お礼にアスランがラクスの服を着ます!
「やはり彼は味方にはなれないか」
「えぇ、ユウキ・イチノセと同じくいずれ離脱するでしょう」
「そうか、残念だ。彼のような強い戦士こそいてほしいのだが」
心の底から残念だと首を振るデュランダル。
命令のままにアスランを捕縛しようと動き出したレイ。
境遇に思うところがあった誘われたステラの脱走には協力し、遊びに誘われれば断りもしないが、デュランダルと敵対するのであればユウキすらも敵だと判断する。
家族のように思っているギルの命令ならば、アスラン・ザラも同じように、敵として排除すべきである。
直ぐ近くにメイリンがいた事に気が付いていたが、レイの指は戸惑うことなく引き金を弾いた。
「レイ! 議長の命令か!」
「そうだ。敵と密会していた疑いのあるアスラン・ザラを捕縛しろと、しかし脱走したのなら話は別だ」
「よせ! メイリンもいるんだぞ!」
アスランの呼びかけにも返事はせず弾を撃ち続けるレイ。舌打ちをすると物陰から飛び出し、レイが狙いを定めるよりも早く持っていた銃を狙い見事に弾き飛ばした。一度下がっていくレイを確認すると、メイリンの手を取りグフへ搭乗する。
格納庫から飛び立っていく機体を背後にレイはある場所へと走っていく。
「シン、デスティニーとレジェンドの発進用意だ。アスランが脱走した」
「っ! 来たか!」
海上を進んで行くグフの背後を、最新鋭のNJC搭載機体であるデスティニーとレジェンドが追いかける。
「レイ! これってどういう」
「アスランは敵と密会していた。話を聞こうと呼び出した憲兵を倒し、メイリンと共に脱走。もうすぐ議長の正式な命令も下される」
「っ、アスラン!」
苦しい顔をするシンだが、レイの言う通り現在基地ではデュランダルが集められた情報を元に、既に決まり切っていた判断を下そうとしていた。今なお気持ちが降り切れない相手も苦い顔をしているが、悩みの末にという演技を得て通信を繋いだ。
「来たな、機密保持のため撃墜する」
重力下であるため全力を出すことはできないが、それでも量産機とは一線を画す伝説の名を持つ機体。全身から向けられた攻撃をアスランは背を向けたまま躱していく。
「────っこのぉ‼」
苦しそうな声と共にシンもデスティニーのビームライフルを向けて攻撃していく。
躱すだけで無理だと判断したアスランはスレイヤーウィップを巻き付け、ビームライフルを手離させると腕に装着されているにビームガンで牽制し距離をとる。
「シン! こっちにはメイリンもいるんだぞ!」
「ならっ、なおさらなんで、脱走なんかしたんですか!」
口にこそ出さないがシンはアスランの事を信頼していた。高い技量、上から分かったかのような言葉、だがあの人と同じように誰かを気遣っていた。
あの人のように、超えたいと思っている目標。
しかしエンジェルダウンから顔を合わせづらかった。顔を見れば嫌でも考えてしまう、そして何より、
「シン! 俺はお前を恨んでなどいない! ユウキのことだって!」
「!」
そう言われるのが怖かった。
「アイツは!」
「シン! 敵の言葉に惑わされるな!」
アスランの言葉を遮り割り込んでくるレジェンド。牽制と回避を重点において動いていくアスラン、任務を遂行しようと攻撃を続けるレイ。動きのキレこそアスランが上だが、覆すことのできない機体性能の差が徐々に表れてくる。
「なんで、なんで…………」
同じ船に乗り、自分が追いつきたいと走っていく先に待っていた2人が、
「なんでこうなるんだよぉ‼」
つもり重なっていく感情が頭の中ではじけた。
翼を広げ、光を纏い分身したかのような残像を残しながら接敵していくデスティニー。
振り回されたグフのスレイヤーウィップを掌に内蔵されたパルマフィオキーナで撃ちぬく。肩に装備されているフラッシュエッジ2 ビームブーメランを同時に投げ、逃げ場をなくすと背部左から大型ビームランチャーを取り出し放った。
アスラン自身の反応はできたのだが、メイリンがコクピットにいることの気づかい。追いつかないグフというモビルスーツの反応速度が左腕と左足を犠牲にすることで躱した。常人なら避けきれるわけがない攻撃を、アスランというパイロットの腕前が超えた。
が、デスティニーには相手の事を知り尽くしているパイロットが乗っている。
