ユウナはまぁ、叩くと音のなるおもちゃだと思ってます。グフの足で鳴らすのも考えましたが、ここまでくると流石にアカンと思ってます。英断だと褒めてください
シン・アスカにとって、オーブとは複雑な感情を持っている国だ。
生まれ育った大事な故郷であり、国民を戦争に巻き込んだ許しがたい国であり、
憧れと出会えた喜びと悲しみを生み出す、目をつぶらなければ殴れない、そんな国である。
「うぁぁぁぁぁぁ‼」
そしていま、運命の剣を向けて戦うべき国となっている。気を遣ってくれたレイを押し退け、自ら出撃することを選んだはずなのに。喉が枯れ果てるまで続いていく叫びは、獣の唸り声とも、子どもの慟哭にも聞こえる。
ロゴスの親玉であるロード・ジブリールを匿う。地球軍と条約を結んだと思えば、なぁなぁで済ませる。ミネルバを受け入れたと思えば後ろ足で砂をかける。
一貫性がなく、不必要な戦いを繰り返し、結果として大事な人を──────
気がつけば迫りくるムラサメ、次々と切り落としていくが油断していたら、と頭を振って同時に雑念をも振り払う。ここは戦場だ、油断したものから死んでいく。
「アンタが大将機かよ! 大した腕もないくせに!」
次に狙いを定めたのはあまりにも目立ちすぎる金色の機体、ビームは跳ね返されるがデスティニーの真価は多種多様な武器による対応力だ。フラッシュエッジを投げつけ、装甲が覆われていない関節を狙う。
言葉にすれば簡単だが、実現するにはかなりの技量が必要となる技を当然のように披露する。
アカツキは優秀な機体だが、特性とパイロットの腕がデスティニーを相手取るには足りない。
「あぁぁぁぁっ‼」
悲鳴をあげて態勢が崩れるアカツキの中で叫ぶカガリ、歯を食いしばって目を開けば、
「これでぇ‼」
アロンダイトを振り下ろそうとするデスティニー。日陰によって隠された頭部のツインアイが鈍く瞬いた。
詰められていく2機の間を、天空から降ってきたビームが通り抜けた。
「何っ⁉」
アカツキをかばう様に間に割り込み、ビーサーベルを振るうモビルスーツ。赤服でなければ避けられない鋭い攻撃を躱し、距離を取ったシンの目に映ったのは、
「フリー…………ダム……………………」
自分が、いやハイネが撃ち取ったはずの青き翼を持つ自由の機体。細部こそ違いがあるが、面影は変わらない。死んだはずの亡霊が現れたことにシンの情緒は、
「う、あ、あ…………このぉー‼」
無事だったのか、別の機体なのか、パイロットは? 何故割り込んできた?
一緒にいたコンコルディアのパイロットは無事なのか、あの年上の頼りがいのある背中と年下のような笑い方を持ち合わせた、兄のように慕っていたあの人は───────────────
聞きたくとも相手は敵であり、話す時間などどこにもない。頭を埋め尽くすナニかを隅に追いやると操縦桿を握り直し、ペダルを踏みこむ。
考えること全てを放棄して飛び込こむシン。
新しく現れた敵を倒すために。
運命の機体はパイロットの操るままに、運命を紡ぎ出していく。
「くっ、すまない」
「いえ、これくらいは」
アークエンジェルのブリッジで怪我は治り切っていないが、寝ていられないとCICに座っていたアスラン。見覚えのある機体に顔なじみのバカが着艦した。近くにいたメイリンの肩を借りてモビルスーツ格納庫へと向かえば、
「…………ジャスティス」
かつて父から送られた正義のモビルスーツ。
細部が違うのは新型だからだろうか、と考えならも下がってくる移動可能な高所作業台に目を向ける。のだが、待ち受けていた人物は降り切る前に飛び降りて駆け出していった。
「ユウキ!」
「あ、ズラか! 勝手に使え‼ んでメイリンは平気そうで良かった! 無茶すんなよ! アサギ、いやトールか! 俺の奴どこだ‼」
「右の格納庫‼」
「くっそ!」
振り返りながらも止まることなく走っていくユウキ。しゃべっているというのに噛まないのは流石と言うべきだろうか、トールに言われて傍らに置いてあったセグウェイに飛び乗ると、そのまま消えていった。揺れる戦艦の中だというのに危なげなく操縦していったが、技術も速度もおかしいというのに気にする者はいない。
「…………元気、ですね?」
