このままだとスプーンを持っているのにわざわざ店員さん(かわいい)に話しかけた変態だと思われてしまう、そうならないためにも勇気を出して断らなければと思い口を開くと、
「お買い上げありがとうございます」
「ありがとうございました」
家に置いてあるスプーンでアイスを食べ、もらったスプーンは店員さん(めっちゃかわいい)のぬくもりが消えないよう未開封でちゃんと保管しました。
あの店員さんたぶん自分の事好きだと思うんです。
(どーしろってんだよォー!)
国防指令部にて魂が抜けかけた状態で立ちすくむユウナ。
モニターには立ち並ぶザフトの艦隊、頭の中には時間を稼げと急に怒鳴り込んできたロード・ジブリールと共に消えていったウナトの姿。
(目が覚めたら全部夢でしたーってならないかなァー⁉)
そう願い白目をむくもオペレーターの「ザフト! 攻撃を開始しました!」というひと言で無理やり意識を戻される。
「ユウナ様! どうされるのですか!」
傍に立っていた男が怒鳴るように叫ぶが、ユウナには政治家としての仕事とゲームによる軍隊指揮程度しかできない。ミネルバとの戦闘時も、どう戦うのかだけ指示を出し、後はトダカたちに丸投げだ。
「…………あーもーすぐ動かせる部隊を展開! 防衛網を敷く! あとトダカ起きてる⁉」
とりあえずそれっぽい事を言うしかないが、それでも動いてくれたので冷汗を流すだけで済んだ。この年になって漏らしたくはない。
「ユウナ、客人の迎えに行くぞ」
「? ほいほい」
ウナトに言われるがままについていけば、セイラン家の秘密の港。停泊していた船から現れたのは、
「顔をあわせるのは初めてだな。ユウナ・ロマ・セイラン」
ブルーコスモス拠点襲撃事件のほぼ確定犯人にして、ザフトとの戦闘を激化させている噂の人物であった。
にこやかに会話をして歩いていくジブリールとウナトの後ろで、魂が抜けたかのように立ちすくむユウナのズボンを上品な猫が匂いを嗅いでいた。
ヘブンズベースを堕としたザフトだが、デュランダルの標的はジブリール。ロゴスのメンバーこそ捕まえることができたが、肝心の相手がおらず足取りを調査した結果、向かった先はオーブ。これには投稿してきたジブリールの私設部隊の証言も含まれており、信憑性は高かった。
ゆえに軍を展開し、身柄の引き渡しを要求。
カガリたちを始め大勢が固唾をのんで見守る中、カメラの前に現れたユウナは清々しいほどに笑顔であった。
『えーデュランダル議長の要求するロード・ジブリールなる人物ですが、ただいま調査中です。身柄を確保次第、念入りな調査をしたうえで判断させていただきます』
放送を見ていたプラント、及びプラントへ好印象を持つ一般人は隠すつもりか! と叫びオーブを非難した。プラントと関りが薄く、戦争の被害を受けていない国はまぁそうだろうなと思いつつ及び腰だなと判断した。
ゲーム仲間たちはコイツ、
密かに隠れていた盟主王は潜伏しているのにも関わらず爆笑し、傍にいた男は重々しくため息を吐くと共に歩きだす。
やり場のない気持ちを抱えているシンやルナマリアたちザフトは、煮え切らない態度に苛立ちを募らせる半面、議長は笑った。
「ふっ、否定すれば簡単だったが飲み込まれるよりはマシか」
ユウナの声明に対しデュランダルの答えは、
「世界を火の海に導いた悪の集団ロゴス、そのトップともいえる人物をオーブは何故かくまう。平和を願うのならば、引き渡し、断罪すべきである。新たな争いの火種を起こさせないためにも、我々はたたかうのである!」
事実上のオーブへの宣戦布告であった。
「えーっとえーっと、次は」
「ユウナ様! 民間人の避難を!」
「西海岸攻め込まれています!」
「ムラサメ隊隊長ミシマから出撃要請が!」
「いっぺんに言うなよ分かんないだろ⁉」
カガリがいないことで代表代理の座についてはいるが、ろくな引継ぎもできないままに収まったので分からないことは多い。どうにか捌こうとしても、1を応えれば10になって返ってくる。
あまりの情報量にパンクすることもできないほどにユウナは追い込まれていた。
「各自に任せるってできない⁉」
「指揮系統が崩れて現場が混乱します! 防衛どころが自滅しかありません!」
「だよねぇ⁉」
冷静な意見に怒鳴り声で返すことでどうにか精神を保つ。
