本当の意味で最後までお付き合いいただけるとうれしいです。
世界平和監視機構コンパス
いつ、どの時代においても世界は不平等で、不公平である。
人生の大半は生まれで決まり、運勝負の土台にすら上がれないことが多く、何かしらに縛られて生きている。それは人という種族が原因であったり、運命という名のものであったり、唯一全てに公平にある死すらも理不尽に訪れる。
そんな世界でも自由と言えるものは────────
『コンディションレッド発令、パイロットは搭乗機へ────────』
地球を見守るように宇宙空間を進むスーパーミネルバ級惑星強襲揚陸艦、ミレニアム内に警報と副長アーサーの伝令が響き渡る。
事が起きたのは数分前、地球上にあるプラント経済特区であるアフリカのオルドリン自治区にブルーコスモスの残党が侵攻し始めた。
ウィンダムやダガーには守備隊であるジンやザウートでは太刀打ちできず、町中に火が回っている。
「ほらほら残りは帰ってからだ! さっさと準備しな‼」
急かすように手を叩き、直前まで暴れていた部下たちをモビルスーツへと呼び込むのはオレンジのパイロットスーツを着て、同じく専用カラーの機体に乗り込むハイネ。
オペレーターの指示を聞きながら機体を起動していくと、続々と乗り込んでいく部下たちがモニターに映っていく。
『敵部隊は中隊規模、まぁ現地からの報告ですから多めに見積もっておいていいでしょうな』
「了解、聞いたなお前等‼」
艦長であるアレクセイ・コノエからの報告に、威勢よく返事を返すハイネ。
「キラとユウキで前線の奴らを食い止めて来い! シンは政府施設の防衛、残りは守備隊の援護と市民の避難誘導だ。ハーケン隊は留守番を頼んだぜ」
『え、俺だってヤマト隊ですよ! 一緒に行かせて下さい‼』
『シン! わがまま言わないの!』
『ハイネ隊長、わたしも戦えます。是非とも前線へ』
コンパスのモビルスーツ部隊を率いるハイネの言葉だが、軍隊とは思えないほどに遠慮なく意見が飛び交う。唯一素直に了承したのは居残りを任されたヒルダだけである。
本来、というかキチンとした軍隊であるなら叱られても文句は言えないのだが、ハイネは気にすることなく笑いながら言い返す。
「元気があって何よりだな、けどダメだ。下手に戦場広げるより、少数で鼻っ面を叩いた方がいい。というか返事しろ2人とも」
『あーなに? いちごジャムがいいよな』
『違うって、ふりかけなら卵の方がいいよね』
「お前等後で正座な」
小分けされたモニターから不満の声が上がっているが無視して出撃前の準備をこなしていくハイネ。出撃前だというのに緩すぎる会話が止まらないが、360°見渡せる全天周囲モニターでは作業員が着々と準備を進めていく様子が映っている。
『カタパルト接続、全システムオンライン。アッシマー、発進どうぞ』
アビーのオペレートと主に展開されていくミレニアムのカタパルトに色鮮やかなオレンジ色の機体が現れる。。
「ハイネ・ヴェスティンフルス、アッシマー出るぞ‼」
『続いてゲルググ、ギャン、発進どうぞ』
「ルナマリア・ホーク、ゲルググ行くわよ」
「アグネス・ギーベンラート、ギャン出ます」
ハイネの乗るアッシマー、その後ろを赤色と白基調に薄い青紫色の機体がミレニアムから飛び立っていく。
「シン・アスカ、ジャスティス行きます!」
続いて現れた灰色から深紅に色づいた機体もまた、翼を広げて飛び立っていく。
最後に現れたのは黒い翼を持つ青い機体と、全身が真っ白に染まった機体。
「あーあ、怒られんのお前のせいだぞ」
「いや間違いなくユウキのせいだね。ハイネさんは絶対ご飯派だよ」
「外したら?」
「来週の清掃当番肩代わり」
「乗った」
通信先から聞こえる呆れるほどにいつも通りな会話に内心でため息をつくも、アビーは規定通りに許可を出す。
『続いてフリーダム、バアル、発信どうぞ』
「キラ・ヤマト、フリーダム行きます!」
「ユウキ・イチノセ、バアル出撃する」
全員が揃ったことにより、編隊を組んで地球へと降下していく6機。
