スーパーコーディネーターの悪友   作:アオノクロ

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 なんか修羅場を期待する人が多くて、好きなの? 作者も好きだよ。

 シンとアスランは戦争や平和へのスタンスが少し変わりました。アスランは迷っているより覚悟が決まってない感じ。シンはいい方向に強くなりたい、あ、でも曇らせが入る予定です。仕方ないね

 個人的に運命で書きたかった話のひとつ、ミーアとの出会いです。


真影のキャンバス

「ね、ね! 2人はどこで出会ったの?」

「どこ、と言われまして」

「言っていいのか?」

「たぶんダメですね」

「きゃー!」

 

 近いから、という理由で3人が集まったのはニコルの宿泊部屋。

 

 小さな椅子に座るミーアはベッドの淵に腰掛けるニコルと、堂々と胡坐を組んで座っているユウキを見てかわいらしい悲鳴をあげた。

 

 アイドルとしていいのか、と聞かれれば否である。

 

 しかし年頃の女性としては? と聞かれれば当然の行動である。

 

 いろいろと聞きたいのだがあまり答えてはもらえない。ニコルがかつてザフトに所属していたのは知っている。ならば言えないこともあるのだろう。

 

 それも2人だけの秘密というキーワードに置き換えれば、妄想を加速する要素しかない。

 

 少ししゃべった後、ほぼ一方的にミーアが盛り上がっていただけだが、ユウキが喉が渇いたという。

 

 生憎部屋に飲み物はなかったのでニコルが用意してくることになった。

 

 ミーアが取りに行くと言ったのだが、ニコルがそんな事はさせられないと押しとどめる。

 

 真面目だと思うがこれもチャンス。いろいろと聞き出してニコルの応援をしようと意気込む。

 

「そうだ、聞きたいことあるんだけど」

「いいわよ! どんな事でも、は無理だけどできるだけ答えるわ!」

 

 ラクスの事、だとしても上手く躱せばいい。逆にこっちから聞けばニコルの事をどう思っているのか、好みのタイプとか、秘密とか、いろいろと聞けるだろう。アイドルとしての魅力を万江善に活かして、友人の恋を応援するために。

 

「じゃあ」

 

 わくわくな気持ちを隠すことなく期待に胸を膨らませて待ち構えたミーア、

 

 

 

「ラクス・クラインに憧れたのか、ラクス・クラインになりたいのか、どっち?」

 

 

 

 

 

 

 冷水をぶっかけられたかのように頭と心が()()()いく。

 

「な、なにを」

「知ってるよ。ラクスは友人(ダチ)だ」

 

 ひゅっと喉に空気が通った。

 

 吸い込むでも吐き出すでもなく、空気の移動のみが行われる。呼吸ではないただの移動。

 

 さめていく身体が酸素を求めているのに取り込めず、魚のように口を動かすことしかできない。

 

「別のラクスがいるって知った時から聞きたかったんだ」

 

 否定したい。逃げ出したい。助けを呼びたい。

 

 だというのに全身から力が抜けて、自分が自分ではないかのように動かせない。

 

 いやこの身体は、自分のものか? 空中から見下ろせば憧れのアイドルの姿、どこから見ても疑いようのない歌姫がそこにいる。

 

 ならばその身体の持ち主である自分は?

 

 さっきまでよりも不思議と相手が大きく見える。

 

 自分を覗き込む瞳がラクス・クラインではなく、ミーア・キャンベルを見抜こうと真っすぐに、真剣に、正面から、

 

「なんでラクス・クラインになったのかって」

 

 自分を見ている。

 

 

 

 ミーア・キャンベルはアイドル志望でラクス・クラインに惹かれたどこにでもいるプラントの

住民だった。

 

 普通のコーディネイターでナチュラルに比べたら身体が強く、歌声がラクスに似てると言われてよろこび、日々アイドルデビューを目指して努力するどこにでもいる普通の少女。

 

 転機となったのはある日、プラントのトップともいえるデュランダルにラクスとして人前に出ほしいと言われたこと。

 

 思っていたデビューとは違ったが、やるだけやろうと意気込みラクス・クラインとしてデビューした。

 

 秘密も多く大変だが、夢であるアイドル活動。そして憧れのラクスのように。

 

 隣には全てを知っている友人のようなマネージャーもいる。

 

