真夏とは思えない程冷たい風が吹き荒ぶ中……一輪は雲山を行使して散らばっているB組及びA組全員の位置を把握。
合宿所から離れすぎており尚且つ2人以下で動いているメンバーと八百万百を雲で包み込んで纏めて宿泊施設へと送還する、それと同時に森林全域の上空にスーパーセルを発生させる。
3秒かけてそれらを並行して行う一輪。
チラリと眼を向けると未だ一輪の前にはMr.コンプレスが……。
スーパーセルとは別に、それと同等の大きさの雲山を従えて、移動中のクラスメイト達には一雫も降り掛からない様に極めて繊細にコントロールしながら森林全域に轟き唸る様に響き渡る凄まじい雷鳴と極めて強い暴風雨を齎して一輪は語る。
「消えろ、そう言った筈だが……言葉は分かるか? 犯罪者」
そう語った刹那……一輪の背後から間の抜けた声と共に大木と遜色ない大きさの腕が2本、そして、腕と同等の大きさで背中から盛り上がっている触腕の様な物……それらが20本はある。
触腕の先端部には大木伐採用の大型チェーンソーや大木伐採用丸鋸が装着された脳無が現れた。
「ネホヒャン‼︎ ネホヒャン‼︎」
当たればミンチよりも酷い状態になって死ぬであろうチェーンソーの音が響くが一輪にそれが届くことは絶対にない。
遥か天より脳無を摘み上げてグシャリと圧し潰すのはスーパセルと同等の大きさを誇る雲山の掌。
如何に脳無の体躯が大きくともそれはあくまでも人間サイズの話……空に浮かぶ巨大なスーパーセルから見れば蟻と変わらない。
空中で雲に包まれて圧壊し、圧に耐えきれず潰された脳無は血の一滴すら零す事なく沈黙し2度と動くことは無かった……蝿を追い払うかの様に軽く脳無を処理すると一輪は眼前のコンプレスをへと天を指差しながら語る。
「貴方もこうなりたければ何もせずに消える事をお勧めする……今消えれば誰も損をしない……皆幸せ、win-winで終われる……尤も、私を目当てにしてきてる以上はそうはいかないのだろうが……」
今し方脳無を処理した事など……どうでも良いかの様に一輪は語る。
コンプレスは目の前で起きた脳無の瞬殺を見て、自身のキャラを崩す事なく……つまりはエンターテインメント重視のキャラを崩す事なく口を紡ぐ。
「いやいや、そうしたいのだが……そうもいかない、此方も仕事な訳でね……流石は人知れず復讐を果たしただけはある……学生とは思えない極めて繊細且つ大胆な個性のコントロール、過剰なまでの威力……森林全域をいとも容易く覆う事が出来る範囲、流石……君は過去を鑑みてもやっぱり
その言葉に……一輪は氷の様に貼り付いた表情を崩す事なく無言で捕縛する動きで雲山を行使していく。
天から降り注ぐかぼちゃと同サイズの雹を軽快な動きで容易く回避していくコンプレス。
それを見つつ一輪は表情が抜け落ちたかの様に語る。
「情報を搾り取ろうかと思ったんだが、私の過去を知ってるなら話は別だ……生かしておく理由が消えた……死ね」
一欠片たりとも躊躇う事なく、寸分違わずコンプレスの身体に雷撃が4発直撃して炭化する……と思われた身体は炭化せずにドロリと泥の様に溶けていった。
えもいわれぬ違和感が一輪を貫く中……突如として脳内に響き渡るマンダレイのテレパスに一瞬意識が割かれる。
『施設に退避できていないA組B組総員‼︎ プロヒーロー、イレイザーヘッドの名に於いて戦闘を許可する‼︎ そして
そのテレパスを無視してドロリと溶けた泥の様な物を雲を介して触れる一輪。
その泥は粘性でなく、サラリとした物であるが……自然物でないのはどう見ても明らか……考えられる個性は……同一個体の複製か、若しくは一輪の様に何かを媒介にした自動操縦人形のどちらか。
思考の海に溺れかけたが……一輪の真後ろからガサガサと雑木林が蠢き掠れる音を感知した瞬間、雲を左腕に纏い勢いのまま殴り掛かろうとしたが相手を視認した瞬間に殴打が当たる寸前でビタァッと止める。
一輪の眼に映るのは障子、轟、麗日、常闇、蛙吹、傷だらけで障子に背負われている緑谷……。
雲を解除して一輪は深々と謝罪する
「……大変失礼しました、先程まで
状況の把握は急務。
それを踏まえて問いかける一輪。
それに対して緑谷が答える……かっちゃん、つまりは爆豪を護衛しつつ施設を目指していると。
だが、素朴な疑問が一輪の口から放たれる。
「肝心要の爆豪勝己さんはどちらに?」
そう語ると惚けた様な表情で『此処にいるじゃないか』と背後へと視線を向けた一輪以外の皆。
しかし……10秒前までいた筈の爆豪は影も形もない。
この非常事態に油断している人間など居ないのは明らか。
パニックになりかけていたその時……上から声が聞こえてきた。
「彼なら俺のマジックで貰っちゃったよ、こいつは
