日野森姉妹。愛   作:納豆菌

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迷い。迷うな

突然だが、日野森家の長女である日野森雫は身長が高い。

身長は168cmと女性の平均身長を大きく上回る。

因みにツンデレ末っ子こと日野森志歩は159cmだ。

 

いきなりなんの話をし始めたのか?

それは俺も知りたい。

 

「聞いてる?ひっくん」

「聞いてなかった」

「もう!私の話はちゃんと聞いてくれなきゃ。もう一度言うわね?ひっくんの身長は183cmよね。で、愛莉ちゃんが言うにはカップルの理想の身長差は15cmらしいのよ!これって物凄い運命だと思わない?」

「雫ちゃん、ごめん。聞いてもよくわからない。いや、言ってる言葉自体はわかるんだけどね」

 

ひっくんとは俺のこと。下の名前が(ひびき)だからひっくんらしい。

そんな呼ばれ方をしている俺だが、歳は2つ上だし雫ちゃんとはちゃんと血が繋がっている兄妹だ。

 

「つまり、私はひっくんと理想的なカップルになれるということよ」

「顔が真面目すぎるよ雫ちゃん。大前提として、兄妹での恋愛はこの国で認められてない」

「いいえ。愛にそんなことは関係ないの。お互いが好き同士なら、それを断ち切れることは何者にもできないわ」

「…そうか。まぁほどほどにな」

「むぅ。ひっくんは私じゃ不満?」

「そんなことは…決してないけども。」

 

どこの男が内面完璧な元アイドルスーパー美少女に不満を抱くというのか。

むしろ全てをかけてでも欲しいだろうに。

 

「なら私がひっくんをその気にさせてあげる。大好きな"お兄ちゃん"を振り向かせてみせるわ」

 

 

 

 

 

 

と、話してから1ヶ月。何回かデートへでかけたり、家でゴロゴロしたりしたが、関係が大きく変わるほどのことではなかった。

強いて言えば雫ちゃんが俺を見る時の目線が少し鋭いような…気がする。

 

「ひっくん、今大丈夫かしら?実は次の配信で使う衣装を選んでいるのだけれど、少し手伝って欲しいことがあるの。…いい?」

「もちろん」

「ふふっ…ありがとうひっくん。それじゃあ私の部屋に行きましょう?」

 

そして引っ張られる手。どこか普段より温かい気がする手の感触を感じながら、雫ちゃんの部屋へと誘われた。

そして2人が部屋に入りきると、雫ちゃんがすぐに部屋の鍵をかけた。

 

「…なんで鍵した?」

「それは…」

 

返事がされる前に、僕の視界は部屋の天井を映し出していた。

一瞬にしてベッドに押し倒されたのを遅れて理解できた。

 

「ひっくん…。いいえ、お兄ちゃん」

「雫ちゃんがその呼び方をしてくる時は大体甘えたい時だと思っているけど」

「そうね。間違ってないと思うわ。私は今、凄く甘えたい。好きな人にとびきりとね」

「えぇ…。まぁ…軽いスキンシップくらいなら別にいいか」

「ありがとう…。好きよ、お兄ちゃん」

 

俺の大して厚くもない胸板に顔を擦り付けて来る雫ちゃんを見ていると、普段の落ち着いた姿とギャップが大きくて、見てはいけないものを見ている気分になってくる。

 

これがお兄ちゃんの特権か。

いや、普通の兄弟はこんな仲良くないと聞くし、恋人の特権か。

だとしたらこれ以上は不味いよな。

雫もまだ好きな人が見つかってないだけで、そのうち彼氏もできるだろうし。

 

「雫、近いよ。ちょっと離れよう」

「いやよ。離れたくない。もう二度と離さないわ」

「大袈裟だな。俺はどこにも行かないよ」

「嘘。私見たの。お兄ちゃんが知らない女の人と歩いてる姿を。お兄ちゃんが知らない人のものになるなんて私耐えられないの」

 

誰だ?というかいつの話だ。

ここ最近で女の人と出かけたのなんて…

 

「あぁ、結衣さんか。マネージャーだよ、うちの事務所の」

「マネージャーさん?でもその割には凄く仲が良さそうだったけれど」

「まぁ仲はいい方じゃない?良くご飯も行くし」

「やっぱり仲がいいのね。…そのマネージャーさんもお兄ちゃんの事が好きなんじゃないかしら。お兄ちゃんほどかっこいい男の人、私知らないもの」

 

いや、ないない。

俺のこと結構雑に扱ってくるし。

そもそもただの仕事仲間だし。

 

「結衣さんとはそんな関係じゃないけど、褒めてくれてありがとう。俺からしてみれば雫の方が素敵だけどね」

「もう…。ずるいわ、お兄ちゃん。そんなこと言われたら私…」

 

私がどうした?と聞こうとしたが言葉は出なかった。

物理的に塞がれたから。ひどく柔らかいモノで。

 

「しちゃった…ね、キス。こんなに甘酸っぱいんだ」

「えーと、雫さん?流石にダメ。もうこれ以上は」

「ふふっ。うるさい口はどこかしら?ここ?それとも…」

「んっ…」

 

静かな部屋に響き渡るのは、水が跳ねるようなリップ音。

そしてどちらのか分からない心臓の音。

 

こんな状況なのに思い浮かぶのは新しい曲のインスピレーション。

ほんと最低だよな、俺ってば。

柔らかな感触は首筋を伝っていく。吸われて、舐められて。

 

「私、ファーストキスはお兄ちゃんとだって確信してた。今の私、凄く…。凄く幸せよ」

「雫…。こういうのは兄妹じゃダメだって」

 

言ったでしょ。

そう言い切る前に、頬に伝う雫を見た。

お前も大概ずるいよ、雫。

 

「お兄ちゃんは…いい子な私じゃないと嫌かしら?みんなが求める理想の私じゃないと、嫌…?」

 

涙を浮かべる雫を見て、答えを迷うことはできなかった。

 

「そんなわけないだろ。俺が大好きな雫は、目の前にいる雫だよ」

 

だから迷うなよ、雫。

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