入道少女のヒーローアカデミア   作:紅葉紫苑

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林間合宿②

 日が暮れかけた夕方。

 夕陽がとても美しく眩いが景色と夕焼けを見て感動する気力は今のA組にはない。

 一輪を含めたA組全員が疲労困憊でヘトヘトになりながら目的地へと到着した。

 あの後、目的地まで残り5km地点で土塊で造られた魔獣による襲撃は激烈を極め次第に処理能力を超えて決壊する寸前に一輪が大方の魔獣を雲山を動員して鎮圧するも、この土塊の魔獣はピクシーボブによる個性『土流』で形成されたモノであり倒しても倒しても土という物質が有る限り無限に発生してくる。

 コンクリートか土かの違いはあれどセメントス先生みたいなモノだ……圧倒的な物量差で畳み掛けてくるか圧倒的な優位を押し付けてそのまま押し潰してくる。

 水分補給に関しては一輪の個性でどうにかなったが激烈を極めた猛攻により次第に戦線が瓦解して最終盤は雲山と雲人形に頼り切っていた。

 特に掌から爆破を行う爆豪や体内の脂質を創造の工程で使用する八百万、帯電で放電しすぎればショートしていく上鳴などは限界を遥かに超えた限界でありこれ以上の個性行使は望めなかった。

 皆がヘトヘトになりつつも魔獣の強襲を何とか対処していくが脂質の消費が個性の条件となっている八百万の疲労具合は群を抜いていた。

 歩く事もだいぶ厳しい状態であり雲人形に支えられつつ何とかギリギリ歩けている状態であった。

 そうして……ようやく目的地へと到着したという訳。

 最初に3時間と言われたのはあくまでも此処の行き来が慣れており尚且つプロヒーローとしての日々の戦闘などで培われた身体能力があってこその3時間であったらしい……しかもピクシーボブ曰く『もっとかかると思っていた』らしく、言外に後1〜2時間はかかる道のりであった事が示唆された。

 実力差自慢とも取れるが根底にあるのはこれくらい軽く乗り越えられなければプロヒーローなぞ務まるわけねぇだろというご鞭撻であろう。

 今日からの2週間……とても楽しそうである。

 

 なおピクシーボブに見初められていた爆豪、飯田、轟、緑谷は疲労困憊故に動く気力がなく虚無の眼差しとなっている。

 相澤先生より5分間の休憩後に荷物を下ろして食堂にて夕食……その後に入浴で就寝とのお言葉を賜り各自が暫し地面に座って疲れを取る。

 キッチリ5分後にのそのそと動き出して自分達の荷物を持ち移動をして……夕食を食べる皆であった。

 


 

 食堂でワイワイと皆で2つある長机に座り食事となる。

 野菜や魚が並び肉類も唐揚げやチキン南蛮や竜田揚げ、生姜焼きなどがぎっしりと盛られている。

 一輪は手を合わせて頂きますと呟いた後……鶏肉の照り焼きを食す。

 疲労困憊の身体に染み渡る甘い味が心地よい。

 そうして食事を楽しんだ皆であった。

 


 

 そうして……疲労困憊の肉体を癒す為の入浴となる。

 露天風呂があるなんて最高だという芦戸さんの言葉に同意する女子組。

 皆15歳とは思えない発育の暴力である……そう語るのは耳郎さん。

 

「何で皆そんなおっきいのかな……私もいずれ、ねぇ……どう思う?」

 

 女子の中でも特に大きい八百万と一輪の胸をガン見しつつ光を失った眼差しで告げてくるのはちょっと怖い、呪詛のような言葉もだいぶ怖い。

 得体の知れない恐怖を感じつつ当たり障りのない言葉でお茶を濁す……そうして女子ならではの会話が開始される。

 日々のスキンケアの方法や使用している化粧品だったり、制汗剤や保湿クリームの話題で盛り上がる。

 乳液や化粧品、美容液にそこまでの頓着を見せない一輪はスキンケアの方法を問われて自宅に置いてあるスキンケア用品を思い返して語る。

 

「あー……そこら辺の美容用品は最低限、というより適当に選んでるし、そもそも殆ど何も使ってないよ? うわぁ⁉︎」

 

