後輩は大人気VTuber   作:高宮 八郎

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アラスカ→ロサンゼルス→ボリビア→ブルックリン

俺は晴れて企業所属となったので、グレートスターズからオープニングとエンディング、それと待機画面を作ってもらえる権利*1を得た。

 

オープニングとエンディングは究極的には必要ないからいいとして、待機画面がフリー画像1枚のままでは企業勢としての沽券に関わるから止めようとマネージャーに進言されて、簡単なgifアニメを依頼して作ってもらった。

 

桜の花が咲き、その花が落ちて葉が生い茂り、やがて紅葉しその葉も徐々に落ちて、枯れ木になり雪が積もる。やがて雪は止み日差しによって溶けていき、また桜の花に戻るというサイクルだ。

 

ここまで徹底して人間要素を排してきたのだが、これから配信が切り抜かれることも増えるだろうし、通話ソフトのアイコンが桜の木なのは無機質すぎるからやめましょう、なにかあなたの象徴になるイメージを作りましょう、と言ったのも、これも担当マネージャーであった。

 

真っ先に思い浮かんだのは、あの故郷を満たす黄金の稲穂だった。個人が相手では取り合わなかろうというイラストレーターも、企業が間に入ってくれることで指名できる。俺は秘かに推していた人物を指名して、稲穂を横にくわえた可愛らしい銀狐のアイコンと1枚絵まで作ってもらった。

金銀のコントラストも美しく、贔屓目抜きでも素晴らしい出来栄えだ。

 

俺は推しに金が落とせる、イラストレーターさんは飯が食える、グレスタ側は安堵する。

 

上記の諸々が完成してから初配信を行ったので、既に社内では重稲銀輔=なんとなく狐のひと、のイメージで語られているようだ。

桜も好きだが流石に植物に例えられて喜ぶ趣味は無いので、こちらも一安心である。

いずれは、待機画面もあの人に作ってもらいたいものだ。

 

 

 

【弾幕派】LMG無神論者が仲間と"ビジネス"に挑みます【でも狙撃可】

 

「はい開けましたー。本日は新人さんを加えて、兼業・契約配信者(グリーンスクエア)の4人で"仕事"をやっていきまーす。音量調節も兼ねて、上から自己紹介をどうぞ~」

 

本日一緒に遊ぶ、愉快な仲間たちを紹介しよう。

 

 

「あーあーあー、シュガー押尾(おしお)です。ご覧の通りリーマン系VTuberをやっています。ビルドはハンドガンドッジです。よろしくお願いします」

凡百のスーツ姿のサラリーマンの見た目の男性VTuber。戦闘力72万。*2

 

「ビルドも要るの??? まあいいや、天雪六花(あまゆきりっか)、顔出しNG配信者でーす。ビルドはオーソドックスにSRとSMGを使ってまーす。よろしくお願いしまーす」

ロリっぽい甘い声でASMRなどを強みにする箱内トップの女性配信者。戦闘力210万。

 

権藤通(ごんどうとおる)、本名ではないが顔出しで配信をしている。ビルドはセントリー弾薬マンだ、よろしく頼む」

ヤクザ幹部ぐらいの厳つい風格のある角刈りの男性配信者。戦闘力130万。

 

「新人の重稲銀輔(しげいねぎんすけ)です。同じく顔出しNG配信者です。ビルドはLMG無神論者です。よろしくお願いします」

そして最後に俺、戦闘力は9千5百。

 

「あはは、ギンちゃんちょっと声震えてるぅー」

 

別に心臓が鋼でできているわけじゃない、人並に緊張ぐらいする。

初配信?あれは全然初配信では無かったので……。

というか全員があまりにも格上すぎるんだよ。

 

 

・銀ちゃんw

・あだ名決まったな

・確かに声震えてるw

・さすがのシゲさんも初対面3人は緊張するか

・LMG使いなのか...

・3人とも大物すぎだろ

・ビルドがバラけてるのはワザとなのか偶然なのか

 

 

「まあまあ六花さん、そのへんで。俺でも同じ状況に放り込まれたら借りてきた猫になりますよ?」

 

「そう? シュガーちゃんなら飄々とこなしそうだけど、まあいいや。今、我々はアラスカ行きの電車に乗っていまーす」

 

ブリーフィング画面のことをそう呼ぶ人間はあまりいないが、まあアラスカでのビジネスなのは事実である。

 

「準備はできてるよね? レディーゴー!」

 

「開幕にスペックチェックがあるぞ、注意しろ」

 

「はい、落ちる用意はできてます」

 

「そっちはせんでいい」

 

 

