嘘です感想もっと欲しいです、良かったらください(土下座)
感想欄でどんどん主人公の理解度が高まってるのめっちゃおもしろい。いつもありがとうございます。
時は少し遡り、場所はハルバートンの部屋。
集められたのはアークエンジェルの上官三名。報告の確認と共に個人的な話をしたかった、というのは誰もが察していただろう。
「子供達には寛大な処置をお願いします」
「あぁ、もちろんだとも」
マリューの懇願も了承する。報告を見るも話を聞くも、巻き込まれただけの学生たち。そんな彼らがいなければ無事たどり着けなかったかもしれない。そんな協力をしてくれた彼らを無下にすることなどあり得ない。
「…………彼ら二人にも」
「……………………そうだな」
やはりというべきか、話題になるのは二人のパイロット。
報告書を見た時、ハルバートンの顔は険しくなった。前線で戦う兵士たちの命を守るために提案したモビルスーツの開発、その結果、守るべき民間の子どもに守られるという矛盾。ひとりの軍人として子どもを持つ親として何度も頭を悩ました。
「実際に彼らといて、キミ達はどう感じたのか教えてほしい」
柔和な雰囲気が消え、歴戦の将としての顔が出る。引き続きアークエンジェルの正式な乗組員となった三人、その口火を切るのはやはりというべきか艦長であり開発に携わったマリューであった。
「すさまじい、といえば簡単ですが何物にも変えがたい戦力というのには間違いありません」
「ほう…………」
口から出たのは意外にも兵器としての感想だった。これにはハルバートンだけでなく、ムウとナタルも驚く。
「地球軍の主力機はメビウス、ですがザフトのジンには手も足も出ません」
紛れもない事実、その場にいた誰もが悔しい真実だと目を細める。特にその身で一番理解しているメビウス・ゼロのパイロットは静かに歯を食いしばっていた。
「そんなジンを相手に不完全な状態でも私の様な素人でもあらがえ、乗るべき人間が乗れば安易に撃破も可能。軍として、研究開発をしない理由がありません」
「なるほど」
はっきりと前を見て言い切るマリュー、開発から実働までを現場で関わってきた貴重な人間の言葉として受け取る。それ故に、次の言葉で見極めようと凛と立つ新米艦長に投げかけた。
「彼らの力は、いるかね?」
「欲しくはあります、ですが不必要です」
言い淀むことなくはっきりと言い切った。
「…………その心は?」
「彼らのような子どもにも扱える兵器、ならば軍人が活用すればより結果が出るためです。誰にでも分かる簡単な理屈です」
あのような子供にも扱えたのだから大人の、正規の訓練を受けた軍人ならなより良い結果を出すことができる。正しい意見、だがそれは前提条件がなければの話だ。
大人顔負けのスペックを持つコーディネイターに、ひっそりとシミュレーションをこなしてきた現状唯一と言えるナチュラルのパイロット。そこには抗いようのない差が存在する。
もちろんそれが分からないマリューではない。分かっているからこその言葉だ。
目を見開くホフマンに内心で口笛を吹くムウ、言葉の真意を確かめていたハルバートンは目を開くとほかの二人に視線を向ける。
「二人は、どう思うかね?」
「そうですなぁ」
上官へ向ける態度ではないがそれが許されるほどの経歴を持つのは不可能を可能にする男。隣に立つ戦友の援護射撃など造作もない。
「あいにく自分はモビルアーマー乗りですが、じゃあモビルスーツに乗れないのかと言われればちゃんとしたものを用意してくれるなら乗ってやりますよ、と返しますかね」
肩をすくめて気楽に返すムウ、頼もしいと軽く笑みを浮かべたハルバートンは満足そうに頷いた。そして残された最後の一人に視線を向ける。
「ナタル少尉、キミはどう思うかね」
「わたしは……………」
開いた口が動かない。
隣にいる二人の意図は分かっている。優しい二人だ、自分たちだけで問題ないと言い張り彼らを巻き込まないつもりなのだろう。しかし、それは彼らの実力を認めているからでもある。ならば軍人として戦力増強となるのなら引き込むべきだ。親を預かる、と言えば命令も聞くだろう。バカなことをするくせに変なところで真面目なのだ。親のためにも、友人のためにも、そういえば力を貸すと分かっている。
そういう人間だとこれまでの航海でナタルは理解している。
『嫌ってしまうようなことを言わないでください』
「いやぁ、若さとはすばらしいね。是非ともビールを片手にチケットを買いたい見事なものだった」
静かなモビルスーツ格納庫に拍手が響き渡る。
満足げな顔のハルバートンの前には息も絶え絶えなキラとユウキがいた。片方はストライクにもたれかかり、片方は寝転がっている。
ところどころに青あざや腫れているのはバカの結果だ。
