そのライネルはガノンドロフを否定する   作:ムラムリ

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ガノンドロフを否定出来なくなるライネルの話

『……貴様にも言っておこうか。

 私には奥の手がある』

 ガノンドロフを埋めた場所に辿り着くその直前。

 ラウルは思い直したように足早に進もうとするライネルを止めて、槍を一度地面に刺し、神妙な顔をして口を開いた。

 至極真面目な様子に、ライネルも担いでいた山崩しを地面に立てた。

『奥の手?』

 秘石を身につけている、ゾナウの文明を操る右手を眺めながら。

 そんな事まで開かす必要はないと、ミネルが肩を叩いたが、ラウルは万全を期すべきだと続けた。

『私は、ある封印術を使う事が出来る。とても強力な、ガノンドロフであろうと問答無用で封じ込める事の出来る』

『こんな場所で、直前になって言うという事は……要するに、秘石を身につけていても易々と使えないものという訳だな?

 その秘石そのものを使い捨てにするか、そのゾナウの腕に影響があるのか』

『察しが良いな。ただ、影響があるのは私自身の命だ。即ち、この封印術は私の命を代償に発動出来る。

 そして、溜めも必要だ。貴様が爆炎を発生させるくらいの』

 命まで賭すとは思っていなかったライネルは、気付けば手持ち無沙汰な四つ足と腕を忙しなく動かしていた。それから落ち着き直して、髭を弄りながら少し考える素振りをした。

『……それは、即ち。万一、この先に居るガノンドロフか何かに敵いそうにないとなった場合は、それを目的にするという事か』

『そういう事だ。協力してくれるだろう?』

 ラウルはじっと目を合わせてきた。

 ……己が頭を下げた時と同じ、真剣さ。

 ライネルは改めて辺りを見回した。邪の力は刻一刻と強くなっている。掃討したこの場所もすぐにまた邪で溢れてくるだろうし、そう時間の経たない内に地上にも影響が及び始めるだろう。ならば、再び傀儡となった魔物が溢れ出すのも、自由意志を獲得している魔物が傀儡に成り下がるのにも、時間はない。

 そしてそれはハイラルの民が再び危険に冒されるのとも同等だ。

 もう、戻って戦力を増強しているような時間的余裕はない。

 そして……共闘している内に、以前よりもラウルと気兼ねなく接せるようになっているのにも気付いた。

 それを含めて、ライネルは答えた。

『…………協力すると、約束しよう』

『頼む』

 ……けれど。その時ライネルは、そんな大事に至るとは露ほどにも思っていなかった。

 グリオークまで既に生まれ出ていても、それは変わらず命としての形もあやふやな、出来損ないでしかなかったから。

 

*

 

 ……己の失態だ。

 そう理解しつつも、ラウルもゼルダも、ミネルさえもライネルを責める事はなかった。ただ、秘石を取り戻したガノンドロフに向けて戦意を集中させていた。

『過去から学ぶ事は肝要だが、過去に囚われては何も為せる事はない』

 その言葉を受けていなければ、ライネルもここまで平静では居られなかっただろう。

 すべき事は、分かっていた。それに集中しなければならない。顎が砕けそうになる程に噛み締めながらも、ライネルは前を向いた。

 周りの邪からは、幾多の魔物と、ファントムガノンすらもが何人も生まれ出ていた。

 この光の力が最大限増幅される環境でゼルダとラウルが秘石を持っていても。

 ミネルが一人でゴーレムの軍隊を生み出す事が出来ても。

 秘石を奪われたとは言え、己が生み出される魔物とは比較にならない暴を振るえるとしても。

 無理だと悟る程には。

 ラウルに身を寄せて、小声で言う。

「……己の失態だ。言い訳をするつもりはない。

 己の命尽きるまで、使って良い。だから、頼む」

「……ああ」

 

 ガノンドロフが瞬く間に生み出した数多の軍勢は、一斉に襲いかかる。

 ミネルが在らん限りのゴーレムを呼び出して防戦しつつ、ゼルダとラウルは光の力を最大限に発揮して敵を灼いていく。

 だがガノンドロフ自身は直立したまま、ライネルに視線を合わせていた。

 ライネルは吼える。

「己が怖いか、ガノンドロフ!

 そうだろうなあ!? 貴様が最初にした事は、己もラウルも騙して秘石を奪い取る事だったからなあ!!

 貴様は貴様自身で、秘石が無ければ虚仮でしかない事を示してしまったのだからなあ!?」

「……黙れ」

 ガノンドロフは全身をわなわなと震わせている。

 邪の力を密に固めて作った刀を手に持ちつつも、意志とは裏腹に足を進める事がどうしても出来ないような様子。

 それに対してライネルはこつ、と前へと一歩歩いた。ボコブリンやリザルフォス、モリブリンなどが押し寄せてくるのを、大剣を大きく振るって蹴散らして。

「相変わらず貴様が王足り得るのは、生まれ持った素質だけだ。

 貴様の作る世界は貴様かそれ以外しか居ない。貴様は一方的に与えるだけで何も返される事などない。

 貴様が王になったとしても、貴様は孤独だ。それに虚しさすら感じられない、空虚な存在よ!」

 ガノンドロフはそれを鼻で笑って返す。

「孤独を空虚と捉える軟弱者になど、王は務まらぬわ!」

 ライネルは更に鼻で笑って返した。

「貴様も母の肚から生まれ出て、一人では何も出来ない時期があったのだろう?