・草

・草

・もうコントできてるやん

・確かに落ちやすいんだよな開幕

・スローモーションなのがいけない

・いうて全員回線太いやろ

・スロー状態なのに火炎放射器とかグレランとか振り回すバカがいけない

 

 

電車が止まり、俺たちは潜んでいた箱から飛び出す。

周囲にはガードマンが8人、飛び出してから一定時間の間お互いの動きがスローモーションになって、パソコンや回線に負荷が集中する。このときルームからはじき出されることもあれば、ゲーム自体がクラッシュすることも多い。

 

我々は慣れた手つきでガードマンを処理し、初見の皆様のために無線からの怒号を静かに聞いた。

 

"クソが!あいつ裏切りやがったな! その港に船があるはずだ、船を使って脱出しろ。"

 

「行っくよ~」

 

飛び出した天雪さんがSMGで民間の警備員をなぎ倒す。

瞬く間にアラームが鳴り、CAUTIONの字幕が画面に踊る。

 

天雪さんよりもさらに軽装のシュガーさんは、全力疾走で次の進行へのフラグを踏みに行った。

 

俺と権藤さんは無言のまま散開して、配置につく。

 

 

・練度ォ

・完全に慣れてる人の動き×4

・倉庫前で待ってるのは草

・どう見ても経験者です本当にありがとうございました

・いやLv見たら大体察するだろ

 

"船員がいない! おそらく近場に拘束されているはずだ、探せ!"

 

待ち構えていた俺と権藤さんが、それぞれの場所で扉をこじ開けるための電動ノコギリを設置する。

 

このゲームはこうやって、無線からの指示がああしろこうしろと伝えてくるので、それをこなして(100%が犯罪行為)金塊や宝石、美術品、麻薬などを運び出し、脱出するゲームである。

 

ただし、ここアラスカでは主目的だったものが実は嘘で、我々は騙された側になるので、ここでの目標は脱出。メインディッシュはシンプルな撃ち合いだ。

 

「こちらシゲ、外れです」

 

「シュガー、外れだ」

 

「六花もー」

 

「俺のところだな」

 

権藤さんの待ち伏せていたポイントが正解だったらしい。

自分の持ち場を捨てて、そちらへ向かう。

 

"SWATが来るぞ!"

 

普段はともかく、今回は別に悪事を働いたわけではない*3のだが、いつもと同じように警察NPCがわらわらと湧いてくる。

 

彼らはすべてNPCなので、どちらかといえば質より数で攻めてくるため、俺はLMGを愛用している。権藤さんの持っているセントリーガンも、拠点防衛にはかなりの力を発揮する。

 

逆に軽装ハンドガンなんかは群れを捌くには結構しんどいものがあるのだが……それこそ、慣れと腕前の差か。ヘッドショットの一射必殺で、シュガーさんも次々に敵を倒していく。

 

天雪さんはと言えば、しれっとSRに持ち替えて、敵スナイパーと狙撃戦を始めていた。

俺のビルドである「無神論者」はスナイパーと相性が悪いので、そこをカバーしてくださるのは本当に助かる。

 

 

・完全に慣れてる人の動き×4(2回目)

・本日初コラボってマジ?

・シゲさん、なんだかんだでこのFPSだけはやり込んでたから

・やり込んでた(ステルス)

・逆にルーターシューターとかは全然やらないからな……

 

 

LMGと言っても、移動速度そのものはハンドガンと変わらない。まずこの点がおかしいという突っ込みはともかく、ワンマガジンが巨大なLMGを丁寧に指切りして、最小限の弾数で最大限の敵を倒せるように立ち回る。

とはいえ、コメント欄にもあるように、俺はこのゲームを結構やり込んでいる。

特に意識しなくても自然と指切りはしているし、何発胴に当てれば敵が死ぬかも把握済みだ。

 

「リロード中はDPSゼロ理論!」

 

「んふふっ」

 

「お、ハンドガンの先輩に対する宣戦布告か?」

 

「ピストルはリロードが元々短いのに加速スキルもあるじゃないですか」

 

「セントリーガンを使えばDPSは2倍になるぞ、弾薬消費も2倍だがな」

 

戯れながら、敵を倒していく。

 

"船から油が抜かれてる! ポンプを使ってタンクから給油しろ!"