眺めている司令部の人間たちも、ユウナががんばっているのは分かっているが故に何もできない。彼らの仕事はトップからの指示を受けて動くものであり、自ら動くことはできない。
辛うじてザフトの侵攻を防いでいくが、ボロ布でパッチワークを紡いでいくようなもの。荒れていく戦況だが、それでもユウナがあきらめることはない。
(まだ大丈夫、いけるいける。だって)
カガリたちがいる。ユウキとキラも来てくれる。
ただそれだけを頼りに、か細いろうそくの火を消さないようユウナは耐えていく。
「放せ! ユウナも頑張っているというのに、ここで見ていられるか!」
ザフトの攻撃に押されていき、火の手が上がっていくオーブ。かろうじて対抗しようとするオーブの部隊を見てカガリが止まれるはずもなく。アークエンジェルのブリッジから飛び出そうとしたところを、キサカに掴まり無理やり連行されていく。
「戦うな、とは言っていない。だが戦う前に会っておくべき人物がいる、向かうべき場所もな」
「後でいいだろ! 私はいますぐ!」
ひたすらに掴まれた腕を離そうと暴れるが、鍛えられた軍人の腕力には抗えず引きづられていくカガリ。後ろにはどこかに連絡をしているエリカと付き添っていくアマギ。
たどり着いた先は埃の積もったコンソール。流石にここまできて帰ろうとはせず、起動して扉を開けた先でエリカが電気をつけると、
「金色のモビルスーツ…………」
思わず口に出したアマギだが、言葉の通りライトに照らされ神々しく佇むモビルスーツに目を奪われるカガリ。
同時に、録音されていたウズミの言葉が響く。
戦わずに済むのならそれがいい、しかし避けられぬ時が来た時、仲間と共に立ち向かうがいい。
愛する娘へと数年越しに向けられたメッセージに思わず膝をついた。
みっともなく、年相応に泣き叫ぶカガリに向けられたトダカの手を握り立ち上がると、
「うーん、実際に見てみると強ソウ、くらいしか言えないですネ」
思いがけない声が聞こえてきた。
「アズラエル理事⁉」
「ドウモドウモ、お世話になってまス」
わざとらしい笑みで頭を下げるアズラエル。無事だとは聞いていたが、まさかオーブにいるとは思わなかった。
「敵を騙すにはまず味方からってネ? まさかジブリールも来るとは思いませんでしたけド」
軽く笑っているが、付き合いの長い相手ならかなりキレていることが分かる笑み。乗っ取られた、という意味ではカガリも他人ごとではないが、ブルーピリオドよりはマシだろう。
「すまない。これからについて話したいことは沢山あるが、まずはオーブを守らなければ」
言葉も早々に走り出すカガリ。アークエンジェルではムラサメ隊が出撃を今か今かと待ち構えている。
のだが、
「まぁ待ってくださイ」
また止められた。
「どうしたというのだいったい」
相手が相手なだけにキサカのように無視することもできず、渋々振り返った。
「オーブ首脳国連合代表、カガリ・ユラ・アスハ。アナタへ贈り物がありまス」
普段の軽い雰囲気を欠片も出さず、真剣なビジネスマンとして佇むアズラエル。思わず背筋を伸ばしたカガリに、悪い顔で笑いながらゆっくりと道を開けた。
通路の奥から歩いてくる人影。逆光のせいで顔は見えないが、髪の長い男性だろう。
カガリとアマギが誰なのか、と見ているが徐々に鮮明になっていく輪郭に目を見開き、息を飲んだ。
「…………この扉を開けることがないことを願っていたのだがな」
今でも記憶に残っている威厳のある声、アズラエルの横を通り過ぎ一直線に走り出すカガリ。
「大きくなったな、カガリ」
「おどうざまっ‼」
胸元に飛び込み、先ほどまでよりも激しく、大きな声をあげて涙を流す。年頃の少女としても国の代表としてもみっともないほどに泣き叫ぶが、そんな娘をウズミはそっと抱きしめた。
「…………すまないカガリ、全てをお前に押し付けてしまった」
「そんな゛っ! いぎでて、いぎでてよがったです‼」
縋るように身体の体温を、生きていることを確かめるようにしがみ続けた。
国の代表を泣かして返しきれない恩を無理やり押し付けるビジネスマン、これは生粋の悪党ですね。
種の時にニコルが連れてきたお客さんです。運命でも伏線張っておこうとして忘れてたわけではないですはい。
細かいところはまた次回で
いつも感想や誤字報告、ここすき等ありがとうございます。励みになっています。
……………………そろそろボクも娘に会わないといけませんかね。
────感動の再会を見守っていたアズラエル