バカの行動に慣れている様で、実はそれなりに自重していたミネルバでの行動しか見たことのないメイリン。本当ならもう少しいろいろと言葉を交わしたかったのだが、あっけに取られている間に過ぎ去った台風にはひと言しか言えなかった。
「あれがいつも通りだ、ん?」
「…………! アスラン」
降りきった作業台にたっていたのはヘルメットを外し、パイロットスーツを着ていたラクス。メイリンとは違う理由で驚いたアスランはだが、多々ある疑問の中で1番気になることを聞くことにする。
「ラクス! …………もしかして一緒に「お怪我をされたと聞いていました、まだ治りきっていないようですがよろしいのですか?」…………まぁ、フレイって子に止められたけど」
割り込まれた。
きっと自分の身を案じてくれたのであって、余計なことを聞かれないように釘を刺したわけではないだろう。顔を見てもなにか? と首を傾げている。察しが悪かったり余計なことを言うのが得意なアスランでも分かっている。下手なことを言えば命に関わると。
怪我とは違う理由で冷や汗が背中を流れるのを感じて、話題を切り替えようと改めて機体を見上げる。電源の入っていないディアクティブモードのため分かりにくいが、特徴的な長めのアンテナに翼が折りたたまれた背負い物、姿形は誰よりも知っている。かつての大戦で乗っていた正義の機体、その後継機なのだと。
戦うための機体を、戦いを終わらせるために失った。当時の判断は今でも間違ってはいないと思うが、逃げたのではないか? と聞かれれば否定はできない。
自分はきっと、議長の言う通りに戦う戦士でしかないのかもしれない。それが顔に出ていたのだろう、
「…………アスランとはどんな人か、知ってますか?」
唐突なラクスの言葉に思わず言葉が詰まった。
「どんな、って」
「ザフトのエース? パトリック・ザラの息子? どんな相手でも打ち倒す戦士?」
次々とあげられるアスラン・ザラの一面、どれもが自分が目を逸らしたい、逃げ出すことのできないものであり紛れもないアスラン・ザラである。
しかし、
「どれもが、アスランの一部でしかありません。否定のする事もできない真実です。…………ですが、私がよく見ているのは、キラやユウキと一緒に遊んで、カガリさんに叱られたり呆れられたりしているアスランです」
穏やかに笑うラクスから、先ほどとは違う理由で顔を背けるアスラン。
思い出すのは、バカの影響で幼なじみも呼ぶようになったあだ名。何度否定しても止める事はなく、周りにも真偽を確かめられ、その度に否定していくのは紛れもなく本心であり───────
「…………まったく、誰がズラなんだ」
ジャスティスのコクピットでパイロットスーツの下で笑うアスラン。
軽口を言い合い、ケンカしあい、協力して女性陣から逃げる、くだらない日常。
「ズラのアスラン・ザラ、か…………最低過ぎるあだ名だ」
冠につけるには最悪の言葉、しかし身を守るために触れられたくない事実を隠すため、誤魔化すために被り続けていたのも事実。
それを脱ぎ去った時、自分は
後ろでマードックが叫んでいるが、ラクスが伝えてくれたのだろう。アークエンジェルのカタパルトが開き、青空が広がっていく。
空模様は移り変わるが、だからと言って空である事に変わりはない。澄み渡る青空も、鈍く広がる曇り空も、光をも閉ざす雨空も、全てはただの空でしかない。
『進路クリア! 発進、どうぞ!』
「アスラン・ザラ! ジャスティス、出る‼」
カタパルトの加速を受け空へ飛び出すは、無限の正義を冠する赤紫の機体。ただのアスラン・ザラが大事な人のオーブを守るために、ミネルバで知り合った相手を止めるために、自分の意思で戦場に身を投じる。
隠者が出撃する時のEDの入り方、歴代ガンダムシリーズの中でもトップのかっこよさだと思ってます。
前回の借りてきたネコラクス、好評で良かったです。普段は自分からアピールするヒロインが相手からの無意識なボディタッチとかで大人しくなるの、癖なんです。
いつも感想や誤字報告、ここすき等ありがとうございます。励みになっています。
……………………え、いまラクス様ってユウキさんと同じコクピットから出てきた???
────宇宙猫となったメイリン