あと主人公の三下ムーブは鉄板入りです。逃げる時によく使ってました。それで助かることもあったので何も言われてませんがそれはそれとしてキラたちはイラっとしてる。それくらいのクオリティです。
「なぁ、さっきなんて?」
食堂で待機しているクルーがキラと少しだけ話をしていたノイマンに話しかけた。出ていくキラを心配そうに見送ったがノイマンにこっそりと耳打ちしていたのを見ていた。
「……………………なにかあったらすぐに動いてほしい、だとよ」
曖昧な言葉にキョトンとするが、いつも隣にいるもう一人のパイロットを思い出して納得した。事実このあと謎の騒ぎが起きるのだが、予定とは全く違う騒ぎになるとは思ってもいなかった。
「おい! 何をしている!」
モビルスーツの格納庫では直前まで笑っていたガルシアが慌てふためいている。周りの部下たちも同じように慌てふためいている。なぜなのか、理由は誰が見ても明らかだった。
「なんか勝手に動いて止められません!」
ホワイトのスピーカーからユウキの声が響く、どこか切迫したようなしてないような微妙な声だが格納庫を歩き回るホワイトの下で慌てているガルシアたちにその判断はできない。
「くっそー!さてはウイルスを仕込みやがったなー!」
誰にも見られていないコクピットの中にいるパイロットは笑顔である。内心で一方的に殴られる痛さと怖さを教えてやろうか! などと言っているがべつに殴られてはいないし、女っぽい名前とも言われていない。ただの学生のノリである。
「おい! お前がしたんだろ、早くどうにかしろ!」
「そう言われても、ボクはロックを解除しただけで他には何もしてませんし」
「じゃあ誰がしたっていうんだ!」
「えっーと、艦長だしマリューさんとかですかね? もしくはムウさん? あ、もしかしてナタルさんが極秘に仕込んでいたのかも?」
ストライクのコクピットでは適当にキーボードを叩いてモニターにプログラムを映し出す作業をしているキラ、覗き込んでいた技術者も慌ててどうにかしろというがあいにくキラに心当たりはない。どうせ本人が操縦しているだけなのでウイルスなどかけらもないことを分かっているのだ。
ただのパイロットでロックをかけただけ、ウイルスは艦長たちの仕業ではないかとシラを切る。コイツも大概ユウキの悪友である。
「ということです司令官!」
「ぬぅ!」
してやられたか、と内心で歯ぎしりする。目の前にはお宝の山であるモビルスーツが二機、しかし一機は暴走しており、もう一機はまだ起動していない。ここまで予測していたのかと来賓室に軟禁した三人に舌打ちする。
もちろん何も知らない三人は同時にくしゃみをしていた。
「……………………くっ、全員退避! あの三人を呼んで来い!」
足を振り上げ手を振り回すホワイトを前にしてガルシアはそういうしかなかった。
「で、呼び戻されたと思ったらそういうことね」
モニターの前でタップダンスを踊るホワイトを見てマリューは眉をひそめた。ガルシア以下、アルテミス所属のメンバーは全員退避、退艦しておりアークエンジェルのメンバーがいつも通りの場所に戻っていた。
「やるじゃないの、でどうする? 止めたら止めたでまた戻ってくるぜ?」
感心したように口笛を吹くムウがマリューの横顔を眺める。ムウの言う通り未だ内部の様子はモニター越しに見ており、止まり次第再び入ろうとガルシアは計画している。念のためにさっき以上の武装を用意して。
「補給はままならないし連絡もできてない、けどここにいてもどうしようもないわね。ナタル少尉、発進の用意を、バレないようにね」
「ハッ!」
「それとホワイトに通信を繋いで音量は小さめで漏れないように」
「了解!」
静かにアークエンジェルのエンジンに火をいれ、アルテミスから脱出するための準備が整っていく。
「ユウキ君? キラ君もいるわね?」
『待ってました』
『はい、ストライクもいつでも動かせます』
元気のよい返事、多少荒くはあったがこの学生たちに助けられっぱなしだと改めて思った。
「今アークエンジェルが発進するための準備をしているわ、もうしばらくごまかしててくれる? それと、今はアルテミスの傘は開いてないみたいだけど、それとは別に抜け出すための案はあったりする?」
『あーそっちもいるか……………………教授MAD動画流しましょうか?』
「却下、といいたいけど最悪それになるわね。ほかの案も考えて思いついたら教えて頂戴。こちらでも考えます」
『『了解』』
味方の要塞内にウイルスを使う、バレたら軍法会議だろうがそうなればガルシアも道連れだ。そうならないよう釘を刺しておく。聞いていたナタルは何とも言えない表情をしていたが、隣にいたムウは少し目を丸くしていた。
学生たちに頼りっぱなしではいけない、そんな思いと責任がマリューの艦長としての自覚を育てていく。後に不沈艦と言われるアークエンジェルの艦長はこの時から始まった。