「ゼェーゼェー、どっちが、ゴホ、勝ちですか」
「ハァ、ハァ、俺にきま、ゲホッ、てるだろ」
そして終わったというのにこの有様、もし軍人ならどんな罰が下されるのやら。しかし彼らは軍人ではない。たまたまこれまでに着ていた服が軍服だっただけだ。
「ふむ、なかなかに難しい。攻勢があったのはキミだが、最終的に立っているのはカレだからな」
キミの時に寝転がるユウキをカレの時にはもたれているキラを見る。
「ポイントは優勢でも最終的には立っていたものが勝者だろうな」
「クッソがぁ!」
「…………よしっ」
ガァンと金属を叩く音が響き渡る。悔しがる少年の近くで、もう一人の少年が息も絶え絶えに拳を握って笑うところをハルバートンは見逃さなかった。
「ハァ、おっさんは何の用だよ」
息も整ったのか寝ころんだまま失礼な口を開くユウキ、これもまた軍人ならそれなりの罰があっただろうが今は関係がない。
「そうだな、少し君たちと話したくてね」
そういうとくすんだ色のストライクを見上げた。所々に傷があり、今までに何があったのかを鮮明に見るものに伝えてくる。
「すごいものだな、今は鉄の塊でも君たちが乗ればスーパーな兵器となる」
目を細めながら眺めれば自分の発案、送られてくるデータ、上官たちとの会話、いろいろなことが脳裏に浮かぶ。
「そりゃ俺たちが天才だからな」
「ふふ、それはそうかもしれんな」
寝転がったまま口にする少年、彼はまぎれもなく天才と呼んでもおかしくないだろう。二人の情報は全て知っている。何があったのか、何をしてきたのか、一人は理由があり理解できるがもう一人は違う。文字通り天然の原石だ。
「キミ達がいてくれたことに感謝する、無事地球に降りたまえ」
「…………あの、マリューさんたちは」
そう言って振り返るハルバートン、歩き出した足を後ろからの言葉が止めた。
「彼女らにはこれから、アラスカまでこの船とストライクを運んでもらう」
「え……………でも、それって」
「どうした、言ってみなさい」
また振り返ればもごもごと口を動かすキラ、そのようなところは少年なのだなと心の中で笑った。
「言ってみせようか、キミは自分がいなくて大丈夫なのかと心配しているね?」
「! それは」
「うぬぼれるなっ‼」
これまでの柔和な雰囲気を消し飛ばす一喝。戦場で鍛え抜かれた将の覇気はキラの身体をこわばらせた。
「たったひとりで戦況が変わるなど、そうは思っていないか? キミ達は確かに力がある、しかし誰もが君等よりも弱いからと言って、強くないわけではないのだ」
言われた言葉に肩を落とし小さくなるキラ。無言のまま上を見続けるユウキを見て、被っていた軍帽を少し深く傾ける。
「…………これは独り言だがね、マリュー大尉にムウ大尉も君たちの力は必要ない。自分たちの力で大丈夫だとそう言っていたよ」
「!」
「…………」
「意外だったのはナタル少尉だね、事前に聞いていた情報の通りなら引き留めようとしただろうが」
ハルバートンの記憶にある彼女は、どこか泣きそうにも見える顔で眉をひそめていた。
『軍規を乱し、己の身体も碌に管理できない。そんなパイロットなど落第です。軍隊には必要ありません』
顔を横に向ければ今はもう傷もない綺麗な手、巻かれていた包帯などとうに捨ててある。
「キミ達が強いというのなら、彼ら彼女らを信じてあげなさい。それもまた強さだ」
硬い音を鳴らして去っていく人影、その後ろ姿を二人分の視線が追っていた。
「…………ユウキ」
「あのおっさんも見る目ないな、お前を見て強いだってよ」
「負けて寝転んでいるのは弱いからじゃないの?」
「あとでリベンジな」
「ボクに勝てるわけないでしょ」
「勝つまでやってやるからな」
「……………………期限は? ずっと挑まれるなんて嫌なんだけど」
「決まってんだろ」
差し出された手、下から伸ばされた手が力強く握る。
「アラスカまでだ」
原作より色々あって精神的な成長が著しいキャラたち。子どもがいたら周りが成長しますよね。
二人の掛け合いが好きと言われて嬉しいです。自分も書いてて楽しい。参考文献はたくさんありますが「ぐらんぶる」とかいいですよ。
ちなみに口数少なく頼りになるシーンは「もやしもん」の先輩二人組がモデルです。
おまけ 〜ある日の勉強熱心な学生〜
バカ「これより実験を開始します」
スパコ「何これ」
バカ「物体の耐久とかを計る実験器具、このハンマーを振り下ろして下に置いた素材を壊すらしい」
スパコ「それくらいシミュレーションでやればいいのに、どれくらい上げるの?」
バカ「えーっと指定の数値に係数Nをかけるらしい」
スパコ「係数N?」
バカ「あと実験のために観察役がいるから連れてくるか」
控えめな胸の彼女「どうしたのトール、急に震えて? 寒い?」
彼女持ち「いや、これは……」