いややっぱ普通に辛いです。議長、無敵のDPでどうにかしてください
通らない攻撃、1度でも掠れば終わりの攻撃、迫りくる時間。
ビフレストとの幾度かのやり取りを得て、ユウキはこのままでは勝てないと判断した。
シン・アスカは本来戦いとは無縁な少年だ。
静かに本を読み、乱暴なことは精々生意気な妹とケンカをするくらいのもの。
コーディネイターとはいえ調整された遺伝子は病気への免疫程度であり、身体能力は他のコーディネイターに比べても劣る。
事実、ザフトに入隊した時は実技でも座学でも落第生と言える成績のため、教官や戦闘用の調整を受けている周りにも下に見られていた。
そんな環境でもシンが逃げ出さなかったのは、年相応の意地と負けず嫌いという感情が大きかったからだ。
知り合えたレイの協力の元、メキメキと実力を伸ばしていき最終的にはエースの証である赤服を着ることができた。
両親は複雑な思いながらもシンを褒め、妹の生意気な誉め言葉に怒り、憧れであった白い機体のパイロットのように誰かを守りたいと願いインパルスのパイロットとなった。
現実は非情であった。
プラントでのモビルスーツ強奪事件に始まり、ブレイク・ザ・ワールド。地球へ降りてからの紛争地帯への介入にオーブとの戦争。非人道的な実験施設に、その被害者である少女との命の奪い合い。
戦いを終わらせるには戦うだけではダメだと知らされ、場合によっては故郷とも、顔見知りとも戦わなければいけない。
楽観的に考えていたわけではない。戦うにはシンには優しすぎて幼すぎただけであり、戦えるだけの素質と積み重ねがあった。
それが幸運だと気が付けなかっただけで。
宙に漂うデスティニーの中で、光が飛び交い花火となる光景を静かに眺めていた。
操縦桿に手が添えてあるが動くことはなく、鉛のように重たい頭が遠く宇宙の彼方へと飛び出していく感覚に身をゆだねるしかシンにできる事はなかった。
マユの言葉に気が動転して我武者羅に動かそうとしたが、身体は無意識に意味のない行動しかとれず、機体もまた正しい操縦でなければ動くことはない。
フリーダムとレジェンドが、ジャスティスとオレンジのデスティニーが、アカツキとバエルにラーフが、ミネルバとアークエンジェルが、お互いの信念を持って戦っている。
それぞれの意思の強さを感じるたびに、自分の誰かを守りたいという思いの小ささが際立ち、シン・アスカという存在が薄くなっていくのを感じる。
「……………………結局俺には何もできない」
新型の機体はデュランダルが素質を見定めただけだった。
「俺には何も守れない……………………」
守りたいと思っていた妹は恩人と戦っている。
「誰かを助けることもできない……………………」
DPが間違っているのかは分からない。ただ、お世話になった議長や大事な友人の夢を手伝いたいとは思っていた。
だがこうして何もできずにいる。
真っ暗な中を裸で漂うシン。
眩しい光がどんどん遠ざかり、流されていくが眼を開けることも指先を動かすことすらもできない。
これがきっと、できもしない事をしようとうぬぼれた罰なのだと意識を閉じた。
「シン」
閉じたはずだった。
「シン」
「…………誰だよ」
まどろみの中、自分を呼ぶ声が聞こえる。
だけど今さら何の用だというのだ。自分のような何もできない奴に用なんてないだろう。
「シン」
「もう放っておいてくれよ……………………無理なんだよ、俺には……………………僕ができることなんて」
「シン」
「誰なんだ!」
思わず拳を握り眼を開く。
「シン」
「誰だ! 俺はもう戦えない! 何だっていうだよ‼」
「シン」
「うるさい! 呼ばないでくれ‼」
子どものように泣き叫び、幾度もなく自分を呼ぶ女性の声を塞ぐように、耳を塞ぎ目を瞑り身体を丸める。
「シン」
「……………………なんだよ」
顔色も悪くやつれた顔を弱弱しく上げた先には、
「わたしはね、シンに助けられたんだよ。だから今度は、わたしがシンを助けるね」
見覚えのある少女がそっと、シンに手を伸ばして身体を包み込んだ。
『シン! 起きなさいって! 生きてるんでしょ‼』
ふと眼を開けば何も変わらない戦場。モニターを確認しても時間は1分も経っていない。
『シン! 返事しなさいって‼』
「……………………ルナ?」
