ですけど〜その前に皆さん大好きオーブ地下のお時間です。
「これは…………」
ラクスの救出、そしてファウンデーションへの殴り込みが決定したキラ達だが、改めて問題は山積みであった。
肝心のラクスの居場所はラメント議長を保護したイザークやディアッカが乗り込んだエターナル、アズラエルによってアルテミス要塞と特定。
どの辺りにいるのか、という問題は誕生日プレゼントに渡されたトリィと似たペットロボ、ブルーがいれば分かるという。
実際はなくてもユウキの勘で分かるのだが、そんなものを作戦に組み入れたりはできない。
場所は判明したが肝心なモビルスーツと船がない、というシンの言葉に応えたのはアズラエル。
「お任せください、エリカ・シモンズ氏」
「はい」
案内されたのはアカツキ島にあるモルゲンレーテの極秘地下格納庫。ライトに照らされたのはここにいるパイロット達が乗っていた伝説の機体。
「デスティニー!」
「フリーダム……」
「インパルスまであるのかよ」
「アズラエル理事の指示でね。コンパスとしての機体はあるから、新型動力の性能実験かつ予備機として預かっていたの。武装はそのままだけど、コクピット周りと機体の一部は改装してあるわ」
ブラックナイツ相手でどこまで通じるかは、と少し不安気なエリカだがかつての愛機を見たシンは自身たっぷりに笑う。
「大丈夫です、デスティニーならアイツらにだって」
頼りになるとシンの隣でアスランが笑っているが、すぐにこの場にいない機体とパイロットに気がついた。
「コレだけですか? アイツの分は」
「ちゃんとあるわよ。というかコンパスが出来てすぐに作られた奴があったんだけどね」
コンパスが発足して最初にできたというのに受け取りを拒否していた当時を思い出すが、さっきの会話で思うことがあったのか仕方ないと笑う。
「アサギ、いるか?」
キラ達とは少し離れた区画にいたユウキは、機体の管理を任せていた相手の名前を呼ぶ。
聞こえていた近くの作業員が指を刺すのでその方向に向かえば、背を向けたまま無言でコントロールパネルを操作する後ろ姿。ツナギの上半身だけを脱いで黒いシャツだけなのはもう見慣れている。
「アサギ「こないで」……アサギ?」
記憶にもない拒否する声に思わず足が止まる。とはいえ時間がない、ゆっくりと足音を立てて近づいていく。
「ごめんアサギ」
「こないで」
「ほったらかしてた」
「うるさい」
「任せっぱなしで」
「しゃべらないで!」
バンと台を叩かれた音が響く。
人も多く作業音が鳴り響いているはずなのに、2人だけしかいない無音の空間が出来上がる。
よく見れば肩が震えており、怒らせていたと思っていたユウキは何か違う気がして辺りを見渡す。
コッソリ見守っていた作業員達と目が合うが、無言のまま攻めるような目つきに居心地の悪さを感じる。こっそりとアサギの顔を覗こうとすれば流石にダメだと思い下がる。
機体だけ受け取ればいいのだが、無視してはいけない。までは分かるのだがどうすれば良いのかは分からない。
もう一度助けを求めるように周りを見れば、上の方から見ていたマユラとジュリが後ろから抱きしめて振り返りキスをするという小芝居をしていた。
2人はそういう関係だったのかと勘違いをして、アサギを通り過ぎて機体の前に立つ。
何故か自分に定着していた名前の由来の白い機体。
見向きもしていなかったが丁寧に整備されている。
誰が、などと聞かなくても分かる。
「ありがとアサギ、おかげでまだ戦える」
コントロールパネルで握られていた少女の手に雫が落ちる。
ユウキと視線のあった作業員が頷き、機体の搬入作業に取り掛かる。
相変わらず俯いたままの側を通り過ぎようとした時、
「っ……送られてきたデータを元にシステムは調整済み。私がっ、乗って試したけど細かい調整は試さないと」
聞き取れるか怪しいほどの小さな声だが、作業音に遮られることなく全てを聞き終える。
「調整は大丈夫、アサギがしてくれたなら問題ない───────だろ?」
技術者兼テストパイロットからすれば文句も言いたくなるが、口が開いても言葉は出ない。
「あ、そうだ」