 間違いなく、夢のような幸せな時間だった。

 

 正確には目を逸らし続けていた、とも言える。

 

 

 

 ただそれが今日だとは思わなかっただけで、いつだって死神は自分の首に鎌を当てていた。

 

 身構えていない時に振りかぶられた一撃は、ミーアの心を引きずり出した。

 

 

 

「分かんないけど議長が大変だって、

「本物のラクス様は忙しくて、だけど代わりが必要って言われて、

「言われた通りにしかできないけど、これも夢だったからがんばって、

「あたしもラクス様のようにって、

「なりたかったの」

 

 嗚咽も涙も抑えながら、かすれた声で出てきた言葉。

 

 ラクスと呼ばれることに慣れて、いつしか自分を見失った少女の隣には、名前を呼んでくれる呼ぶ相手がいた。ラクスを占める領域が心の中にどれだけ広がっても、自分である部分は決してなくなる事はなく。それが幸か不幸か、自己を確認できることで常に恐怖が奥底に眠っていた。

 

「………………………………」

 

 ミーア・キャンベルの告白に青年は目をつぶり、沈黙している。

 

 秘密と引き換えに、などと言われるのだろうか。そんな雰囲気はないがなんにせよ、ニコルたちに迷惑をかけるかもしれない。

 

 吐き出しそうになるほどの緊張感の中、口を開いたユウキにぎゅっと目をつぶり待ち構えると、

 

 

 

「そっか、ありがとう」

 

 

 

「…………え?」

 

 思ってもいない言葉が返ってきた。罵倒は?  責は? 交渉などは?

 

 困惑するミーアだが、同じように気が抜けたように少し困っているユウキ。

 

「あーいや、その、なんだ別にラクスになったからって怒るつもりはなくて、いや少しはあったけどもえーっと」

 

 さっきまでの圧はなく年相応に、いや少し幼くも感じるほどに戸惑っている。

 

「その、なんだ。いろいろあるだろうけど、やってる事は別に悪い事じゃないし。いや嘘はよくないけど、プラントを抑えたって聞いてるしがんばってると思う」

 

 がんばっている。

 

 そう言われたのはいつ以来だろうか。

 

「ならそのことに俺が文句を言うことはないし、そういう事は必要だろうから考えるのはもっと偉い人たちだろうしな、うん。ラクスも怒ったりは…………するのか? たぶんしない気がするけど」

 

 少なくとも今ここで自分をどうにかするつもりはないらしい。

 

 ならきっとこの目から溢れるのは安心のせいだ。

 

「だからえーっと、あ、名前きいてもいい? 大丈夫なやつ?」

 

 アイドルは笑顔なのだから。

 

「……えぇ、秘密にしてね?」

 

 自分の名前を呼んでくれる人が増えて、

 

「…………あぁだからさ、ラクスの名前があっても今の頑張りはミーアのものだろ?」

 

 自分を見てくれるファンがいて、

 

「あっ、そうだ1個だけいいか?」

「え、うんいいけど」

 

 ごそごそと取り出したのは2枚の色紙と太めのマジック。

 

 よく見慣れたそれは、

 

「知り合いと自分の分、サイン貰っていい?」

 

 

 

 

 

 

「おーはじめて貰ったけど、ほんとによく分からん」

 

 自分のサインを見てそんな感想を貰ったのは初めてだ。

 

「宛名もいいのか? 確か大事って聞いたけど」

「サービスよ。間違えたりしないでね」

「そりゃ名前書いてもらったから間違えねぇよ。へーサインていろいろあんだな」

 

 2枚を見比べて好き勝手に言うユウキ。有名人と言うか、アイドルというものにまだ慣れていないファン活動の初心者だ。身近に国のアイドル的トップや本物のアイドル歌姫がいるのだが、本人からは顔見知りの枠である。というか本人も顔バレしていない有名人だがその自覚はない。

 

「ふんふん、じゃあ俺帰るから」

「え、もう? ニコルはいいの?」

「まーこれだけの為に頼んだし、迷惑かけないうちに帰ろうと思う」

 

 そんなことはない、と思うのだが引き留めていいのかも分からないので何も言えない。

 

「あ、そうだ」

 

 帰る、と言いながら自然に窓を開け始めたユウキが振り返る。

 

「ラクスなんだけどさ」

 