レイですら回避に驚いていたのだが、息つく間もなく折りたたまれた対艦刀アロンダイトを展開し全身を光に包まれたデスティニー。
最強と呼ばれたフリーダムを追い詰め、裏切り者であるコンコルディアを撃墜した時と同じものだったのは何かの運命だろうか。
雷によって照らされたグフは、腹部を貫いたアロンダイトと共に海へと落下していく。抱えようとする味方はおらず、嵐の中、荒れくるう波に飲み込まれていった。
「…………作戦終了、帰投するぞシン」
「……………………あぁ」
通信にも乗らないほどに小さな嗚咽が、密閉されているはずのコクピットを濡らしていく。
嵐の中を飛ぶデスティニーの頬にある溝を雨がなぞり零れた。
大規模作戦の前に起きた脱走事件、処理をするために走り回る兵士が多い中でシンはルナマリアと向かい合っていた。
「……………」
何を言えばいいのか分からない。
同じ妹を持つ身として、軍の命令だったなんて言い訳はしたくない。かと言って謝るのも違う。攻めるなんてもってのほかだ。
議長とレイはメイリンが機密情報を持っていたため、漏洩の可能性があったと言っていた。ハイネは間違っちゃいねぇが嫌なもんだよな、と言ってくれた。
だというのに自分は何も言えない。
議長に認められ、最新鋭のモビルスーツを与えられようと、避難しようとして足を止めてしまったオーブの時のまま、未だに弱いままだった。
背を向けて去ろうとした背中に軽い衝撃が来る。
背中に埋められた場所が熱く濡れていく。
肩を握りしめられていた手に自分の手をそっと重ねた。重たい心の中でシンはたったひとつだけ決意した。
片手で覆えるほどの、震えている小さな手の持ち主を守り抜こうと。
地球軍の拠点のひとつ、ヘブンズベースではある男が高級なソファに座っていた。
「まったく、アズラエルも大したことはない」
傍らのテーブルに置かれたカップを優雅に持ち上げると少しだけ口をつける。
「ブルーコスモスの盟主だというのにコーディネイターを滅ぼそうとせず、解体したと思えばブルーピリオドだのエネルギー問題の解決だの。まったくとんだ臆病者だったわけだ」
眼下に広がる作戦司令室。前面に設置された大型モニターには、複数のデストロイが並んでいた。
「エネルギー? 地盤を固める? そんなものはコーディネイターを滅ぼした後に考えればいい。そう、全てを破壊しつくして世界を再建すればいいのだ」
デストロイの説明を受けるスティングには仲間がいたという記憶はない。その様子を眺めるネオ。ひとり、ふたりと己の手から全て離れていく部下たち、自分の手を見つめるが開かれた手の中は空でしかない。
「そう、全ては青き清浄なる世界のために」
部屋の片隅を歩いていた猫はしっかりとした足取りで進んで行く。自身と同じくらいのサイズである腕と頭のない天使の像を通りすぎ、餌を用意する人間の元へと優雅に歩いていく。
「えぇ、恐らくアークエンジェルが拾ってくれました。いまどちらに? …………あぁあの方と一緒に、なるほど、では直接会えますね。はい、こちらも少し厄介なものを見つけてしまいまして……………………マユ・アスカ、ユウキとキラを撃墜したパイロットの妹さんです」
片手を耳に当て、片手で端末を触りながら人気のない場所で小さな声で話している緑髪のスーツ姿の女性。
端末の画面にはマユ・アスカ、と書かれた少女のプロフィールというには詳細過ぎる情報が載っていた。
「テストパイロット、にしては幼すぎますがつながりのある情報が少し…………マズいかもしれません。「ニコル! ちょっといいー?」あ、呼ばれたのでまた。はーい、どうされました?」
軍人のような鋭い目つきから、アイドルのマネージャーとしての柔和な顔に変えて走り出す。
端末の電源が消される直前に移されていた画像、そこには「H」と書かれた足のないモビルスーツの図形が映されていた。
やーっと出てきたニコルちゃん。何してるんでしょうねぇ
機体性能と訓練での動きを見ていたのとメイリンがいるという条件でシンが勝ってくれました。メンタルデバフ、は種割れで乗り越えちゃった、ってことでひとつ。へへ
いつも感想や誤字報告、ここすき等ありがとうございます。励みになっています。
このような抜け道があったんですねェ。あの時もここを使えたら簡単だったんですケド、なんで教えてくれなかったんでス?
────隣で渋い顔をしている長髪をまとめた壮年の男性に笑う理事