翌々日。
ニュースで大々的に報じられているのはオールマイトの引退会見とジーニストの長期活動休止。
救出されたプッシーキャッツの1人であるラグドールの個性が使用不可になる件があり活動見合わせ……。
一輪はと言えば事情聴取も終わり帰宅し今はリビングに座り込んでいる。
色々あった、拉致被害者たる爆豪勝己と雲居一輪の事をマスコミや週刊誌は特にセンセーショナルに書き立てていた、特に過去を暴露された一輪の事を重点的に。
スマホで電子版の誌面や紙面を観ながら一輪は重い溜息を吐く。
紙面上にはデカデカとした見出しで『秘められた重い過去‼︎ 雲居一輪は人殺しか⁉︎ その真相に迫る‼︎』などと書かれており人の不幸に群がる寄生虫に辟易しながら一輪は自分で自分を殺したくなる程の、マグマの様に煮立っている怒りを必死に抑え込んで抑え込んで抑え込んで抑え込んで抑え込んで……1時間かけて鎮める。
一輪のその眼の奥にはドス黒い復讐の焔が絶えることなく燃え盛っていた。
場面は変わって雄英高校の校長室。
そこには相澤先生、ブラドキング、そしてオールマイトが根津校長の前に立っており……根津はオールマイトに向けて感謝の言葉を口にする。
「その身を犠牲にして多くを救ってくれた……国民として、ヒーローとして、校長として感謝してもしきれやしない……ただ世間では雄英教師を続けるのに少なからず批判的意見も出ている……皆不安なのさ、だからこそ今度は我々で紡ぎ強くしていかなきゃならない……君が繋ぎ止めてくれたヒーローの信頼をね」
そう語るとブラドキングが語り部を交代して憤懣やる形無しといった表情でオールマイトと自身を交互に見ながら語る。
「あの一件で気付かされました……あなた1人に背負わせてしまっていた、背負わせていたものの大きさを……」
ブラドキングはもとより相澤も同様であった……心の何処かでオールマイトにもたれかかっていたのだ。
平和の象徴だから、平和の象徴が居るから大丈夫と……そのツケは巡り巡って巨額になったが……今そのツケを支払わなければならない。
脅威がまだ拭いきれていないがそれがどうしたというのか……此処で食い止められなければ何の為に自分らが居るのか……そう決意を新たにする。
そして、再度語り部は根津校長へと交代する。
「そこで……兼ねてより協議していた案を実行に移すのさ、私はブラドとB組に……オールマイトとイレイザーヘッドはA組に……頼むね、家庭訪問」
そう告げて机の上に準備した書類には『雄英高校全寮制導入検討のお知らせ』と記載されているのだった。
そうして……翌日。
オールマイトとイレイザーヘッドはA組最後となる雲居一輪の住まうアパートメントの前にいた。
インターホンを押し、少しするとドアが開かれハーフタンクトップとデニムショートパンツ姿の一輪が現れる。
深々と挨拶をして室内へと招かれる2人。
部屋を見ると、一輪の両親の他にもう1人、聖白蓮が同席していた。
雄英に入るまでの8年間を命蓮寺での修行などをしていた為に、一輪及び一輪の父母からは家族も同然との事でこの度同席したらしいが聖自身は口を出さない事としたらしい。
話に入る前に一輪から語られる。
「話の前に……線香をあげてくれると兄も喜びます」
そう告げられて……相澤は線香をあげ、念仏を唱える。
そして、入寮の説明と許可を得る為の説明会となった。
書面での説明と口頭での説明を終えると、一輪の母が口を開く。
「久しぶりね相澤くん……私はね朧に続いて、一輪まで喪ってしまうかと思って気が気じゃなかったわ……こうして無事に戻ってはきたけれど、過去の出来事が週刊誌にも蒸し返されたし……正直な所、今の雄英に娘を預けられる程の安心感は得られないわ」
そう語られて……一輪も神妙な面持ちで母の言葉を聞き続ける。
しかし、入寮に関する許可、これが降りなければ雄英には通えない事を意味する。
一輪は仮にそうなった場合のシチュエーションを脳内で思案して考える。
暫し脳内での思考に時間を割いていた一輪だが母から肩を揺すられて意識をそちらへと向ける。
「聞いていた? 聞いていなかったわね? 一輪、貴女の悪い癖よ、入寮に関しては許可しました……相澤くん、間違ってもこの子を朧の様にさせないでね……子供を救った英雄だなんだと言っても私にとっては大切な息子が、一輪にとっては大切な兄が亡くなった事実は消えないのだから」
そう告げられて家庭訪問は終了した。
そうして、一輪はアパートを引き払って寮へと移り住む事となった。
既に荷物は雄英指定の引越し業者へと頼んである為に荷物は今手に持っているスマホや財布位のもの。