 もし最初から孤独であったならば、貴様はそのまま死ぬ程度の軟弱者よ!」

 ライネルは更に前へと歩いた。襲いかかってきた白銀のライネルに対し、横の一振りで両腕を武器ごとへし折り、縦の一振りで頭を地面にまで埋めた。

 自らの役割に殉じる事を決意したライネルは、今となればガノンドロフを殺した時よりも、秘石を身につけていた時よりも、強い気迫を放っていた。

 ガノンドロフは後退こそしなかったが、未だ前へと進む事がどうしても出来ない。

 また、ライネルがガノンドロフを挑発している為に、どうにかラウル達は魔物達の攻勢を捌ききれていた。

 ガノンドロフはとうとう三人のファントムガノンをライネルへと差し向ける。

 ライネルは斬撃を意に介さず、振り下ろしの金棒を額で受け、刺突の切先を片腕でそのまま掴む。

 そして、金棒を振り切ったファントムガノンの頭が踏み潰された。握力だけで槍の切先を破壊された後に、武器を替えようとしたファントムガノンが大剣の一振りで潰された。そして刀で二撃目を振るったファントムガノンは、それも意に介される事もないままに、ライネルの伸びてきた手に首を掴まれてそのまま胴体と分けられた。

 額から目につらつらと流れる血を雑に拭い、手の平の血を舐め取ってから大剣を持ち直す。

「貴様は、ただの臆病者だ。

 己という脅威を克服しようとも、その手段が秘石に頼って上から叩き潰すしか持ち得ていない。

 ラウルもゼルダもミネルも、賢者達も、守る者の為ならば己など容易く屠って見せるだろうになあ?」

「黙れ、黙れ、黙れ黙れ黙れ黙れぇぇ!!」

 ガノンドロフはとうとう耐えきれなくなって、邪の力をより一層全身から溢れ出させた。

 それに対し、ライネルは頭上に大剣を掲げた。

 おもむろに、これから一直線に貴様を叩き潰すという意志を示すように。

 そして、やはり足が動かないガノンドロフへと再び駆ける。

 ——そのライネルには、元から白銀より更に上へと行ける素質もあったのだろう。

 秘石はきっかけに過ぎず、黄金となったその肉体は秘石を失っても元に戻る事はなく、白銀とは比にならない肉体を保ち続けた。

 秘石を身につけていた時のような、その体格からしても規格外な力と得た能力こそ失われたものの、それでも他のどの魔物とも、ガノンドロフが手ずから生み出した魔人すらも凌駕している事は確実なその肉体。

 故に。

 改めて襲い掛かるファントムガノンを突進のみで蹴散らし、しがみつかれてもライネルは止まらなかった。

 ガノンドロフとの距離が詰まる。最早何を召喚しようとも盾には成り得ない。

 そして、金棒を両手で構えたガノンドロフに、山崩しを叩きつけた。

 ……しかし。

 ガァンッッ!!!!

「なっ!?」

 ガノンドロフは恐れを克服出来なかった。その代わりに、自らに邪をあらん限りに凝縮させていた。

 それは今や、黄金に到達したライネルの肉体の強さを、体格の差を含めても強く凌駕する程であり。

 故に、黄金のライネルの全力は、ただ頭上へと掲げられた金棒によって弾かれていた。

「ふふ、はははは、はははははは!!」

 ガノンドロフは、先程までの恐れなどどこに行ったのかと言うように大きく笑った。

「そうだ、力だ、我が求めているのは圧倒的な、純粋な力だ! それ以外の何をも我は必要とせぬ!!

 小物どもがほざく全てはこの力の前では何の価値も持たぬ! 矮小な者にしか見出せぬものに我が構う必要などあるものか!!」

「……屑が」

 ライネルはその物言いに侮蔑を隠さず、吐き捨てる。

 しかし、最早それすらも耳に入っていないようで、全てを見下す満面の笑みと共にガノンドロフは金棒をライネルに向ける。

「さて、手始めに貴様を塵芥に変えてやろう!!」

 秘石の力を発揮する枷となっていた恐れが消えて、純粋な破壊の力すらも上回られたライネルには為す術もなく……しかしそこに、光の一閃が差し込まれた。

「助力しますっ!」

 ライネルが惹きつけている内に、魔物の数を減らす事が出来ていた。すぐにでも復活するだろうが、ミネルのゴーレムも陣を作る事が出来ており、堪える事が出来ている。

 そしてラウルも数多の魔物と応戦しつつ虎視眈々と、ガノンドロフが決定的な隙を見せるのを待っている。

「下らん! 纏めて圧し潰してやろう!」

 

