「は、春姫…………さん」
ベル、否、その場にいる全員が動けずにいた
春姫の変容、爪が異様に伸び瞳が獣の様に縦に割れた瞳孔になり半透明の赤い何かを纏った春姫はその皮膚が剥がれ落ちその下にある赤黒い体に4本の尻尾
「グルルルルルルルル」
そして人から発せられているとは思えない獣の様な唸り声
「グガアアアアアアアアアアアアア!!!!」
月に向かって咆哮を上げた瞬間、地面にヒビが走る
「うわわ!?」
ベルも【イシュタル・ファミリア】のその場にいる全員がバランスを崩し慌てて何かに捕まる
春姫は歩き出そうとした瞬間、両手に巻かれた鎖に阻まれそれを鬱陶しいそうに引き千切る
「何だ、春姫にこんなスキルがあったのかい?」
「春姫殿…………あの噂は本当だったのですか…………」
ベルと共に助けに来た命もベルの隣で呟く
「命さん、噂って?」
「春姫殿の中には怪物が住み着いていると言う噂でした、我々は詳しい事は教えて頂けませんでしたがタケミカヅチ様は何かをご存知の様子でした。そして春姫殿と密会する為春姫殿の住む屋敷に赴いた時屋敷の家人が話しているのを聞いてしまったのです。【春姫殿には九尾の化け物が住み着いている】と」
「じゃあ、あれが」
「はい、恐らく春姫殿に住み着いていると言う化け物…………」
「グガアアアアアアアアアアアアア!!」
春姫は再び咆哮を上げるとベルと命に襲い掛かる
「グッ!!」
「春姫殿!!止めて下さい!!」
命は必死に春姫に声を掛けるが帰ってくるのは唸り声と尻尾による追撃のみ
「ガッ!?」
「命さん!?」
命を連れて1度距離を取ると命に尋ねる
「あの状態の春姫さんを止める方法は?」
「分かりません。タケミカヅチ様なら或いは…………」
命の言葉にベルは春姫を一瞥すると立ち上がる
「命さんはタケミカヅチ様から春姫さんを助ける方法を聞いてきて下さい。僕が時間を稼ぎます」
「その必要はないぞ」
声が2人が振り返るとそこには【ヘスティア・ファミリア】と【タケミカヅチ・ファミリア】が立っていた
「皆!!」
「よぉ、ベル、大変な事になってるな」
「ベル様!!ポーションです、飲んで下さい」
「ベル君、君って奴はどうしてこう問題に巻き込まれるんだ。それに、まさか助けようとしてる子が【人柱力】とはね」
「???じんちゅうりき?」
「その話は後だ。簡潔に説明する、今の春姫は化け物を封印している封印が解除されかかっている状態だ。命、お前が静めなさい」
「じ、自分がですか!?」
「この場で極東の術に精通している魔術師はお前しかいない。他の者には時間稼ぎをしてもらわねば」
「……………………分かりました。皆さん、よろしくお願いします!!」
「「「「「おう/はい!!」」」」」
命と2柱の神以外が春姫を取り囲む
「ッ!!……………………」
命はタケミカヅチから言われた通りの陰を結び魔力を注いで行く
春姫は口を開くとその前に黒い玉が集まる
「ッ!!【尾獣玉】だ!!皆それに触れるな!!」
それの正体に気付いたヘスティアは叫ぶと春姫と戦っていた全員がその玉から離れる、暗闇に消えていく玉は数秒で遠くの山に直撃しその山と周囲を吹き飛ばす
「……………………マジかよ」
その破壊力にヴェルフは冷や汗を流し呟く
「良し、全員下がれ!!封印する!!」
「「「「「ッ!!」」」」」
タケミカヅチの号令に従い下がると春姫は獣心に従いその後を追う
下がるベル達と異なり命は1人走り出すと春姫の腕を掻い潜り春姫の腹部に手を置く
「【八卦封印】」
ドクンと春姫の腹部の字が浮かび上がり春姫の姿がドンドンと戻っていく
「八卦封印…………解け掛けていた封印を再び掛け直した。もう安全だ」
タケミカヅチの言葉に安堵したベル達は春姫を連れその場を脱出した