皆さんも暑さと豪雨にお気をつけて
「作戦は良いですね? 勝敗を決めるのはスピードです」
エターナルと合流したアークエンジェルが向かうのはレクイエムの軌道を変更する最初の中継ステーション。アズラエルとオーブ艦隊は月面のレクイエム本体を狙いに行く。とはいえどちらも護衛は多く、特にレクイエム本体にはザフトの月軌道艦隊が待ち構えている。それ故に足の速いエターナルとアークエンジェルが第1中継ステーションの破壊へと向かっている。
機動力と火力が必要なこの作戦のメインとなるのはもちろん、
「進路クリア、発進どうぞ!」
「キラ・ヤマト、フリーダム行きます!」
「アスラン・ザラ、ジャスティス出る!」
「ミーティア、リフトオフ!」
ストライクフリーダムとインフィニットジャスティスがミーティアを装備し、宇宙を流れ星のように駆けていく。
「通信回線をわたくしに」
「はい!」
本来ならばこのような乱暴なこともしたくない、だがそれでも突き進むべきだと歌姫は仲間と共に進んでいく。
『こちらはエターナル、ラクス・クラインです』
「ラクス様!?」
「あれはエターナルとフリーダム、アークエンジェルとジャスティスまで!」
「だが、どっちの?」
流れてくる放送と向かってくるモビルスーツや艦を見て戸惑うザフトの兵士たち。偽物がいたことで動揺こそあったが、それでも本物だと言えてしまう光景に動くことはできない。
『わたくしたちはこれより、その無用な大量破壊兵器の排除を開始します。それは人が守らないといけないものでも、戦うために必要なものでもありません。平和の為に軍服を身に纏った思いがあるのなら、道を開けることを願います』
「ええい何をしているか! あれはロゴスの残党、議長の言葉を聞かず自分たちの利権のために世界を火の海にしようとする、奴らの残存兵力だぞ! 撃て、撃ち落とすんだ‼ これは命令だ!」
通り過ぎるフリーダムとジャスティスを見送る部下を叱責するザフトの艦長。その言葉に眉を顰めながらも、軍人として命令に従い攻撃を開始するステーションの防衛部隊。攻撃を確認し、反撃を始めるアークエンジェルとエターナル。
ミーティアという圧倒的な火力を前に撃破されて行くザクやグフ、戦場での決定的な差である数をも気にとめない自由と正義の機体が目標へと突き進んでいく。
「アークエンジェルが!?」
「アイツらぁ‼」
もちろんザフト側でも防衛のために集結の指示が出されている。議長によって呼び出されたシンとレイがいないミネルバ、防衛任務についていたイザークとディアッカ。彼らもまた戦場へと赴く。
今ここで、世界の天秤がどちらに傾くのか決定するための戦争が始まってしまった。
「やぁ、よく来たね2人とも…………ん? 元気がないようだが、大丈夫かね?」
そのころ、ある基地に呼ばれていたシンとレイの2人はデュランダルと会っていた。
「あ、いえ、大丈夫です」
「またいろいろあって戸惑ってしまったかな?」
顔色の悪いシンに気遣うよう柔和な笑みを向けるデュランダル。
確かにDPには驚いた、だが確かにこのおかげで世界が平和になるのならとは思っていたが、なんとも言葉にできない胸のつかえがあった。故に話をしようと親友であるレイの元に向かったが、
「俺は、クローンだ」
悩みが全て擦れて消えてしまうほどの事実がシンの頭を揺らした。
「寿命すらも自分のものにしようと驕った男がいてな、俺たちはその傲慢すぎる欲望から生まれてきた」
ある才能溢れた男は全てを手に入れ、残る最後に手を伸ばしたものは寿命であった。自分と遜色ない人間を生み出すことで、永遠の命を得ようとした欠片がレイだった。兄弟、と言えるような同じ境遇の相手に救われ、友人の元に預けられたレイは育ての親ともいえる相手に協力しようと奮闘してきた。
「…………さっきの、ドラマで死んでいくキャラのセリフみたいなのって」
「あぁ、クローンが故に寿命が短いんだ……………………だから」
議長の事は頼んだぞ。
心の底から信頼しているといわんばかりの言葉に、シンは何も言えなかった。
