アグネスは……まぁお察しの通りです
そして落ち着いて聞いてください、ラクスとユウキは別に付き合ってないし友達以上の関係でもありません(自由開始時点)
もちろん彼女できたとかも無いです。
コロニーの気象は全て人の手によって管理されていおり、全て予定通りになる。本日の天気予定は快晴、出かけるにはぴったりの日だ。おだやかな日差しを受けながら綺麗な花を咲かせている桜の木の下で、彼らはシートを広げていた。
「ファウンデーション? というと、あの時のですか?」
「そうですわ」
シートの上に重箱を広げながら話し合うコンパスの真面目なメンバー。主にラクスとルナマリアのみだが。
過ごしやすい気候とほどほどの広さに浮かれた男連中は、無駄に鍛えられた身体能力を駆使して鬼ごっこをしている。
子どもっぽいと言っていたマユも、気が付けばほどほどに手加減してくれているパイロットたちを相手に走り回っていた。何故か両腕を抱えて捕まったシンは、大きな音を鳴らすほどに強く背中を叩かれて鬼が交代した。
キラとユウキが向かい合えば、お互いに向かい合い伸ばされた手を躱したり叩き落としたりと、無駄に高度な技術を披露している。
「フゥー…………政治的にもめんどくさい相手ですね」
軽く汗をかきながら戻ってきたハイネは水筒に手を伸ばし、一気に煽ると喉を潤した。
「了承すればユーラシアとの関係は悪化する可能性、しかし断るには見逃せない情報を持っている」
ハイネの言葉に静かに頷くラクス。
現在の戦争の火種を捕えることができるかもしれない、しかしその結果新たな火種が生まれるかもしれない。自分の判断で世界を、大切な人たちを巻き込むかもしれない。
たったひとりが背負うには重すぎる重圧が、ラクスの肩には乗せられている。
ふと遠くではしゃいでいるひとりと目が合った、瞬間に逸らされた。
コンパスの総裁を引き受けたあの日以降、ラクスとユウキはあまり話せていない。
皆無、というほどではないが、どうにも微妙な距離が開いている。
2人きりなることはほぼなく、食事を差し出せば食べはするものの顔を背けるようになった。
という割には遠く離れることもせずコンパスにも参加し、時間が合えばこうして誰かと一緒に家に来る。知り合いに相談すれば「バカなだけよ」といういつもの言葉を貰った。つまりいつも通りというわけで、何か変えてみようにも料理のレパートリーを増やしてみるしかラクスは思いつかなかった。
基本的に嫌いなものは少なく、大抵のものを美味しいと食べているがやはり好みはあるのか、メニューによって表情に差がある。というのを横から眺めていて気が付くようになった。
お腹が空いたのかそれほど熱くないというのに汗をかき、何故か服のところどころが土に汚れて戻ってくるユウキたち。真っ先に戻ってきた人物が、最初に飛びつく料理もちゃんと計算通りである。
こっそりと拳を握るところを見たルナマリアは何も言わず、彼氏にタオルを渡した。
夕焼けに照らされながら走る車内の後部座席では、スヤスヤと寝息が聞こえている。
「で?」
窓の淵に軽く手を乗せて運転しているハイネが、前を向いたまま声をかける。
助手席では窓の外へ顔を向けたまま動かないユウキ。頬杖をついたまま身じろぎひとつなく、寝ているようにしか見えない。
「お前の意見も聞かせろよ」
にもかかわらず返事が返ってくると確信しているかのように声をかけるハイネ。しばらくの間車のエンジン音と、後部座席からの寝息だけが夕暮れに響く。
「…………部下は上司の言う事を聞くだけだろ」
「はっ、言わなきゃ分かんねぇほどバカじゃねぇだろ」
ポツリと呟かれた投げやりな言葉をハイネは鼻で笑った。
「お前の言葉だけで全てが決まるわけじゃない。背中の後押しをするかも、なんて考えは野暮だぜ?」
薄暗く、桃色と紫の霧に覆われた中を歩いていくラクス。
ひとりきりで、誰かを探している事だけを自覚し足を進める。
進んだ先に見えたのは見覚えのある人影、大切な友人でありまた親友の恋人でもある相手。声をかけようとするも消えてしまい、フレイに後で言いつけておこうと記憶する。
