのことよ。あなたは今、SRT特殊学園がどんな状態にあるか、正確に把握しているかしら?」

 

 私の問いかけに、リンは僅かに考え込むように俯いた。まさかSRTの存在を忘れていたってわけじゃないよな?会長の秘書でもあった主席行政官が知らないはずが……いや、彼女はSRTに関してはあまり触れていなかったっけ*1

 

 実は何か重大な作戦――それもSRTの生徒を全員投入するような、大規模なものを行うために彼女たちを『温存』していた可能性まで考えていたが……まあ、この感じだと無さそうだな。

 

 

「連邦生徒会長が失踪したため、指揮系統が麻痺しているかと。なので現在、SRT特殊学園は出撃することができない状態です」

 

「その通りよ。あれだけの戦力が、ただ指をくわえて待機しているなんて、あまりに勿体ないと思わない?」

 

「……何が言いたいのかは察しました。これがあなたの言う、妙案ですか」

 

「ええ、そうよ。こんな状況だもの、SRT特殊学園にも事態の収拾に当たってもらいましょう。……前にこの部屋で私が提案した『有事におけるヴァルキューレとSRTへの指揮権について』の話、覚えているかしら?あの案を少し手直しして通せば、今の法規にも抵触しないはずよ」

 

 今は『火消し役』なんて、いくらいても足りない状況だ。寝不足のリンにだって、それぐらい理解しているはずである。そもそも私が請け負っている仕事――暴徒や武装集団の鎮圧、現金輸送列車の奪還といった荒事は、本来SRT特殊学園の領分なのだ。

 

 それに特殊部隊の力は連邦生徒会長の捜索にだって大きな助けになるだろう。待機させられている部隊がいるのに、人手が足りないと嘆くのは愚か者のすることだぞ。

 

「……」

 

「リン?」

 

 私の差し出した『銀の弾丸』を前に、リンは眉間にしわを寄せ、押し黙ってしまった。……何が不満だというのだ?即決でサインしてもおかしくない提案のはずなのに。

 

「私の一存では決められません。手が空いたら行政委員会に招集をかけ、議論してみましょう」

 

「……わざわざ役員の同意を求める必要はあるのかしら、主席行政官?あなたは今やトップよ、権威をもって連邦生徒会を動かせば、手間取ることなんてないのだけど?」

 

「権威、ですか……。それは毒の入った聖杯のようなものですよ、対策室長。たしかに便利な切り札かもしれませんが、使えば使うほど自分の身を滅ぼします」

 

「……」

 

 今度は私が押し黙る番だった。まるで諭すようなリンの言葉に、私は内心で苛立ちを覚える。まさか彼女にこんな説教を受ける日が来るとは。いつもの政治オンチを誰が尻拭いしてきたと思っているんだ?

 

「ありがたいご講釈どうも、主席行政官。でもあなたに教えてもらわなくても、それぐらいは理解しているわ。今は身を削ることになってもやるべきでは、と私は言っているのよ?」

 

「……責任の所在が曖昧なまま動かせば、必ず後で歪みが出ます」

 

 彼女が簡単に自らの考えを覆さないとは思っていたが、案の定だった。この頭の固い先輩は緊急時でも変わらないらしい。こんな時だからこそ少しは頭を柔らかくしろ、と言いたくなるのをぐっと堪え、私は言葉を続けた。

 

「キヴォトスが今、どういう状況かちゃんと把握しているとは思えない言葉ね。出所不明の武器・兵器が大量流出、各地では暴動が蔓延、矯正局から脱獄した囚人までもが堂々と歩き回っているわ。連邦生徒会の看板は、この瞬間にも着実に罅が広がっているのよ?」

 

「……各地からの報告書には全て目を通しています。把握していないわけではありません。ですが、だからこそ慎重にならざるを得ないのです」

 

「ミレニアム近郊の廃墟からも兵力*2を撤退させたと聞いたわ。これも『慎重』に考えた結果かしら?あそこを封鎖しているのは、徘徊している無人兵器ではなく奥にある――」

 

「分かっています。ただ治安維持のために兵力が足りなくて……」

 

 さらりと言ってのけるリンに、内心で不満が募る。長らく何も起きていない場所より、今まさに事件が発生している地点へ人員を回す――理屈の上では正しい判断だ。いかにもリンらしい、冷静で合理的な決定でもある。

 

 その考えを理解できなくはないが、あそこは連邦生徒会長が特に目を光らせていた場所なんだぞ。会長がいなくなったからこそ、気を抜かずに封鎖を続けるべきじゃないのか?

