皆さん宰相のことばかりですが、貧乏くじを引いたキラもいたわってあげてください。フレイに慰められてるのでやっぱいいです。
「おい…………何をしている」
地球軍の基地のひとつに停滞しているドミニオン、艦長であるナタルが歩いていると何やら騒いでいる声が聞こえた。
「やだー! ステラもシンに会いたい‼」
声の聞こえた休憩室を覗けば床に寝転んでジタバタと暴れているステラに、元ブーステッドマンの3人が呆れたように見下ろしている。
「あ、艦長」
「艦長からも言ってくれよ」
疲れた様子のクロトにオルガがめんどくさそうにナタルへ振り返った。
「コンパスが今ファウンデーション? に行ってるじゃん」
「で、そこに行けばシンに会えるって」
「……………………ブリーフィングでは合流しないと伝えていたはずだが」
理由は分かった。
年齢に比べて幼い言動が目立つステラだが、これでも教育を受けてマシにはなってきたのだ。ただ1点だけを覗けば。
「あ、艦長!」
地べたで駄々を捏ねていた直後に軽やかな身のこなし起き上がると、真っすぐにナタルの元へと向かっていくステラ。
「艦長! わたし達も行きましょ!」
「ダメだ」
「ナタルのいじわる‼」
「艦長と呼べ」
すげなく断られソファに丸まって寝転がるステラ。さっきまでと違い暴れることはないが、明らかに私は拗ねていますと丸まった背中が語っている。
「後は任せたぞ」
「……………………めんどくさ」
当初は話しかけたりしていたが、慣れたもので暇な奴に任せればいいとナタルは学んでいる。顔をあげると、蚊帳の外のようにヘッドフォンで音楽を聴いていたシャニに声をかけて部屋を後にする。
クロトやオルガが手慣れたように、飲み物やお菓子を用意していたのを見てシャニも立ち上がる。
なんだかんだでアズラエルに押し付けられてからずっと面倒を見ている3人だ。最初は少しおどおどしてたステラも遠慮なく拗ねるようになった辺り、仲は良いだろう。とはいえ自分たちは軍人であって保育士ではないのだが。
「まったく、ここは託児所ではないんだぞ」
ため息をつきながら自室に戻ると、着替えの用意をし始める。
仕事に関係あるもの以外ほぼ何もない机の上には、何枚かの写真が飾ってある。ムウやマリューをはじめとするアークエンジェルのメンバーが映る写真、イチノセ家の長男が恐る恐る長女を抱きかかえている写真。
今頃向こうはファウンデーションに着いたころか、終わればまた時間は取れるだろうしシン・アスカと合わせることもできるだろうか、ついでにあのバカにも少し、そんなことを考えて艦長室に備え付けられている浴室へ向かう。扉が閉められた時、対した振動もないはずなのに飾られていた写真立てがパタリと倒れた。
ファウンデーション王国の上空を飛ぶミレニアムとアークエンジェル。足元では発展した街を大勢の人が行きかい、建物の大型モニターには黒髪にピンクのメッシュが入ったアイドルが歌っている様子が映し出されている。
世界から見ても弱小の独立国とは言えないほどに栄えている街並み、その外側では廃墟が並んでいた。
「急げ!」
息を切らして走る男女、その後ろから現れた装備を持った軍人らしき集団は、一切戸惑うことなく引き金を弾いた。
悲鳴をあげる間もなく、絶命した後も銃弾の衝撃で身体を飛ばされた後に倒れ伏す。
死体の回収をする集団を陰からサングラス越しに覗く人影があったが、物音を立てることなく消えていった。
「ようこそ、ファウンデーションへ」
ファウンデーションの敷地内へ降り立ったコンパス総裁ラクスと、部下であるザフトの白服を着たキラたちの前に現れたのは宰相オルフェ。
品のある佇まいで丁寧な礼で迎えられ、差し出された手をラクスが握ったとき、
「「!」」
何かが繋がった。
心とも、精神とも言えないナニカ。空いていた最後のピースが綺麗に収まったかのような繋がりが2人の間に奔った。
「ようやくお会いできましたね、ラクス・クライン」
「貴方は?」
「私はあなたの運命、共に世界を導くもの」
人によれば滑稽としか思えない言葉も、ラクスには正当な言葉としか思えない。
「ラクス?」
「あっ」
後ろから着いてきていたキラの言葉によって意識を取り戻すと、笑みを浮かべるオルフェの案内についていく。
(邪魔な奴…………)
「!?」
殺意、とは違う敵意のような意識。
戦場とはまた違う気配にキラも足を一瞬止めた。
ほとんどのメンバーが王宮へ歩き出した後、ミレニアムからの移動に使われていた航空機からひとり姿を現した。
「……………………」
オーブ軍の青い軍服を身にまとったユウキは、あたりを警護のために立ち並ぶモビルスーツを見渡した後、立派な装飾の施された王宮、の地下へ視線を下ろした。
「どうかしたか?」
「いや、ちょっとね」
アウラへの拝謁を済ませた後ラクスやマリューは今後の打ち合わせに、ムウやハイネと言ったパイロット組は国務秘書官イングリット・トラドールに王宮の案内を受けていた。
「ラクスがぼっーっとしてたし、大丈夫かなって」