「といってもなぁ」
ホワイトを適当に躍らせながらコクピットでユウキは考える。こっそりと逃げるには別の場所で目立つ火の手をあげるのが一番だ。学校ではよく清掃ロボットを暴走させたりサイを囮にして逃げていた。とはいえ今いるのは要塞、勝手知ったる学校とは違うのでどこをどういじってもいいのかは分からない。
「キラ、どっかクラッキングできたりしねぇ?」
「んーできなくはないけど時間はかかるかな」
止めることもなく冷静にできるできないを伝えるキラ、だいぶ毒されているが誰もそのことに気が付かない。というか軍の要塞施設をクラッキングできる子どもとは、これもスーパーコーディネイターの実力である。おそらく研究者も予想していなかっただろうが。
「やっぱ爆音でデスメタルでも流すか?」
「変にクラッキングすると扉も閉めることになるからその調整に時間が欲しいかな」
「ままならねぇなぁ」
しゃべりながらも練習がてらにホワイトを動かし続ける。ガッツポーズをした後、体を傾けて両腕で丸を作る。そして翼のように広げてくるくると回りだす。止まった時なぜか少しだけ横にずれた。
「マリューさんたちも何か考えて」
そこまで呟いた時、無敵を誇るアルテミス要塞が揺れた。
「な、なんだ⁉」
「何事だ! すぐに報告させろ」
誰もが慌てている中、ガルシアが叫ぶとモニターに映像が送られてくる。そこに映ったのは黒いモビルスーツ。
「Gだと…………!」
「なんだぁ?」
同時刻、アークエンジェルでも揺れを確認していたクルーたちが驚いていた。
「爆発?」
「でもここはアルテミス要塞だろ⁉」
『マリューさん!』
原因を調べようとしていたブリッジのモニターにユウキが映った。
『前に見せてもらったGの中でステルス機能あるやついましたよね! 黒いやつ! 多分そいつです!』
「黒い……………ステルス、ブリッツ⁉」
ユウキの言葉にGの情報を思い出すマリュー、ブリッツに搭載されたミラージュコロイドシステム。ひと言でいうと光学迷彩、ろくに攻撃はできないしPSも使えなくなるが、現状の観測機器をすべて通り抜ける性能がある。というか技術発展が著しいC.E.で数年後も使えるヤバい機能でありオーパーツじみている。
「アークエンジェル発進用意! 攻め込まれたのならアルテミス要塞はもろい、今すぐここを出るわ!」
艦長の声にすぐさま動き出すクルーたち。バレにくいように準備をしていたのでそれほど時間はいらないが、それでも今すぐにとはいかない。
「申し訳ないけど万が一に備えて二人には護衛をしてもらうわ」
『『了解!』』
ソードストライカーを装備したストライクとホワイトがアークエンジェルから出ると、その向こう側からアルテミスの傘を内部から破壊してきたブリッツが現れた。
「見つけた!」
「一機だけで勝てると思うなよ!」
「来るっ!」
攻めては離れ、離れる時の隙を片方が補うヒットアンドウェイ。ストライクとホワイトの息の合ったコンビネーション攻撃を何とかしのぐブリッツ。さすがザフトの赤服というべきか、落ちる気配はない。それでも数の有利は変わらず少しずつ追い込まれている。
『二人とも! もう大丈夫よ!』
通信からミリアリアの声が聞こえる。二人は一瞬顔を見合わせると、再びブリッツに同時に迫っていく。
「数が多いからと言ってぇ!」
それは自信の表れか、真っ向から迎え撃とうと加速するブリッツ。ビームサーベルを掲げて切り下すが、空を切ることしかできなかった。
それもそのはず、二機はブリッツに突撃しようとしてそのまま何もせずに通り過ぎたのだ。意識からそれていたアークエンジェルも爆炎の中アルテミスから二機を回収して脱出した。
「勝つんじゃなくて生きてりゃいいんだよ、だから引っかかるんだ」
「くぅ!」
通信はつながっていないためもちろん声は聞こえていない。だが後ろにいるブリッツをチラリとみたホワイトが何を言ったのか、ニコルは不思議と分かった気がした。
増援にきたデュエルとバスターと合流するまでの間、ニコルはその苦い敗北をかみしめることしかできなかった。
補給もままならないまま出発したアークエンジェル、生き残るために向かうのは戦争を激化させるきっかけとなったとなった農業コロニー、ユニウスセブンの跡地である。
そこで少年少女は運命の出会いをする。
アストレイシリーズを知らない方に言うと、このあとガルシアは生き残ってほかのアストレイ関係でボロボロになってます。調べたらめっちゃおもしろいんで知らない方はよかったら見てください。結構味のあるいいキャラでした。
次回、ご待望の歌姫……………が出るかな? その前に謎のシャワーシーンがあったズラとかかも。
おまけ
実績のある主人公「あの爆発、俺の仕業だと思ったやつ正直に手をあげろ」
顔を逸らす大多数、素直に手をあげるナタル&フレイ「……………」
この後めちゃめちゃ大乱闘した。