寮の出入り口集合との事で、時間の10分前に到着した一輪だが既に皆集まっていた。
一輪は遅刻したのかと思い腕時計で時刻を確認するも特に遅れてはいない。
だが、皆の顔色はそんなに良く無い……。
ふむ、ニュースを見たからか。
……こういう形で露見するとは思いもしなかったな。
一輪は、クラスメイト19人の顔を見てゆっくりと、軽快に語る。
「謝罪会見を見たんですね、まぁ見ない理由もないですしね……声をかけづらい様なので私から喋ります……雲居は母方の名前です……私の旧姓は白雲です、あの手のマスコミは人のプライバシーをなんだと思ってるんですかね? 全く困っちゃいますよ、ハハハ」
アイスブレイクを望んで放った会話であるが失敗を悟る。
其処へ、相澤先生が到着してこれからの流れを語る。
「全員居るな? とりあえず一年A組、全員無事に集まれて何よりだ……」
そう語る相澤先生の眼には若干の隈や疲労が滲んでいるがそれを指摘するものは居ない。
相澤先生の言葉に瀬呂や葉隠らが頷き蛙吹さんが何処かホッとした様な口調で言葉を紡ぐ。
「無事集まれたのは先生もよ……記者会見を見た時は居なくなってしまうのかと思って悲しかったの」
その言葉でクラスメイト一同が沈み込む。
あの時の戦闘指示が問題アリと見做されていた場合……担任が相澤先生から変わる可能性は無いとは言い切れなかった。
しかし担任が他の先生き変わる事なく相澤先生で続投となった事にクラス一同とても安堵していた。
それに対して相澤先生は何処か遠い眼をして生徒達の声に応える。
「……俺もびっくりさ……まぁ色々あんだろうよ」
「さて、これから寮について軽く説明していくがその前に1つ……当面は合宿で基礎能力を鍛え上げてから説明する予定だった『仮免』取得に向けて動いていく……気を引き締めて行こう」
そう告げて寮の説明に入る。
それぞれのスペースの説明が行われる。
1棟1クラス。
右が女子棟、左が男子棟。
1階は共同スペース、複数人で腰掛けるソファや80インチテレビもあり結構豪勢だ。
食事や洗濯はここで行うとの事……大浴場もあるらしい。
部屋は2階から男女各4部屋5階建。
20畳程の広さであり、個人でゆっくり入りたい時の為にシャワー付き浴槽、エアコン、トイレ、冷凍庫付き冷蔵庫、クローゼット、ベランダ付きの結構贅沢な空間である。
部屋割りは
2F男子、峰田実、緑谷出久、青山優雅、常闇踏陰。女子は無し
3F男子、上鳴電気、飯田天哉、尾白猿夫、女子、耳郎響香、葉隠透。
4F男子、障子目蔵、切島鋭児郎、爆豪勝己。女子、麗日お茶子、芦戸三奈。
5F男子、砂藤力道、轟焦凍、瀬呂範太。女子、八百万百、雲居一輪、蛙吹梅雨。
となっていた。
とりあえず部屋を作ってゆっくりしてろとのお達しに皆が返事をする。
明日からまた今後の動きを説明するとの事。
部屋の荷解きとは言われるもそもそもの荷物が衣服10数着、仏壇や料理道具一式、皿やタンブラー数セット、テーブルくらいしか無い為にものの10分程度で終わる一輪……しばらくしてやる事も特にない為に一輪は共有スペースで寛いでいる。
おもむろに隣に居た上鳴が口を開く。
「いやぁ……経緯はともかくとして、共同生活ってなんかワクワクするよな」
その言葉に対してウンウンと頷く一輪、緑谷、切島。
芦戸三奈や他の女子陣も皆降りてきて芦戸が問いかけてきた。
「部屋できたー?」
それに対して上鳴や男子達が肯定の意を示す。
芦戸三奈がそれを聞いて、じゃあさじゃあさと前置きして告げる。
「あのね! あのね‼︎ 今話してて‼︎ 提案なんだけど」
芦戸は一度言葉を区切り息を整えてから告げる。
「お部屋披露大会しませんか?」
それを聞いて反応が別れる。
カチンッと固まる者。
楽しそうッと好意的に受け取る者。
無言を貫く者。
緑谷出久ルーム。
一面オールマイトのグッズで埋め尽くされている。
麗日さんがオールマイトだらけダァ‼︎ オタク部屋だぁぁとにこやかに叫び……それを聞いて緑谷出久がカチコチになりながら呟く。
「……憧れなんで……恥ずかし……」
常闇踏陰ルーム。
真っ暗……何だろう……映画とかドラマで見る部屋っていうのがしっくりくる。
青山優雅ルーム。
先程の常闇ルームとは真逆……眩しすぎる。
キラッキラしてて目が痛い……。
続いて峰田実ルーム。
いつもそれなりに猥談などをしている峰田だが意外な事に部屋は至って普通であった。
強いていうならばポスターやタペストリーがチョットだけセクシーすぎる……位だろうか。
尾白猿夫ルーム。
凄い、THE普通……。
女子陣だけでなく男子からも普通だ、これが普通と言う事なんだねと口々に言われており若干の物悲しさを漂わせていた。
