前回のニュータイプですが、宇宙世紀的な意味ではありません。ジョージ・グレンが提唱した新たなる人類的な意味です。じゃあ明確に何が違うって大した差はないですけどね。
ミレニアムの目的は2つ、1つはレクイエムの完全破壊。
理論上、地球上のどこであっても狙うことのできる軌道間全方位戦略砲。欠点と言えば再度撃つためにはチャージに時間がかかるというもの。そして中継リングによる軌道変更のため、途中僅かでもズレがあれば目標には届かない。
とはいえ脅威には変わりなく、ファウンデーションに勝ててもオーブやプラントを撃たれることがあれば負けと変わらない。
2つ目はDPのキーパーツである人物の奪還、ではなく、
「姫様はなぜご自分の定めを受け入れられないのですか?」
ファウンデーション宇宙拠点に作られたラクス用の私室、と名ばかりの監禁室でイングリットは問うた。
アコードはDPによる世界の管理を目的に生み出されたコーディネイターである。人類を率いるために、世界の為に、そのトップとして生み出されたのがオルフェとラクスだ。番として生み出された遺伝子は否応にも2人を引き合わせる。
はずだった。
「DPによって人々を導く役割を持って生まれたというのに」
「人々の行く先は誰かではなく、個人の意思によって決められるものです」
「定めに従い、人に必要とされて生きるのが私たちの幸せではないのですか?」
イングリットは、アコードはそのために生まれてきた。
自らの役割を担うために、終わらない争いに終止符を打ち、人類の幸せのために、そう生きてきた。
「このまま皆が悩み、苦しんで生きていくことが姫様の望みなのですか?」
だというのに手を振り払った。
「貴方はご自身の幸運を分かっていない!」
私には差し出されることのない手を。
「キラ・ヤマトですらない、ユウキ・イチノセなどというナチュラルに惹かれるなど‼」
しかもその理由が別の男、コーディネイターですらないただのナチュラルにかどかわされて。
「あんな男のど、こが……………………」
知らず知らずに張り上げられていた大声が途切れていく。
覚悟を決めていたはずのラクスの顔が揺らぎ、眼を見開いていた。
まるで、
「ひ、姫様」
「…………ユウキ」
確かめるように呟かれた言葉、だが確かに然りと呟かれた。
「ユウキ……………………そう、ユウキ」
紡がれるたびに透き通るような肌に朱がさしていく。
高揚ではなく風邪をひいていた人間が元気になっていくように、感情を取り戻していくように、ラクスの頬を染めて脈を打つたびに全身に熱を送り届ける。
「ひ、姫様?」
イングリットの声にも反応せず、ラクスの眼にはあの時の、はじめて出会った時の事を映し出していた。
脱出ポッドにのり込みアークエンジェルに拾われ、扉が開けられた。数多の視線を受ける中でどこかへ行かないよう優しく手を伸ばしてくれた少年と目が合った。
あの時に間違いなく繋がっていた。
「頭は冷えましたか?」
部屋に入ってきたのはオルフェ、邪魔をしないように部屋を出るイングリットに見向きもせずその足は真っすぐにラクスの前へと向かった。
「…………申し訳ありませんが、私の愛する人はあなたではないようです」
「っ、だが奴は死んだ!」
「いいえ、生きています」
「っ!」
差し出された手を見ても変わることのない答え、死んだと伝えても断固たる意志のみならずどこか浮ついた表情がオルフェの逆鱗に触れた。
備え付けのベッドにラクスを押し倒し、2人の距離が狭まる。
同じアコードだとしても、男女の腕力の差を覆せることなどできずオルフェがさらに乱暴しようとすればラクスに抵抗する手段はない。
「あなたの望むものを何ひとつ与えられなかった、そんなヤツがそばにいる資格があるわけがない!」
「彼が教えてくれたのです。そして、愛するのに資格など必要ありません」
ラクスの胸元に手が伸び、服を少しだけはだけさせる。
にもかかわらずラクスの表情は変わることなく真っすぐにオルフェを、
見抜き、その先にいる誰かを見ている。
乱暴に部屋へ入り勢いそのままに押し倒された時、仕方ないと思ったが同時にどこか望んでいたような気もした。
だというのに相手は自分の身を案じ、別の女性の名前を出した。
