例の件から数日
春姫は完全に外の世界から自身を隔離した
部屋から外に出ることをせず、思考をせず、死んだ様に生きている
ファミリアもファミリアで最近何か忙しくしている様だが春姫はそれすらも己の内に留めなかった
外の世界の人々の敵意が恐ろしく
己の内の九尾の化け狐が恐ろしく
そして、その力を怒りと共に解き放ってしまう事が恐ろしい
九尾の言葉が頭に響く
『お前は弱い、心も体も』
その通りだった
強くなる為武器を取った。全てが遅かった
ベルが現れ隣に立ちたいと思った、結局何も成長できていない
トントンと扉を叩く音が響く
春姫はそれを無視するが扉は開かれる
「春姫君、入るよ」
ヘスティアが声を掛け中に入る、その顔は何処か深刻だ
「春姫君…………」
ヘスティアは名前を呼ぶだけで何も言わず優しく春姫を抱きしめる
「大丈夫だよ、君はちゃんと成長してる」
ヘスティアは語り掛ける様に春姫を励ます
「ですが、私は何も出来ませんでした。ウィーネ様が泣いていた時も、ウィーネ様が亡くなって悲しんでいるベル様を励ます事も…………私がしたことと言えば感情に任せて暴走しかけただけ、フェルズ様が居なければ多くの人を殺してました。ベル様も…………きっと」
「……………………そうだね、九尾は君の感情の昂りに従って解放される。そういう意味では君はまだ未熟だ、でも一番成長性を持っているとも言える」
「……………………え?」
ヘスティアの言葉に一瞬考え春姫はヘスティアと目を合わせる
「九尾を制御出来れば君はベル君の隣に立てるだけの力を秘めている。九尾はそれだけ強大な力だ」
「………………………………私が…………ベル様の」
「それだけじゃない。今もベル君達は君の力を欲してるよ、九尾の力じゃない、他でもない君の力をだ」
ヘスティアは春姫から離れると立ち上がりヘスティアに頭を下げる
「頼む、ベル君達、そしてウィーネ君達異端児の為にも力をかしてあげてくれ」
「…………私は…………私は」
「結論を急がなくて良い、まだ時間はあるからね」
ヘスティアはそう言うと部屋を出ていき春姫が1人取り残された
開戦当日
「やっぱ春姫は出て来ねぇか」
「仕方ありません。あの方の心は繊細です。それに九尾の心配もあります、私だけでやりましょう」
「………………………………春姫殿」
「……………………行こう」
ベルは春姫の自室のドアを一瞥し惜しみながらそう言うと外に出た
シンと静まり返った本拠で1人ヘスティアも行動を始めようとした時、ガチャリと春姫の部屋の扉が開いた
その光景を見たヘスティアは微笑みを浮かべる
「…………遅いじゃないか、皆もう行っちゃったよ」
「…………私は何をすれば良いですか?」
「ベル君を助けてあげてくれ」
「分かりました…………その前に、ステイタスの更新をお願いできますか?」
「ああ、分かったよ」
ヘスティアは春姫の背中に指を置きステイタスの更新を始めた、スルスルと進む指がピタリと止まった