ちなみに医務室に置いてあった看護師(そういう人がいるという設定で)さんの私物です。ちょうど良かったので使われました。
さてカガリ姫の登場、どうなることやら。
「味方、と判断されますか?」
「少なくとも銃口は向けられてないわ…………アルテミスよりは大丈夫よ」
艦長の言葉に全員が苦い顔をする。理由はあったとはいえ味方に銃を突き付けられたのは嫌な思い出だ。あの後どうなったのかは誰も知らないが、それなりの被害があっても誰も心配していないのが答えだろう。
「こういうの慣れてないんだけどねぇ」
ただの本音なのか場を和ませる冗談なのか、拳銃の状態を確認しながらつぶやくムウ。そのおだやかな空気に微笑みながらも、各々の武装を点検しているクルーに指示を出すマリュー。
使わないことを祈りながら、一隻の船を預かる長として戦いに向かう。銃口を突き付けあうだけが争いではないのだ。
「助けていただいて、感謝しますというべきなのかしら?」
「へっ、俺たちも俺たちの敵を追い払ったまでよ」
明けの砂漠、サイーブと名乗ったレジスタンスのリーダー。もちろん笑顔でお互いの手を握り合い、とはいかないが敵意は向けられていない。せいぜいが警戒と言ったところか、少なくともすぐさまぶつかることにはならないだろう。
「砂漠の虎相手にずっとあんなことを?」
ムウが聞けば憎らし気に鼻を鳴らすサイーブ、いろいろと言いたいことはあるのだろうがそれを向ける相手を間違えたりはしないらしい。
「アンタ、エンデュミオンの鷹か?」
自ら名乗る前に自分の名を当てられた。ムウが有名であることも差し引いて、思っていたよりも情報通な相手に警戒をあげる。
「そうだ、ムウ・ラ・フラガだ」
「第八艦隊所属、マリュー・ラミアスです」
「あれぇ? 第八艦隊って尻尾巻いて逃げたんじゃなかったっけぇ?」
自己紹介をすれば若者のわざとらしい煽るような声、内心では怒りが溜まるもそれを表に出さないのは軍人としての在り方だ。
「帰ろう二人とも」
もっともそれは軍人、に限った話だが。
「初対面で聞きかじりの情報を自慢げに話す程度の相手だ。構っても損しかない」
「ユウキ君⁉」
「ユウキ⁉」
嫌悪感を隠すことなく堂々と顔に出しながら、砂を踏み鳴らし二人が後ろからユウキが現れた。
「お前! 出歩いて大丈夫なのかっ⁉」
「ぜんぜんへーき」
心配するムウにひらひらと手を振って答えるユウキ。無地のシャツの上から軍服を羽織った状態で、その眼はレジスタンスを冷めた目で見ている。
「さっきも言ったけど帰ろう、情報だけあってそれを扱うのは下手糞。巻き込まれて被害が出る前にさっさと行こう」
「お前!さっきから言わせておけば!」
若いレジスタンスのメンバーが怒りのままにユウキへ詰め寄る。しかしそれをサイーブが手をあげて止めた。
「こっちの若いのが悪かった、だからお前さんもそいつを離してくれねぇか」
視線が集まればいつの間にかユウキの手には構えられてこそいないものの、拳銃が握られている。表情はそのままに腰に戻す様子をマリューとムウが驚いて見るが、どうせどこからか拾ってきたのだろうとあたりをつける。マリューだけは説教の予定をいれた。
「戦艦アークエンジェル、クルーゼ隊が追っている地球軍の新型戦艦か。それと向こうが───「X105、ストライクと呼ばれる地球軍の新型起動兵器のプロトタイプだ」
サイーブの言葉を引き取って現れたのはこの場に似つかわしくない若い金髪の少女。ムウは少女がいることに驚き、マリューは建造ナンバーまで知っていることを疑問に思う。
灰色のまま立ちそびえるストライクを少女は見上げるが、胸の内は誰にも分からない。
「自己紹介も終わってこれでめでたくお終い、ってわけにはいかねぇだろ。こっちとしてもザフトに狙われてるもんが降ってきて参ってんだ。────お宅らはこれからどうするってんだ?」
「力に、なっていただけるのかしら」
「そういうならまずは銃を下ろしてもらわねぇとな、あれにも」
灰色となったストライクにも視線を向けるサイーブ。少なくとも今すぐ争いにはならないだろうと判断し、乗っていたキラに降りるようにいうマリュー。言われた通りストライクから降りると明けの砂漠たちから「子ども?」といった声が上がる。
そして目を見開いた少女はまっすぐにキラのもとへ駆け出した。
「おまえっ!」
「えっ」
振りかぶられた拳、とっさに躱そうとしたキラだが、
「よくもあの時、わたしを男だと勘違いしてくれたなっ‼」
「あっ、ゴフッ⁉」
少女のひと言に体が固まってしまった。振りぬかれる右ストレート、普段なら難なく躱すこともカウンターを合わせることもできるのだが、見事に喰らってしまう。