 湯船に浸かりつつそう語ると八百万さんと耳郎さん、芦戸さんが一輪の身体を掴み語ってきた。

 

「それでいてこの美しい肌なのですか⁉︎ 一輪さん、肌に合った物などを選べば更に美しくなります‼︎ そうですね……今度ウチから取り寄せますのでぜひテスターを……あとアレとコレも……」

 

 そうして楽しく会話を弾ませていると男子風呂の方が騒がしい。

 薄い仕切りなので声は筒抜けとなっている。

 

「やめるんだ峰田君‼︎」

 

 その言葉で一輪は大体何が起きたか察した……。

 そして他の皆も察した様で引き攣った表情を浮かべている。

 壁をよじ登る音と共にPlus Ultraとの叫びが聞こえるが校訓を穢すんじゃないという飯田の叫びには男女全員が首を縦に振って賛同していた。

 仕切りを乗り越える刹那……洸太君といったか……マンダレイの従甥が峰田に対してヒトのあれこれから学び直せと冷たく告げて峰田の手をペチッと叩くとそもそもの体勢が不安定な峰田は重力に従い落下していった。

 それを見て芦戸が洸太君ありがと〜……そう声をかけると洸太君は反射的に振り向いてしまう、女子風呂を覗いてしまった為に急いで視界を切ろうとしたが洸太君が居るのは不安定な足場の上、そんな急に体勢を変えると……体勢を崩して男子風呂の方へと落下していく。

 何とかギリギリで緑谷が助けたらしい。

 

 怪我がなかった事に安堵し……逆上せる前に湯船から上がり寝巻きへと着替えて就寝するA組の皆であった。

 翌日から本格的な訓練が始まる故に……それに思いを馳せつつ皆は眠りについた。

 


 

 そうして合宿2日目、明朝4時45分。

 お日様が顔を出し始めた時間……A組の皆は雄英指定のジャージへと着替えており集合していた。

 相澤先生よりおはようと朝の挨拶をされた面々は反射的に挨拶を返すが眠気が勝っているのかやや眠そうな表情と声音で挨拶を返す。

 一輪に至ってはもはや寝そうになっている。

 相澤先生が今日から行う合宿の目的を語り出す。

 

「起きろ雲居、寝るんじゃない……本日から本格的に強化合宿を始める、今合宿の目的は全員の強化及びそれに伴う“仮免”の取得、そして具体的になりつつある敵意に立ち向かう為の準備だ……皆心して臨むように……という訳で雲居……いや、済まない爆豪コイツを投げてみろ……入学当初の記録は705.2m……さてどれだけ伸びてるかな?」

 

 体力テスト時のボール投げ。

 一輪が指名されるもあの時点で100km超えを叩き出した一輪より爆豪の方が数値的にも分かりやすい……そう思案して爆豪を指名した相澤。

 一輪もソレを察したのか特に不満な様子なく見ていた。

 周囲も成長具合の確認であると察したのか最初に指名した一輪を外した理由を理解する。

 初っ端から100km超えなんぞ叩き出したのだ……成長具合を実感するには基準とする数値があまりにもずば抜けすぎてる為に逆に参考にはならない、一輪にとっても他の皆にとっても。

 そう思案していると爆豪の物騒な掛け声と共に眠気を吹き飛ばす爆音と爆風でボールは遥か彼方まで吹き飛んで行く。

 10数秒ほど暫く放物線を描いていたが着弾したようで相澤先生の持っている端末に記録結果が表記されて結果を見せながら語る相澤先生。

 

「結果……709.6m」

 

 その記録にA組全員が動揺し上擦った声と共に呟く。

 あまり飛距離が伸びていない……。

 それに対して相澤先生は今見て貰った通りと前置きして告げてきた。

 

「今見てもらった通り……約3ヶ月間様々な経験を経て確かに君らは成長している……だがそれはあくまでも精神面や技術面……あとはまぁ多少の体力的な成長がメインであり個性そのものは大して成長していない……だから、今日からの合宿で君らの個性を伸ばす……死ぬ程キツいがくれぐれも死なない様に」

 

 そう告げられて……2週間に及ぶ強化合宿が本格的に始動したのだった。




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