感想や高評価ありがとうございます。主人公の乗り換えどうするかが最近の悩みです。
「緊急回避だ! 急げ!」
「え、え?」
アークエンジェルを待ち構えるクルーゼが指示を出す。突然の指示に困惑する部下たち、その一瞬が致命的だった。
「うおぉぉぉぉぉぉぉ!」
叫びながらメビウス・ゼロの武装を全開で撃ち続けるムウがヴェサリウスの艦底から現れた。かろうじて致命傷は避けたものの、遠くから放たれたアークエンジェルの最大火力、ローエングリンをかすめて火の手があがる。
航行こそなんとかできるものの、戦闘はできない程度のダメージを負って沈黙するザフトの戦艦。クルーゼが忌々し気に舌打ちして飛び去って行くメビウス・ゼロを見送った。
「おっさんが成功したらしい!」
「それは良かった!」
ムウによる敵戦艦への奇襲が成功したことを知り喜ぶ二人。あとは脱出するだけなのだが、そのためには相手をしているしつこい二人をどうにかしなければいけない。
「ヴェサリウスが⁉」
「ナチュラル風情がぁ!」
同時にザフトの二人も同じ報告を受けて身体に力が込められる。一人はナチュラルにしてやられた腹だたしさに、もう一人は味方を攻撃したナチュラルのもとからコーディネイターの仲間を取り戻そうと操縦桿を握りなおした。
「あとは逃げるだけ、って一番難しいんだが?」
「怒らせたのユウキだし謝ってみる?」
「コーディネイターだなんだ言ってても彼女いたこともないくせにイキってて恥ずかしくねぇの!?」
「煽れとは言ってないんだけど、あと帰ったらアームロックするから」
軽口をたたきながらもお互いの顔には汗がしたたり落ちている。体力こそあるものの、戦闘という一般人が経験することのない特殊な状況に神経はすり減っていた。
「…………正直なところどう?」
「エネルギーがマズい、そっちは」
「残り二割、切った」
それに加えて機体のエネルギー問題、バッテリー動力となっているモビルスーツは戦艦を相手できる実力こそあれどエネルギーがなくなればただの鉄の塊となり、棺桶となる。武装もいくつかなくなっているため、逃げ出そうにも追い出そうとするにも厳しい。それが偽りのない二人の状況だった。
「無事か二人とも!」
「おっさん!」
「おっさんじゃない! 現状は⁉」
「二人ともガス欠寸前!」
「相手がしつこくて逃げきれません!」
「分かった! それなら……………」
攻撃をしのいでいる最中に来たのは返ってきたムウからの通信。二人の返事を聞いたムウが、新しく指示を出す。
「なんだ?」
「チッ! すまねぇ、逃げられた」
「二人とも申し訳ない…………」
「…………そういうことかっ!」
相手していた二機が急に背を向けて去っていく。ディアッカとニコルから戦艦を取り逃がしたという通信を聞いてアスランは気がついた。
「逃げる気かナチュラルの臆病者めがぁ!」
同じく察することができたイザークもデュエルのスラスターを噴かせて追いかける。同じく後ろをイージスが付いていくと、振り返ったホワイトからビームが飛んでくる。しかし狙いはあまく、軽く動かす程度で避けることができる。
「あーかなりマジぃな」
モニターの隅で赤く光るゲージを片目にバックモニターを見る。そこでは振り返ることなく真っすぐに進むストライクの姿。そして、
「うぉぉぉぉぉぉ!」
「なにぃ⁉」
ガンバレルを展開したメビウス・ゼロがその先から現れた。突如現れた新たな敵に視線を奪われるイザーク、アスランがカバーしようとするも、今度はホワイトの投げられたビームサーベルに戸惑い止まった。
「相対速度あわせっ!」
「ストライク軌道に乗りました!」
「ランチャーストライカー射出!」
バスターとブリッツから逃げ出してきたアークエンジェルから射出されたランチャーストライカー、その姿を確認したキラはエールストライカーをパージしてランチャーストライカーを装備。一瞬だけPSが切れて灰色となる瞬間をデュエルに狙われるも、無事ランチャーストライクのPS装甲であるトリコロールカラーを纏っていた。
「ユウキ!」
「そらよっ!」
全員がストライクに目を奪われていた隙に近くにいたホワイトがビームライフルをストライクに投げ渡す。代わりにストライクの背中から伸びる高インパルス砲アグニを受け取って構える。ストライクはデュエルを、ホワイトはイージスを、それぞれが背中を合わせるように己の得物を構えて引き金を引いた。
「くぅっ!」
コロニーの外壁をも破壊するその火力はイージスが辛うじてシールドで防ぐものの、威力に耐えられずに大破。その直前にシールドを手離したイージスはかろうじてダメージを受けなかった。
「ぐわあぁっ!」
しかしデュエルはビームが右腕に当たり破損、ストライクの右肩に装備されたコンボウェポンポッドからの実弾も直撃し、その衝撃はコクピットの一部から火花が飛び散るほどだった。
「今のうちに逃げるぞ!」
ムウの言葉にすぐさま背を向けるストライク、ホワイトはメビウス・ゼロに牽引されて無事アークエンジェルへと帰投することができた。
「キラ……………」
その後ろ姿を見て友人の名前を呟くことしかできなかったアスランはイザークを抱えて仲間の元へと帰っていった。
「つかれた…………」
珍しいものを見たと思うキラ。目の前では弱音を吐いて椅子に寝転ぶユウキの姿があった。コクピットから降りたキラはマードックに謝ろうとしたが、気にするなと笑われ、むしろちゃんと帰ってきて偉いぞ坊主と背中を叩かれた。
