ただひとつ言わせていただきたいのです。
攻殻機動隊シリーズで見る暴走芸者の無表情で首を絞めたり怪物じみた動きや白い液体をまき散らすシーン、幼いころのアオノクロは普通にトラウマになりました。イノセンス最後の人形とバトーの戦いも怖かったです。
けどパプリカはなんか好きでした。違いは何でしょうね。ゴーストの有無でしょうかね。
「数が多すぎるぜこりゃ!」
アークエンジェルへ取りつこうとするザクの部隊を蹴散らしたムウが愚痴をこぼすが、現状では3機倒せば倍になって戻ってくるという終わりの見えない戦闘を継続している。
なにせザフト側はデュランダルによってDPを遂行するための必要な兵器と要塞を守るための防衛部隊が並んでおり、数の差は圧倒的である。
ラクスたちの目標はネオ・ジェネシス、そしてレクイエムの破壊。逆にザフト側は再び発射するまでの時間を稼ぐのが目標である。この勝負は圧倒的にザフトの有利で始まり、そして進んでいた。
まず元々フリーダムとジャスティスの運用艦として建造されたエターナルは機動力と設備が強みであり、艦としての戦力は通常より一歩劣る。この時点で数で劣るラクスたちの戦力は下がる。だがそんな弱みが見逃されるわけもなく、デュランダルもまたラクスを狙うために戦力を集中して向けられている。
アークエンジェルは護衛に回らざるを得ず、強襲機動特装艦としての強みを発揮できていない。そのうえで、狙ってくるミネルバを相手取らなければいけない。
数としても状況としても圧倒的に不利な中、ある世界ではキラの合図によって強引に突き進むことでなんとか目標を達成できた。
しかし、今この場にいるのは二隻だけではない。
「ゴッドフリート、撃てェー‼」
ナタルが艦長を務めるドミニオンはアークエンジェルと遜色ない性能を持ち、高度な連携も取れることができる。たった一隻、と思われるかもしれないが1と0の差は大きく、安定して距離を詰めていくことができている。
だが、
「このままだとジェネシスが…………!」
焦るマリュー。
ヤキンでの経験から、ジェネシスの恐ろしさは身に染みている。
メサイアに配置されたネオ・ジェネシスは以前のものよりも小型化されており、範囲も月面の表層を削る程度だが艦隊が纏まっていれば呆気なく全滅させられる威力を持っている。
半壊しているオーブ軍艦隊も未だ碌に動くことができていないように、1度撃たれるだけで戦況をひっくり返すことのできる兵器。充填のための時間がかかることすらも、逆に言えば時間さえあれば勝てると言っても過言ではない。
レクイエムもまた、新たに第一次中継コロニーを設置しようとしており、再び破壊しに行くには距離も空いたために現実的ではない。
開戦前にラクスが口にした時間との勝負は紛れもない事実であり、ラクス達の勝ち目はそこにしかない。
ならば動きやすいフリーダムとジャスティスはというと、
「ここで沈んでもらうぞフリーダム‼」
「オーブの時の…………!」
「…………っ!」
「そこをどけ、シン‼」
デュランダルが守護の剣として配置した2機に足止めを喰らっていた。イザークとディアッカもエターナルの護衛に回っており、手が足りない状況の中ドミニオンオペレーターが叫んだ。
「ザフト増援を確認!」
「なんだと!」
モニターに映し出されたのは間違いなくザフトの艦隊、とモビルスーツの部隊。
「チッ、ぞろぞろと増えやがってよ」
「はぁ? めんどくさ」
「邪魔すんじゃねぇよ!」
舌打ちをするオルガに、同じように確認したシャニとクロトもまた顔をしかめて向かっていった。
「おいおい、とんだパーティー会場だな。遅れた分張り切っていくぞお前等‼」
「「「了解!」」」
先頭にいたオレンジ色のデスティニー、ハイネは自分を慕うパーソナルカラーを機体の一部に入れた部下を率いて戦場へと乱入した。
特別不利というわけではない。
状況だけなら地球軍をも相手にしていたヤキンの時の方が辛かった。だが今回は制限時間付きの勝負である。
「「モビルスーツの発進準備を‼」」
戦況を見極めたマリューとラクスは同じタイミングで隠し札を切ることを決めた。
「まったく、人使いの荒い艦長だ。あれではムウも逆らえまい」
整備員が怒鳴りながら確認をしていく機体の中で呑気に首を振るクワトロ。
「とはいえ、ただのパイロットとしてのみというのはなかなかに新鮮だな」
かつては部下を率いる立場であった男は何のしがらみもなく、自分の気持ちだけをもってモビルスーツに乗り込んでいる。オペレーターの案内通りに機体を操作し、カタパルトが開いていく様子を静かに眺める。
