入道少女のヒーローアカデミア   作:紅葉紫苑

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墓参

 翌日……臨時休校となった雄英高校。

 一輪はUSJ襲撃時に見た黒霧と呼ばれた(ヴィラン)の事に思いを巡らせていた。

 一輪のあの時の感覚が正しければ黒霧と呼ばれた(ヴィラン)は……。

 当たっていて欲しくない推理を振り払う様に今やる事を考えて、気を紛らわせる為に雲山との会話をしながらやるべき事をやる。

 一輪は午前中と昼を使い雲山と共に買い物と家事をこなして終わらせると再度、外出の準備を行う。

 トートバッグに必要な物品を入れてから目的の場所へと歩き始めた。

 花屋で兄が好きだった花を買い、お供え物として兄が好きだった飲み物と線香とライターを持参して……時刻は既に夕方であるが寺へと向かう一輪。

 墓地へと向かい『白雲家之墓』と刻まれた墓碑を見つめる一輪。

 時間を見つけては月命日とその1〜2週間前後の合計2回は必ず掃除や手入れを雲山と共に行なっている。

 空の桶に雲山が水を溜めて柄杓や雲である自身の身体を器用に扱って墓碑に付着した土埃や枯葉を洗い流していく。

 寺に備え付けられている雑巾を拝借して墓碑を綺麗にしていると相澤先生と山田先生、香山先生が居た。

 何の偶然か……3人とも墓参に来たらしい。

 3人は献花と線香、一輪と同じく寺の貸出品を手に持っていたがほぼ終わっているのを見てマイク先生が貸出品を返却しに行って、戻ってくる。

 そうして……線香を上げてお経を唱え終わると一輪は兄の親友2人とその先輩へ……話し始める。

 

「兄の墓参りに来て下さってありがとうございます……兄も天国で喜んでると思います……」

 

 ペコリとお辞儀をしてそう語る一輪。

 対して相澤先生は深く悲しみに沈んだ表情を浮かべて語る。

 

「……雲居、俺はお前に恨まれていてもおかしくないと思っている……結果はどうあれ、あの日あの時……俺は白雲を助けられなかった……」

 

「相澤先生、既に……終わった事です……兄も今の、誰も死なせない様にと、辛い経験を誰にもさせない様にと、厳しく接している相澤先生を見て喜んでいると思います」

 

 そう告げて……一輪は言うべきか迷う。

 だが、言わない訳には行かなかった……知っているのと知らないのでは対策の立てようもまるで異なるのだから。

 それに……相澤先生からの謝罪は既に受け入れている、アレは当時の戦力ではどうしようもなかったのが後の検証や実証で証明されている。

 あの時、何なら兄も相澤先生も2人とも死んでしまう可能性、そして子供すら助からなかった可能性すら非常に高かった事が後の調査で判明しており、要救助者である子供達と相澤先生が生き残ったのは文字通り奇跡であった。

 それを思い……一輪は涙を流しそうになるのを必死に堪えて口を開く。

 

「相澤先生、山田先生、香山先生……お話が……」

 

 声が涙声になりかけつつある事で涙を堪えているのが相澤先生や2人の先生達から見ても分かるのか心配そうな表情をされる。

 

「あの時USJで黒霧と呼ばれた(ヴィラン)……アレは、あ……れは……兄です……兄の遺体を……一切合切をぐちゃぐちゃに切り刻んで別の何かと掛け合わせて……造られた人形です」

 

 そう呟く。

 それを聞き……愕然とし狼狽える相澤先生。

 如何に妹たる一輪の言葉だろうともそう簡単に信じられないのであろう。

 相澤先生は極めて理性的に見えるが明らかに動揺して、山田先生は天を見上げて……香山先生は深く息を整えてどうにか動揺を鎮めようとしていた。

 必死に涙を堪えて理由を説明する一輪。

 

「私と兄は……個性がほぼ同じです、故に血の繋がりか、はたまた別の要因かは今となっては不明です……ただ一つ分かっているのは互いの個性が干渉するんですが……その時には必ず感覚もある程度共有されています……腕を引っ張り合う様な感覚です、黒霧と名乗った(ヴィラン)に個性を使おうとした際……何故か黒いモヤを操作できて、その時と同じ感覚が発生したんです……そして、これが決定的な理由です」

 

 そう語ると一輪は羽織っていた上着を脱ぎシャツのボタンを外してグイッと右肩からを露出させて右肩に出来たあまりにもクッキリと残る手の形をした痣を見せる。

 それを見た相澤と山田は……白雲朧との会話を思い返していた……妹との個性での遊びの後はその後数日間に渡って彼の左肩にも今の一輪の物と全く同じ痣が出来ていた。

 訓練で着替えの際に幾度となく見て、幾度となく白雲から語られた。

 理由は分かんないけど可愛い妹と個性を使って遊ぶと毎回こうなると……。

 そう語る彼の眩しい程の笑みを2人は鮮明に思い返す事ができる。

 これで……黒霧は白雲朧だと言う事が証明された。

 だがまだ弱い……3人は納得出来ても他の者からしたら単なる偶然、単なる痣に過ぎない。

 妹の勘違いだと言われたらそれまで。

 故に一輪は語る。

 

「アレが兄の遺体だとしたら……此処にある遺骨は全くの別人の物です……赤の他人です……なのでDNA鑑定で証明できれば、少なくとも此処に眠るのは……眠っているのは兄じゃない、名も知らない他人です」

 

 そう語ると丁度……そういった個性持ちでDNA鑑定を専売にしており、裁判でも証拠として扱われる程に信頼性があるその個性を有した人物が時間通りに到着する。

 既に先んじて寺の住職には話をつけてある為、墓碑を開けて……兄の遺骨と思われる物を取り出す。

 そして……一輪は渡された綿棒で口腔内の唾液を採取して容器に入れ渡す。

 両親のDNAサンプルは先に郵送してあるので……後は遺骨を調べるのみ。

 鑑定時間はものの1分と格段に速い。

 その業者は……鑑定結果を告げてくる。

 

「この遺骨と、依頼者様である雲居一輪様、そしてそのご両親とは……DNAが不一致でした、100%の確率で他人です……、残念ながら……」

 

 それを聞き……一輪は気丈に振る舞いながらお礼を告げると鑑定人は仕事を終えた為に帰っていく。

 一輪はと言えば遺骨を改めて収納し……墓碑を元に戻すと……しばらくして堪えていた涙と感情が決壊したのか墓石に縋り付いて咽び泣く。

 兄だと思って弔っていたが……それが実は赤の他人だったなんて信じたくなかった、自分の勘違いで終わっててくれればどれ程に救われたか。

 それは、相澤やプレゼントマイク、ミッドナイトも同様であった。

 相澤とプレゼントマイクはこんな事をした奴らを絶対に捕まえると怒りを露わにし……ミッドナイトは涙を流しつつも優しく一輪を抱き締めていた。




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