入道少女のヒーローアカデミア   作:紅葉紫苑

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個性把握テスト

 そうして、時間が過ぎ去るのは早いもので入学式前日。

 忘れ物がないかの最終チェックを行い布団に入る一輪。

 そうして翌日……朝5時に起床させて貰い、身支度をしてもらい、寝癖でボサボサの髪を丁寧に整えてから朝食を準備して貰う……。

 他人目線での行動なのは一輪は朝が弱く着替えや整容、食事の準備を全て雲山に代行して貰っているが為、雲山は大きさが自由自在であり今は一輪と同じ体型で部屋を忙しそうに朝の準備や一輪の世話をしている。

 そうして……ようやく目醒めた一輪は毎度の如く雲山へお礼を言って一緒に登校する準備をする。

 

「鞄よーし‼︎ その他提出物よーし‼︎ 指差し確認よーし‼︎」

 

 6時に完全に目醒めた一輪は指差し確認してから家を出る。

 背後には一輪の腰から頭までの大きさを保っている雲山、他愛無い会話を雲山と繰り広げつつも学校へと到着し自身のクラスである1-Aの扉を前にやや緊張する。

 雲山は空気を読んで一旦消えている。

 一輪はゆっくりと深呼吸して扉を開ける。

 すると一輪の眼に飛び込んできたのはまさかの言い争いの現場。

 脚を机に掛けている不良学生を彷彿とさせる男子とそれを注意するいかにも規律が優先と言ったイメージの男子の。

 一旦開けた扉を再度閉めてから……眼を閉じてゆっくりと深呼吸して再度扉を開ける一輪。

 今見た光景は流石に何かの間違いだと信じて、さてもう一度扉を開けてクラスの全員に向けて挨拶を行う。

 

「おはようございます、私は雲居一輪と申します……よろしくお願いします」

 

 そう告げる。

 一輪が教室に入った瞬間、性的欲求100%の眼をギラつかせて一輪の頭のてっぺんから脚の爪先まで舐め回す様に凝視している男子生徒と眼が合う、眼が合っているにも関わらず舐め回す様な視線を送れるのは大した胆力だと……ややズレた気持ちでいる一輪。

 その男子生徒は一輪を見るなり……151cm、B92、W61、H89と小声で宣っていたが一輪は他者の性的嗜好にとやかく言う性格ではないので完全に放置を決め込む。 

 そして、席順を確認して鞄を置いて座ろうとした一輪の視界に入るのは実技試験で言葉を交わした耳郎響香さん。

 耳郎さんもこちらに気づいた様で笑みを浮かべて近づいてくる。

 

「おっ……おはようございます……雲居一輪さん、改めて……耳郎響香です、あの時は助かりました」

 

 ガッチガチに緊張しているのか何故だか敬語で話しかけてくる響香さん。

 一輪も緊張している事に気づいたのかゆっくりと深呼吸を繰り返して耳郎さんへ言葉を返す。

 

「おはようございます……一輪と、そう呼んでくれるととても嬉しいです……いえいえとんでもない……大した事はしていませんよ」

 

 ニコリと笑みを浮かべてそう語る一輪。

 登校初日、アイスブレイクも交えながら雑談や簡単な自己紹介に興じていると教室の出入り口から声が響く。

 

 出入り口から高校生ではない人が寝袋に包まったまま語る。

 

「お友達ごっこしたいなら他所へ行け」

 

 喧騒の中で鋭く響くその声音に一瞬で静まり返るクラス。

 その人は寝袋から出てソレを見て語る。

 

「はい、君達が静かになるまで10秒かかりました、担任の相澤消太だ、さて各自机の中に体操服が入ってるからそれに着替えてグラウンドに集合」

 

 唐突にそう告げられてクラス中が一気にどよめきたつ。

 しかし一輪は特に驚く事なく机の中から体操服を取り出して更衣室へと向かう。

 兄から聞いていた通り相澤さんは学生時代からストイックというか合理的というか……15年経過して更に磨きが掛かったというか。

 亡き兄の親友のあまりの変わらなさに心の中でそう呟きつつ更衣室で着替える一輪。

 先程は途中で中断されてしまった自己紹介であるが着替えてる間でも口は動かせる為に女子達で先んじての自己紹介タイムとなる。

 

 一輪が着替えの最中、明るいピンクの髪にピンクの肌、色が反転した目の生徒が一輪の整った身体付きや美しく整えられた美しい蒼穹を思わせる髪を見てその眼を爛々と輝かせておりウキウキした声音で問いかけてきた。

 

「ねぇねぇ‼︎ その髪、とても艶々で凄いね‼︎ シャンプーとか何を使ってるのかとても気になるの‼︎ 後で毛先触らせてもらってもいいかな? あ、私の名前は芦戸三奈、よろしくね……えーと……雲居さんて呼べばいいのかな?」

 

 フレンドリーな芦戸さんに対して一輪はニコニコと笑みを浮かべて嬉しそうに語る。

 

