出オチなのズルすぎる。
オーブに現れた2人目の歌姫。
ザフト内部でもかなり衝撃が大きく、それなりの立場にいるイザークも上層部に詰め寄る──────ことはなかった。
「イザーク、あれって」
「ニコルが言っていた通りだな」
本部の通路を進んで行くディアッカとイザーク。事前にニコルから聞いていたが故に衝撃はそこまで大きくない。むしろ動揺している部下たちを叱責している。
因みにミーアについては普通に機密扱いである、という事も含めて笑顔で話された時、どことなくバカを思い出しイザークは八つ当たり気味のメッセージを送った。
「で、これは関係あると思うか?」
2人が向かっているのはモビルスーツ格納庫。謎の建造物が動いており近くに地球軍の影を発見したと報告があり、確認のために出撃しようとしている。
「ふん、それを確かめるために向かうのだろ」
「そりゃそうだ」
結果として廃コロニー跡地で地球軍と接敵、戦闘となる。何事もない普通の戦争、であったはずなのだが、
「っ! 全員コロニーから離れろ‼」
守るという事は何か目的があるという事、そのためコロニーへの攻撃をしていたザフトだが、何かに気が付いたイザークが叫んだ時には少し遅かった。
「いけ、レクイエム! 青き清浄なる世界の為に!」
地球軍月面ダイダロス基地に作られた戦略兵器レクイエム。ジブリールが押したスイッチと同時に発射された極大のビームはコロニーを潜り抜けるたびに角度を変え、プラントコロニー群──────
「なめてもらっては困りますネェ」
を通り過ぎていった。
「なっ⁉」
本来なら代表評議会があるコロニー、アプリリウスを狙いイザークたちの活躍によって狙いが逸れ、直撃したコロニーとその余波に巻き込まれる形で合計6つのコロニーが崩壊するはずだった。
のだが、レクイエムの軌道は大きく逸れてプラントは無傷である。
「……………………うっわ、マジかよ」
「はん、最悪」
「ゲームでもこんなんねぇって」
イザークたちのいる戦場で呆れたような引いたような声をあげる三機のウィンダム。
レクイエムは威力こそ絶大だが、設備が巨大なために射出方向、角度を変えることはできない。だが、廃コロニーを再利用して作られたビーム偏光ステーションによって角度を変えることで、理論上はどこへでも、それこそ地球の裏側であっても狙うことはできる。
しかし、そのためには中継ポイントとなるビーム偏光ステーションの調整が大事になってくる。
たった数ミリ単位が数キロに関わる宇宙において、例えばプラントを狙う最終中継コロニーが最初からズレていたら、掠りもしないだろう。
「……………………ふぅ、理事も無茶なことをおっしゃる。…………ザフトの攻撃を受けたという名目も使える、時間は稼げるか」
中継コロニーを防衛していた戦艦の一隻、ブリッジで軽く息を吐くと再び意識を締めなおしたナタル。
「作戦は失敗した! 態勢を立て直す、全機撤退‼」
量産機にしてはやけに動きの良い三機に続いて、引いていくウィンダムの部隊。下がっていく地球軍の部隊を追いかける暇はなく、残り続ける相手にイザークたちは奮闘していた。大がかりな作戦は失敗、残っている部隊は拠点が近いプラント護衛部隊の数を前に押されていく。
引いていく部隊への叱責をする余裕もなく、ジブリールは目の前にあるコンソールへ拳を叩きつけた。
「プラントが⁉」
情報はすぐさま世界へ広がった。
泣き出す者、怒り叫ぶ者、反応は様々であったが情報が精査されていくごとに反応は落ち着いていった。
「外れた? プラントは無傷?」
ミネルバで自分がジブリールを逃したからだと自責の念に駆られていたルナマリアが顔をあげる。
「あぁ、プラントのコロニーの傍を通り過ぎたらしい。警備隊の活躍で射線がズレたそうだ」
送られてきた情報を的確にまとめて口にするレイ、ルナマリアだけでなく同じ部屋にいたミネルバのクルーたちも安堵の息を漏らしていた。
「良かった…………あ、シン。マユちゃんは? いちおう確認をしといた方がいいんじゃない?」
「え、あ、あぁ」
情報の衝撃で立ちすくむことしかできなかったシンだが、声をかけられて漸く動き出した。端末の電源を入れて通話をかけるが、
『はい、マユでーす!でもごめんなさい、いまマユはお話できません。あとで連絡しますので、お名前を発信音の後に…』
「あれ? 繋がらないな…………」
「そうなの? また後でかけなさいよ」
「うん…………そうする」