考え事をしていたキラに声をかけるが、言われてみれば確かにどこかおかしかったとハイネも思いなおす。
「……………………アイツじゃないのか?」
「何もしてないし、たぶん違うはず」
唯一、というか真っ先に上がる可能性は今回は違う。キラとハイネが記憶を掘り起こすも確かにラクスと関わったことはない。それどころか、
「…………最近アイツ大人しくねぇか?」
ハイネがユウキと知り合ったのはミネルバ時代、キラたちと比べれば長いとは言えないが、それでもお互いに親友と言っても過言ではない付き合いはある。
キラも同じことを思っていたのか少し顔を暗くして口を開こうとした時、金属同士がぶつかり合う音が聞こえてきた。
全員が視線を向けた先では、黒いお揃いの礼服を着た人影がサーベルを打ち合っている。
「彼らが我が国の近衛師団です」
イングリットに紹介されるままに近づけば訓練なのだろうか、国防長官・近衛師団長シュラ・サーペンタインと親衛隊隊員リュー・シェンチアンがサーベルを振りあっていた。
「噂のブラックナイツね…………」
ムウが見定めるように視線を向けた先にいるブラックナイトスコード、通称ブラックナイツのメンバー。ラクスらを迎える時にもいたが、かなり若い男女しかいない。とはいえそれはコンパスも同じだが。
「ふっ!」
シュラが弾きとばしたリューのサーベルが宙を舞い、キラたちの足元に突き刺さる。
「ふぅ、やはりシュラには勝てませんね」
「良ければ一手ご指南いただけますか、ヤマト隊長」
負けた割には悔しがるそぶりも見せないリュー、丁寧に聞いている様で無遠慮にサーベルを先を向けるシュラ。
「おやめなさい! 彼らは客人ですよ!」
すぐに動けるよう警戒態勢をとるシンたちの横で咎めるように声を張り上げるイングリット。だが悪びれる様子もなく、シュラは剣先を下げるそぶりすら見せない。
「いや、ボクは使えないから…………」
「へぇ剣の使えない隊長さんかよ」
「なっさけな、キャハ!」
「それはこの間証明されたし」
軍人としては情けない声で断るキラ。それを近くのベンチに持たれていたリデラート・トラドールや、グリフィン・アルバトレスト、ダニエル・ハルパーといった近衛師団たちも続く。
イングリットの注意も聞く耳を持たず、キラもまたどうしたものかと思えば、
「隊長、おれにやらせてください!」
突き刺さっていたサーベルを引き抜き、シュラの前に歩いていく部下の姿があった。
「シン!? いやぼくは「いいじゃねぇか、やらせてみろよ」ムウさん…………」
おもしろそうだ、と言いつつ相手を探るような眼をしているムウに、隣にいるハイネも頷けばキラにはもうどうしようもない。
「ほう、いいだろう。ブラックナイツ近衛師団長シュラ・サーペンタイン」
「ヤマト隊のシン・アスカ! うおぉぉ‼」
あいさつを躱し勢いよく剣を振り回していくシン。乱暴に見えるが、これでもアカデミーではナイフ術で1位をとっている。慣れない得物だろうと、大抵のコーディネイターくらいでは勝てるはずもないのだが、
「フッ」
「んなっ!」
シンが振り下ろしたサーベルを弾き飛ばし首元に突きつけるシュラ。寸止めこそしているが、誰が見ても勝者は分かるだろう。
「やはり最強はアスラン・ザラか」
「何が! あんな奴「シン」うっ!」
聞き流せない言葉に噛みつこうとするが、ハイネの言葉に反射的に背筋を伸ばすシン。
「世界を統べるのは力のある者だけだ。お前にその力があるのか?」
「…………そんな力、ボク達はいらない」
キラの返事を聞き実力は分かったと言わんばかりに歩いていくブラックナイツの最後尾で、忘れていたかのように振り返るシュラ。
「…………キミの指揮で戦えるのが楽しみだよ。おっと、指揮隊長はキミだったかフリーダム・キラー」
「あ?」
思いがけない呼び名に思わず素の声が出てしまったハイネ。ひと言くらいは言っておこうとしたのだが、言いたいことは言ったとブラックナイツは歩いていく。
「ちょっとアグネス」
コチラもいつも通り情けないとシンを貶めるのを止めようと、ルナマリアが名前を読んだ時シュラが反応した。
「アグネス・ギーベンラート? 月光のワルキューレか」
「え?」
またも思いがけない自分の異名に今度はアグネスが振り返る。
「強きものは美しい」
誰かがいれば美しくはないだろ、などと言っただろうが口に出せるものはいない。
この先共闘することを考えて何とも言えない思いが腹の底で募っていくキラたちは、イングリットの謝罪を受けながらも訓練地を後にするのだった。
キリのいいとこ探したら長くなる問題。基本3千文字を目安にしてるんですが、長くなってしまいますね。全体的な流れは一緒ですが、ちょいちょい違いがあるよーって話でした。バカは別行動してます。いつ出てくるんだろうね。
いつも感想や誤字報告、ここすき等ありがとうございます。最後の燃料となってます。
ひと口メモ
・キラもバカも肉弾戦でシュラには勝てないです。何でもありの2人がかりならなんとか、レベルです。調べれば調べるほどシュラくっそ強い(シンのナイフ術1位とか)。だから破廉恥な妄想がいるんですね。