「…………邪魔をする気はないが、約束があるのでね。全力で行かせてもらうぞギル」
『進路クリア、発進どうぞ!』
「クワトロ・バジーナ、バエル・ゼブブ出る!」
かつてザフトの白服を着ていた男が、姿を見せるだけでザフトを震え上がらせた機体に乗り戦場に現れた。久しぶりの宇宙空間での操縦だが、ブランクを一切感じさせないほどのスムーズな操縦で戦場へ向かっていく。
『状況は以上になります。大丈夫ですか?』
「問題ない、むしろこいつが活躍するのに向いている」
『了解しました。発進シークエンスに移ります』
エターナルの内部で動くのは、戦争を止める切っ掛けとなった機体。しかし活躍に反して名前どころか存在を知る者は少ない。機体特性であったりより目立つフリーダムがいたりと理由は様々だが、それが機体のあるべき姿ともいえる。
『進路クリア、発進どうぞ!』
「ユウキ・イチノセ、サイレス・セレニティ出撃する‼」
身の丈以上のライフルを右肩に、半身を隠すように纏う割れ目のあるシールドを左肩に備え付けた漆黒の機体がエターナルから現れると、即座に宙へと消えた。
「アークエンジェルから白い悪魔を確認!」
「エターナルからも! …………消えた? すみません見間違いだったかもしれないです」
報告を聞いてデュランダルは顎に手を当てた。
オーブでの状況から白い悪魔がいるのは明白、その備えはとうにしてある。だがエターナルから出たという機体は自身の頭には存在しない。密かに作っていたというのは特別おかしくはないが、今の今まで出なかったというのはそれなりの隠し玉だろう。
だがデュランダルが1番気になっているのは、
「パイロットは誰だ…………?」
白い悪魔にはユウキ・イチノセだろう、しかしエターナルの黒い機体、仮にアンノウンとして操縦できるパイロットに心当たりがない。
キラ・ヤマトはフリーダム、アスラン・ザラはジャスティス。同程度の性能を持つと仮定しておいても、彼らに並ぶパイロットでなければ釣り合わないだろう。
もちろん自分が把握していないパイロットもいるだろうが、アークエンジェルならともかくエターナルからというのがデュランダルの頭に引っかかっていた。
「…………時間の無駄だな、通信を繋いでくれ」
「はっ!」
手元にある情報では答えを見つけられず、また時間を割く意味もない。だが見逃すには引っかかりが大きすぎる情報を、デュランダルは同じく隠し札を持って対処することに決めた。
『はいよ、どうかしたよ?』
「すまないが君の力を借りたい。あと彼女にもだ」
『それだけの相手がいるってことかい?』
「おそらくは」
『ま、仕方ねぇな。そういう約束だ』
「ありがとう、助かるよ」
『じゃ、またな』
軽く笑って通信を切られたとき、張りつめていた肩の力が少しだけ抜けていたことにデュランダルは気づいた。
地球軍からの裏切り、にしては信頼し過ぎている。とは自覚している。だが相手の境遇が、佇まいが、どうしても友人と似ている。理由は分かってはいるというのに、それでも心の片隅に安心を覚えている自分をデュランダルは内心で笑った。
「ラーフの出撃用意、それとヘイムダルの準備をしておけ」
メサイアのモビルスーツ格納庫で無重力を飛び交う整備員たちは議長の命令の元、ある機体の出撃用意をしていた。
「まったく、こんな事になるなんて誰が思ってただろうね」
黒い翼を持つ機体に乗り込み、出撃の準備を進めるネオ。地球軍から所属を移した先がザフトとは、元上司や自分を作った研究者も思わないだろう。
若すぎる部下を死なせて形式とばかりに復讐も済ませて何もなくなったはずの自分が、まさか投降した先で友人や兄弟ができるとは不思議な人生だ。地獄にはいくだろうが、その前のつかの間の幸せなのかもしれない。
「…………そういえばお前とは長い付き合いだな」
投降時に解体されるかと思いきや、何故か改造された返ってきたウィンダムW。名前を付けた時には何とも言えない顔をされたが、自分には丁度いいと気に入っている。
感傷に浸っていると出撃可能な通信が届き、フットペダルを踏み込んだ。
「ネオ・ロアノーク、ラーフ出るぞ‼」
黒い翼を広げた一つ目の機体がメサイアを覆う陽電子リフレクターの間から飛び出し、暗い宇宙に溶けて消えた。
ようやく主人公の登場! 出てない期間が長すぎるぞ! あ、機体名ですが1文字抜けてるのは誤字じゃないです。オリジナル機体を考えるにあたり神話とか調べなおすの楽しいですね。ネオの方もそういや名前つけてないやって調べてきました。
いつも感想や誤字報告、ここすき等ありがとうございます。励みになっています。
……………頼みます。
────セレニティの背中を見守る歌姫