飯田天哉ルーム。
なんか法律書や哲学書などの難しい本がいっぱい。
これ全部読破してるのか? ……そして棚には大量のメガネ、レンズやフレームが傷まない様に丁寧に梱包がされている。
上鳴電気ルーム。
凄い、なんかチャラチャラした感じのお部屋だ。
統一感はない様であるが……手当たり次第感が否めない。
男子の部屋を大体半分程見終わったところで女子からのコメントに釈然としなかった者達。
峰田実。
尾白猿夫。
常闇踏陰。
青山優雅。
その者らが口を揃えて呟く。
「釈然としねぇ……」
そして、峰田実が代表で口を開く。
「男子だけが言われっぱなしてのは無いよなぁ……お部屋『披露大会』っつったよなぁ……なら当然、女子の部屋も見てから決めるべきだよなぁ‼︎ 誰がクラス一のインテリアセンスか全員で決めるべきだよなぁ‼︎」
女子達による容赦ない口撃が一部男子の競争心に火を点けた。
それを聞いて芦戸三奈が乗る。
「良いじゃん楽しそう‼︎」
隣にいた耳郎響香が『えっ⁉︎ マジで⁉︎』みたいな顔をして芦戸三奈を見る……一輪も特に興味はないが楽しそうなので賛同する。
そして、続く男子のお部屋。
切島鋭児郎ルーム。
……なんて言うのだろうか、必勝や大漁と書かれた旗……そして部屋の中央にはサンドバッグ……うん、個々人の好みはあるからね、否定はしないけど肯定もしないかな。
……芦戸三奈はとんでもない程の微妙な表情で。
葉隠透は『彼氏にやって欲しくない部屋ランキング2位くらいにありそう』と暗に苦手だなこの部屋、と切って捨てていた。
麗日お茶子は嬉しそうな笑顔で『熱いね‼︎ アツクルシイネ‼︎』とも告げていたがソレ褒め言葉じゃないよね……。
障子目蔵ルーム。
ミニマリストなのか机に座布団、それに布団一式のみ。
これはこれで……。
瀬呂範太ルーム。
ペルシャ絨毯を敷いておりそれを基調として統一している。
凄い……これは拘りがある凄い部屋だなぁ。
そして轟焦凍ルーム。
まさかの和室であった。
聞けば即日リフォームをしたとか……。
続くは男子最後。
砂藤力道ルーム。
本人曰くつまらない部屋との事だが、テーブルに置いてあるスイーツ系のレシピ本。
そして部屋に漂う甘い匂い。
シフォンケーキを焼いていたらしく皆に振る舞う砂藤力道。
全員から好評でありほんわかした雰囲気で和む。
もきゅもきゅ……美味しい。
男子は以上となり女子部屋となる。
女子ルーム1番最初。
耳郎響香ルーム。
ドラムセットやエレキギター、ゼンハイザーのヘッドフォンや音響機器……めちゃくちゃ楽器や音楽が好きなんだなぁというのが伝わるお部屋。
可愛い。
ここぞとばかりに上鳴電気や青山優雅が色々言うがイヤホンジャックを突き刺されて悶絶していた。
葉隠透ルーム。
巨大なぬいぐるみや花柄のベッドなど可愛いモノが所狭しと並べられている。
可愛い。
芦戸三奈ルーム。
紫色に統一されたカーテンや敷物、布団。
統一感があって美しい。
麗日お茶子ルーム。
シンプルなデザインのお部屋。
本人は味気のない部屋と言っているがシンプルイズベスト。
いいお部屋だ。
蛙吹梅雨ルーム。
カエルの個性故に寒いのが苦手なのか暖房がつけられており少し蒸し暑い。
肝心のお部屋はカエルのぬいぐるみやカエルモチーフの小物が揃えられていた。
可愛い。
雲居一輪ルーム
クローゼットとベッドとエアコン、勉強机、備え付けられた冷蔵庫以外はなーんもない……強いていうならば白い布で部屋の角に設置されたナニカが眼を引くくらいか? 白い布で隠されているそれを勝手に覗き見た峰田実は沈鬱な面持ちになり、謝罪していた。
つまり荷解き前の部屋とほぼ変わらない。
変わっている箇所は……スマホが置いてあるとか衣服があるだとか……そういう間違い探しのレベルだろうか。
一輪曰く、前の住居でもこんなものであったらしく、何よりも命蓮寺にいた期間が長かった為に個人的な所有物には頓着しなくなったとか。
八百万百ルーム。
部屋の中央にドンッと置かれた超巨大なベッド。
どうやって部屋に搬入したのかが非常に気になる所……。
本棚には色々な書物。
そうして、各部屋の見回りが終わり……芦戸三奈が叫ぶ。
「さてみなさん‼︎ 投票はお済みでしょうか⁉︎ 自分への投票は無しですよ? あとケーキとか部屋以外の理由による投票は無しです‼︎ 純粋にお部屋で決めて貰います‼︎」
結果。
一位独走で轟焦凍。
そうして……明日からまた1日が始まる。
劇場版は読みたいですか?
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そんなもん書くなら本編書き進めろ