「エターナルとアークエンジェルがステーション・ワンを攻撃している」
「DPは実行されなければいけません」
「平和の為に、できる最善策だ」
「新たなロゴスを生まないためにも」
「シン」
「シン」
レイとデュランダルの言葉が頭の中でこだまする。
変わりゆく世界を支えるため、平和な世界にするため、友人との約束を守るため、デュランダルのため、
「おれたちのような子どもが、もう2度と生まれないためにも」
平和とは、何なのかシンにはまだ分からない。レイの言葉も、議長のDPもそのために必要なものだと分かっている。分かっているがそれがあっているのかが自分には判断がつかない。
「あ」
気が抜けたような言葉が口から出てきた。
渦のように言葉や記憶が混沌とした脳が出した記憶は、シンの首を縦に振らせた。
「俺も、レイと同じ気持ちです」
シンの言葉を聞いたデュランダルは、ホッと安心したかのようにほほ笑んだ。
「おそらく彼らは、ステーション・ワンを破壊した後こちらへ来るだろう」
シンと別れて2人で話すレイとデュランダル。トップとして、冷静に戦況を判断した結果だった。
例え数が少なかろうと、相手は先の大戦で生き残った腕の立つ者たち。防衛設備もろくにないただの中継ステーションを守ることはできないだろう。
だが、良いのだ。
欲しいものは時間、故に最初から捨て石として用意したステーション・ワンと本気で守ろうと見せるための防衛部隊だ。
相手の動きを予想すれば必ずと言っていいほど引っ掛かるだろうとデュランダルは読んでいた。
レクイエム本体にこそ防衛部隊を集め、さらにここの基地には本命のものがある。
議長自らが調べた遺伝子に刻み込まれた才能、発揮できればフリーダムだろうとスーパーコーディネイターであろうと敵ではない。
「おっと、ここにいたのか」
作戦が予定通りに進んでいることに緩んでいた口元を引き締めるデュランダル。振り返ればパイロットスーツのネオがいた。
「議長」
「あぁ、彼がそうだ」
「おっと、初めまして……ってのもちょっと不思議だな。ネオ・ロアノークだ」
「白い機体の…………レイ・ザ・バレルだ」
差し出された手を握った時、お互いを不思議な感覚がつないだ。まるで血が通った同じ人間のような、
「なるほど、キミが」
「そっちも………俺と同じ」
片隅程度にあったレイの警戒心が消えてなくなった。それどころか子どもの様な無邪気な笑顔を見せている。
「あー俺はちょっと違うけどな」
変わった態度を見て気まずそうに頭を掻くネオ。否定こそするが関係ないと言わんばかりにレイの笑顔は変わらず向けられていた。
「まぁいろいろあったけど、今は身内には変わらない。ここの防衛を任されてるんだろ? よろしくな」
「もちろんだ」
「あともうひとりいるって聞いたけど」
きょろきょろと見渡すも当の本人はここにはいない。レイがそう伝えると確認するようにデュランダルを見た。
「あぁ、今は休んでもらっているよ。何せ連戦につぐ連戦でつかれているだろうからね」
「そうかい。お嬢ちゃんも一緒にも顔合わせしておきたかったんだが、そうだレイには会わせておこうか?」
「いや、構わない。ギルから聞いている」
「そうか…………ってそういや、苗字が一緒じゃなかったか?」
記憶を掘り起こすネオだが、同じ防衛部隊として配属されたここにいない2人の名前が同じであることに気がついた。
「あぁ、そうだよ」
宙を浮かび思考に浸る兄、そしてモビルスーツのコクピットで静かに瞳を閉じる妹、彼らはお互いの事を知らない。
「デスティニーのパイロットであるシン・アスカ、そしてヘイムダルのパイロット、マユ・アスカは兄妹だ」
再会の時は近い。
議長のガバ再発、っていうかガバしかしてませんね。そして機体の名前だけ公開されました。性能についてはまた。
いつも感想や誤字報告、ここすき等ありがとうございます。励みになっています。
花を植えるだけじゃなく、花を守ることも考えたらいいんだよ。
────鉛のように重たい頭の中で、シン・アスカが決断した思い出の言葉