入道少女のヒーローアカデミア   作:紅葉紫苑

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職場体験③

「お前が何を言おうと‼︎ お前は兄を傷つけた‼︎ 脊髄損傷で下半身麻痺だ‼︎ もうヒーロー活動は叶わないそうだ‼︎ 兄さんは多くの人を助けて導いてきた‼︎ 立派なヒーローなんだ‼︎ お前が潰して良い理由なんてないんだ‼︎」

 

 うつ伏せの状態でステインの持つ刀が左上腕部を貫通し地面に縫い付けられている飯田天哉。

 悲痛な叫びが木霊するが……ステインの耳には届く事なく……血に濡れたその凶刃をステインが舐める、すると飯田の身体は金縛りにあったかの様に動かない。

 動かない飯田の頸動脈に向けて手に持つ刀を振り抜こうとした刹那……凛とした鈴の様な声音が響く。

 

「復讐は何処までも虚しく哀しいと言ったでしょう? 飯田さん……まっ、ヒーローらしくこう言おうか? 助けに来た……ってね」

 

 刹那、雲の拳が無数に放たれる。

 刀で防御しつつ跳躍し距離を取るステイン。

 一輪はチラッと立ち位置を見て理解する、両サイドには建物の配管やゴミ箱、排熱ファンなどがありどう見ても高速移動を是とする飯田が先手を取れる場所でない、しかも相手は閉所戦闘に手慣れている。

 ステインは雲を自由自在に操っている闖入者を見て興味なさげに語る。

 

「少年の次は少女か……今日はよく邪魔が入る……女、失せろ……お前には興味が湧かん」

 

 刀を構え直して……舌舐めずりしつつ一輪に向けて立ち去れと警告する。

 対して一輪は肩を竦めながらいつもの様にへらへらとした笑みを浮かべ、ゆっくりと徒手格闘の構えを取りながらステインへと告げる。

 

「……それは無理な話だ、私は眼の前で友人が死ぬのを黙って見てられるほど人でなしでは無いし……眼の前に居る犯罪者を見過ごす程、腐っちゃいない……この社会やヒーローについて君と語り明かすのも大概楽しそうだがお互いにやる事が山積みだ……私は飯田くんと其処のヒーローをお前から逃さなきゃならない……さて、言葉で殴るのはこの辺で終わらせて、あとは拳と刀で語らうとしよう」

 

 刃毀れがやや目立つ日本刀を構えるステインと……雲をメリケンサックの様に装着しながら徒手格闘の構えを取る一輪。

 互いの距離は8m程……。

 風が止まった瞬間、2人は一足で即座に接近して互いの獲物を振り抜く。

 即ちステインは日本刀を、一輪はその拳を。

 ステインの日本刀が振り抜かれる前に懐へと潜り込み正中線に向け一撃を撃ち込む一輪。

 対して……このレベルで鍛え上げられた徒手格闘術の相手に長物は不利と即座に判断し腰に装着したナイフを引き抜いた。

 そして突進してくる一輪の頸動脈へと突き刺し、切り裂く様に振り切るステイン。

 しかし、一輪にナイフが刺さる事はない、マフラーの如く首に巻かれた雲が物理的防壁の役割を果たしており刃を通さない。

 一瞬の攻防の果て、ギャリギャリギャリっと金属独特の音が木霊してナイフの刃が雲に接触し一輪の拳は吸い込まれる様にステインの鳩尾に直撃するが反撃としてステインの鋭い蹴りが顔面に見舞われ即座にバク転で距離を取り回避する一輪。

 硬質化された雲は其処らの金属よりも遥かに高硬度であり金物屋で売っている様なチンケなナイフ程度で剥がれる様な硬度をしていない。

 飯田の眼に止まらない速度で振り抜かれる刀と拳。

 反応速度と反射神経の速さ、そして個性がそのまま勝負を分つ。

 

「良い反応速度だ‼︎ その格闘技術‼︎ 素晴らしい‼︎ 鍛え上げられた肉体から繰り出される徒手格闘‼︎ 名を聞こう‼︎ 少女よ‼︎」

 

 攻撃の合間合間に賞賛を贈ってくる程度には余裕があるのかステインは口を動かすのも得意らしい。

 軽口に付き合うのは一輪の趣味ではないが……目の前の殺人鬼が少しでもこっちに目を向けてくれれば儲け物。

 

「ヒーローネームはふわふわヒーロークラウディア……本名は雲居……いや、お前の世代にはこっちの方が分かりやすいか? 白雲一輪と言った方が」

 

 白雲の名を出した途端に……ステインの眼の色が変わる。

 その手に持つ刀の速度も、足の運びも、距離の詰め方も、劇的に。

 まるで今までは子供とのじゃれ合い、子供との手遊びとであったとでも言う様に、全てが変わる。

 

「……血に塗れたつまらんゴミとはな‼︎ 貴様は俺が駆除すべき俗物の中でも最上位に位置する贋物だ‼︎」

 

 思う所があったのか、それとも一輪の事を理解しているのかステインはもはや飯田天哉や飯田よりも先に殺そうとしていたプロヒーローなぞ眼もくれる事なく一輪を殺すべく斬撃を放つ。

 上段からの大振りに対して極めて冷静に、一輪の首にその切先が届く刹那、雲をメリケンサックの様に装着した拳で刀身を真横から殴りつけて粉々に圧し折ると素早い身のこなしで殴打を行おうとするがそれよりも速く太腿にナイフを投擲される。

 回避を選択しようとしたが背後には未だに動けない飯田さんが。

 よければ確実に脳天に突き刺さる軌道故に避ける選択肢は無い。

 ならばやれるのは1つ。

 投擲されたナイフを回避する事なく掴み粉々に砕く。

 

「ゴミとは酷い言いようで……お前如きが私の何を知ってると言うのか……本物だとか贋物だとか……それこそくだらないし烏滸がましい‼︎ それに、インゲニウムを排除した意味も全くわからん……真っ白で他者を救おうと常に走っていたヒーローを贋物呼ばわり? それこそ思い上がりも甚だしい‼︎ 貴様の下らぬ観念を至上のものとして他人に強要するな‼︎」

 

 互いに言の葉を交わし、拳と刀を交錯させながら思いの丈を語る。

 しかしながら、動けない2人を庇いつつ決定打を入れるには隙が無い、隙が無いと言うよりは白雲一輪と名乗ってから本気で一輪を駆除してきている。

 乱打と剣技が交錯し……激しい金属音が木霊して……一瞬の隙を突いて飯田の顔面に向けて投擲されたナイフを砕き地面に叩きつけた。

 その、ほんの僅かな隙……0.2秒程の極めて僅かな隙を突かれて一輪の腹部を抉り取る様に突き刺された刀、コスチュームを貫通し背中まで達したその刃は一輪の血で赤く染められており……血に塗れた刀身はそのまま傷の深さを無情に物語っていた。

 一輪の短い叫びが確かに響き……無情に引き抜かれた刀は血に濡れており……数瞬の後、口から多量の血を吐き出す一輪。

 白いコスチュームが鮮血に染まり地面に溢れる血溜まりに膝をつく。

 一輪への確実なるトドメを刺すべく……血を舐め取って個性をかけ、動けない様にするステイン。

 うつ伏せの状態で地面に倒れ伏す一輪の事を完全に殺すべく一輪の首へと、その手に持つ刀を振り下ろしたのであった。




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