仲間が暴力を振るわれた、というのに思わず動けなかった。明けの砂漠は動くつもりはなかったし、中でも屈強な男性はムウの動きを牽制しようとした。
それも少女の言葉を前に何もできなかった。
「ご、ごめ、あの時はつい」
「ついだと! お前はついで人の性別を間違えるのか⁉」
「…………あーサイの愛人」
「お前もだっ! さも平然と嘘をつくなっ‼」
倒れたキラの胸元を掴んで叫ぶと勢いそのままにユウキへと顔を向ける。仮にも軍とレジスタンスという、下手をすると戦争一歩前の関係なのだが、争っている理由が理由なのでお互いなにもできない。少なからずあって緊迫した空気はかけらもなくなり、低姿勢で謝るキラ、ひょうひょうとからかいながら逃げるユウキ、キラを怒鳴りながらユウキを追いかける少女を見守るしかない。
「あ」
「え」
いつまで続くのだろうと思われた鬼ごっこは思いがけない終わりを迎えた。慣れない砂漠のせいか足がもつれたユウキ、追いかけていた少女もひっかかり倒れるとそのままユウキのお腹に頭が突き刺さった。
「ごふっ!」
砂漠に大の字で気絶するユウキの上で、え、え、と冷汗をかき始めた少女。マリューやサイーブたちがすごい眼で自分を見ている。なんというか盛大にいたずらをしようとして失敗した子どもをやらかしたなーといった親の視線。さっきまで静かに火花を散らしていたはずなのに一体感がある。
「わ、わざとじゃない! 偶然だ!」
慌てていうも分かってる分かってると雄弁な視線、実際に見ていたのでそこを責める者はいない。いたたまれなくなって涙がこみ上げてきた少女に近寄る人影。
「ナイス頭突き」
「お前はコイツの仲間だろうが!」
飛び上がりながら振り上げられた拳は見事にキラの顎を打ち抜いた。とりあえず明けの砂漠の拠点に行くということで話がまとまり、担架が二人分用意された。
少女は学生組に称賛されて膝を抱えて丸くなった。
「朗報、と言っていいものだろうか。いや悲報の方が正しいかな」
場所は変わってザフト軍の拠点。イザークとディアッカはクルーゼからの通信を聞いていた。
「足つきは現在アフリカにいるらしい、それとストライクにホワイトも確認された」
驚きの感情を隠すことなく顔に出す二人、まぁそうだろうなと予測していたクルーゼは内心で笑いながらも話を続ける。
「ずっと追ってきた因縁の相手だ、自らの手で屠りたいだろう。そこでアンドリュー・バルトフェルドの隊に合流し足つきを撃墜せよ。アスランとニコルも後に合流する、以上だ」
敬礼して了承したところを見て通信を切る。向こうでは足つきを堕とすまで帰ってくるな、と軽口を言ったり、生き残っていたホワイトへの憎悪をさらに燃え上がらせているだろう。
最近もらったばかりの報告書を確認する。そこにはこちらにかなりの被害を与えたホワイトの情報が纏められている。ジンを超えるスペックに人とは思えない卑怯な手段を使うモビルスーツ、そこから異名が生まれていた。
「白い悪魔⋯か、まるで自分たちが悪に抗う正義の使者のような物言いだな」
古くから伝わる話に悪魔との契約がある。三つの願いをかなえる代わりに魂をいただくというものだ。それを卑怯というか、正当な対価というのかは人次第。人の欲望につけ込み欲しいものをいただくというものだが、
「民間人が避難する時間、他者の命をないがしろにした結果が自らの命だというのだ。どこに悲しむ理由があるのか、理解に苦しむな」
まったく自分も人のことは言えないが、自嘲気味に笑うと新たな書類を作成する。その一つには地球への降下、自機の要請があった。
あれが悪魔に見えるものこそ悪魔そのものだろうに、そうつぶやく仮面の奥には光を見続ける瞳が輝いていた。
名前が出てないのでカガリとかけない問題、そしてクルーゼが全部掻っ攫っていった。なんかねー落ちるくらいなら自分が落としたいらしいです。なんやコイツ。
ちなみになんか白いモビルスーツいるなーまたこっそり作ってたのかなお父様の裏切り者! 状態です。知ったらヤバそう。
おまけ 〜搬送されるバカの敬意を聞いた学生組〜
全員「「「「「おめでとう」」」」」←囲んで拍手してる
偉業を成し遂げた少女「なんで褒めるんだ⁉︎ 仲間じゃないのか‼︎⁉︎」
全員「「「「「仲間だけど?」」」」」
困惑する少女「???」
感想誤字報告いつもありがとうございます。
※活動報告にておまけネタ募集してます。
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