 

仮に被弾すればどう考えても爆発するはずのタンクだが、オブジェクトは無敵なので大丈夫。弾幕を抜けやすいシュガーさんがホースを繋ぎに既に走っている。この人は本当に先読みの動きが上手だ。

 

「権藤さん、自分船のほう守ります!」

 

「分かった、タンクを守る」

 

「通~、どこかで弾薬頂戴ー」

 

「その辺にあるだろ、適当に拾え」

 

「えー冷たいなぁ」

 

表面上は文句を言っているように見えるが、天雪さんはしっかり周囲の敵を自分で処理し、そこから弾薬を回収している。

 

"給油が開始された。始点と終点を守れ"

 

始点のタンクに権藤さん、終点の船上に俺が構えて敵を排除し、天雪さんは遮蔽に隠れながら双方に横槍。シュガーさんもいったん隠れて、減った体力と弾薬を回復しているようだ。

 

 

・全員手練れだ

・シュガーさん凄いな、常にミッションの先手を取ってる

・VCあるとこんなに連携が楽なんだ……

・友達は別売りです

・本当に友達売ってるならマジで買いたい

・野良でやるとアホみたいにグダグダになることもある

・いやなんだかんだ言ってもう生き残りしかいないから9割はスムーズだぞ

 

 

順調に敵を倒せているので、リロードの隙間にコメントを見る余裕もある。

とはいえ、VCの雰囲気をみる限り、他の3人がコメントに反応している様子がない。

なので俺も先輩に倣って、コメントには触れないことにする。

 

"給油が終わったぞ! もやいを解け、出航だ!"

 

ここでも真っ先に飛び出したのがシュガーさんだ。

単なる役割分担というよりは、普通に彼自身の気性のように思える。

良く言えばリーダーシップ、悪く言えば効率厨。

 

俺はシュガーさんを狙う敵兵のうち、厄介な能力持ちから優先して狙いをつける。

LMGは屋内戦も屋外戦も狙撃さえこなせる万能武器なので、重装甲の敵もすぐに片付く。

まあ同じことはピストルにも言えるのだが……。

対人ゲームでない分を差し引いても、武器のバランスは相当ガバガバである。

 

天雪さんが別のもやいに取り付き、権藤さんはセントリーを投げ捨ててアサルトライフルで天雪さんを援護。もやいが解かれると、すぐに3人が船に乗り込んできた。

 

「出航~!」

 

「天雪、それは他人のネタだ」

 

「触れていいんですかそれ」

 

「まあ、ほどほどなら大丈夫ですよ。あまり神経質になる必要はないです」

 

ガンダッシュしていた男とはまるで別人のように優しく、シュガーさんが言う。

先輩が言うならほなええか……。

 

「なるほど?」

 

画面が暗転し、リザルトに入る。

無線の主は"落とし前は絶対につけさせる"だの"ふざけた真似をした野郎だ"だの結構口汚く罵っているが、みんな聞きなれているのでスルーしている。

 

「お疲れさまでした」

 

「お疲れ様です、皆さん動きが良すぎです」

 

「えへへ、それほどでもー」

 

「お前もな、重稲」

 

何も奪っていない割には、"こいつは俺からの慰謝料だ"などと言って結構な額が振り込まれている。各フェーズがシンプルな上に時間対効率が良く、このアラスカ行き電車は稼ぎポイントとして割と使われているビジネスだ。

 

 

・お疲れ

・報酬うまいんだよなあこのビジネス

・おつおつ

・開幕……開幕落ちさえ何とかなれば……

・PCのスペック上げろ

・いまだに開幕落ちするPC使ってるやついんのか

・何年前のゲームだと思ってんだちゃんと買い替えろ

 

 

「さて、皆さん次はどうしますか? ロサンゼルス? ロシア? メキシコもいいですね」

 

「六花ロスに行きたい~!トラックで敵轢くの楽しー」

 

「動機が物騒すぎますよ、天雪先輩……」

 

「ロスって何だったか、金庫か?」

 

「ええ、金庫をトラックで運ぶやつです」

 

 

・轢殺は草

・シュガーさんビジネスの把握完璧すぎる

・権藤さんの声、静かで落ち着いてていいな

・トラックに全員乗らなくて地獄見るやつ

・天雪声が好みだ、チャンネル登録してきた

 

 

一切反応してあげられなかったが、コメント欄の反応は上々のようだ。視聴者を楽しませるというプロ配信者としての最低限の目標は達成できたようで、少しほっとする。

 

「じゃあロスにしますか。ドリルのスキルはちゃんと取ってくださいね」

 

「ドリルのスキルは標準装備してます、先輩」

 

「あたしもー。ドリル使わないこともあるけど、痛いポイント数じゃないからねー」

 

「お、みんな意識高いな。俺はセントリー全振りだから任せた」

 

我々はこの後も、ロサンゼルス→ボリビア→ブルックリンと各地を渡り歩き、最終的にストーリーモードの最後のビジネスであるホワイトハウス襲撃をもって綺麗に終了した。

*1
当然有料

*2
チャンネル登録者数

*3
発砲して殺人している

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