あと新機体ワクワクで考えてたらもっと用意しないといけなくて焦ってます。
「本日、私はザフト最高評議会議長ギルバート・デュランダル氏にメッセージを届けたいと思います」
全世界のあらゆるメディアを通じて映し出されたのは、オーブ連合首長国代表カガリ・ユラ・アスハ。内容はジブリールを捉えに来たというザフトの侵攻に対しての意見である。
裏では侵攻の被害への対応が未だ続いており、ジブリールへのオーブからの意見を口にしようとした時、映し出されていた画面が揺れた。
『みなさんこんにちは、ラクス・クラインです』
「「「「「⁉」」」」」
映し出されたのはプラントの歌姫、いまや世界のほとんどがその名を知っていると言っても過言ではないアイドル。
『先日のオーブでの戦い、それは非常に痛ましいものです。ですが、』
口から紡がれるのはジブリールをかばうオーブに非はないのか? と問うもの。明確にオーブを非難するのではなく、これを良しとするのかと疑問を投げかける体だが何も知らない者からすれば無意識にオーブが悪いのではと意見が傾いてしまう。
モビルスーツ格納庫で作業をしていたり、手を止めながら放送を聞いていた整備員たちだが耳を傾けたままにバエルの調整をしていたユウキ。
「ユウキ、ちょっといいか?」
自分を呼びかけるトールの声に振り向けば、穏やかにほほえむラクスの姿。放送を見ていた整備員たちも目を離し、真っすぐに彼女を見ている。
「…………すぐ終わるからちょっと待ってろ」
「はい、お願いします」
使っていた工具を大雑把に纏めて工具箱に仕舞い、コクピットに繋げていたパソコンのケーブルを抜いていく。
マードックたちも何も言われることなくバエルが進むための道を開けていくと、2人を乗せたバエルはアークエンジェルから飛び出した。
「…………どっちだと思う?」
「いやぁ流石にないだろ」
「お前らしゃべってねぇで手ェ動かせ!」
2人を見送った格納庫では、ずっと前から行われていた誰なのかという賭けの話題が広がっていった。マードックが怒鳴るも、少しでも目を離せばまたその話題に戻り、今ではもう誰も放送を気にも留めていない。
ただしコッソリと置かれていた、賞味期限切れの缶コーヒーについては絶対に文句を言う事を決めた。
「…………別にいいんだぞ」
海上を飛んでいくバエル。パイロットスーツも着ることなく操縦していたユウキは、同じく私服のまま右隣の空いた隙間に立っているラクスに声をかける。
「そりゃ1番の切り札だけどな、切らなくたってどうにでもなる」
「しかし被害は増えます」
普段のペラペラと回る口が閉じられる。
「彼女が悪い、とは欠片も思っていないと言えば噓になります。ですが、カガリさんもがんばっているというのに、私だけ見ているわけにはいきません」
「……………………」
「…………ワガママを言っているみたいで、申し訳ありません」
覚悟を決めた、と思えばしおらしく謝るラクス。ラクス・クラインを知る者ならば驚く姿だが、ラクスと付き合いのある友人達ならば割と見慣れている姿。
少し態勢を崩しながら右を操縦桿から離すと、綺麗に整えられた桃色の髪に手を乗せると、慣れていないのか不器用に動かす。
「前にも言ったろ、俺たちがいる。好きなだけ頼れよ」
「…………はい」
気恥ずかしさと心地よさが顔に出ないよう、少しだけ顔を俯かせるラクス。明るくなったのを感じて操縦桿を握りなおしたユウキの口は、少しだけ元に戻った。
「ミーアならあんなことは言わないし、やっぱ台本書いてるやつが「ミーア?」いるって、なにどうした?」
唐突な雰囲気の違いに困惑するユウキ。
さっきまであったはずの不安や申し訳なさが欠片もなく、謎の圧を隣から感じ始めた。
「あの、プラントにいる私の代わりの人と、会ったことが?」
「え、うん、ミネルバにいた時に」
「ミネルバ…………あのメイリンという方も?」
「そう、だけど?」
怒っている。