ゲートを潜る直前に足を止めると、未だに顔を見せないアサギに振り返る。
「お礼、しないとだし何か考えといてくれ。帰ってからで」
「ぁ……っ─────そっ、なっ…………そっぢで考えなさいバカぁ!」
「あー…………うん、がんばってみる」
嗚咽混じりで返された言葉に頭を捻って歩いていく。
閉まる直前に振り返れば見れたのはそれだけだった。
名残惜しそうに伸ばしかけた手で赤く腫れていた目を擦ると、両脇から何かが生えてきた。
「ほっほぉう、デートのお約束ですか」
「マユラ⁉︎」
「もー心配してたってくらい言えばよかったのに」
「うるさいジュリ!」
さっきまでの落ち込んでいた雰囲気もなく、姦しく騒ぐ3人を無視して作業は進んでいく。
いつもなら手伝えと言われる時間になってもほって置かれており、作業が終わったとアサギが気がついた時にはどこへ行くんだどうするんだと囲まれて逃げ出せず、丸くなる羽目になった。
帰ってきたら1発殴ろうと耳まで赤くしたアサギは決めた。
モビルスーツはこうして確保したわけだが、宇宙へ上がるための船はどうするのかというと、マリュー曰くちょっと荒っぽい方法で調達していた。
夜になり、オーブに停泊していたミレニアムに、水中から潜水服を着てた人影が現れた。
艦内をハッキングし、偽の警報を出した潜水服を着た連中は勝手知ったるかのようにブリッジにまで辿り着き、副長アーサーと艦長のコノエに銃を向ける。
「計算より2分57秒遅かったですね」
「出航準備は終わってますよ、マリュー大佐」
両手をあげたアーサーと違い、コノエは抵抗するそぶりどころか歓迎し、ハインラインに至っては遅いという始末。
こうしてミレニアムのハイジャックは順調に進んで行った。
「つぅー……」
「? どうしたんだシン」
密かに港を使って搬入作業をしていた時、頬を抑えているシンを見つけたユウキ。
聞けばルナマリアにイタズラして、正体がバレた時泣きながら頬を何度も叩かれたらしい。
「死ぬかと思いましたよ……ユウキさんどうしたんです?」
そりゃ仕方ねぇか、と思ったがシンもまたユウキの頬に貼られた湿布を聞く。
「…………転んで……いや言うなよ」
転んだと言いかけ、渋々ながら屈んで声を顰める。
「………………キラの」
「あぁ!」
「声がデカい! ……絶対言うなよ」
悔しかったんだろう、と気がついたがこれまで通り、いや少しカッコよくなったなと憧れの人を見る。自分の事ばっかりで分からなかったが、この人も悩んでいた。
しかも自分と妹が関わっており、頼られないなんて子供じみた事を考えていた自分を恥じた。
「何笑ってんだよ」
「あ、いえ」
同時にさっき医務室でフレイに叩かれていたもう1人も思い出した。
無傷には見えていたが、少し足元がふらつくらしい。言わないでと頼まれたフレイはまた呆れていたが、言わないほうがいいだろう。
「オレ、がんばります! その、モビルスーツだけじゃなくて、他のことも!」
「? おう、がんばれよ」
「ハイッ‼︎」
気合十分な返事をして走っていくシンを見送り、自分も作業を続けるかと立ち上がれば、
「少し、いいですか?」
出会った時よりも伸びた緑髪を解き、海風に吹かれていたニコルが立っていた。
「そこまでお時間は取らせないので」
「いいけど、どうした?」
「お話をしたいという方がいまして」
渡されたイヤホンをつけてタブレットの電源を入れると待機していたのか、直ぐに通信が繋がる。
『やっほー! 久しぶりねユウキ!』
「ミーア?」
映し出されたのはブルーピリオドに所属し、世界各地で慰安ライブを行う誰が呼び始めたのか戦地の歌姫と呼ばれるようになったミーア・キャンベルが笑顔で手を振っていた。
いやー悩んでた主人公が自分の積み重ねてきた繋がりを再確認する回ですね! …………ホントですよ? お祭り前の全キャラ集合回であって弱いとこ見せた隙を狙いにきた卑しいキャラとかいないですよ?
いつも感想や誤字報告、ここすき等ありがとうございます。最後までお付き合いください。
ひと口メモ
・なんで泣いてたって死んだかも報告2回目ですからね。今回は機体だけ預けられて遺品になりかけてるし。