あと詰め込み過ぎは許して、運命は手探りで進めてるので。
時間は少し遡る。
この日、マユ・アスカはザフトに所属している兄と会おうとしていた。
いつも通り受付で預かっているIDを出して中に入ろうとしていたのだが、
「あーごめんな、今日は特別な日で入れないんだ」
言い返そうともしたが自分はもう子どもじゃない。兵士さんも申し訳なさそうな顔をしており、ひとまず連絡を取ろうかと二つ折りの型の携帯を取り出した時、
「なぁー入れてくれよォー中に入れば知り合いいるからさぁ」
「ダメに決まってるだろ」
隣の受付口でしつこく粘る青年が追い返された時、マユと目が合った。
「や、そっちも追い返されたの?」
「あ、え、はい」
見ていたとはいえ急に年上の異性から話しかけられて戸惑うマユ。
それを知ってか知らずが少ししゃがんで目線を合わせた青年は笑いながら話し続ける。
「少し聞こえてたけどお兄さんに会うって?」
「は、はい、そうです。忘れ物してたので届けに」
両手をあげて見せたのは小さめの紙袋、中には衣服らしきものが覗いている。
「ほーおっちょこちょいのお兄さんなんだね」
「そうなんです! 良く忘れ物するし呼びかけても本に夢中で聞いてくれないし」
最初の不安はどこへいったのか軽い雑談に花が咲く2人。
受付の兵士も最初は胡散臭い眼で見ていたが、何かあれば押さえつければいいかと自らの業務に没頭し始めた。
「あの、お兄さんはどうされたんです?」
「俺? おれはねー、今日ここで会う約束があったんだけどID忘れちゃってさぁ、連絡しようにもつながらないしね」
思ってたよりとぼけた理由だった。
だらしない大人もいるんだなと大人の階段をのぼる少女、とはいえ自分も入れないので力にはなれない。しかし自分は忘れていないので同類ではないと心の中で呟く。
入れなかったからなのか、それとも力になれなかったからなのか、落ち込んでマユの顔が俯いた時、
「…………仕方ない、入っちゃうか」
「え?」
「……………………ほんとうに入れちゃった」
数分後、軍港内部にて驚いたような呆れたような顔のマユが青年と歩いていた。
「こういうとこって警備はしっかりしてるけど、逆にしっかりし過ぎて緩かったりするんだよね」
2人が向かったのはさっきまでいた正門ではなく簡単な見張りが立っているだけの別の入り口、IDをタッチする機械に適当なカードを当ててそれっぽい音を端末から鳴らす。ついでに「お疲れ様です」と丁寧にあいさつをすれば見張りの兵士も微笑んで軽く頭を下げた。
中を歩いていても、通り過ぎる人に軽く頭を下げるだけで何も言われることはない。
「…………あの、こういうのって悪い事じゃ」
「悪いお兄さんに騙されたって言っときな、それでも怒られるとは思うけど」
「えぇ…………」
「その時はトイレ掃除でもして反省するしかないね」
あまりに堂々とし過ぎて逆に自分が間違っているのかも、そう考えてしまうマユ。もちろん着いていったのは悪いが騙す方が悪いに決まっている。
「どうせだしお兄さんのとこまで行こうか」
「え、でもそっちの用事は」
「とっくに遅刻してるから今さらだね」
どこ吹く風と言わんばかりに口笛を吹く青年、こんな大人にはならないでおこうという気持ちとどことなくカッコいいと思ってしまう。そんな反する2つの気持ちがマユの中で生まれた時、
「?」
引っ張られるように振り返った。
特に視線の先で何かがあるわけでもなく、音が聞こえたわけでもなく、なんとなく。
そう、ただなんとなく振り向いた。
「どうし…………! ごめん!」
「え、きゃ!」
足を止めたマユを突如抱えて走り出した青年、急に何をするのかと聞こうとした時、
鳴り響くサイレン、一拍空けて大きな爆発がおきた。
「な、何が」
「頭抱えて舌嚙むから口閉じて‼」
「え、ん!」
さっきまでの雰囲気から一転、助けられながらも圧を感じる青年の肩で必死にしがみつくマユ。
崩れる建物に怪我をして倒れる兵士たち、 大勢の人が走っていき、その上空をモビルスーツやミサイルが飛び交う。
その光景から思い起こされるのは2年前のかつて住んでいた場所での戦争。
「っ!」
しがみつくその手に力がこもる。
危うく家族全員がいなくなるところだった。
あったことのある人と会えなくなった。
血で濡れた人たちのうめき声が耳にこびりついた。
たまに夢に見るあの光景で飛び起きる。
こわい、いたい、といった気持ちで身体が溢れそうになる。
当時はよく分からなかったがプラントへ引っ越し、落ち着くほどに理解していく戦争への恐怖。
誰かがいなくなるかもと泣いてしまうことが増えた。
いまもここで泣き叫んでしまいたくなる自分の弱さがマユは嫌いで「大丈夫」
「キミは強い。
「この状況で生き延びたいじゃなくて、
「誰かが傷つくのが怖いと言える、
「それはキミの強さだ。
「キミなら立ち向かえる。
「でもまだ幼い。
「だから、
「いまは俺が、
「キミを守るよ」
鳴り響く爆発や銃撃音、それらが遠く聞こえるほどにはっきりと聞こえた言葉。
走っていく足音と自分を抱える手の優しさが、温もりがマユの心を落ち着かせていた。
「お邪魔します!」
どこをどう走っていったのか目についたドアを蹴破って入った倉庫、仲にはいくつかのモビルスーツが立ち並んでいる。
「そんでお借りします!」
迷うことなく真っすぐに向かった先は白い機体。
青年も見覚えのある最新ではないが優秀な機体。
かつての宿敵が、現在の友人が乗っていた機体。
「よし、ちょっと狭いけどごめんな」
「いえ大丈夫、です」
抱えていた少女を横向きにして膝の上に座らせると、手探りながらも的確に起動していき、その頭部にモノアイが輝いた。
飛び出した直後に流れ弾で崩壊した倉庫を見下ろし、そこから暴れていた機体との戦闘の際に軽く頭をぶつけるアクシデントはあったものの、無事戦艦へとたどり着くことができた。
出会った青年はどうやら偉い人らしいが、なぜかオーブの警護の人に掴まってプロレス技をかけられている。
抜け出してやり返そうとしたところをカガリ様の言葉で止まったのを周りの人は呆れた眼で見てた。
そんな様子を自分はなんとなく、叱られるとふてくされて、褒められると笑って、かみ合わないことがあると怒って、表情がコロコロと変わる自分の兄と似通ったあの人をずっと見ていた。
「…………ユウキ、さん」
救護室へ案内される途中、後ろで警護の人とコッソリ足を蹴りあってたユウキに話しかけようとした時、
『コンディションレッド発令、これよりミネルバは戦闘態勢に移行します』
腰を下ろせる、そう思っていたミネルバのクルーだがその放送を聞いて慌ただしく走り出す。
戦闘は未だ終わっておらず、むしろ始まりでしかないことに気がつく者はいない。
軍の施設こんな緩いの? って聞かれそうですけどまぁあの、バカが侵入に慣れてるってことでここはひとつ。
久しぶりに書いて文章力、表現力のなさに頭を抱えています。
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