スーパーコーディネーターの悪友   作:アオノクロ

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 偶然見つけたんですが、ある艦長のアイドル衣装フィギュアが出るそうです。鷹プロデュース故に不可能も可能になったが故の立体化、買う人がいたら感想ください。

 祝! 100万UA突破! これで感想数とUAは前作ISを超えました。あとはお気に入り登録数と評価…………なんでそんな人気あるの?(ドン引き)


アイドルのラブソング

「…………どうしよう」

 

 限られた者にしか知ることのできない月に建築されたリゾートエリア。椅子に座り項垂れているミーアはずっと同じことを考えている。

 

「本物のラクス様だよね…………」

 

 いつも通り、議長から渡された台本を読み上げている最中に現れた人物。誰もが知る、自分の憧れの相手が自分の言葉を否定した。

 

 普段渡されている台本を暗記する時、内容はもちろん確認しているが政治に疎い自分では間違っている事を言ってはいない、くらいにしか分からない。

 

 だがきっと、ラクス様が否定したのなら、違うのかもしれない。そう思ってしまった。

 

 ならばラクス・クラインとしてこれまでに行ってきた放送は、

 

「ラクス様の言葉じゃなかった……………………」

 

 議長に選ばれ、ラクス・クラインとして、平和になるための手助けをしようとがんばってきた。自分にはアイドルとしての知識しかなく、手助けになればと誠意的に活動してきた。喜んでくれるファンが大勢で来た。豪華な部屋も、ハイブランドの衣服も、当然の報酬だと渡されてきた。

 

 自分へと向けられたものではないと分かっていても、ラクスとしてのガワがあったとしても、ひとの視線が怖くなった。

 

 覚悟を決めたはずなのに。

 

 民衆からの批判、腫物を扱うような周りの態度、議長からの恨みが込められた視線、そのどれよりも、

 

「わたしは、間違ってた……………ラクス様に違うって…………!」

 

 憧れと相反する道を歩んでしまっていた。尊敬している人に否定された。自分が信じていた道は間違っていた。

 

 時間と共に押し寄せてくる事実がミーアの心を苦しめる。

 

「ミーア? どこにっ! 大丈夫ですか⁉」

 

 部屋に入ってきたニコルが見つけたのは胸を押さえて蹲るミーア、慌てて近寄るも肩を震わせて泣いていることに気が付くとそっと背中を撫でた。

 

「ごめんね゛ニゴルッ! こんなニセモノのマネージャーなんでさせて‼」

 

 嗚咽とともに吐き出される心情、泣きはらすミーアが落ち着くまでの間ニコルはずっと微笑みながら傍にいて抱きしめていた。

 

 

 

 

「…………落ち着きました?」

「うん……………………」

 

 目元が赤くなるほどに吐き晴らしたミーアへハンカチを差し出すニコル。目元の涙を拭う間に、手際よく紅茶を淹れ始めた。

 

 湯気と共に沸き立つ香りを味わい、温かさをくちにする。喉を通りすぎて、胃にたどり着き、温まった身体はミーアの心にゆとりを与えた。

 

「…………ごめんね、取り乱しちゃって」

「構いませんよ。状況が状況ですし、仕方ありません。それにミーアを支えるのがボクの仕事ですから」

 

 さらりと言ってのけるニコルに思わず見とれてしまうミーア。首を傾げているニコルを見て、モテるんだろうなと確信した。

 

 だからこそ気になったのが、

 

「ねぇ…………ニコルは何でユウキが好きなの?」

「えっ」

 

 紅茶のおかわりを淹れようとしていたニコルが思わず固まる。これまでにも聞かれたことはあるが、状況からしててっきりラクスについて聞かれるか、これからについて話し合うと思っていた。のだが、思いがけない質問に滅多に見せない動揺が現れた。

 

「いやぁーえー…………そもそも言いましたっけ?」

「え、見てたら分かるでしょ」

 

 とは言うが実際に2人が揃っているところを見たのは地球での1回だけである。ニコルもそれほど表情に出してはいないし、バカに至っては言う事がない。

 

 そもそも、あの時は勝手に仲がいい男女として見られていただけだとニコルは思っていた。

 

「? 表情が女の子だったわよ?」

 

 普通に見抜かれていた。

 

 元クルーゼ隊は2人が出会うところをたまに見ており、もしかしてから気が付いたのだが、流石というべきか年頃の恋愛脳を持つミーアは初見で気が付いてしまった。

 

「なんでまた急に…………」

「ニコルってさ、モテるでしょ? だから気になって」

「えぇ……きっかけも曖昧過ぎる…………」

 

 話題を誤魔化せないか、と考えるもすごく真っすぐに見つめられ諦めのため息をつく。

 

「…………秘密ですよ?」

 

 その言葉を皮切りに語られるのはヤキン・ドゥーエに至るまでの話。

 

 ヘリオポリスへの侵入から始まった、ホワイトとストライクとの度重なる戦闘。

 

 訓練を受けた軍人をあっけなく打ちのめすモビルスーツパイロット。

 

 自爆覚悟の攻撃も身を挺して防ぎ、捕虜という名の奴隷になりかけたところを救われ、コーディネイターたちでも上澄みの集団の中で中心となっていた勇気あるナチュラル。

 

 戦争の根幹である、ナチュラルもコーディネイターも関係なく、戦うための戦艦内でライブをしラクスに平和とは何かを考えるきっかけとなった少年。

 

 敵であるにも関わらず、助けられたというおとぎ話の様な事実は軍人として覚悟を決めていたニコルの心に響いた。

 

「我ながら乙女っぽいとは思いますけどね…………ひみつですよ? イザークたちにも言ってないんですから」

 

