春姫さんは九尾の人柱力   作:寝心地

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第10話

アイズは目の前の敵に戸惑っていた

 

相手は間違いなくアイズよりも格上、殺そうと思えば直ぐに殺せる筈なのに目の前のエルフはそれをしようとしない

 

その理由はアイズは知る由もないが至って単純明快

 

リュー自身にその気がないから、そして力の制御に必死だから

 

一時的とはいえ4段階のランクアップと言う能力は彼女に絶大な力をもたらすと同時に【本気を出せば殺してしまう】と言う足枷も生み出した

 

そこでリューは妨害と防御に徹しアイズを足止めする事だけに専念した

 

「【剣姫】悪い事は言いません。どうかこの場に留まって欲しい」

 

「それは出来ない。モンスターが多くの人を傷付けてる」

 

「………………………………」

 

その決意の籠った目にリューは何も言えず仕方無く木刀を構える

 


 

春姫はベルの腕の中で外套を抑え抱き抱えられていた

 

とある事情でウィーネが異端児の一団から逸れその後を追うため2人でウィーネの元へ向かっていた

 

「ウィーネ!!」

 

「ウィーネ様!!」

 

「春姫!!ベル!!」

 

大通りに出るギリギリの所でウィーネと合流する事が出来後はウィーネを異端児達の元へ送り届けるだけだと動き出そうとした時

 

「……………………」

 

ベートが現れた

 

咄嗟にベルはウィーネと春姫を抱き寄せ透明化の効果のある外套を被った

 

「……………………出てこい」

 

しかしベートの視線は真っ直ぐにベルのいる方向を捉えていた

 

永遠にも感じる一分が過ぎ春姫が飛び出す

 

「ああ?」

 

訝しんだベートは唸りながら首を傾げ春姫の奥の通路を見る

 

「一人じゃねぇだろ、他の連中も出てこい」

 

「私一人だけです」

 

「ふざけた事抜かしてんじゃ……」

 

「私一人だけです!!」

 

春姫の大声が辺りに響く

 

「たからあっちへ行って下さい!!………………早く!!」

 

その言葉がベートでは無く自身に向けられていると悟ったベルはウィーネの手を引き離れる

 

「戦えもしねぇ奴が、粋がってんじゃねぇ」

 

ベートは石畳を撫でる様に蹴り上げると無数の破片が春姫を直撃しよろける

 

その隙にベートは横を通ろうとした時悪寒が走る

 

牙を剥く巨大な狐、その瞳は縦に割れ憎しみを燃やす様に紅い、何より奇妙なのは尻尾が9本もある事

 

一瞬見えたその巨大な化け物にベートは大きく下り冷や汗を流す

 

(何だ?今のは……………)

 

次に春姫が顔を上げた時、そこにあった2つの目は縦に割れ紅く燃えるようになっていた

 

春姫は自身の精神世界で九尾と会話をする

 

『漸く儂に心を委ねる気になったか』

 

「貴方に委ねるのではありません。私は決めたのです。私の心は誰にも委ねない」

 

『そうやって誤魔化しが効くのも今の内だ、お前はいずれ儂の力を全て欲し儂に委ねる様になる、今目の前にいる奴の様に憎しみに囚われてな』

 

「…………………………………貴方の口八丁はもう沢山です」

 

春姫はそう言い残すと精神世界を出てベートを見る、瞳は燃える様に紅く爪は伸びているが意識を失う事は無くしっかりと考えが巡っていた

 

「貴方をこの先には行かせません」

 

獣の唸り声では無く春姫のしっかりとした声で目の前のベートにそう宣言した

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