アズラエルは有能なのでしゃべらせるのがすごく楽しいです。ちなみに通信はカガリたちのいた場所の隣の部屋を借りてました。
アウラ・マハ・ハイバル、懐かしいほどではないが久しぶりに聞いたな。
そうだな、確かに彼女はこのような外見だった。
同じメンデルの研究者であり、彼女の目的はコーディネイターを超える人類を作り出すことだ。
私が議長を務めていた頃にはファウンデーションという国を手中に収め、何と言ったかな…………そうアコードだ。彼らを中心に国を治めていた。
アコードは簡潔に言うのならコーディネイターの上位存在、とでも言うべきだろうか。全ての能力が大半のコーディネイターを上回り、読心能力を持ち合わせている。政治家としては厄介極まりないが、味方とすれば大いに心強いな。とはいえ、どれほどなのかは私も詳しくは知らないが……………………なんと、彼らが負けたのか。
ふむ、どうせ卑怯な手を使われたのだろう。
でなければ負けるわけがない。
アウラの目的? そうだな、彼女もまたDPの賛同者であった。
優秀な人類が適性のままに生きることで人類は平和になると、その導き手として遺伝子を調整されて生まれてきたのがアコードだ。その点で私は袂を分かつた、私はDPで平和になって欲しいのであって、管理者を据え置くつもりはなかったのでね。
本人は知らないだろうが、ラクスもアコードなのだよ。オルフェ・タム・ラオの番として世界を導く遺伝子が彼女にも組み込まれている。DPによる新世界の統治者として、もっともそんなことを知らずにカリスマを持つ歌姫として生活していたみたいだがね。きっと母親が教えなかったのだろう、最初はアウラとも共同研究しており子ども同士が結婚すればなどと微笑ましい会話をしていたのを覚えている。
だが、ある研究者を見て心を取り戻したのだよ。
君のことだ、知らないはずがないだろう。
キラ君だよ。
彼はあらゆる才能を持つスーパーコーディネイターの唯一の成功例として産まれたのだ。
父であるユーレン・ヒビキは取りつかれたように幾つもの失敗を繰り返し、妻であるヴィア・ヒビキは何度も止めたが聞く耳を持たなかった。壊れた暴走車の如く次々と命を生み出し、失敗だと廃棄していく。
夫を止められず、日に日にやつれていくヴィア・ヒビキを見てシーゲルと共にメンデルを離れた。アコードは成長過程でも調整が必要であったみたいだが、それがラクスのアコードとしての素質を開花させなかったのだろう。
……………そうだな、彼女は生まれたばかりの娘を抱えて言っていたよ。「世界はあなたのもので、そしてあなたは世界のもの」「生まれ出てこの世界にあるからには」とね。事実世界を収める存在として生まれたのだ、間違いではあるまい。
だから驚いたよ、彼女がキラ君と一緒にいたからね。
だが違和感もなかった。何せあらゆる才能を与えられたスーパーコーディネイターには、オルフェ・タム・ラオと似た遺伝子調整がされている。つまり、生まれから番となる運命の相手だったのだよ。だからこそ私も必死になっていたのだがね。そうだろう? 私が仮にDPを成功させたとしても、その世界を統治できる存在がいれば民はそちらへ導かれる。
もっとも、何の関係もないナチュラルの子どもに止められたのだからお笑いだ。
そういえば彼はどうしたんだ? まさか死んだわけではあるまい、大事な友人たちを救ってくれたのだから私にできる事があれば何でも言ってくれ。罪滅ぼし…………というのは言い訳だな。
ただの個人的な感謝だよ。
思っていた以上の重要すぎる情報に、ユウナはあんぐりと口を開き慌てて耳を閉じてしゃがみ込んだ。初対面ではただのボンボンだと思っていたが、遺伝子組み換えのパターンをゲーム化するというアイデアを出されてからはたまにゲームに付き合うようになった男の行動に首を傾げる。そして脳内で情報を整理しているであろうアズラエルに振り向くデュランダル。
「…………すまないが私は基本外の情報から遮断されていてね。何があったのか教えてもらってもいいだろうか」
「そうでしたネ、簡潔に言うと」
申し訳なイとアズラエルが説明しかけた時、持っていた端末が振動した。緊急時の連絡先に繋がったとして操作しながら扉へと向かって歩く。
「すみませン、緊急事態なので歩きながら…………外出許可ヲ」
「僕は何も聞いてない僕は何も聞いてないん、え? あ、はいはい、しておきますね」
急に声をかけられて分からないままに返事をするユウナ、では問題ないと当然のようにアズラエルの後ろをついていくデュランダル。