 

「連邦生徒会が人手不足なのを主席行政官がちゃんと理解していた――だなんて随分喜ばしいことね。それが分かって室長である私もとっても安心したわ。……でも、おかしいわね。人手が足りないなら、なぜ使える手札を切らないのかしら?」 

 

「リーザ、それは……」

 

「今は原則を振り切るときよ、リン。あれほどシャーレを特別扱いしたのだから、難しいことではないはずでしょ。……それともまさか、このまま秩序の崩壊していくのを見て見ぬふり――いえ、あの先生とかいう大人に全てを任せるつもりなの?」

 

「連邦生徒会も現行の法と権限の範囲内で全力を尽くします」

 

「……空々しい言葉ね。指針を失ったことで、サンクトゥムタワーで右往左往している間抜けを今日はたくさん見たのだけれど……本当にこのままでいいのかしら?」

 

「SRT特殊学園の状況はよく理解しました。この件に関しては行政委員会との議論にかけます」

 

 それで、その議論とやらはいつ始められるんだ?こんな状況で役員たちが碌に集まるとも思えないけど。

 

 それにもし仮に会議が始まったとしても、みんなその場では言いたいことを言うだけだろう。「こっちに手を貸してくれ」とか、「もっと予算くれ」みたいな発言ばかりで、結論がまともに出ないのは目に見えている。

 

 どうやらここまで言っても、主席行政官は融通を利かせるつもりが無いらしい。議論している間にキヴォトスの秩序がどうなっているか楽しみ――そんな皮肉が喉まで出かかったが、私はそれを無理やり飲み込んだ。

 

 

 

 ――任せておきなさい。心配しないで、ユキノ先輩。今回もきっちりとやってみせるわ。

 

 つい数十分前、私自ら吐いた言葉だ。宣言した以上、私には責任がある。ここで感情的になって話を終わらせてしまえば、SRT特殊学園で待機している仲間たちが苦しむことになるのだ。

 

 だから、なんとかリンの首を縦に振らせなければ――そう頭では分かっているのに、腹の底で渦巻く黒い感情が思考を鈍らせる。

 

 冷静に、論理的に。そう言い聞かせる自分の声すらも、苛立ちのノイズにかき消されそうだった。私は乱れそうになる呼吸を整え、努めて冷静な声を絞り出す。

 

「……あなたがシャーレに期待をかけていることは分かっているわ。なにせ、あれほどの権限があるものね。どの学園の自治区においても、制約なしに戦闘ができるなんて羨ましい限りよ。……あら、どこかで聞いたような文言ね?あなたは心当たりあるかしら、主席行政官?」

 

 私はわざとらしく右肩についたワッペン――かつての母校の証を指先で叩きながら、冷ややかな視線を向けた。

 

「まるでSRT特殊学園のよう、と?」

 

「ああ、そうだったわ。私としたことが、母校のことを失念するなんて汗顔の至りね」

 

「……何が言いたいのですか、リーザ」

 

「あなたこそSRT特殊学園を何だと思っているの? シャーレができたから、もうお払い箱だとでも?キヴォトスのためにあんなに尽くしてきたというのに、随分とやるせない話ね」

 

「そんなつもりはありません」

 

「厳格な規則の中で、厳しい訓練を乗り越えたエリートたちはどう思うのでしょうね?こんな有事に『待て』しか言われない状況を納得できるとでも?」

 

 できるわけがない。ユキノ先輩はシャーレの存在を知って学園が混乱していると言っていた。私もまだSRTに残っていたなら、この状況の理不尽さに憤っていたはずだ。

 

 ――たった一人しかいないぽっと出の組織。戦う力もない外から来た大人。

 

 そんな存在にあれだけの権限が与えられている姿を見て、納得して引き下がる者はSRT特殊学園にはいない。自分たちにかけられた首輪を握りしめながら、どうにかしようと足掻くはずだ。

 

 

 

