入道少女のヒーローアカデミア   作:紅葉紫苑

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雲居一輪&八百万百VSイレイザーヘッド

『雲居&八百万チーム、演習試験スタート‼︎』

 

 鼓膜を劈く様なブザーと共に試験開始が宣告される。

 市街地を模したこの演習場……閉所空間もかなり多く配置されており隠れ潜むには事欠かない。

 ……自分達にとっても相手にとっても。

 尤も……相澤先生はその個性の都合上こちらを視界内に収める事が必須。

 さてどうするかと思案しつつ……この演習場の全体像を掴む為に一輪は道路の隅々、果ては演習場の通路や建造物の全てにモコモコとした形状の雲を行き渡らせる。

 そして……電線を疾駆してこちらへと近づく相澤先生を把握する。

 

「八百万さん、上から相澤先生が来ます……迎撃用の捕縛武器を創造、接近戦は私と雲山、それと雲人形が担当します……貴女は貴女の為すべきことをしてください」

 

 そう語り……準備運動の如くポキポキと拳を鳴らし屈伸を行う一輪。

 一輪は雲を操り等身大サイズの人形を8つ程形作るとそれら全てを遠隔操作で350m先に居る相澤先生の下へ移動させて襲撃させる。

 雲山程のパワーも精密さも持ち得ないがその分、数と広範囲に性能を割いており一輪の思考に依らず自律行動が可能な雲で出来た等身大人形。

 それらが見ている景色や風景をそのまま一輪はフィードバックしており相手が今どこで何しているかの情報を得ている。

 それらの情報を加味して一輪は思案する。

 流石は相澤先生と言うべきか、そもそものスペックが雲山以下の性能程度しかない雲人形は相手にもならないらしく余裕を残したまま捕縛が為されていたが……雲とは元来不定形の極みである。

 一輪の個性で一定の形を保っているに過ぎない。

 故に捕縛された人形を即座に、人形の形から捕縛に特化した形に変形させて襲わせるも軽々と避けられる。

 遠隔操縦の強みは例え捕縛されようとも、果ては撃破されようとも操縦者たる一輪には何の被害も出ない事が挙げられる、自身達には相手の正確な情報などを、相手にはただただ無意味な戦闘、それに伴う疲労や損耗を強制出来るのが強みな訳であるが、今回は兄との訓練でそれら全てを理解し熟知されている相澤先生が相手であるが故に、すこぶる能率が悪い。

 だがしかし、まだ相澤先生の視界に入ってはいない。

 ……雲人形達がやられたと言う事が見えている、即ち……それは個性が抹消されていないと言う事、一輪や八百万自身は視界に入ってない事を意味する。

 問題は……あと15秒ほどでこっちにくる事。

 そして突如として、ブツっと……テレビの電源が強制的に落ちる様に雲人形との視界共有が切断された瞬間、一輪は見られている事を察知し、それと同時に縦横無尽に襲い来る捕縛布を最小限の動きで避けるが練度の差は如何ともし難い。

 一輪の手首を捕縛布で絡め取る相澤。

 捕縛布を解く事は不可能と即座に断じた一輪は捕縛布に絡め取られた片腕を軸にして跳躍し相澤先生との距離を詰めると截拳道(ジークンドー)を駆使した近接格闘術で対処していく。

 今の一輪は個性が扱えない、抹消の影響下にあるが故に雲山は出てこれない。

 此処が黒影(ダークシャドウ)との決定的な違いであり差であると言えよう。

 常に実体を有している黒影(ダークシャドウ)ならば抹消をされても消されはしない。

 異形型の元々存在する部分までは相澤先生の抹消は消さないが故に。

 だがしかし、雲山は違う……雲山が如何に思考が出来、自我を有していても一輪の個性が産み出した副次的存在、個性の延長線上にある副産物に過ぎない。

 故に抹消をされるとそもそも出てこれない。

 八百万百も事前に創造した銃器にて援護を行うがアングラヒーローたるイレイザーヘッドはそういった戦況に慣れている。

 一輪の脚を蹴り飛ばし捕縛布を活用して自分との位置を入れ替えて撃たれたゴム弾を一輪を盾にして躱す。

 

「ぐっ⁉︎」

 