申請が遅いと未来で蹴られる事が決定されたが、出したこと自体は咎めらることはないユウナも取り残されないよう慌てて部屋を出た。
それはかつてジブリールの元で作られ、プラントに接収された大規模破壊兵器。
鎮魂歌と名付けられたそれは、何の予兆もなくユーラシアの首都へ降り注いだ。
すぐさまプラントに世界各国の代表が通信を繋ぎ詳細を確認しようとしたが、会議が躍るよりも早く持ち主が現れた。
「遺伝子に刻まれたその役割は、人類の調停者として世界を導く者」
究極のコーディネイター『アコード』と名乗るファウンデーション王国宰相オルフェは、世界を導く指導者として同じアコードのラクス・クラインの言葉でもあると前置きし、武装解除とDPの承認実行を世界へ訴えた。従わなければ歌姫の名のもとにレクイエムが放たれると。
放送を聞いて希望を見出す者、恐怖に怯える者、不安そうに子どもを抱きしめる母親、狂喜乱舞する科学者。
放送が終わり世界が混乱の渦に巻き込まれた時、途中にも拘らずモニターからいなくなった影をカガリは見逃さなかった。気にはなるが今は自国の事が優先である。
「…………なんということだ」
放送を聞いていたハルバートンは将官用の執務室に備え付けられている座り心地の良い椅子に背中を預けた。
ミケールという不安分子こそあったが、世界はこれまでよりは平和と言えた。
小さな諍いはあれど世界を巻き込むほどではなく、火種があればコンパスという鎮圧部隊があった。
頼りすぎている、それでも戦争が起こるよりはマシだと、自分のような正規の軍隊が動くことになるよりもいいのだと。
それすらも利用された。
基本的にコンパスは活動内容を公開している。むろん上層部で止めたり言い方を変えていることはあるだろうが、平和監視機構の名の通りに活動しているのだ。
顔を知っている子供たちの事を思えば、裏方だろうと仕事は進んでする。
ファウンデーションとの共同作戦も知っていたが、行方不明のメンバーに核、この放送を聞けば罠だったのだろうと察しは付く。
言い表せないグツグツとした感情が渦巻いた時、通信を知らせる音が鳴った。
「どうした」
『ハルバートン提督へメッセージです、差出人は放送席から』
「すぐに向かう」
言いたい事や思うことは多々あれど、これはまだ戦争の始まりですらない。いや、戦争にさせないためにも動かなければいけない。
脱いでいた軍帽を被りなおし、緊急時の連絡先へと繋ぐ。
「ナタル中佐へ──────いつでも動けるようにしておきたまえ。乗り遅れることのない様にな」
短い伝言を送り部屋を出る。
「長らくお1人でお待たせして、申し訳ありません姫」
「謝罪していただけるというのなら、今すぐ帰らせていただけませんか」
シャトルに乗り宇宙へ上がると、ファウンデーションが持つ宇宙拠点内のアウラたち専用の執務室に案内されたのは、軟禁されていたラクス。演技のような態度の怒りを見せるもオルフェは何がおかしいのかと笑う。
「貴方の帰るべき場所はここですよ」
「DPに必要な最後の一対のピース、それがそなたの母上と共にわらわが造ったオルフェとラクス、そなたじゃ」
自分の知らなかった生まれ、母親の秘密を聞き怒りも消えて目が揺らぐほどの動揺がラクスに現れる。
「母…………わたくしを……………………創った!?」
「そうです。私と貴方、2人は世界を統べるべく生まれた存在、決められた運命の相手なのです」
畳みかけられる出生の秘密、軟禁されていた事実と重なり小さくない衝撃がラクスを襲う。
人類を導くべく創られ、目の前には番相手すらも存在している。
「我らは互いに惹かれ合い、結ばれる運命。共に人類を導きましょう」
アコード同士の間で行われる意識の共鳴、意識が薄くなるラクスの手を取るとオルフェは顔をそっと近づけた。遺伝子に刻まれた運命の相手、恋人もおらず抗えない接近に、
────────────ごめんな』
聞きなれた声で謝罪の言葉が聞こえた。
まだだ、まだ笑うな…………。
バカ側を出したら一気に話が進むので、その前に進めるべき周りを進めています。ので、少々お待ちを
シルバーウィークですが、9連休を勝ち取ったので更新が少ないかもしれません。お詫びにオルフェ(が)NTR本をプレゼントします。
いつも感想や誤字報告、ここすき等ありがとうございます。最後までお付き合いください。
ひと口メモ
・ここで味方陣営の生き残っていてかつ戦える陣営を振り返ってみましょう。
・そこにデュランダルのアコード情報をひとつまみ。