「対策室長として正式に要請するわ、主席行政官。SRTへの指揮権に融通を利かせなさい。――これ以上連邦生徒会が『渇き死ぬ』前に、実績のない大人ではなく、役員である私たちが動くべきよ。たとえ『聖杯に入った毒』を飲み干すことになったとしてもね」

 

 これが最終通告だぞ、リン。

 

 確かに彼女の言う通り、無理に動かせば連邦生徒会に歪みが生じる可能性は高い。権力の乱用だと彼女を攻撃する者が現れるだろうし、これを機に今の体制をひっくり返そうとする不埒者が出てくるかもしれない。

 

 だがそういうことに『対処』するのは私の得意なことだ。今までだってそんな姿を見せてきたはずだし、今回だって必要とあらば泥を被るつもりである。今は私の評判や連邦生徒会の体面よりも、手の付けられなくなってきたキヴォトスの治安を優先するべきだ。

 

 半ば祈るような気持ちで見つめた先で、主席行政官はゆっくりと眼鏡の位置を直し、淡々と告げた。

 

「貴重な意見をありがとうございます、対策室長。SRT特殊学園への処遇は行政委員会と議論します」

 

 返ってきたのは、事務的で定型文のような――私の求めていない答えだった。

 

「…………そう」

 

 短く吐き捨てた言葉と共に、私の中で何かが冷たく音を立てて砕ける。

 

 これは決裂だろう。指揮権の話だけではなく、私と彼女の間で積み上げてきた関係も、だ。

 

「…………」

 

「……リーザ?」

 

「なら、話は終わりよ。これ以上この部屋に用はないわ。……私は治安維持活動に戻るわね」

 

「ええ、わかりました」

 

 別れを告げると、主席行政官は何事もなかったように白い山を削る作業に戻る。おそらく彼女は私の胸中など察してもいないのだろう。彼女はそういう人物だ。

 

 感じたことのない、苦い思いを抱えたまま扉を開けると、私よりも薄い金髪が揺れた。どうやらアユムが聞き耳を立てていたらしい。ばつが悪そうな顔の彼女と目が合う。

 

「あ、あの……リーザさん……」

 

 何か言いたげに口を開くアユムから、私は一度目を閉じて視線を切った。何が言いたいかは察せるが、今はそんな言葉など聞きたくもない。

 

「……ああ、そういえばとても大事なことを言い忘れていたわ。ご就任おめでとう、連邦生徒会長()()……でも会長が失踪してから着けだしたその新しい腕章、あんまりあなたに似合ってないようね?

 

 部屋の中から、ガタリと椅子が軋む音が聞こえた。何か言い返そうと彼女が立ち上がったのかもしれない。振り返りもしない私からは見えないが。

 

「お、お嬢さま……」

 

 同じように聞き耳を立てていたようで、青い顔で何か言おうとしているメルハを視線で黙らせる。私は振り返ることなくアユムの横をすり抜け、迷うことなく廊下へと足を踏み出した。

 

 

 

 

「――ということがあったのよ」

 

『…………そうか』

 

 明らさまに落胆するユキノ先輩の声を聞いて、私は忸怩たる思いを噛みしめた。生まれて初めて敗北したあの日――FOX小隊に完敗した時だって、ここまでの屈辱は感じなかったぞ。

 

 サンクトゥムタワーを離れたときも、基地に帰還してからも、スマホはずっと私の手の中にあった。結果が分かり次第すぐに伝えるべきだったのだろうが、どうしても決心がつかなかったのだ。

 

「……面目次第もないわ。任せておいてって言ったのに、こんな報告しかできないなんて」

 

『……いや、室長のお前でも無理なら、他の誰かがどうにかできたとは思えない。気にするな』

 

「『首輪』を外せなくて苦しいのは先輩の方なのに、気を遣ってもらわなくて結構よ。……主席行政官がこんなに頭でっかちの、分からず屋だったなんて知らなかったわ」

 

『……ああ、そうみたいだな』

 

 乾いた返事だった。らしくない諦観が滲んでいる。いつものユキノ先輩なら、栄えあるFOX小隊の隊長である彼女なら……もっと言葉を選んでいたはずだ。

 