また再び歩き続けた先にいたのは金髪の柔和な笑みを浮かべる青年。
直感的に探していた人物だと自覚するも、身体の何かが違うという。振り返りろうとするが、視線は動かせず身体もまた静かに硬直している。
記憶を探ろうにも思い当たることはなく、誰なのかと気になりだした時、白い光で世界が覆われた。
夕焼けの明かりが眩しく、薄目で隣を見ればマユがルナマリアに持たれて一緒に寝息を立てている。
ひとつ前の席では同じように寝ているキラとシン、ハイネのハンドルを握る手だけが動いているのが見えた。
その隣にいる人物もきっと寝ているのだろう。運転をしてくれているハイネだけにするのも忍びないと、起き上がろうとした時、
「ラクスが決めたなら反対する理由はねぇよ。誰だって終わって欲しいんだ。そのために俺たちがいる」
そうだろ? と目線をやればその通りだな、と笑うハイネ。
バックミラーへちらりと目線をやれば、先ほどと同じように寝息を立てているラクス。
クライン亭にたどり着くまでの間、誰ひとり口を開くことはなかった。
後日、コンパスとファウンデーション王国の共同戦線が世界へ発表された。
「いよいよか」
「えぇ」
ファウンデーション王国はその名の通り王政であり、治めるのは女王アウラ・マハ・ハイバル。
二桁に届くかという見た目の少女だが、年に見合わぬ化粧を施している。オリエント風のデザインを施されながらも近未来のようなモニター機器を前にして、隣に佇むは宰相オルフェ・タム・ラオ。
全体的に柔和な雰囲気を持つ童話に出てくる王子のような見た目にして、弱小国であったファウンデーションがユーラシア軍を返り討ちにし、目まぐるしい発展を遂げた腕を持つ。
幼いながらも国のトップに立つ少女とそれを支える宰相という、そのまま絵画にしてもいいほど見栄えのいい組み合わせ。
そんな2人の視線の先にあるのは現在国際指名手配されいるミケール大佐を捕縛しようと、共同戦線を持ちかけたコンパスの船。モニターに映るファウンデーション王国の上空を飛ぶ、今なお名を轟かす歴戦の戦艦アークエンジェルと、ザフト、オーブ、ブルーピリオドの技術が詰め込まれた最新鋭の戦艦ミレニアム。
たった2隻、というには過剰すぎる戦力である。
明日以降、共に戦う相手を見定めているわけではない。
「待ちかねたぞ。わらわのための最後のピース」
モニターに片隅に映っているのはコンパスの総裁にしてプラントのみならず、世界へと名が知れ渡っている平和の歌姫ラクス・クライン。
「…………貴様の居場所はそこではないぞキラ・ヤマト」
そしてかの有名なモビルスーツ、フリーダムのパイロットにしてラクスとの婚約者と言われているキラ・ヤマト。
方や待ち望んだプレゼントが届いた子どものように、片や不快な羽虫を見下すかのような視線で来客を待ち望む。
「お前たちも、自らの役割を全うするのじゃぞ」
アウラが目を向けた先にはオルフェと同じ黒い服を着た同年代の男女。待ちかねた、というような笑みを浮かべる中、青色の長髪の女性だけが悲痛な眼をしていたが誰にも気づかれなかった。
そして待ち望んでいるのは彼らだけではない。
「もうすぐだ、もうすぐ私の研究の成果を見せつける時がァ‼」
薄暗い研究室でミレニアムを血走った眼で睨みつける、やせた白衣の男。興奮しているのか息が荒く、過剰なほどの動きで両手を掲げ、唾をまき散らしながら大声でしゃべりだす。
「見せつけてやるぞムルタ・アズラエル‼ ユウキ・イチノセェ‼」
男の後ろにはまったく同じ顔の青年が、光のない瞳で宙を見ながら立ち並んでいた。
ぽっと出予定だった科学者がここまで来るとは思ってませんでした作者です。でも敵陣営の補強に便利すぎて……
いつも感想や誤字報告、ここすき等ありがとうございます。最後の燃料となってます。
ひと口メモ
・世間的にはキラがラクスの恋仲と噂されています。周りも言いたいことはありますが、ラクスが変な相手に付き纏われたりも良くないので仕方ないと思ってます。
・ある日フレイに「いる?」と聞かれたラクスは真顔で「いりません」と返しました。