バカの異性関係? そうですね……………………刺されたらいいと思います。
「さて、今回はどうしたものかね」
視線の先には因縁の相手である知性を象徴する女神。
情勢が変わったものの、自分の上司は相変わらずあの獲物にご執心だ。部下を失い明らかに手抜きの味方を引き連れてどうしろというのやら。
自分たちが自軍内でも嫌われているというのは知っている。だからと言って仕事を投げ出すわけにもいかず、上と現場との狭間というもっとも厄介な立ち位置にいる自分。
まぁ、かまわないか。
どっちつかずの半端な人間にはちょうどいい立場かもしれない。
「よーし、今日こそあの船を堕とすぞ。オーブにも協力してもらって、な」
どうせ上司の命令には逆らえないのだ。ならば巻き込んでも仕方あるまい、と誰に向かってなのか言い訳を宙に吐き出しながらバカな振りの上手い坊ちゃんへと通信をつないだ。
「……………………」
パイロット控室にて床を見続けるシン。
ここ最近の意気消沈ぶりはとても見られるものではなかった。
本人も周りからも実の兄弟のように懐いていた相手がいなくなり、さらには国が戦争をする相手だと言い出したのだ。
無断出撃には驚いたものの、どうせ帰ってくるだろうと思われていた矢先である。帰ってこれない理由は分かるがそれでも寂しさは消えない。シンに至っては、船を離れる理由が自分の我がままだと知っている。自分のせいで、という思いが常に付きまとっていた。
「アイツの為にお前が気に病むことはない」
「そうだぜ、案外ちょうどいいタイミングだったんじゃないか?」
FAITHである2人は気楽にそういうがシンの心が軽くなることはない。
心の整理がつかないままにクレタ沖にて、地球軍とオーブとの戦闘が始まった。
前回と同じく、地球軍が前線を張りオーブ軍は後方にて援護という陣形。だが時間が経ち、連携の練度があがっているがミネルバもバカが残したシミュレーションによって腕は上がっている。
互いに決定打はなくじりじりと削り合う消耗戦、いや作戦にはまったミネルバが少し悪いかという戦況のなか、やはりというか伝説は現れた。
『オーブ軍は戦闘を中止せよ!』
伝説の自由の機体、オーブの獅子を肩に宿す赤いストライクが戦場に舞い降りた。
「よ、よし! とりあえず前回と同じで」
見覚えのある2機を前に冷汗をかきながらも勝ちを確信したユウナは通信を繋ごうとして、
『ユウナ様、よろしいですかな?』
「ん??? どうしたんだい?」
向こうからつなげられた。
前と同じくユウナの蛮行を止めると宣言しているカガリ、地球軍に任せろと言ってただの時間稼ぎをするつもりだったのだが、
『いえ、以前と同じく正式な代表であるユウナ様を愚弄する相手には、我々もいかんせん見ているだけでは申し訳なく思いましてね。手伝わせていただきます』
「⁉ いや別に大丈夫だよ!」
『そうおっしゃられずに、上からも是非とも協力すべきだと言われておりますゆえ、お任せください。変わりにミネルバの方を頼みましたよ』
必要なことを言いきったと切られる通信。
通信用の受話器を持ったまま固まるユウナを普段とは違い、軍人としての真剣な表情でトダカたちが見つめている。
「…………如何なさいますかユウナ様」
やはりというか口を開いたのはトダカだった。
「ま、まて今考えるから! 大丈夫ぼくはセイラン家の跡取りにして現オーブ代表代理ユウナ・ロマ・セイランだ、これしきのことどうにかしてみせるから…………」
尻すぼみに小さく、そして下がっていく視線。時間はない、そして前回と同じ策は使えない。それでも大丈夫だ、何せ自分にはキラやユウキがいるのだ。これくらいのことどうにかしてみせる。いやしてみせないと、あの友人たちに顔向けができない。
ブツブツと小声で案を口に出していくがその顔色は悪い。
慣れた兵士たちでも船酔いをするという航海の中、ゲームのし過ぎで寝不足であること以外に体調を崩したことがない上司。それが今や死人と見間違えるほどに青ざめた顔で身体を折り曲げている。
「いや戦わないはダメなんだどうあっても戦うしかないけど先に仕掛けられたら今度こそ被害が大きくなるし地球軍との関係も拗れてジブリールとウチの親でオーブがマズい事になるからかといってブルーピリオドに協力も現在はマズいしザフトは論外で撤退できるだけの被害をもらいつつ上手いこと誤魔化すためにも」
握りしめている手が震えている上司、覚悟を決めた部下たちを見てトダカは決断した。
「ムラサメ隊を出撃、ミネルバへ攻撃を開始する」
「‼ トダカ! ぼくは命令を出してないよ⁉」
「出されましたとも、そうだな?」
悲鳴に近い叫び声をあげるユウナに振り向くことなく、トダカは部下たちに声をかける。
「えぇ言われましたな」
「自分の耳はちゃんと聞きましたぞ」
「命令を出されたのならその通りに戦うしかありませんな」