ゲルググメナースとギャンシュトロームは脚部に装着した大気圏突入用のバリュートを展開し、他の4機は鳥とも戦闘機とも見えるMA形態へと変形して摩擦熱で赤く照らされていく。
オルドリン自治区ではブルーコスモスと名乗るテロ集団が逃げ惑う市民を追い回し、本来ならモビルスーツへ使用するはずの過剰すぎる兵器を向けていた。
守備隊も侵攻を食い止めようとするが、配置されている機体はジンやザウート。いかにコーディネイターといえど、機体スペックの差を覆すことは難しく、町の内部へと入り込まれていく。
破壊の名を持つ巨体と共に町を炎に包みこんで侵攻してくるモビルスーツ部隊、町を焼き払っていく相手を恐怖と怒りのこもった眼で見る市民のすぐ近くに倒れ伏したジン。
炎をバックに暗い影の中で光るカメラが恐怖に歪む市民の顔を捉えた時、空からの光によって貫かれた。
驚きと同時に出処を探そうと上空を見上げる市民たちの眼が、青く輝く光の粒を捉えた。
徐々に大きくなり、モビルスーツ形態へと変形したアッシマーからハイネの声が戦場へと響き渡る。
「こちら世界平和監視機構コンパス! 攻撃部隊はただちに戦闘を中止せよ」
どよめきや安堵の息が吐かれた戦場に繰り返されるハイネの言葉は、変形したデストロイの砲撃によって遮られた。
「ちっ、そりゃそうくるよな。全員散開!」
舌打ちするハイネの合図で分かれていくコンパスのメンバー。
自身へと向かってくる白と青の2機を撃退しようと、デストロイは全身の砲門を瞬かせる。
並のモビルスーツなら過剰すぎる攻撃を軽やかに躱し、お返しとばかりにライジングフリーダムはフルバーストを放つ。
家ごと包み込めそうなサイズの陽電子リフレクターで攻撃を防ぎ、さらなる反撃をしようと構えた瞬間目前が揺らぎ、2刀を構えたモビルスーツが現れた。
迎撃行動をとるよりも早く、バアル・ゼブルの振りかぶった剣はデストロイの胸部に切り傷をつけて腕を切り落とした。
「ハイネ隊長! 援護願います!」
「よっし任せろ!」
市民を守るように盾を投げ捨てていたイモータル・ジャスティスは、空いていた左手でビームブーメランを投げ、距離を詰めるウィンダムの頭や武器を構えた腕を切り落とした。
戦場を監視するように見ていたアッシマーはMA形態となり、シンの周囲を囲むモビルスーツを両脇に備えられている銃口から撃ちぬき、MS形態で着地すると勢いをそのままに両手に持ったビームサーベルでウィンダムを切り裂いた。
「このぉっ!」
ゲルググのシールドを展開し背後にいる市民への攻撃を防ぎ、反撃するルナマリア。
「ふん、こっちは近接特化の機体なのよ」
上空を飛び回るバアルを睨みつけながらも、ビームサーベルを起動した盾を回転させてダガーをシールドの上から切り裂き、バランスを崩したところをビームアックスを振り下ろすギャン。
距離をとろうとした相手には胸部ハッチから展開したビーム機銃で撃ちぬき、倒れ伏せた相手を見下ろしすぐさま次の獲物に目を向ける。
射出されたデストロイの腕をバアルが切り落とし、フリーダムのフルバーストがデストロイとともに周囲にいたモビルスーツを撃ちぬいた。
爆発の勢いで後ろに倒れ沈黙するデストロイ。下がっていた市民や、片腕をなくしたジンから歓声が上がる中、シンは静かに呟いた。
「…………やっぱすごいな、あの2人は」
オルドリン自治区内にいたブルーコスモスのモビルスーツ部隊もほぼ壊滅し、カナジ市街へと撤退していく様子を確認したハイネは小さく息を吐いた。
火の手の勢いは衰えることはないが、戦闘は終わった。
かのように見えた。
『オルドリン守備隊へ、この戦闘の裏にはミケールがいる!』
見返すと最初から最後まで勢いづくしのフリーダムな作品だと思いました。なんかもう、最後だしはっちゃけていいよねって意思が伝わる。なので自分も見習おうと思います。
いつも感想や誤字報告、ここすき等ありがとうございます。最後の燃料となってます。
ひと口メモ
・アッシマーと言ってますが、顔以外はオレンジのアンクシャです。