オーブ戦以降、メイリンを失ったルナマリア以上に焦燥していたシン。2人目のラクスにもそれほど反応はなく、レイの「お前は偽物か本物か、どちらが大切だと思う」という質問にも生返事しか返せなかった。
被害こそなかったが、次も無事だという保証はなく、ミネルバは宇宙へと旅立つ。
プラントでは、レクイエムの衝撃に固まる兵士たちをデュランダルが一括し、破壊しようと動き出していた。
「キミにも頼んでいいのかな?」
「いいぜ、前にも言ったがあの雇い主にはそこまで思い入れもないしな」
「ふふ、では頼む」
まさか外すとは思わなかったが、それでもこちらには攻めるだけの理由ができた。オーブにラクス、と不利な要因はあるがこのままいけば計画の実行も遠くない。そう確信したデュランダルは怒りの形相から少しだけ口元を緩め、また引き締めた。
「ザフトの諸君! プラントを狙う、あの忌まわしき大量殺戮兵器を止めるため、どうか私に力を貸してくれたまえ‼」
プラントから、地球から、ザフト兵は聖なる剣のもとに集いゆく。
「プラントは無事、だったらしいね」
「それは良かったがイザークたちががんばった、という事か?」
自機の整備をしながら話し合うキラとアスラン。新しい機体の細かな調整をしながら話し合う話題はやはり、プラントとレクイエムについて。無事だったことは素直に喜ばしいが、あれほどの兵器を用意して失敗したのか、というとどうにも違和感がある。
オーブとしてもレクイエムを見逃す気はなく、出撃する用意をはじめているがザフトの到着よりは遅れるだろうとは全員が分かっている。
だからと言って向かわない理由もない。
「あ、あの向こうに集まって欲しいと言われてます!」
話し合う2人に割り込んだのは、オーブのツナギを着て髪を下ろしていたメイリン。少し前からいたのだが、キラのすばやいタイピングに目を奪われており、頼まれごとを思いだしてようやく声をかけた。
「そうか、ありがとうメイリン」
「すぐに向かうね」
「はい、あと…………ユウキさんも呼ばれてて」
何もおかしくない会話だったのだが、渋い顔をする2人。何かいけないことでも聞いたのだろうか、と首を傾げるが理由はすぐに分かった。
「ちょっとなんであんな調整するのよ!」
「必要だから仕方ねぇだろ」
「あのね! アレはアンタように調整してあるから、誰でも乗れるわけじゃないの!」
「知ってる。俺がいじらずそのまま出ても問題ないくらいだったしな」
「じゃあ!」
「悪いとは思ってる。だから貸しひとつで」
「うっ…………ってアンタどれだけ貸しがあると!」
向こうから聞こえてきた男女の叫び声。
周りにいる整備員たちは見向きもしないが、見覚えのある人影が金髪の少女と話し合…………怒鳴りあっていた。
「…………あーもう! これまでの分も合わせてちゃんと返しなさいよ!」
「かえすかえす、ちゃんとかえす。いつもありがとな」
「…………このバカっ‼」
「いだっ⁉」
バチーンと良い音がバカの背中から響いた。
あきらかに怒っているアサギが歩いていく後ろで、背中を抑えて蹲るユウキ。何しやがる! という声にも周りは振り向くことなく作業を進め、アサギも聞こえてないかのように歩いていく。
一見すれば怒って立ち去っているのだが、その実口元が少し緩んでいるのが背中越しのバカには見えない。もはや誰も反応しない程度によく見る光景なのだが、はじめて見た少女は戸惑うことしかできない。
「あ、あのアスランさん…………」
「……………………慣れてくれ」
こちらもまたミネルバでは見なかった、呆れたように笑うアスラン。謎の言い合いをしているキラとユウキは取っ組み合いを始めた。止めにいったアスランも交えて大乱闘になり、どこからか現れたフレイによって鎮静された。
宇宙では一触即発だというのにどこまでも変わらない彼らを見て、メイリンも自分では気が付かなかった強張っていた肩の力が緩やかに抜けていく。
少しづつ、彼らのように自由に生きようとそう思えるのであった。
メイリンの行く先は皆さんご存じの通りです、はい。キラとはプログラミング関係で仲良くなり、看護師でお世話になったフレイを紹介されてアークエンジェルメンバーとも仲良くなりました。
いつも感想や誤字報告、ここすき等ありがとうございます。励みになっています。
あー代表? レクイエムの妨害はできたので後は任せますネ。ボクはまたやる事があるのでドウゾ
────説明を今すぐではなく後で求められたことに成長を感じる盟主王