「えぇ、良いですよ? 後でシャンプーやトリートメントの内容教えますね、一輪でいいですよ? 苗字はあまり呼ばれ慣れてないもので」

 

 そう告げつつ着替え終わり……グラウンドへと移動する女子達。

 移動の合間にも軽く自己紹介を開始して楽しく会話を行う。

 そうして初日ながら友好的な関係を構築しつつある女子達。

 話を楽しみつつグラウンドへと到着すると相澤先生より告げられる。

 

「個性把握テストぉ⁉︎」

 

 一輪以外のクラスメイト達がオウム返しをして入学式は⁉︎ ガイダンス説明は⁉︎ という叫びが木霊するが相澤先生は気にも止めずに喋り続ける。

 

「あぁ、雄英は自由な校風が売り文句……そしてそれは先生側もまた然り、お前らも中学の頃にやっただろう? 個性禁止の体力測定、ソフトボール投げ、立ち幅跳び、50m走、持久走、握力測定、反復横跳び、上体起こし、長座体前屈……さてと、雲居……中学の時ソフトボール投げ何メートルだった?」

 

 何をやるか察した一輪は少し顎に手を当てて考え込む。

 

「69mでした」

 

 その返しに……相澤は髪を掻きながら語る。

 

「……そうか、なら其処の円からでなきゃ個性使おうが何してもいい本気で投げろ……思いっきりな」

 

 投げ渡されたソフトボールを見ながら少し考え込む一輪。

 そして、何かに思い至った様で問いかける様な眼差しをほんの一瞬だけ相澤先生へと向けて……ソフトボール投げの準備を行う。

 深呼吸して……叫ぶ。

 

「行けッ‼︎ 雲山‼︎」

 

 そう叫び……自身の背後に、一輪自身と同じ大きさで出現させた雲山にソフトボールを投擲してもらう。

 雲の塊である雲山は自身の手から放たれたソフトボールを指向性を有した暴風を用いた空気砲で吹き飛ばす。

 それはソフトボールにまるで弾丸の如き速度を与えて……雲を4つ程貫き越えて行った。

 漫画でよく見るキランッという擬音が一輪を除いたクラスメイト全員に空耳で聞こえて……30数秒後にようやく記録が測定される。

相澤先生が観ている手元のタブレット端末の画面には飛距離と、シグナルロストの文字が表記されておりA組の全員に見せる。

 

 そこには……109.5kmと表示されていた。

 

「まずは自分の最大限を知る、ソレがヒーローの素地を形成する合理的手段……一応設定しておくとボールはこの地点で完全に消滅した、なのでこの地点が記録となる」

 

 そう語る相澤先生。

 クラスメイト達は一輪が叩き出した100Km越えの記録を見て面白そうとはしゃぐ。

 ヒーロー科入学までは個性禁止で悶々としていたのだ、水を得た魚の様にはしゃぐのは当然と言える。

 

「……面白そう(・・・・)……か、ヒーローになる為の3年間をそんな腹づもりで過ごす気でいるのかい? よしっ……トータル成績最下位の者は見込み無しと判断して除籍処分としよう」

 

 そう語る相澤先生の言葉にクラスメイト達は一気にどよめきたつ。

 最下位除籍とは理不尽との言葉に相澤先生は経験でもしたのかこう返してきた。

 いや、実際に経験したのだ……親友を喪うという辛い経験を。

 

「自然災害、大事故……身勝手な(ヴィラン)達……いつどこから来るかも分からない厄災……世界は理不尽に塗れている、そういうのを覆してこそのヒーロー……これからの3年間、雄英高校は全力で君達に苦難を与え続ける……『Plus Ultra』さ、全力で乗り越えてこい……さて、デモンストレーションは終わり、ここからが本番だ」

 

 クラスメイト達からすれば理不尽此処に極まれり……しかし一輪からすれば、全く別の意味を持った言葉として伝わってきた。

 即ち……もう絶対に誰も死なせないと。

 

 第1種目、50m走。

 一輪は位置について自身の個性を行使し……雲を生み出して掴みそれに引っ張られる形で動く。

 すると……一輪の肉体は雲に引っ張られて瞬く間に……ゴール地点へ移動した。

 記録2秒11。

 

 第2種目、握力。

 一輪は握力測定器の測定部に雲を纏わせてから思い切り握るとバキイッと鈍い音と共に握力測定器だった物の残骸が一輪の手に握られていた。

 相澤はため息を吐きながら記録を『測定不可』にしたのはいうまでも無い。

 

 第3種目、立ち幅跳び。

 雲に乗っての浮遊が可能である為に永遠に立っていられる。

 記録・♾️。

 

 第4種目、反復横跳び。

 雲に乗りそれを左右に高速で移動させる事により1784回。

 

 第5種目、持久走。

 雲に乗って時速100kmを常に維持しつつ移動した為に1位。

 

 第6種目、上体起こし。

 こちらは普通に挑む、142回。

 

 第7種目、長座体前屈。

 雲を指先から生み出して距離を伸ばす……記録は18m。

 

 これで全種目終了して結果が発表された。

 

 雲居一輪・結果1位。




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