「じゃあ今度からもっと使い潰していいか」
後ろにいたユウキの言葉にはキレた。その場で説教がはじまり、カズイが良いって言ってました! と言い訳、巻き込まれたカズイも整備の人間としての心構えを教えられた。おれ別に整備の人間じゃないんだけど、というつぶやきは誰にも聞かれなかった。
「おーっす、お疲れ。坊主ども」
部屋に入ってきたのはムウ、その手にはチューブドリンクが三つあった。二人に手渡すと、ねぎらいの言葉をかける。その時に、
「あの、キラです。キラ・ヤマト」
「……………そうか、よろしくなキラ。俺はムウ・ラ・フラガ」
改めての自己紹介、手を握ると続いて寝ころんだままのユウキに顔を向けると、何が不満なのか訝しい顔をしている。
「えーっと、俺何かしたか?」
「ユウキ?」
困ったように頭をかくムウ、そして思いあたることがないキラは首を傾げている。いやな相手にこそケンカ腰だが、それでも普通にあいさつはする程度の良識はあるはずなのだが。立っている二人が顔を見合わせていると、背もたれの方に寝返りを打ったユウキがぼそりとつぶやく。
「……………おっさん、初対面でコーディネイターだって言ったろ」
あ、っと二人同時に呟く。ムウが確認のために聞いて、なんとなくあやふやな雰囲気になったがもしかしたら全員から敵意を向けられてもおかしくなかった状況。ムウに悪気はなかったしキラも今の今まで忘れていた程度のことだ。
「なるほどな…………」
納得がいったのか、改めてキラに向き合うとムウは頭を下げた。
「すまない、確認のためとはいえあんな場で聞くことではなかった」
「いえ、ボクは大丈夫でしたから、ほら」
チラリと横目で寝転がっている友人を見る。それを見て笑うと、今度はユウキに向けて頭を下げた。
「キミの友人を傷つけるかもしれないうかつな発言をしてしまった、申し訳ない。もし許してもらえるのなら、ともに命を預けあったパイロットとして名前を聞きたいんだが……」
少しだけ待つともぞもぞと動く音がする。顔をあげると立ち上がる白に黒色のラインが入ったパイロット用ノーマルスーツを着た学生。
「…………ユウキ・イチノセ。謝罪は受け取る、ムウさん。…………それともう一つ聞きたいことがある」
「なんだ、ユウキ」
これまでにない真剣な顔をするユウキに身構えるムウ。キラはしょうもないことを聞くんだろうなと予想した。誇れない付き合いの長さの信頼である。
「俺は胸だ」
「若いな…………ふとももだ」
がっしりと手を握り合う二人。年の差も関係のない信頼関係が構築された瞬間だった。
「「キラは?」」
「えー……………髪?」
「おいおいその年でその趣味はやるなぁ」
「あ、だから赤いの」
「なんだなんだ、もしかしてあの時にいたお嬢ちゃんか?」
「ちょっ! やめてよね!」
会話の流れで巻き込まれたキラ、止めようとするもムウに妨害されて暴露するユウキに手が届かない。訓練された軍人の拘束をコーディネイターとしての能力を遺憾なく発揮し脱出、口の軽い友人を捕まえて妨害してきた軍人に投げ飛ばす。そこからはもうめちゃくちゃの騒ぎになった。部屋に来たカズイとトール、あとこの場にいないサイも巻き添えの性癖暴露をされ、敵味方入り乱れた乱闘になった。
報告を聞くための呼び出しに応じないことに疑問を持ったナタルが部屋に到着、全員が重力室での正座で説教された。その最中にもバカが呟いた「どうせむっつりスケベなくせに」という言葉にさらにヒートアップ。黙っておけばよかったのに他にいたメンバーも分かると頷いてしまった。どこから取り出したのかテーザーガンを持つ副長を相手に盛大な鬼ごっこが始まった。
その様子を艦内カメラで見ていたマリューはしばらく放置、ほどほどの時間で全員呼び出し。トイレ清掃の罰則を与えた。その様子を見ていたクルーは真面目な優等生なのにはっちゃけるんだとナタルの印象を改めた。
録画されたその様子はたまにマリューが飲むときのツマミになっている。呼び出されたナタルは酔う前から顔を真っ赤にして逃げるように酒を飲んでつぶれるようになった。
「ふん、新造艦か」
アークエンジェルの向かうアルテミスではジェラード・ガルシアがその豊かな腹を揺らしながら基地に向かってくる新造艦をモニターで見ていた。
他のモニターには望遠カメラで映し出されたモビルスーツの戦闘風景、白く輝く二機のモビルスーツを見て己の昇進にどう使ってやろうかと策略を練る。
なおこれが彼の悲劇の始まりになるとは予想だにしていなかった。どんまい。
どうでもいい情報 トール「貧」 カズイ「多めの毛」 サイ「足(踏まれたい)」このあと男性陣は仲良くなってます。いつかのあとがき事件はそのせいで起きました。
ナタルさんはむっつりスケベ、仕方ないよね。マリューさんは恋人いたことあるし酒の席の下ネタなら笑って流してくれそう。なんなら強そう()
ガルシアさん調べてきたけど何あの不幸な人、基地ボロボロになったと思ったらアストレイシリーズでボコボコなんだけど、めっちゃ笑う。もっと面白いのが当時だとコーディネーターとしてのキラをちゃんと認めてた稀有な人。裏切り者だけど力になるならちゃんと保護するって割とまとも(C.E.基準で)
いつかの飲み会
艦長「ねぇー見て、この頃のナタルすごくかわいいわよ」
副艦長「勘弁してください……………」
艦長「それで、彼とはどうなの?」
誰にも言ってなかった副艦長「!?!!??!?」