筋繊維は酷使すればする程に壊れて強くしなやかに再生していく。
個性もまた然り……鍛え上げれば鍛え上げる程に強くなる。
それを踏まえて一輪が行う個性伸ばし訓練は大別して3つ。
1つ・雲山を更に上手く扱う戦闘法の確立と雲単体による戦闘術の確立
2つ・雲に出来ることの明確化とその反復
3つ・広範囲殲滅技の確立
以上が一輪に定められた訓練である。
許容上限のある発動型は上限の底上げを目的に。
異形型やその他複合型は個性に由来する器官及び部位の更なる鍛錬を。
それは通常であれば肉体の成長に合わせたモノを執り行うが集中的に鍛え上げるとなると無茶も出る。
B組も到着し合計40人、40通りの6人で管理できるのかという当然の疑問がB組の拳藤より投げかけられるが相澤は語る。
「だから彼女らだ」
そう指し示す先には4人の女性がいた。
マンダレイとピクシーボブに加えて更に2人……ラグドールと虎と名乗ったその2人……。
「煌めく眼でロックオン‼︎」
「猫の手手助けやってくる‼︎」
「何処からともなくやってくる……」
「キュートにキャットにスティンガー‼︎」
ピクシーボブがそう叫ぶと決めポーズをビシッと決めながら4人が一斉に叫ぶ。
「ワイルドワイルドプッシーキャッツ‼︎」
そう叫ぶとラグドールが朗らかに語る。
何でもラグドールの個性サーチで見た人間の情報が全て丸わかりらしい……居場所も弱点もありとあらゆる情報をその眼を通して理解できる。
一輪を見た刹那……サーチで見た情報で何か思う所があったのか……一瞬表情を陰鬱なものにしていたが一転して明るいものへと変化させて訓練を行なっている皆皆に喝をいれていく。
そうして、一輪は自身がやれる事の言語化を行わされていた。
ラグドールが聞き取り役に徹して聞き取る。
「私の個性は『入道雲』……言わば積乱雲を自由自在に作り出す個性です……スーパーセルも当然ですがそれに当て嵌まります……かぼちゃと同サイズの大量の雹を降らせる、太陽光を遮る事による極端な気温低下、強風・突風、極めて深刻な被害をもたらしうる竜巻、それに伴う洪水、災害被害級の落雷、集中豪雨……あとは、そうですね……実演した方が早いと思うので一瞬だけ実演します」
そう語ると一輪は5秒のみ己が個性を十全に解放する。
……『一輪にとって絶対忘れる事のないあの日』ぶりに、常日頃から抑えに抑えてきた力を解放する。
雲一つない晴天の空が……瞬く間に暗雲に染まり、雷鳴が鳴り響く。
太陽が遮られ尚且つ冷気が呼び込まれ気温がガクッと下がり夏真っ盛りにも関わらず寒さが極まっている。
木々は突風により折れそうになるのもチラホラ見かけられた。
しかし5秒が経つと雲散霧消という言葉が極めて分かりやすいという様に嘘の様に消えていった。
先程の気温低下も嘘のように。
……一輪は良くも悪くも平時の訓練や演習を送る上では本気を出す事はない。
一輪が本気を出せるのならば、それは極めて重大な非常事態の際、そんな状況は起きない事が何よりも望ましいし、仮に起きてしまったら一輪が本気を出した程度では、もはや被害状況は変わらないに等しいのだから。
不得意を伸ばすのも1つの方策であるが得意を伸ばすのも更なる方策。
今回一輪が行う特訓は得意を伸ばす方となる。
雲山をこれまでよりも更に効率的に、更に能率良く動かしていく訓練、スーパーセルさえ巻き起こせる個性の更なる制御法、それらを理解し紡いでいく。
そうして……厳しい訓練を行う。
過酷な訓練は昼過ぎに昼ご飯休憩を挟んでその後30分休憩して再開される。
そうして18:00ちょうどに過酷極まる訓練が終了し晩御飯の支度と準備に取り掛かる様に告げられる。
