いったん書いておくか、の精神です。終わりも近くなってきましたが、最後までお付き合いお願いします。
スニークミッション! またの名をメイリンやべーじゃんの回です。
ユウキ・イチノセはナチュラルの中では上澄みだが、コーディネイターを含めると実はそこまで実力はない。
プログラミングや身体能力はキラ・ヤマト、戦闘技術に関してはアスラン・ザラ、本人は否定するだろうがモビルスーツの操縦技術はシン・アスカの方が上なのが現実だ。
むろんどの分野でもコーディネイターに引けをとらない実力者であり、実戦においては勝利することもできる。
ただ、各部門で1位を取ることができるのかというと大半は上位に食い込む程度であり、触れたことのない専門外においては一般コーディネイターにあえなく負ける。
そんなユウキが胸を張ることなく、世界でもトップクラスの実力者が集められたコンパス内でトップをとれる技術がひとつだけある。
だというのに、本人は必要な時以外でそれを披露する気はない。そして、周りも求めることはない。
必要な時以外。そう、例えば大事な相手を助けるためであったりする時以外に、使うことはない。
シュラが乗るシヴァとストライクフリーダムの戦闘が始まったとき、ファウンデーションの衛星基地内部で爆発が起きた。
シヴァと入れ違いでミラージュコロイドによる侵入を成功させたアメイジングズゴックの攻撃によるものである。
司令部が混乱しながらも対処し始めた時、侵入していたオーブ兵士による工作が一歩早い。
「全隔壁強制閉鎖!」
キャバリアー内にいたメイリンのクラッキングにより、基地内の扉が全て閉められる。
分断するのが目的かと思われたとき、司令部の人間は1人残らず倒れて寝息を立て始めた。
「テヤンディ」
「ミトメタクナイ」
「ヒィアウィゴォ!」
「ゼッコウチョウデアル」
通気口ではキサカの持ち込んだ多数のハロが睡眠ガスを噴出しており、ファウンデーション側はこの作戦が終わった後でも気がつくことはなかった。
急に倒れていく兵士を見て訝しんだイングリットが向かったのはラクスの部屋。丁寧に内側から解錠パネルを破壊して、基地の外で戦闘を繰り広げているであろうシュラにも連絡は済んでいる。
「貴方を渡すわけにはいかない!」
銃口を向け、意志を挫こうとするもラクスの顔には喜色が浮かんでいる。
「ユウキが来たのですね?」
「っぅ……!」
挙げられた名前に眉を顰めながらも銃口を向ける先は変わらない。
「彼らだって! 貴方がいれば有利になるから……! 危険を冒して奪い返しに来た‼︎」
「そんな事はありませんよ」
「誰だって! オルフェだって貴方が優秀だから愛している‼︎ 価値があるから! 必要とされるから人は人を求める‼︎」
イングリットの言葉は間違いない。
もし仮にラクスのカリスマ性がなければ、アコードとしての能力が埋もれていればファウンデーションはここまでしなかっただろう。
コンパス側もここまで戦力を投入する事は難しかったかも知れない。
何の能力もない小娘1人のために国の軍事基地へ侵入するなど、そんなのはバカな事をするバカなど、この世界にいるわけがない。
「!」
突如扉の奥から爆発音が鳴り、イングリットは即座に距離をとって銃口を扉へと向けた。
軍人として間違いのない行動だが、重要人から目を離したのも出入り口はひとつしかないため当然の判断である。
だとしても、目を離すのは間違いであった。
「あっ…………」
静かに、優しく後ろへ引っ張られていくラクス。場所を入れ替えるように、白いノーマルスーツの人影が視界に映る。
顔も見えていないのに、誰なのかラクスにはすぐに分かった。
「なっ!」
ラクスの声にイングリットが慌てて振り返れば、バイザー越しに見覚えのある男が立っていた。
「ユウキ!」
「遅くなって悪いラクス」
キラ・ヤマトでもアスラン・ザラでもない、オーブ軍兵士でもないただのナチュラル。
ユウキ・イチノセがラクスを庇うように立ち塞がる。
「…………換気口から!」
「
という割にはその口元は笑っていない。
「何のために!」