*

 

 地底を駆けるその道中にて。

 ゼルダがボコブリンの大群に向けて持っていた武器を投げたかと思えば、途中から来た軌跡をそっくりそのままなぞって戻ってきた。

 予期せぬ軌道に、ボコブリン達は避ける事も出来ずに武器から溢れ出る光の力に灼かれて崩れ落ちていく。

 ライネルはそれを見て、若干懐かしげにしながら口を開いた。

『まだ己がガノンドロフの傀儡だった頃、ゼルダにも殺された事がある。あの、投擲したものを軌跡のままに巻き戻す術には最初、何をされているのか理解すら出来なかった』

 もしかして、私が未来から来た事を察している?

 その疑念を抱きながら、怪訝そうにゼルダは聞いた。

『何が言いたいのでしょう?』

『いや、別に恨みなどはない。それより』

 ライネルは単純な興味でしかないように、担いでいる山崩しを指差して聞いた。

『これに対しても出来るのか?』

『……こんな重そうなものにやった事はありませんが、多分出来ると思います』

『ならば、一回だけ試させてくれ。丁度、良さげな練習台も前に居る』

 目の前には手下達を屠られて怒り心頭なボスボコブリンが居た。それに対し、ライネルはまだ距離があるにも関わらず、山崩しを頭上に掲げて、そのまま投擲した。

 ぐるんぐるんと回転しながら、物凄い速さで飛んでいく山崩し。それはボスボコブリンの理解よりも先に贅肉に埋まるかのようにめり込み、そのままボスボコブリンを遠くまで弾き飛ばしつつ、高くへと跳ね上がった。

『はっ!』

 それにゼルダが手を伸ばすと、投擲した軌道のままに山崩しは戻ってきて、ライネルの手に収まった。

『中々楽しいな』

『……担いでいる弓が泣いているぞ』

 ラウルが呆れたように返した。

 

 ……とはいえ、愚直に投擲しても弾かれるだろう。

 全力の叩きつけを受け止めてしまう膂力すら、今のガノンドロフにはある。やるなら不意を突いて、ラウルが封印を発動出来るその機会が来た時、ただ一回きりだ。

 ゼルダが光の弓でガノンを攻撃する。ガノンドロフは弾いてライネルへと駆けてきた。

 ライネルは迎え打つように大剣を横に振るうが。

「生っちょろい!」

 それも弾かれ、返す形で金棒が胴体にめり込んだ。

「グアア゛ッッ!?」

 ファントムガノンとは比較にならない破壊力は、黄金だろうと一発で膝を突かせた。口から血が零れ出る。しかし、ガノンドロフは唐突に飛び退く。直後、ゼルダの光の一閃がその場所を貫いていた。

 邪そのものになりつつあるようなガノンドロフにとって、光の力は相当に堪えるであろう事は容易に想像がついた。

 そして同時に、ライネルは金棒から溢れ出る濃密な邪の力を直に浴びて、すぐに傷が治っていくのを実感していた。

「グ、ググゥ……」

 しかし、癒される心地よさ以上にライネルは歯を食い縛る。たった一発で目の前のガノンドロフが、これまで唾棄していたような男には見えなくなっていた。更に体の中から今までとは別物な……ラウルやゼルダに向けられるような殺意が湧いてきていた。

 最早、余裕はなかった。

「ゼルダ、ラウルッ! これ以上己が邪に蝕まれるなら、己を躊躇わずに灼いてくれっ!!」

 そう叫んで頼まなくてはいけない程に。

「……はい」

 ガノンドロフは、最早玩具を見る目でライネルを見ていた。




ティアキンガノンって、対人ゲームでまずチート入れてオンライン潜って勝ちまくって満足出来る残念な印象。まあ、だからこんなの書いてるんだけど。

ラストバトルでいきなり介護プレイを要求されるってすっごく不評そう。
でもラストバトルでいきなり特殊ルールを強いてくるゲームって時々ありますよね。
しかもこれまでの道中で殆ど経験の与えられてないような事をされるものもあったり。
いきなりチームを二つに分けられてそっちにヒーラーが居ないからそのまま敗北したり、
道中で1回しか使えなかったモードをそこでまた使わされて何がなんだか分からないまま戦闘させられたり、
敵の大技の事前対策が必須級だったり、
高難易度を謳ってたり死にゲーならともかく、そうじゃないRPGでそんな事すんなよっていうのがぼちぼち。

脳内プロットは完結までがっちり固められているんだけど、まあ、後5話くらいは続くかね。本当はバトルこの1話で終わらせる予定だったんだけど、まあそこまで書いてたら10000文字とか行きそうだったので区切りました。

評価5個入ったらぼちぼち伸びてくれそうな気がする。

ゲーム中からのライネルの印象

  • 誉無き蛮族
  • 誇り高き戦士
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