 先輩にとって私は最後の希望だったのだろう。だからこそその期待を踏み外した事実が胸の奥でじわじわと毒のように回ってくる。 

 

『リーザ、お前はこれからどうするつもりだ?』

 

「秩序の回復に勤しむつもりよ。不良をとっ捕まえて、キヴォトス転覆を企む武装集団は潰し、囚人はまた矯正局に叩きこむわ。……SRTの仲間たちには悪いと思っているけどね」

 

『いや、それがいいだろう。今は市民の安全を優先するべきだ。私たちも…………私、たちは……どうすれば、いいんだろうな……』

 

「……ユキノ先輩……」

 

 かける言葉が見つからなかった。私がもっとうまくやれば、彼女がこんなに辛酸をなめることはなかっただろうに。

 

「なんにせよ指揮権の問題を今すぐどうこうするなら、連邦生徒会長の存在が必要ね。本人が失踪した今なら、()()()()()()()()()()()()()けど……」

 

 そういえば廊下ですれ違った防衛室長のカヤがそういう声があると教えてくれたっけな。なぜか私が主席行政官と『決裂』したときよりも、盛大に引きつった顔のメルハ*3を尻目に聞いた話だ。今の代行への不満と、連邦生徒会のトップに彼女では力不足なので別の人を、との声がサンクトゥムタワー内であがっているらしい。

 

 「対策室長はどう思いますか?」と聞かれたので「こんな時に立候補を始めるはた迷惑な馬鹿がいるなら、ぶん殴ってやるわ。カヤも一緒にどうかしら?」と返した。キヴォトスの秩序を回復するよりも、『政争』を優先する間抜けはそうされてしかるべきである。

 

 今、物凄く忙しいヴァルキューレの上部組織であり、多忙を極めているはずの防衛室長である彼女を気遣っての誘いだったのだが……なぜかカヤまでも顔を引きつらせ、そそくさと離れていってしまった。*4

 

 どうやら少し暴力的すぎたらしい。防衛室長ともなれば多少の物騒な冗談には耐性があると思っていたが、意外と繊細なようだ*5

 

『リーザ、こんな状況でそれが不可能なことくらい、私でも理解しているよ。お前は私たちのことは気にせずに、市民の助けに専念してくれ。……私たちの、分までな』

 

「分かったわ。…………それと、もう一つ話が――――」

 

 私はユキノ先輩にこれから起こりうるトラブルを話した。それを解決するための単純で……不愉快な方法も。

 

『……そうか。ああ、お前の判断は正しいと思うよ、リーザ。確かにその可能性はある』

 

「すぐに納得してくれるとはね。……恨み言を言われるのも、覚悟していたのだけれど」

 

 私がユキノ先輩に言った事は残酷なことだ。少なくとも、SRT特殊学園に残っている先輩にとっては。どんな時も最悪の事態を想定して動けと教えられてきたが、正直こんなこと思いつきたくなかったぞ。

 

『そんなこと言わないさ。それがお前の本意にそぐわないことも分かっている。……私たちは大丈夫だ、リーザ。お前は、お前のやるべきことをするんだ』

 

「……ええ。じゃあね」

 

 指先で通話を切ると、急に静まり返った部屋の空気が重く肌にまとわりついた感覚がする。自らが弾き出した『解決策』だが、それがこんなにも胸の奥を冷たく蝕むとは。

 

 何度かやめておこうかと頭をよぎったりもしたが、自分の冷静な部分がそうするべきだと囁いている。分かっている、今は感情ではなく合理的に動くべきだ。結局は自分の理性に押し負けるように、私は従者を呼び出した。

 

 

 

 

「お呼びですか、お嬢さま……ひえっ……まだピリピリしている……カヤと心中ルートはなんか勝手に消えたけど……ここからどうリンちゃんと仲直りさせればいいんだ?……

 

 扉が開き、いつもより少し緊張した様子のメルハが顔を覗かせた。私の顔色を読み取ろうとする視線だったが、そんなことしなくても一目でわかるだろう。少なくともポジティブな感情は一切読み取れないはずだ。

 

 私は先ほどユキノ先輩に語った話を、感情を削ぎ落とした声で命じた。

 

「単刀直入に言うわ。対策室所属の隊員は、全員SRT特殊学園から転校させなさい」

 