 けなすわけではない、そう分かっているのにやはり名前が出てくると身がすくむ。固まるミーアに分かっているのかいないのか、気にすることはなく口を動かすユウキ。

 

「旧世紀の曲とか歌ってるだろ?」

「え、えぇ」

 

 行方不明から無事に発見されて戻ってきた後、オリジナルだけでなくカバー曲を出すようになって話題になったラクス。ミーアもちゃんと聞いている。

 

「あれ、俺たちが歌ってほしいってリクエストしたんだ」

「えっ…………」

「平和のために歌を歌うのがラクス・クラインじゃないんだよ。ラクスは好きだから歌ってるんだ。よくカラオケしてたし」

「それって」

「だからミーアも好きなやつ歌えば? 古い曲でもいい奴たくさんあるし。そんじゃ」

 

 色紙を持って窓から消えていくユウキ。

 

 後日居眠りしている警備兵が見つかったが、調査してもとくに被害はなく近くに段ボールがおいてあるだけだったらしい。犯人も目的も不明である。

 

「お待たせしました、っておひとりですか?」

 

 開いた窓を見つめるミーア。風が吹き込み、ピンクの髪と机に置かれたドリンクから立ち上る湯気が揺らめく。

 

「…………ニコル、ユウキって」

「おかしな人でしょ?」

 

 クスクスと笑うニコル。

 

「ねぇ…………ニコルは、どうしてあたしの事」

 

 どこまで考えていたのか、スパイなのか、いろいろと聞きたいことはあるけれど、

 

 聞きたいことを頭を振って追い出し、勢いよく立ち上がると自分の友人でありマネージャーに振り返る。

 

「ニコルあたしね。もっとがんばるわ」

「…………えぇ、お手伝いしますよ」

 

 夜も更ける中、この先の活動について真剣に話し合う2人。

 

 3つあったコップの中身が消え、部屋の中を朝日が照らすのはメモが書かれた紙も散乱する中で、机に伏せて寝息を立てるミーア。

 

 その背中に布団をかぶせ、マネージャーは次の仕事に向けて動き出す。

 

 

 

 

 

 後日、これまでとは違った雰囲気の曲を歌うようになったラクス・クラインがいた。

 

 アイドルらしく編曲はされているが様々なジャンルの曲を歌っており、調べてみれば旧世紀のアニメの曲が心ばかり多い気がする。OPに使われたアニメを実際に見たファンが第3話で仲間の1人が頭を丸かじりされたことに驚き、少しばかり話題になった。

 

「へーなんかだいぶ変わったな」

 

 海底に潜むアークエンジェルでプラントが放送しているライブを見ていたムウが、感心したように呟く。

 

「確かに、なんていうか演技? っぽさが消えたというか」

「知っていても惹かれますねー」

 

 クルーたちも苦い顔ではなく、素直に称賛する言葉が出てきている。

 

「…………きっとがんばってるんだよ。彼女なりに」

 

 フレイの横で見ていたキラも呟く。

 

『ただの偽者ならユウキも嫌うだろうけど、彼女がもし本気でがんばっているならユウキは応援するんじゃないかな?』

 

 複雑な表情でモニターを見つめるラクスだが、無意識に身体はリズムを取っていた。

 

 偽りの歌姫が殻を破るのに、もしかしたら知り合いが関わっているのでは? と考えながら。




 にせものかーでも頑張ってるなら何も言えないしなーというユウキでした。言い当てた悪友はTSしたらダメですね。読者の予想をいい意味で裏切れたら幸いです。原作見てるとラクスのペルソナがへばりついてるんですよね。今作ではニコルがいるのでミーアになれる時間が多くて元気です。

 アイドルだしloveなliveとか、idolのmasterなネタとかあれば良かったんですがまったく触れてないので何も思いつきませんでした。探しに探したんですが見つからず、知り合いの配信枠で相談したところ、一瞬で決定しました。ありがとうございます。

 なん曲か候補は見つけたんですが、これ歌ったら流石に議長が怒るかと思いなくなく没。どっかで使いたいなぁ

 いつも感想や誤字報告、ここすき等ありがとうございます。励みになっています。


 ユウキさんホントに貰ってきてくれたんですか⁉ ありがとうございます! 大切にします! あ、そっちは見たことないサインですね。なんだろ、みーあ? って読めるような?

 ────アイドルが好きな普通の妹
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