たぶん責任感が強いタイプなんですよねズラ。なまじ能力があるから自分がしないと、って思い込んでたキラの友人です。そこに遠慮のいらない友人ができたらはっちゃけちゃうよねって。
将来子供ができたら昔からアイツはヅラと呼んできてな、って笑いながら話してるタイプ。
シュラ? 知らん。
「これは…………!」
ホワイトのドラグーンが3機を囲むよう等間隔に浮かんでおり、ドーム状の薄い光が構築されていた。
「機体の異常は、ない! コケ脅しで「オルフェ!」どうしたイングリット」
直前にシュラの命が消えたことを感じ取って嘆いていたイングリットだが、自身の操縦パネルを必死に触りながらも端的に、カルラへ起きた異常をオルフェに伝えた。
「ジグラートとの…………反応が途絶えたわ!」
「なんだと⁉」
慌てて確認すればカルラ本体が備えているドラグーンもうんともすんとも言わず、物言わぬガラクタとなり果てていた。
「…………っ! ふざけたことを!」
現状を作り出した原因を睨みつけるオルフェの先には、涼しい顔でこちらを見るホワイト。その背中からは薄い光が放出されている。
これこそがブレイブロードと名付けられたホワイトのオリジナル装備、セイズスタッフに装着されているドラグーンを支点として生成される、スティルヒィンと呼ばれる空間。
フリーダムを作り上げたハインラインと卓越したプログラミング技術を持つキラの協力の元、リバティアストレイという機体があってようやく完成した装備。
簡単に言えば、ドラグーン専用ジャミング機である。
とはいえ完成したものは機能のみであり、実行に必要な演算用AIの開発は間に合っておらず、キラの人力による計算の時間が必要であった。
しかし効果が発動したいま、人工的な星空のような空間においてドラグーンを使えるものはいない。
だがそれは、
「これだけの機能、貴様らも使えないのだろう!」
事実発動しようとする直前にフリーダムは赤いドラグーンを全て回収しており、味方へも影響があることを証明している。別の目的があって実験中に偶然出来上がったものであり、機能自体は発動しているために組み込まれたが、味方のドラグーンを阻害しないようにはできておらず失敗作ともいえる。
さらにはこの世界においてモビルスーツ最大の武装と言えるドラグーンだが、強大な効果が期待できる反面操縦者にかなりの素質が求められる。それはつまり、味方もろともドラグーンのみを封じる産廃と呼ばれても致し方ない装備なのである。
「これで半減、くらいにはなったか?」
「多分? 機体性能事態は変わらないし、相変わらず高スペックのままだけど」
お互いに強みであるドラグーンは封じられた。
しかし新人類を自称するだけあり、カルラ自体はドラグーンがなくともフリーダムとホワイトを上回ったままである。
「…………本気でやるの?」
「ま、これができないと」
「そうじゃないでしょ、ちゃんと言わないなら無理やりでも止めるよ」
「……………………俺がやりたいことだよ」
満足な答えにうなづく友人を後で殴ると決めて、ユウキは一歩前へ出る。
「聞こえるか、オルフェ・ラム・タオ」
「! ユウキ・イチノセ!」
突如つなげられた通信から自分の名を呼ぶ声に、オルフェの顔が険しくなる。
「この光の効果は分かってるんだろ」
「ふんっ! この程度で勝った気になるなど「まだ勝ってねぇよ」なんのつもりだ⁉」
突如、手持ちの武器を手放すホワイト。戦闘は続いており、決着はついていない。
投降を促すつもりか、ふざけたものかと思ったオルフェに、さらに信じられない言葉が投げつけられた。
「ここからは、武器なしの
「……………………は?」
言葉としては理解していても、飲み込むことはできない。
なぜこのタイミングで? 圧倒的と言えなくとも、ドラグーンを封じ、数の利があるというのにそれらを促す1対1での戦闘? しかも武器を使わずに?