目の前にはデスティニーを抱きしめるインパルスの姿。接触回線で自分を呼び駆けるルナマリアがデスティニーのコクピットを叩いていた。
「…………ルナ、なん「シン!」うわっ」
デスティニーのコクピットを開くと飛び込んできたルナマリアがシンを抱きしめた。ヘルメットの仲を水が漂い、怪我がない事を必死に確かめるように確認するルナマリア。
「バカっ! なんで返事しないのよ!」
「いや、そのっ気が付かなくて…………というか、なんで」
辛うじて泣き止んでいたルナマリアだが、シンの言葉にまた潤ませた眼で真っすぐにシンの光のない眼と見つめ合った。
「言ったじゃない! シンが私を守ってくれるから、シンは私が守るって‼」
再び抱きしめるルナに呆然としてミネルバでの記憶がよみがえる。
楽しかった。
辛かった。
そんな日々を守りたいと、思っていた。
思っているだけでできないと、勝手に思い込んでいた。
「…………ありがとうルナ」
「分かったなら早く返事しなさいよ、もうっ‼」
パイロットスーツ越しだというのに伝わる温もりを静かに、そっと、自分に残っていた大事なものを抱きしめて噛みしめる。
「守ってくれて、守らせてくれてありがとう」
お礼と、放したくないという気持ちが抱きしめる力を強くする。操縦桿を握る握力も消えていたシンの身体に力がみなぎる。
静かに見上げた宇宙、未だ戦闘が終わらない中で接近してくる機体をシンは見抜いていた。
黒く、身体の丈以上のライフルと独特なシールドを持つ黒い機体が姿を現した。
「シン!?」
「大丈夫だよ」
知らないはずの機体だが、シンは誰が乗っているのか不思議と分かっている。安心させるように身体をこわばらせたルナをそっと抱きしめた。
『…………何してんの?』
「ユウキさん!?」
流れてきた聞き覚えのあるあきれた声に驚くルナ。
「すいません、俺が元気がなくて…………」
『そうか、とはならねぇけど、まぁいいや』
未だに銃弾が飛び交う戦場で、再会した2人は変わることなく会話を続ける。
『あれ止めるから手伝え、シン』
器用に指を差すのはメサイアの前で立ちふさがるビフレスト。何を勝手なことをとルナマリアが叫ぶよりも早く、
「分かりました」
「シン!」
「もう大丈夫、ルナのおかげだよ」
心配してくれるルナへ微笑み、力強くセレニティを見上げる。
『…………おし、行けそうだな』
「はい、先に行っていてください。すぐに追いつきます」
『あまり遅いとひとりでやっちまうぞ』
そう言って消えていくセレニティ。
未だに不安そうにルナマリアを見てシンは自ら抱き寄せた。
「おれ、ようやく分かったんだ。守りたいって言いながら何を守りたいのか分かってなかった」
「シン…………」
「ルナも、マユもレイも、ユウキさんも…………みんながいてくれるこの世界を守りたい。だから行ってくる!」
決意した顔を見て何も言えなくなったルナマリアは、呆れたように笑った。
離れていくインパルスを見送り、機体の状態を確認する。力のない空回りの操縦ではなく、的確にデスティニーのパイロットとして戦うために。
「機体チェック完了…………待っててくれマユ、すぐに行くから…………頼むぞデスティニー」
瞳に光が宿ったパイロットに呼応するように、デスティニーのカメラアイにも光が戻る。
「シン・アスカ、デスティニー行きます!」
光輝く翼をはためかせ、軌道上に残像を残しながら運命の機体が戦場へ舞い戻る。
自らの手で運命をつかみ取るために。
ここまで長かった(ため息) この展開を考えていたが故の曇らせでした。皆さんも自由での活躍を見たとは思いますが、こうも思いませんでしたか? 運命で活躍するデスティニーを見たいと
ここではちゃんと活躍しますよ! サイリウム振って応援してください
……………………いややっぱ新機体抑えて売り切れ続出の活躍には負けるかも。というかなんで種の映画でズゴックの売り上げ伸びるんだよ。今考えてもおかしいだろ。いやおかしくないけどおかしいだろ。
いつも感想や誤字報告、ここすき等ありがとうございます。励みになっています。
艦長あの少女が出撃したいと! 目を覚ましたばかりですが、かなり強引だとかで…………え、はぁ。了解しました。 ウィンダムカラミティ、聞こえるか! これより1機出撃する!
────ドミニオンのオペレーター