本日の晩御飯からは自身らで作るらしく山の様に積まれたニンジンとジャガ芋、玉ねぎと牛や豚、鳥と一揃い揃った肉……そしてカレールーのパッケージと精米後の米を見るにカレーライスである。
一輪は役割分担の通りジャガ芋や人参の皮剥きに専念している。
ピーラーを用いて機械の如く無駄の無い素早い動作で瞬時に作業を行っている一輪、元々こう言った細かい作業は好きである性格と自炊で慣れているのかかなりの速いペースでどんどん終わらせていく、麗日や芦戸との会話にも興じつつその手は一切止まっていないし機械の様に正確である。
70〜80個あったジャガ芋と人参の皮剥きを僅か2分で全て終わらせると次なる作業の指示を八百万から受けて玉ねぎやニンジンの下処理を行っている。
そうして予定した時間よりもだいぶ食材の下処理が終わった為に予定よりも30分ほど速く食事の時間となる。
食べ盛りの高校生であり訓練で空腹を訴えていた者達は掻っ込む様にしてカレーを喰らいその美味しさに感涙していた。
「美味しいね」
そう呟いて……満天の星が煌めく夜空を見上げる。
その眼には……どこか悲壮感が漂っていたがそれを見たのは雲山のみであった。
食事の片付け後。
一輪は皿に盛ったカレーライスを持って足跡を辿って洸汰君の居る場所へと向かう。
体育座りで佇む洸汰くんのとなりに腰を下ろすと一輪はカレーライスを差し出して語る。
「食べないのかい? 結構美味しく出来たと自信がある……」
そう語るも洸汰くんが一輪の方を向く事はなくそっけなく、興味なさげに……ぶっきらぼうに吐き捨てられる。
「要らねえよ、言ったろ? お前らとつるむ気はねえんだって……俺の秘密基地からでてけ……個性を伸ばすとか張り切ったりしてさ、気味が悪い……そんなにひけらかしたいかよ? 力を……皆馬鹿じゃねぇの? ヒーローとか
そう呟く洸汰くんのその眼には涙が滲んでおり悲痛な声音が響く……似た様な状況に陥った一輪にはそれが痛い程理解できたし……何が起きたかも概ね理解できた。
「ご両親……かな? お亡くなりになられたのは」
その言葉にビクッと肩を震わせて一輪を睨んできた。
「マンダレイは関係ないよ……君くらいの年齢でご両親ではなく叔母やそれに類する人間が養育し、尚且つ君の言動から予想されてるなら自ずと選択肢は消え去る……そうだね、分かるよ……私も君と同じくらいの歳に、大好きな兄を亡くしている……」
一輪の脳裏に浮かぶのは兄の死を英雄的行為と褒め称え……良い事、素晴らしい事と無神経に逆撫でてきた者達。
1番かけて欲しい言葉はそうじゃなかったのに。
1番かけてきて欲しかった言葉は……全然別のものだったのに。
「両親がお亡くなりになって……悲しかったろうね、なんで僕を置いて逝ったんだと……叫んだろう、世間からは言われた事だろう……立派な最期だった、名誉ある死だったと……思ったろう? 何が名誉ある死だ、と……」
そう語る一輪を洸汰くんは涙が滲んだ双眸でキッと睨みつける。
何が分かるんだお前に、とでも言いたげな表情で。
「そうだね……いきなりきてこんな話をされても困るよね……すまないね」
そう語り……一輪は宿泊所へと戻っていった。
雄英が行っている合宿所から8km程離れた崖で数名の男女が立っており視界に捉えるは光り輝く合宿所。
ツギハギの男はその光を見ながらゆっくりと呟く。
「虚に塗れた英雄達を地に堕とす……さぁ……
そう告げるツギハギの男の周りには……9人の姿が見えた。
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