イングリットの脳内を様々な可能性が浮かんでは消えていく。どんな裏があるのか、何の作戦か、罠だろう。だがそのどれもが推測するために必要な要素が欠けており、確信するには至らない。もちろんさらなる奥の手を控えさせているのかもしれないが、そこまで考慮すると可能性は無限に至る。
データだけなら豊富にある、白い悪魔の履歴。
高度な操縦技術を持ち、それでいて奇策を用いる事を考慮すれば更なる隠し玉を披露されてもおかしくない。
1番可能性のあった時間稼ぎも、性格から推測するに選ぶことはないだろう。ならば「いいだろう」
「オルフェ⁉」
「わざわざ貴様の幼稚な策に乗ってやるというのだ」
驚くイングリットを気にかけることなく、手持ちの長剣を落とす。
「横やりを入れたら、分かっているだろうな」
「当然だろ」
ホワイトの後ろでたたずむフリーダムへ睨みつけるように視線を向ける。手を出さないことを証明するかのように一歩下がるのを確認し、少しうつむいたまま口を開く。
「…………降りろ、イングリット」
「オルフェ⁉ わたしは…………」
「降りろと言っている。あいつだけはあいつだけは…………‼」
カルラに乗る前から、イングリットがラクスに逃げられたと報告を聞く前から、ラクスに拒絶される前から、ミレニアムから届いた通信を聞いた時から、
「こいつだけは! 私ひとりで‼」
ずっと殴り飛ばしたいと思っていたのだ。
月面の白く輝く帳の中、相対する2機の白いモビルスーツ。
ハッチを開きシートがせりあがった状態のフリーダムと、手のひらで心配そうに見つめるイングリット。
方や潔白を体現するかのような清廉な騎士。
向かい合うは左右非対称でありながら未完成の無骨な機体。
「ファウンデーション宰相、オルフェ・ラム・タオ」
「コンパス所属パイロット、ユウキ・イチノセ」
お互いが走り出しやすいように足を広げ、動きやすいように腕を構えると、
「貴様を」
「お前を」
スラスターを全開にして駆け出した。
「殺す‼」
「ぶん殴る」
ぶつかり合う拳の衝撃が月面に響いた。
「貴様のようなナチュラルが! 我らアコードの神聖な目的を阻害するなど!」
カルラの優雅とも言える徒手空拳、ただ拳で殴る、蹴りを放つのではなく、計算された攻撃が次々と繰り広げられる。
「知らねぇな! ただ戦争を起こしたようにしか見えねえよ!」
襲い掛かってくる攻撃を弾き、躱し、防ぐ。武術など欠片も感じない、実践のみで磨かれた技術でホワイトは防いでいく。
「その戦争を終わらせようというのだ!」
「だから戦争を起こしてもいいってのかよ!」
「貴様らが反抗しなければ世界は平和になった!」
「戦争がない世界を平和だっていうほど世界は簡単じゃねぇ!」
躱しきれない攻撃がホワイトへ当たり始める。直撃こそないものの、自らの意志ではなく、押されて下がり始めた。
「ならば何をもって平和という!」
回転の勢いをつけて放たれた左足の上段蹴りがホワイトの頭部へ入った。
「貴様らのような目的もなく! ただ暴徒鎮圧しかできないものとは見ている世界が違うのだ‼」
倒れこそしていないが、大きく崩れた態勢は傍から見ればいつ崩れ落ちてもおかしくない。片手で空間の調整をしながら見守っていたキラの顔も厳しくなる。
「…………から」
「ん?」
蹴りぬこうとしていたカルラの足が微動だにしない。
顔との間に挟み込まれた腕が、震えながらも耐えていた。
「知らないから言えるんだろ」
「…………なんだと?」
リバティアストレイの特性、それは争うのではなく、誰にでも自衛ができる用にと願われて作られた。
衝撃や捻じれ、光を糧として電力を生み出して蓄電が可能な全身が発電機であり蓄電機である。
掠らせて、これまでの戦闘で減らしていたエネルギーを貯めたホワイトのデュアルアイが輝いた。
「お前の見た世界と! 俺たちが! 世界で生きる人たちの世界が同じなわけがないだろ‼」
カルラの足を振り払い、回転しながら左の踵落としでカルラを蹴り飛ばす。
頭上で交差した腕を力強く、貯め込んだ力を開放するかのように広げて構えを取る。
前方に構えられた左腕に、拳を握り混み顔の傍に絞られた右腕。
これから殴る、と宣言するかのようなポーズのホワイトへ向けて、後ずさりしたカルラが、ホワイトを通り過ぎるほどの勢いを付けて接近した。
「ユウキ・イチノセェ‼」
「オルフェ・ラム・タオォ‼」
拳が交わされる上空で命が散る光は鳴りやまず、戦争はいまだ終わらない。
イメージBGM「閃光」from:Alexandros
皆さんは今話を読んで「ガンダムファイトじゃねぇか!」という!
え、殴り愛宇宙でした? すいませんまだNTにはなれないようです。
ということでブレイブロードの機能ですが、左腕の甲にあるデュートリオン・ビームサーベル(戦闘も可)とドラグーンを使ったドラグーン封じでした。設定? 分からんので誰か考えて
広域通信網を作ろうとした結果ジャミングもできちゃった、という経緯があります。ハインラインとキラもいるしできるやろの精神
いつも感想や誤字報告、ここすき等ありがとうございます。最後までお付き合いください。
ひと口メモ
・オルフェとユウキはお互いに結構思うところがあります。ヒントはお互いの人生