何事もないかのように訓練通りの動きを始めるオーブの兵士たち。攻撃準備、モビルスーツの発進用意、手慣れた動きでミネルバへ目標を定めていく。
「トダカ! 命令だ今すぐと「抑えろ」んぐっ⁉」
口を開きかけたユウナを近くにいた兵士たちが抑えた。もしかして反逆された⁉ などと混乱しているユウナを無視してミネルバへの攻撃を準備するトダカたち。
「ムラサメ隊に…………オーブの未来の為に、と命令されたとだけ伝えろ」
拘束から逃げ出そうと暴れるも、訓練された兵士たちによって無理やりブリッジから退出させられたユウナの耳にその言葉は入らない。
「? どういうことだ⁉」
「カガリ下がって!」
同じようにムラサメが来ると思っていたのだが、カガリの元へ来たのは地球軍ウィンダムの部隊。焦るカガリの前に立ちはだかりフルバーストモードによって迎撃するキラ。武装や頭部に手足を正確に撃ちぬき無力化させていくが、いかにフリーダムと言えどカバーできる数には限界がある。少しずつアークエンジェルを取り囲むようにウィンダムが迫り来ていた。
「オーブ軍⁉」
「えぇ⁉ こっちには来ないはずじゃぁ⁉」
同様になりを潜めていたオーブ軍の猛攻が始まり戸惑うミネルバ隊。アーサーの言葉にそんなわけがないと返すも、タリアも内心では驚いていた。どんな事情があったのかは不明だが、攻撃してくる以上ただでやられるわけにはいかない。
「タンホイザー起動、迎撃用意!」
「オーブが⁉」
「どういうことだ、ってこの!」
機動力があるがゆえに遊撃手になっていたアスランとハイネ。カオスとアビスの相手をしながらも、前回と同じく時間切れを狙っていたと口には出さないが、突如開始されたオーブの攻撃には流石に面喰ってしまう。それでも動きに支障がないのはFAITHの所以と言ったところか。
「なんで、オーブまで、なんでだ!」
メンタルの調子を落としながらも、出港時より腕が磨かれていたシンはウィンダムの部隊を蹴散らしていた。どうにか今回も切り抜けようとしていた矢先に見えたのは、青と白ではなく、黒と橙色の可変機。真っすぐに向かってくる攻撃を躱しながらもその手は引き金を弾いてしまった。
「なんでなんだよ‼」
炎を吹き出しながらも落ちていき、海上へたどり着く前に爆発をあげる機体を見てシンの心はさらに締め付けられていった。
「準備は最低限で構いませン、速度を優先デ…………あぁ彼女は先に送り出してドウゾ。その後? そんなもの知りませんヨ。あいにくウチは託児所じゃないのでネ、艦長にでも任せてくださイ。子供好きな彼女なら大丈夫でショウ」
ブルーピリオドの拠点のひとつにて、忙しなくしゃべり続けるアズラエル。普段の余裕のある優雅さは欠片もなく、片と頭で挟んだ端末に目を向けることなくコンソールを叩き続けている。もちろんアズラエルだけでなく、秘書として雇っているコーディネイターや部屋の外でもドタドタと走り回る音が聞こえる。
「正当な権利、なんて通じるのはマトモな相手だけなんでス。いつだってやったもの勝ちな世界ですヨ」
アズラエルは少女を預かると同時に、連れてきた相手にある許可を出した。
「じゃあやられっぱなしでいいのかってそんなのは聖人でも善人でもナイ、ただの人形でス。やられる前に、は臆病者。やられた後に、も少し正確ではないですガ…………倍だなんてソンナソンナ」
モニターのひとつに移っているのは捻りもなく破壊の名前が付けられたモビルスーツの設計図。これを持たせた鬼札はきっと、もっとも力を発揮できる場所にいるだろう。ならばコチラもそれに合わせて動かなければいけない。
「徹底的に、ですヨ」
ま、彼らは優しいのでほどほどで終わるでしょうけド。そう笑いながら通話を切ると端的な指示を飛ばし、袖をまくり上げネクタイを緩めた。
『進路クリア、発進どうぞ!』
「ユウキ・イチノセ、コンコルディア出撃する!」
聞きなれた友人の声と共に預かりの白い機体を飛ばしていく。
向かう先は、しばらくの間世話になっていた船。
歪な三竦みの中でさらに調和を冠する純白の機体が戦場に降り立つ。
端折りすぎたかなぁと思いますが長引かせても、な回でした。いやいつもですわ。
トダカたちに軍人たちのこういうシーン好き、を詰め込んでる気がする。これも二次創作の醍醐味ですね、皆さんも書きましょう。大丈夫です、最初はAIを使ってみても構いません。そのうち自分でちょっとずつ書き出してみて、そのうち貸せ! 全部俺がやる! になりますから。作品なんて世界にいくらあっても足りませんからね、今日からあなたも創作家!
いつも感想や誤字報告、ここすき等ありがとうございます。励みになっています。
まったく、あの人はいつも無茶をおっしゃる。おい、彼女と連絡を繋げ。…………ところで若い女性は何が好きなんだ、この前良い相手はいないのかと聞いて怒らせてしまってだな……………………いや、そこから彼とはどうなのかと聞こうとしただけで…………。
────娘のように接した結果怒らせてしまった地球軍第八艦隊司令官