ケバブでは何かして欲しい、という意見が多かったのですが勝手に動かしたところいい感じに落ち着きました。それぞれの正義を前にとりあえず飯食って考えろ、という意味は特に考えてませんでしたがまぁヨシ! 原作だとキラが全部背負う暗示だったのか、ケバブ食べよ。
そして虎宅への訪問です、どうぞ。
「…………大丈夫かしら」
「おいおい、もう心配事かい?」
アークエンジェルのブリッジで不安だとため息をつくマリューにムウは気楽に返事をする。備品の補充に向かうとなった時、誰が行くのかと話し合った結果キラだけでなくユウキも一緒になった。
「アイツらの気晴らしも兼ねてだって、それにバカじゃないから下手に暴れるなんてしないでしょうよ」
推薦したのはムウだ。元気そうだがパイロットの負担は大きい、普段の様子からしていつもより元気がなさそうと思ったが故の提案だった。
意外にもナタルも了承し、本人たちも断ることもなかったので二人が行くことになった。しかしマリューの心配はそこではない。
「確かに彼らが自ら事件を起こすとは思いません、けど…………」
普段のいたずらだっていたずらで済む範囲のものだ。ちゃんと叱ってそれで終わる。逆に言えばその程度の事しかしていない。かと言って周りが原因で事件に巻き込まれると、その限りではない。
そして行く先々で巻き込まれたこれまでを考えても、何かあったらどうしよう。そんな不安がマリューに付きまとっていた。
不安だわ、と頼りにし過ぎている少年たちの心配をするマリュー、その横顔をムウはこっそりと眺めていた。
キサカから集合場所にいないと通信が入る、ほんの少し前の時間である。
「ようこそ我が家へ」
砂漠の虎によって招かれた豪邸、カガリはアイシャという女性に連れていかれ少年二人はバルトフェルドの部屋へ案内された。
「僕はコーヒーにうるさくてね」
そう言って出されたコーヒー、二人とも口にするが同時に顔をしかめた。
「ハッハッハッハ! 子どもにはこの味はまだ分からないか」
苦いという感想を隠すことなく啜る少年たちを楽しそうに眺めながらコーヒーを飲むバルトフェルド。口直しのつもりなのか机に置かれた山盛りのケバブを食べだしたのを見て、視線を逸らした。
「これ、実物を見たことは? なんでクジラ石っていうんだろうね」
視線の先にはエヴィデンス1と呼ばれるジョージ・グレンが持ち帰った石。そこにはクジラのような生物に羽のような骨格がはえた化石があった。
「クジラには羽は生えてないだろう?」
「昔は生えてたんじゃねぇの?」
「…………誰かが勝手に付け足したんじゃないですか?」
ケバブを食べながら答えるユウキとキラ。なぜかキラの方はジト目で隣の友人を見ている。
「なるほどねぇ、そうなると誰かのいたずらで世界は混乱したってことになるけど」
「くじらに羽つけただけで戦争するとか誰も思わねぇだろ」
「…………そりゃそうだ」
しばらくの間、咀嚼する音とコーヒーを啜る音だけが広がる。あいにくソースはないので素のままのケバブだが、それでも美味しく食べる手は止まらない。
「おまたせアンディ」
その部屋に入ってきたのはアイシャ、そして続けてドレスに着替えたカガリも入ってきた。
「…………女の子」
「ほーん」
思わずと言った顔で口から言葉がこぼれたキラ、チラリと見てすぐに興味をなくしたユウキ。とりあえず失礼なことを言ったキラに噛みつくが、笑うザフトの二人にケバブを食べ続けるユウキ、バカらしくなって椅子に座った。
「…………いつもこんな事をしてるのか」
「こんな、とは?」
「町をうろついて、ドレスを着せたり。かと思いきや町を焼いたり!」
「キミも、死んだ方がマシな口かね?」
しゃべっていくうちに激高するカガリだが、冷静な返事が返ってきて思わず黙る。この似たような感覚は覚えがある。チラリと横を見るが特に変わった様子はない。
「…………ならば聞こうか、この戦争はいつ終わる? どこで、だれが、どうやって? 戦争に終わりはない、ならば」
机の引き出しを開けるとそこから取り出した拳銃を三人に向ける。反応は町と同じだった。
「敵対するもの全てを殺して…………かね?」
陽気であり愛する人がおり部下にも慕われている。そんな人間も殺意を持って人を殺すことができる。
そんな豹変を見てカガリは、
「…………それで終わるんなら誰もしねぇだろ」
ひとりもくもくと食べ続ける少年。ちょうど食べ終わったのか指についた食べかすを舐めて立ち上がった。
全員の注目を浴びる中歩きバルトフェルドの前に立つ。