なんとなく面白くなかったことを覚えている。もし仮にフレイが割り込まなければどうなっていただろうか、そんな妄想が始まってしまい暢気すぎる自分に思わず笑いがこぼれた。
「っ⁉」
思わず飛び下がり距離をとるオルフェ。
世界を統べるべく生まれたというのに、共に生きるべきだと定められたはずだというのに、自分の知らない生き物が目の前にいた。
視界に移っているはずなのに、どこか遠くを見ている。自分の知らない別の相手を見て、少女のように微笑んでいる。
アコードとして成長するまでに、並みのコーディネーターを超える知識を得た。戦闘こそシュラに軍配があがるものの、その他の分野で自分にかなう存在などいない。そう確信していたはずなのに、分からない。
「なぜ、何故わたしの愛を受け入れない!」
「私の愛する人があなたではないからです」
逃げるわけでも言い返すわけでもなくただ事実を述べる、のでもない。
「私が愛するのは」
聞いてほしいと語り掛けるように口を開くラクスに、オルフェは足元をもつらせながら部屋を出た。
部屋を出る直前に小さく聞こえたはずの言葉は、アコードとしての身体能力を持ったオルフェにはしかと届いてた。
「………………待っていますよ、ユウキ」
部屋の外では直前の行動がなかったかのように凛と指示を出すオルフェ、分厚い扉によって聞こえるはずもない声を聞きながらも目元を光らせたラクスは、そっと胸元で自分の手を握った。
「へっぷし!」
ミレニアムの艦上では別動隊として動くためのキャバリアーを装備したズゴックに、ストライクフリーダムが立っていた。
「風邪? このタイミングで?」
『大丈夫ですか?』
キャバリアーで鼻をすするユウキにキラのあきらかに馬鹿にする言葉が投げられる。通信をつないでいたシンとは大違いである。
「宇宙風邪ってあると思う?」
「どうでしょうかね」
話題を振られたメイリンもいい加減な返事であり、これから重要な潜入任務をこなすとは思えないほどに穏やかな空気が流れている。
「まぁいいか、サクッと行ってこよう」
『お気をつけて!』
安否を願うシンの言葉を聞き、ふとキラと顔を見合わせる。
「シン、俺たち行ってくるけど」
「みんなを頼むよ」
「手こずったなら帰って手伝ってやるよ」
思いがけない激励の言葉、少しばかりハブてていた過去もあるがキラとユウキの喧嘩を見てそれも消え去った。
焦りというデバフが消え、ニュートラルになったシンに向けられた尊敬する相手から送られた言葉。
嬉しくて元気のあまり叫びたくなるが、ここでシンはぐっと堪えた。
「っ………………! 何言ってるんですか、お2人が帰ってくる前に俺が追い付いてやりますよ‼」
常に背中を追いかけ続けてきた。
ずっと遠くで手が届かないと思っていた相手はずっと身近で、自分が距離があると思い込んでいただけだった。
彼らはずっと隣にいたのだ、ならば後は追い越して見せる。
ヒルダは感心したように口笛を吹き、ルナマリアは恋人の成長に喜んだのかかっこよく見えたか優しく微笑んだ。
「言ってろ」
「待ってる」
生意気だと笑うユウキと手を振るキラ。
「おっし、時間だ。行ってこいお前ら!」
ハイネの合図に透明になったズゴックがストライクフリーダムを抱えミレニアムを離れていく。
ラクスを奪還する部隊に囮兼レクイエムを破壊するために正面からぶつかる2部隊に分かれている。もちろん戦闘がメインのハイネたちの危険は大きいが、これまでにないほどにやる気に満ち溢れている真の運命は自分の出番を待ちかねている。
ついに自覚したラクス。
アコード側で気が付いていたのはイングリットだけでした、なんでやろね。
しかもラクス本人に気付かせるファイン(?)プレーでした。オルフェのメンタルはガタガタです。
そして成長したワンコ、ヒルダもルナマリアもこれにはニッコリ。
潜入チームですが、ぶっちゃけハロによる催眠ガスが強すぎるしらしすぎるので悩み中。
いつも感想や誤字報告、ここすき等ありがとうございます。最後までお付き合いください。
ひと口メモ
・オルフェは誰なのか名前が聞こえたはずなのにまだキラだと思っています。なんでだろね
・デスティニーの色合いはspecⅡですが細部が違います。