 一輪の左肩甲骨にゴム弾が着弾し呻き声が響くが痛みに悶えてる暇はない。

 即座に再度接近してイレイザーヘッドの顔面目掛けて蹴りを入れるが当然の様に避けられる。

 しかし、目的の物は奪い取った……捕縛布さえ断ち切れる専用のナイフ。

 それを用いて絡め取られた片手を自由にする。

 いつのまにか掏り取られたナイフを見ながら相澤先生は語る。

 

「手癖が悪いな……いつの間に……」

 

 一輪はそれに対してナイフを構えて無言で答える。

 武器の1つを奪われても動揺の1つも見せないのはアングラヒーローの経験値故か。

 しかしながら個性が扱えないのは不利に傾く、それ程までに抹消は強い。

 ……いや、訂正しよう、ヒーローとして、肉体を鍛え上げ捕縛布を自身の手脚の様に扱えるまで鍛え上げてきた相澤先生自身が既に強い……。

 抹消は数あるアドバンテージや戦略戦術、手段の1つに過ぎない。

 時間が刻一刻と減る中で突如として着弾するスモーク弾。

 八百万百が創造していた武器の1つが着弾し真っ白な煙で辺り一面覆われる。

 モクモクと広がるスモーク弾。

 煙の中……八百万さんに手を引かれ走る。

 走りつつ八百万百が叫ぶ。

 

「相手の有利なポジションを維持したままの戦闘は不利ですわ‼︎ 一旦切り返しませんと‼︎ 雲居さん‼︎ 常に個性の発動確認を‼︎」

 

 それを聞き眼と眼で会話する2人。

 抹消は一瞬、ほんの一瞬だけ隙が生じる……つまり、相澤先生が瞬きして再度2人を視界に入れる瞬間。

 一輪は出せるのだ、その一瞬で。

 2人をすっぽり覆える程の大きさを有した巨大な雲を。

 雲で相手の視界を遮って……作戦を立てる。

 


 

 相澤が瞬きした一瞬で……大質量の雲が創り出された。

 一般的な家屋の屋根に陣取り、雲を見ながら相澤は誰に聞こえるでもない言葉を呟く。

 

「流石だよ雲居……なぁ白雲、お前の妹は此処まで強くなったんだぜ? 誇らしいよな」

 

 その声は誰にも聞こえない。

 そして、雲が拡散して襲いかかってくる。

 大質量の雲が拡散し捕縛する為に。

 しかし、これも……白雲との戦いで慣れている。

 大質量の雲で相手を捕縛するのは白雲の十八番であった。

 その妹なら当然、これをしてくるだろうと言うのも読めていた、だからこそ対抗策や回避法も熟知している。

 


 

「やはり避けられましたね……兄との訓練に明け暮れていた相澤先生相手には通じませんか」

 

 相澤先生を捕縛する為に限りなく広範囲に広げた自動追尾と自動操縦の雲から受けるフィードバック、捕まえられていないのは感覚で分かる。

 相手を捕縛出来るほど硬質の雲は逆を言えば、一瞬とはいえ相手に足場を提供しているに等しい。

 だが……時間稼ぎとしてはまぁ充分か。

 

「時間は稼ぎます……詰めの一手は八百万さんの案で行きましょう」

 

 そう語り……最後の詰めを行う2人であった。

 


 

 雲を避けつつ2人と2人を護衛するかの様に取り巻く雲人形10体を発見した相澤。

 視界に収めようとしたが一輪の雲が2人をすっぽり覆っており2人を視界に収める事はできない。

 

「なるほど……だが見えなきゃ良いってもんじゃないだろ」

 

 捕縛布を手繰りつつ雲人形を無力化。

 その後2人を拘束しようと試みるが捕縛布は一輪と八百万が包まれた雲を通り抜けて電柱に巻き付く。

 雲人形達とは異なり一輪と八百万という実体が有れば通り抜ける事は不可能。

 しかし、走り抜けるアレは確かに2人だった。

 一体何が……そう思案した刹那、ガチャリとカフスを掛けられた音が響き冷たい金属の質感が手首を通して伝わってきた。

 

「なっ⁉︎」

 

 数十m先に居ると認識した2人が実は背後にまで迫っていた事実に驚愕する。

 一輪も八百万も何とか成功したと……安堵した表情であった。

 兎も角……これにて試験は終了した。

 耳を劈く様なブザーと共に試験終了の合図が響き渡った。




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