「殺して勝ち、ならとっくに終わってる。どっちか、もしくは両方が絶滅してな」
「…………ならキミはどうするのかね、白い悪魔くん」
「なんだそりゃ」
「キミのあだ名だよ。真っ白な機体を持って卑怯な手を使う悪魔のような存在、ずいぶんと暴れてたらしいじゃないの。僕個人としてはそっちのカレの方が怖いけどね」
銃口をユウキからキラに変える。少し警戒が上がっただろうが、カガリの前から離れることはなく真剣な目つきでバルトフェルドを睨むキラ。
「キミは、コーディネイターだね。それも同族の中でもかなり優秀な、そこはまぁ分かる。けど」
顔をしかめるキラから堂々と立つユウキへ銃口を戻す。銃口が向けられようと離れようと一切変わらない少年。おそらく、といった理由はない。ただ何となくそう感じた。
「キミは、ナチュラル、なのかな?」
「そーだよ」
これまでの情報、実際に戦った感想、これらを踏まえたうえで嘘だろ? と内心で呟く。ストライクのパイロットはまだ分かる。しかしこんなナチュラルの子どもがコーディネイターを打倒してきた。優秀だと言われてきたコーディネイターをだ。
バカバカしい。
「ナチュラルでありながらあの操縦技術、そして戦場での機転。恐ろしいものだ、味方ならどれだけ良かっただろうが、現実はね」
「なら今、ここでやりあうか?」
一歩進み、向けられた銃口にぴたりと額を当てた。
後ろで飛び出しそうになるカガリをキラが抑えるが、そのキラも足に力が込められいつでも動けるようになっている。
「モビルスーツの操縦はできるだろうが、コーディネイターの軍人を相手に生き残れると?」
「ここ潰されてもいいってんならいつでも?」
笑いあう二人、緊迫した空気が部屋を満たす。
冷房が効いているはずなのにカガリから汗が落ちた。
「……………………ふっ、そんなことしないさ」
先に銃を収めたのはバルトフェルドだった。
「キミ達を迎えたのはお礼のためさ、招きこんで騙し討ちなんてする気はないよ」
「歓迎してくれるっていうから期待してたんだけどな」
「血気盛んだねぇ」
笑いながら扉をあけ、玄関まで案内する。
「次は、戦場かな」
見送りとは思えない物騒な言葉。にもかかわらず笑いながら手を振り返される。
「あ、そうだ」
歩き出したユウキが立ち止まり、振り返った。
「どうすれば終わるって話だけど」
バルトフェルド、アイシャ、キラ、カガリ、全員がユウキの言葉を待った。
「終わんねぇから水鉄砲でも使えばいいんじゃね?」
夕日に照らされた少年のあまりにもくだらない言葉。バカバカといいあう彼らを大声で笑いながら見送った夜。
部屋には置き土産と言わんばかりに置かれた山のようなケバブ。部下にも分けようと思い、先に一つ手に取ると部屋にいたアイシャがヨーグルトソースを手渡した。
「ありがとうアイシャ。やっぱりね、ケバブといえばヨーグルトソースだよ…………」
美味しそうに自分好みのソースをかけて味わう。だというのに笑顔は消え、無表情でかじられたケバブを見つめるバルトフェルド。
「アンディどうしたの? お腹でも痛い?」
「いや…………」
心配する愛人への返事もおざなりに食べ進める。
いつもと同じ自分の好みの味。だというのにどこか物足りない。時間がたったせいなのか、どこか味気なくパサパサとしていた。足りない調味料が何なのか、なんとなく当てはついていたが手に入れることはできないのだとも分かっていた。
片手に自分のブレンドコーヒー、片手には愛しい人を抱いて窓の外を眺める。昼間とは違い、熱を奪う夜の砂漠。夜空には星が瞬いている。
人が温もりを求め、それに答えるように日が昇る。
見返したらアイシャの声こうだっけ? となりました。キラが大人しい気もしたけどバカのお目付け役ってことで、あとユウキに任せた方がいいかって信頼です。
あとオマケのキラは業です。夢とか希望とかで生まれるわけないじゃん、それでも立派に生きてるのでいい子だね。
おまけ ~夜食~
部下「どうしたんですか急にケバブなんて、美味しいからいいですけど」
虎「ん、ちょっと町に出てね。たまには部下を労わろうかと」
部下「コーヒーより最高ですね、今度からこっちにしてください」
虎「まーったく、なんで誰もコーヒーの良さを分かってくれないかなぁ」
愛車「(落ち込んでるけどさっきより楽しそう)」
感想誤字報告いつもありがとうございます。
※活動報告にておまけネタ募集してます。
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