 そう頬を染めてはにかむニコル、流石に元同僚たちにも言うのは憚れ覚悟を決めた言葉で濁した。嘘ではないが、全てではない。乙女の秘密はそう簡単には明かせないのだ。

 

 そんな少女が語る、自分を殺しに来たはずの相手すらも助けようとした優しい少年の話は、ミーアの心に火を灯した。

 

「…………ねぇニコル」

「はい」

「まだ……………………わたしのマネージャー、してくれる?」

「もちろんです。正式な所属は別ですが、マネージャーをやめたわけではないですから」

 

 これもひみつです、と口に人差し指を当てて笑うニコル。うっすらと気づいていたがやっぱり、いやそんな事を考えることもない。

 

 ニコル・アマルフィはミーア・キャンベルのマネージャーであることに違いはないのだから。

 

 思い描くは教えてもらったラクス様たちのように、明るく楽しい歌に思いを乗せること。

 

 アイドルのように、誰かを笑顔にするためにミーア・キャンベルは立ち上がった。

 

「ニコル、撮影の準備を」

「かしこまりました」

 

 恭しく頭を下げるニコルへ堂々と指示を出す姿は、かの歌姫と瓜二つであった。

 

 

 

 

 

 

 

「おい! ラクス様だぞ!」

「え、でも偽者なんでしょ?」

「なんでも影武者をしてたらしい」

「安全のため? なら仕方ないの…………か?」

 

 突如SNSを通じて流れてきた動画、映っていたのは星形の髪飾りをつけたラクス・クライン。

 

『こんにちは、本日は皆様にお伝えしたいことがあります』

 

 各陣営と世界中が見守る中、下手なことを言わせないように動き出す陣営もいたが既に流れている動画を止めることはできない。

 

『私は、ラクス・クラインであり、ラクス・クラインではありません。皆さんに多大なご迷惑をおかけしたことを深く謝罪させていただきます』

 

 そう言って深く頭を下げるミーアを、アークエンジェルで作業してた手を止めてキラやアスランたちも静かに見守っている。

 

『安全のために身を隠されたラクス様のために、プラントの方を安心させるために、私は変わりとして舞台に立ちました』

 

 私室で動画を見ていたラクスの手が強く握られる。

 

『平和の為に、ラクス様のために、と思い活動して来ましたが、ラクス様自身が表に出てきてしまうという結果になってしまい、本当に申し訳ないと思っています』

 

 ミネルバのクルー、そしてイザークやハイネなどのザフトの兵士たちも困惑がありながらも静かに見守っている。

 

『あくまで勝手な代理人であり、これまでの放送はラクス様本人の言葉でない。ということだけわかっていただきたいです。勝手な事とは思いますが、どうかお願いします』

 

 再び頭を下げるミーア、ある研究者たちは配信の存在を知ることなく調整を進めていく。

 

『私自身は、ただのラクス様と声が似ているだけのファンでしかありません。なので、本物ではないのです』 

 

 誰かの変わりとして生まれた金髪を持つ者たちは、三者三葉に己と映し合わせて偽りの歌姫を眺めている。

 

『ですから、ここからはあたし個人の、ラクス様のいちファンとして、』

 

 前に添えられて重ねられていた両手を頭に添えると、

 

『ラクス様への応援をしたいと思います』

 

 ピンクの長い髪が落ち、ところどころに癖が残る黒い髪がなだれた。

 

 手に持っていたウィッグが手から落ち、衣装も見慣れた過激なものから地味目なシャツとズボンに変わり、音楽が流れた。

 

 ある機体のコクピットにいたミーアのファンは、楽しそうにライブを待ち望んでいる。

 

 

 

「ラクス様の印象ですか? 

「そうですね…………確かにとても魅力的でしたし、カリスマ? というものがありました。

「けど、話せば話すほどボク達と変わらない女の子でしたね。

「みんなと遊んでいる時はとても笑ってましたし、戦うと決めた時には手が震えて涙を堪えてました。

「怖かったんでしょうね、だって自分のひと言で戦争が終わったり始まったりするんですから。

「家の事情や知らぬ間に着させられていた権威なんて、自分で覚悟してても重いには変わりません。

「だから偶然出会ったとはいえ、支えてくれる友人がいたってのはとても勇気づけられたと思います。

「ミーアの思いも、必ず届きますよ」

 

 

 

 流れた曲は太陽を除く最も明るい恒星がタイトルの、あるアニメのOPに使われた曲。

 

 作られた未来からはみ出るほどに強い気持ちは、何よりも輝く星となる。そんな歌詞を自分と相手を重ねて歌われた、アイドル(偶像)からアイドル(憧れ)へのラブソング。

 

 ボロボロと涙が溢れた彼女の元へライブの感想を話しに来たバカ、サインを持っていることを自慢して羨ましいと涙を拭うことなく笑いながら怒られた。

 

 どっちが本物か、など配信を見終わった者たちには関係なく。口々に感想を言いあう世界で、苦い顔をしていた議長はある指示を出した。

 

 画面に浮かぶ汗を流しながらも笑顔で歌いきったアイドルを標的に、運命の計画は動き出す。




 運命で書きたかった話(n回目)ミーア編でした。

 タイトルも曲も友人伝手で知っていながら見ていなかった服がテーマのアニメ、見たらドはまりして種でもしてたように、作中でも関わらせたいなーって思ってました。

 歌詞がドンピシャすぎるし使わないとダメでしょ、という作者の欲望まみれの回でした。

 いつも感想や誤字報告、ここすき等ありがとうございます。励みになっています。


 応援してますラクス様!

 ────ミーア・キャンベル
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