油断もなく真っ直ぐに突きつけた銃口に怯む事なく睨みつけられる視線。
それすらもイングリットには怒りに火を注ぐものでしかない。
「眼が見えなくなり、歌も歌えなくなったその人でも助けるというの‼︎」
「…………誰であろうと助けるのに理由がいるのか?」
心底不思議だという気持ちが込められている視線がまたイングリットの怒りを加速させる。
「アコードとして生まれつき定められた能力を持つその人は! 能力があるからあなたも迎えに来たのでしょう‼ そうでなければキラ・ヤマトでもないものに…………!」
ユウキはイングリットの名前と顔を知っていた。
だが知っているのはそれだけだ。
怒っているはずなのに泣いていて、誰かを責めているようで自分に言葉を向け、逃がさないという意思に負けたい望む理由をユウキは知らない。
「…………俺は別にラクスを連れ出しに来たわけじゃない」
「っ⁉」
しばしの逡巡で伝えられた言葉に息をのむイングリット。
「ラクスが特殊な生まれだと聞いた。…………ならここの連中と一緒にいたいと思ってたっておかしくない」
普段を知るものなら目を見開くほどに静かに語りかけるユウキ。聞いているたった3人は驚き、歯を食いしばりながら静かに言葉を待つ。
「どう生きるのか、なんてラクスの自由だ。俺はそこに何も言わない」
自由、たったひとつの単語にイングリットの眼が揺らぐ。
「このまま残って世界征服をしたっていい、逃げ出して隠れてたっていい、ラクスの生き方はラクス自身で決めるべきだろ。……………………だから、これは俺の我がままだ」
声だけでは気が付かないわずかな震え。かばうように回されていた手が僅かながらに震えていたことに気が付いたのはたったひとりだけ。
「ラクスの作る料理が食べたくて! そのためだけに連れ出しに来た‼」
思いがけない
「…………なんで……………………そんなバカな理由で」
「誰かが作ってくれた料理が、俺は世界で一番好きだ」
すでにイングリットの腕の力は抜けており、両手で構えられていた銃は床に向いている。
「そんなもの……………定められていない……………………」
「だろうな。でも人が生きているなら、何時だって思いがけないことが起きる」
かばわれていた少女の脳内に浮かぶ、偶然拾われて出会えた人々。生涯の友人といえる相手に、共に過ごしたいと思えた相手。お礼と言って日々研鑽してきた料理を、目の前にいた彼はずっと忘れていなかった。そんなものがなくたって助けてくれたはずなのに、アコードとして生まれたラクスに無かったはずのものを、ラクス・クラインが偶然にも積み上げてきたものをユウキは求めた。
「それを奇跡というんだろ。生きてる限り、誰にだって訪れる」
「……………貴方は、誰なの」
腕だけでなく、足の力も抜けて座り込むイングリットの質問に少しだけ扉へ目を向けると、ユウキは笑った。
「スーパーコーディネーターの悪友だよ」
扉の外で爆発音が鳴ったと思えば同時に扉が開き、少しの煙と一緒に緑色のペットロボが室内へ入ってきた。
ラクスの髪に潜んでいたブルーも顔を出し、2羽が室内を飛び回る。
「おせぇな」
「ちゃんとトリィで探すって言ったでしょ。聞いてないの?」
あきれた友人に気にもせず笑い返す悪友。キサカによる簡易的なラクスの状態確認をして、部屋を出ようとしてユウキは振り返った。
「…………来るか?」
部屋を出る直前に延ばされた手をイングリットは掴むことはできなかった。
奇跡も魔法もあるんだry
ユウキは本質が静かな人間なので、何もしていないと誰にも気づかれないタイプです。小さい頃はそれを活かしてたので、あまりいい思い出ではないです。
料理、というか食事が好きなのも過去の影響ですね。知らないのに選択肢を選べてた歌姫がいるらしいです。
いつも感想や誤字報告、ここすき等ありがとうございます。最後までお付き合いください。
ひと口メモ
・最初はちゃんとトリィで探す予定でした、打ち合わせ中に遅いと言ってソロ先行を押し通したバカがいます。
・でもサポートは必要なのでメイリンがしてます。つまり会話全部筒抜けでした。
・ケーキと好きかなと考えてる赤毛の妹がいるらしい。