明らかに怒っているのだが、なぜ怒っているのか分からない。どれだけ考えても理由が分からず、結局オーブ本土へたどり着くまでの間、謎の圧を受け続けながらラクスの質問に答え続けたユウキ。後にアークエンジェルへと戻った際にキラたちへ理由を聞いたのだが「バカ」としか言われず、ユウキのみが分からないままこの件は終わった。
自分でも分かってはいるが、未だ明確なものにできずに翻弄される感情。悪いとは思いつつ悪くないとも思っている感情の揺れは、カメラの前に進むラクスの足取りを軽くした。
「まさかオーブにいるとはな」
カガリの会見にカウンターという形でぶつけたミーアの放送。地球圏であろうと、これまでの行いによって世論はプラントへと傾いている。
タリアからの報告により、ジブリールが宇宙へ上がったこと、それがオーブからもたらされたこと、フリーダムにジャスティス、白い悪魔の登場。最新鋭のNJC3機を用意しての実質の敗走。
予想以上の被害があり焦っていたことは否定できない。
だからこその偽物による後押し。
『私はラクス・クラインです』
だったのだが、小娘のたったひと言で見事にひっくり返された。
とはいえ盤上全てがひっくり返ったわけではない。強力な手持ちがひとつ使えなくなっただけだ。
『私には、これ以上のザフトの行動は戦火を広げるものに見えます』
ザフトに肩入れせず、ジブリールにも同調せず、あくまで中立をうたうラクス・クライン。報告にあったエターナルにいるものだと思っていたが、まぁ問題はない。計画は順調に進んでいる。
駒を弄んでいると、部屋の扉が開いた。
「おっと、邪魔したかな?」
「キミならば構わんよ」
入ってきたのはザフトの白服を着る黒い仮面を被った男。部屋に入ると椅子に座ることなくデュランダルの傍に立ち、広げられている盤上を眺めた。
「…………不利そうだな」
「そう見えるかね」
先の大戦で名をはせた強敵が多いが、こちらにも剣はある。レイの報告によれば、シン・アスカもアスラン・ザラが乗るジャスティスを相手に奮闘したらしい。
「彼女の様子はどうだい」
「ん? あぁ彼女、遺伝子の調整もないし訓練とかこれまで受けてないんだろ? だというのにあのセンスはとんでもないな。自分にくれた新しい機体でもかなり手に余る」
デュランダルの疑問に肩をすくめて答えるネオ。自分には上乗せして与えられたものがあるが、幼い少女は誰の手も入れられていないナチュラルなコーディネイター。
テストでは経験不足こそ見られるが、圧倒的な才を見せつけられた。
「あれアンタが見つけたんだっけ?」
「見つけた、というのは少し違うな。自分が見つけたのは兄の方さ。彼女は偶然望んだ世界があり、叶えるだけの力があった、それだけの話さ」
やはり違うと思いつつも、どこか友人の面影を残す相手。提供された情報の中にあった「ゆりかご」、この存在はデュランダルにとってありがたいものであった。報酬として回収した機体にも改良を加えたが、そのうえでの評価ならば上出来だろう。
準備は上々、動き出した盤面はリセットされ改めて並びえる。
デュランダルが開いた手の中には、盤上に置かれた新たな王冠を被る駒。
「さぁ、どちらの
「ふん、わたしの意思も知らぬ小娘が」
2人目のラクスが現れたことで、プラントへと傾いていた意見は揺らぎ始めていた。しかし、そんな中でも自分の意見を聞き入れぬ愚か者、と評価をくだす男、ジブリール。
平和を望むと言いながら場をかき乱すことしかしない、自分の崇高なる使命すらも分からぬ小娘。アズラエルと同じように世界の理も知らぬ赤子。
だが今の目標は、
「眠るがいい。傲慢なる宇宙のバケモノどもよ」
死者の安息を願うレクイエムが奏でられるまであと少し。
なんかいつもチェスしてんな早漏議長。
なんか久しぶりにこの作品らしいとこ書けた気がする。種はバカに焦点を当てられるんですけど、運命は全体的に第三者視点でストーリーが進むのであんまり書けないんですよね。
いつも感想や誤字報告、ここすき等ありがとうございます。励みになっています。
だからってなんで私に聞きに来るのよバカ。……………………後で話すから待ってなさい、って話聞けバカ!
────この後ぼかしながら説明すると新品ジュースを奢ってもらった対魔忍