フェルズの魔法で復活を遂げたウィーネと惜しみながら分かれベル達は本拠に戻る
しかし、今回の一件の代償は大きかった
破壊され尽くした建物、決して軽くない負傷を負い寝かされる人々
その間を忙しなく動くギルド職員や冒険者
向けられる悪意にベルは心を引き裂かれそうになったがその横で更に辛そうな顔をする者がいた
「春姫さん?…………大丈夫ですか?」
耳を塞ぎ蹲りガタガタ震える少女はすっかり悪意というものを敏感に感じ取る様になりそれに共鳴するかの様に九尾を感じ取っていた
「……………………離れましょう」
ベルに抱えられる様にして離れようとしたその時、春姫の首に何かが掛かった
見るとそれはネックレスの様であり石英の様な物が付いている。顔を上げるとそこには外套や手甲等で姿を隠したフェルズがいた
『私が作った魔道具だ、九尾の力を封じる効果がある。完全では無いがな。首から下げていなくては効果が無いから肌身離さず持っていると良い』
「九尾を封じるって…………なんでそんな物を…………と言うかフェルズさんは九尾を知って……」
『九尾は私が以前いた国に何度か侵攻して来た事があった、正確にはその人柱力がだがな、多くの者が死んだ、その時ウィーネに使った魔法を発現したのだよ。だが効果は知っての通り、誰に掛けようと1人として成功しなかった。だからこれは礼と警戒だ。2度とあの様な惨劇を起こさない様に』
フェルズはそう言うと視線を集め始めそろそろ退散すると言い残し姿を消した
それから落ち着きを取り戻した春姫と共に街を歩いているとエイナがいた
「エイナさん…………」
「利己的な判断で街と市民を危険な目に合わせた。本当なの?」
「……………………はい」
パンッ!!と乾いた音が響く
ベルは何か衝撃を受けた様に首を揺らしエイナの目には涙が浮かんでいる
「信じないよ!!信じられるわけ…………無いじゃん……」
九尾・異端児・1度は起こったウィーネの死
多くの出来事が短い期間で訪れたベルは既に限界だった
正しい事をしたとは言い難い。だが間違っているとも言い難い
そんな決断
更に異端児の多くはまだ町中に取り残されている
問題は山積みの中ベル達は本拠へ帰った
それから数日
一向にベル達の風当たりは弱まる事を知らず寧ろ強くなっていく
春姫も直接的な被害こそ無いもののその内にいる物は容赦無く春姫の心を抉ってきた
『ふん、まさかお前の英雄言うとやらが人間を危機に陥らせる存在の事だとはな』
「静かにして下さい、煩いですよ」
『所詮奴もお前と同じ穴の狢だ、自分の欲の為に大勢を犠牲にする人間の典型だ』
九尾の言葉にガシャーン!!と春姫は机をひっくり返す
「煩い煩い煩い煩い!!ベル様は私の様な者とは違うんです!!貴方の様な化け狐が知った様な事言わないで!!」
『フハハハハハ!!そうだ、もっと恨め憎め!!フハハハハハ!!』
「何事ですか!?」
騒ぎを聞き付けた春姫が部屋に入るとグチャグチャになった部屋に佇み静かに泣く春姫がいた