先程、一輪が雷撃を直撃させた筈のコンプレスがそこに居た。
一輪は理解する、先ほどのコンプレスはやはり本体では無かったのだと……同一個体の複製が出来る個性持ちが
故に見定めるべきはこのコンプレスが本体か否か。
だが木々を軽やかに跳躍して逃げ回るコンプレス、対して此方は負傷者1人と一輪以外は空中戦が出来ず、移動速度に特化していない地上戦専門の者達。
轟の氷結も移動に使えなくはないがこの森林地帯は環境が悪い。
木々の多いこの空間ではスピードに乗る前に木々にぶつかるかカーブを連続して行い結果として速度を落とすのが目に見えている。
一輪も雲山を行使してコンプレスの行く手行く手を潰しているものの……本気を出した場合の此方への被害を鑑みると闇雲に扱う事は出来ない、やはり全力を出せないのはもどかしいし周囲にクラスメイトがいるのももどかしい……クラスメイトが居なければ一輪にとっては最も楽な手段を取る事さえ厭わないというのに。
一輪は状況を正しく理解して自身を含め全員を雲で空中に引き上げる。
「走っても距離が開くだけで無駄です、此方の方が数十倍は速い……安全運転を心がけますが振り落とされない様にして下さい‼︎」
絨毯の様な形状の雲を作り出して7人を纏めて空へと運ぶと意思を持ったかの様に飛行し瞬く間にコンプレスとの距離を詰め、コンプレスが着地した瞬間を狙い更に圧し潰す様にコンプレスの身体の上に着地する。
しかし、此処が集合地点であるのかコンプレス以外にもツギハギの青年と女子高生らしき女の子、ラバースーツを着込んだ謎の男。
ツギハギの男が無言で蒼炎を放ち、コンプレスは地面を抉り取って回避する。
そのまま一輪達に直撃するかと思われたが雲山の掌が蒼炎の全てを防御し熱波すら届く事はない。
一輪は淡々と戦闘態勢を取りつつ口を開く。
「初めまして、君達に言いたい事はただ一つ……爆豪勝己を返せ、そして消えろ」
スーパーセルを維持したまま雲山をスーパーセルと同等の大きさから一輪と同等のサイズに変化させて防御に回す。
数的有利はこちらが圧倒的、だがしかし、数以外に足りないのは実戦経験とその他全て。
練度も個性のコントロールも威力も何もかもが一輪以外の全員が足りていない。
数以外の全てが負けているこの状況下。
下手に動けない……沈黙が場を支配する最中、空間を捻り開いて奔る空間転移の前兆……黒霧がそこに来た。
「合図から5分経ちました……行きますよ荼毘」
そう語り黒霧は
荼毘はコンプレスを見遣ると、コンプレスはその意図を察知したのか右ポケットを弄り違和感を感じて驚いた様な仕草を取る。
それを見た障子が叫ぶ。
「皆逃げるぞ‼︎ 今の行為ではっきりした、個性は不明だが右ポケットに入ってたこれが爆豪だな? エンターテイナー」
そう語り掌のビー球サイズの球体を掴んでいる障子。
対してコンプレスは仮面で見えない表情のまま拍手喝采とでもいう様にパチパチと手を打ち鳴らす。
一輪以外の全員が退避を考えている。
だが、今の一輪を支配しているのはそんなどうでもいいことではなく……此処でワープに突っ込めば最低でも兄の遺体を切り刻み、動く死体にした者と接敵出来るという思考のみ。
その状況下で退避? するわけないだろう。
その時、コンプレスが楽しげに語る。
「ほほう‼︎ 着地したあの一瞬で⁉︎ 流石は6本腕‼︎ 弄り上手だ‼︎」
それに対して荼毘は呆れつつも蒼炎を放ち退避を妨害しようとしたが当のコンプレス自身が止めに入る。
そして……仮面を外して何かが成功したのが嬉しそうな声色で語る。
「いやいや、アレはどうやら走り出すほど嬉しかった様でね、そのままプレゼントしよう……悪い癖だよ、マジックの基本中の基本さモノをこれ見よがしに見せびらかす時ってのは……
そう語り口腔内に仕込んでいた2つ目のビー球サイズの球体を見せる。
刹那、障子の複製腕から出てくるは氷の塊。
「氷結攻撃の際にダミーを用意して右ポケットに入れておいた、右手に持ってた物が右ポケットにあればそりゃあ嬉しくて走り出すさ」
そう語り……確認の為に圧縮を解除。
荼毘がナイフを首元に突きつけた状態で爆豪勝己である事を確認して……ワープゲートを閉じる様に黒霧に語るが制御が上手くいかない様で黒霧は困惑していた。
其処へ……一輪の冷たい声音が響き渡る。
「誰が逃すか……雲山‼︎」
ワープゲートを雲山が物理的に掴み、一輪が部分的に操り完全に閉じる前に自分の意思で飛び込んでいく一輪。
一輪が飛び込んだ瞬間……空間は閉じ切って後には緑谷達の慟哭が響き渡った。
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