「――えっ?なんでですか?」

 

「このキヴォトスで最も働かされている私たちと、身動き一つとれないSRT特殊学園の生徒を引き離すためよ。今はまだ連邦生徒会の悪口で盛り上がって連帯感を持てるかもしれないけれど、時間の問題ね。その二つが同じ屋根の下にいれば、いずれ深刻な摩擦が起きる可能性が高いわ」

 

 対策室所属の部隊はSRT特殊学園の生徒から引き抜いた者で構成されている。所属が変わったとはいえ、同じ釜の飯を食い、共に戦い過ごしてきた経験は消えないのだ。それに拠点としてまだ学園を共有していることもあり、所属の違いを強く実感している生徒は少なかった。

 

 だが、今の状況では……私たちが実績を積み上げれば上げるほど、校内に縛り付けられている仲間たちの誇りは行き場を失っていく。同じ校舎で顔を合わせるたびに、どのような感情を抱くかは想像に難くない。

 

「……それは、そうかもしれませんけど。でも、そんな急に……」

 

「もう決めたことよ、室長である私がね。……隊員は各地にある基地が維持できるように、うまく散らばって配置しなさい。通わせる学校もそれぞれの拠点の近くにあるものにするわ」

 

「なんか散り散りになるようで嫌ですね……」

 

「しょうがないでしょ。対策室主導の学園はまだハリボテなんだから、拠点として利用できそうにないわ。なんならこっちも連邦生徒会長失踪の影響で建設が止まってしまいそうだしね」

 

「分かりました。……それで、あの……私たちはどこに転校するのですか?まさかアビドス?……先生を見に行けたら……あと出来れば縁を……いや、介入は避けるべきか?……先生なら助けなくても大丈夫そうだし……だったらトリニティとか行きたいけど……そんな事言える雰囲気じゃ……」

 

 なぜメルハはあんな自治区に行きたがるんだ?土地の権利が殆どカイザーコーポレーションに握られたせいで、もう滅びかけといっても過言じゃない自治区なのに。私達だってあんな所に行っても身動きがとりづらくなるだけじゃないか。

 

 

「伝手があるわ。私たちはトリニティ総合学園に転校しましょう」

 

「へ?」

 

 

*1
カルノバグ前編より。あまり詳しくなさそう

*2
パヴァーヌ編序盤のモモイの発言より。廃墟への出入りを制限していたのは連邦生徒会

*3
カヤの存在がバッドエンドの象徴に見えている

*4
一歩間違えればこの場でぶん殴られると悟った

*5
リーザの所業を知っているので、本気で身の危険を感じた




カルバノグの兎編冒頭で、ミヤコたちを制圧しようとした部隊の推移は以下の通りです。

事前に準備していた部隊 ⇒ ヴァルキューレ警備局 ⇒ ヴァルキューレ公安局 → 先生


ここで注目すべきは、SRT特殊学園からどれほどの人数が、どれだけの装備を持ち出して反発するかを予想し、『事前に準備』していたはずの部隊が、練度不足の新兵一小隊にあっさりと蹴散らされたことですね。

その後警備局に任せても失敗、「大事にしたくないのですが」と言いながら公安局に依頼してもまた失敗。これらの描写からリンや役員たちは、SRTの特殊部隊がどれほど強力で、役に立つ存在なのかを把握できていなかったのではないかと思われます。

だから原作では人員がもったいないし、ヴァルキューレにでも突っこんでおくか……と考えたのかもしれません。
SRT生徒のプライドとか正義とかといった感情面への配慮は……まあ、リンは「王は人の心が分からない」が突き刺さるタイプなので。


この小説では『そのくらいの』部隊の事情を優先することもないと判断し、リンは後回しにしました。あと多忙なリーザをこれ以上厄介事に巻き込むべきではない、という彼女なりの不器用な気遣いもあったりします。それが致命的なすれ違いの原因となってしまいましたが。

リーザの方も冷静になろうとしながらも、口を開けば皮肉ばかりが飛び出すあたり、彼女もまだまだ『大人じゃない』部分がありますね。

ちなみにビオラの花を世話していたのはリンちゃんです。


次回はトリニティで幼馴染たちとのトリカスたっぷりほのぼの(?)ティータイム
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