おそらく、正体は…もう気付いている方がほとんどでしょうが…。
周りは薄暗かった。
が、まぶしい。
ヒロは目を細めた。
机に置かれているスタンドライトがこちらに当てられているからである。
あまり目が開けない。
それはまぶしいだけではないようであった。
右まぶたが腫れていて、痛かった。
影で何人かに囲まれているのはわかる。
前に座っている男が声を荒げた。
「いい加減に話したらどうだ!あの機体のパイロットは!?あの機体を起動するにはどうするんだ!」
一体、このやりとりを何回しただろう。
「黙ってないで、何かしゃべれ!」
横にいた男から殴られた。
これももう何回目だろうか。
椅子に後ろ手で縛られているため、抵抗も出来ない。
まったく…、どうしてこんなことになったのか。
ヒロは思い返そうとしたが、それはそれで思い返したくないものであった、と思った。
すべてはアルテミスに入港したときからであった。
アークエンジェルがドックに入った時、武装した兵士やMAに囲まれた。
中にも兵士はなだれ込んできた。
いきなりの事でクルーたちは唖然とした。
そして、艦長のマリューをはじめ、ムウ、ナタルはアルテミス内へと連れていかれてしまった。
残ったクルーたちも食堂へ引っ立てられた。
食堂にも入り口には銃を持った兵士が立っている。
避難民たちも何がなんだかわからず、不安げに言葉をかわしていた。
下士官たちはなんとなくだが、察したようであった。
地球連合と言っても、国同士さまざまな思惑があり、お互い牽制し、一枚岩ではない。
そして、このアークエンジェルもMSも大西洋連邦がオーブのモルゲンレーテの協力で、ほかの地球連合の国々には極秘に開発したものである。
ゆえに、ユーラシアの要塞であるアルテミスにとって、機密を得られるまたとない機会である。
そこへ、ふたたびマリューたちを連れて行った少佐がやって来た。
誰かを探しているようであった。
「あれだ。」
一体誰を探しているのかと思っていたヒロは、見つけた視線が自分であることに驚いた。
その間もなく、取り押さえられた。
「えー!?」
「何なんですか!?」
ノイマンが立ち上がり、抗議したが、ユーラシアの兵士たちは聞く耳を持たなかった。
「連れていけ。」
少佐が兵士に指示し、ヒロを連行しようとした。
「ちょっ!?フォル…!?」
ヒロはわけが分からず、フォルテの方を見た。
が、さっきまでいたはずのところにフォルテはいなかった。
『ヒロ、すまない。辛抱ヨロシク…、というメッセージを残していったぞ。』
取り押さえられたはずみでテーブルの下に落としたしまったジーニアスが気付かれないようにそっと表示した。
「もう1人いるはずだ。探せ。」
おそらくフォルテのことだろう…。どうやらフォルテは察知してとっさに隠れたのだろうが…。
一体このモヤモヤは何だろうか。
そう思いながらなにか釈然としないヒロはアルテミスへ連行された。
そして、今に至る。
アルテミス要塞のある場所。
そこでは先ほど、士官たちを内部に連れて行った兵士たちがいた。
実はその際2名、アークエンジェルよりその兵士に紛れ出た者たちもいた。
アルテミスより武装してきた兵士の手を借りて。
「ありがとう。助かりました。」
もう人がいないと確認した片方はノーマルスーツのバイザーを開き、手引きした者たちに礼を述べた。
「いいえ、大丈夫ですよ。ヘリオポリスの崩壊を聞いてもしかしたら…と思ったのですが、ドンピシャでした。司令も隊長も心配していました。」
「俺たちは、その後の動きは知らないんだが…。あの後、どうなった?」
もう1人が尋ねた。
何より情報が欲しかった。
「…裏では、どこもかしこも、いかに大西洋連邦が造ったMSと戦艦のデータを取ろうか争奪合戦が起こっています。このアルテミスもそれが狙いなのです。」
「…それだったら、大西洋連邦の動きは?これを守るために動くのか?」
さらに尋ねた。もしそうであれば、地球連合は瓦解していまいザフトとの戦争どころではなくなる。
「それが…、ちょっと分からないですよね。ただ、この連合をくずしたくないですし…。」
「…でもこのままにしておくのは問題と…。」
その時、別の兵士が内部の連絡を傍受したのか、報告した。
「今、パイロットが格納庫に連れていかれたそうです。そしてもう1機のパイロットが先程拘束した傭兵と確認して、ガルシア少将が取調室に向かったそうです。」
どうやらアルテミスが機密を入手してしまうには時間の問題だった。
「ねえ、ここに手引きしてもらったついでに、悪いんだけど、頼んでもいいかしら?」
それまで話を聞いていた一人が手引きした兵士たちに頼みごとをした。
取調室のドアが開き、禿頭の男が部下を連れたって入って来た。
この男がこの要塞の司令らしい。
「いや~、手荒なことをして済まないね。地球軍にとって重要なものになぜ傭兵がと、強奪するのではないかと誤解してね…。護衛の任務だったんだね。早く言ってもらわないと。」
言葉では謝っているが、本当に謝罪しているというのが感じられなかった。
しかも、そんなのは嘘だろう。あのMSを調べたいから、聞きだすのに体のいい人間、一応味方の大西洋連邦からではまずいから、一傭兵ならいいと思い、連行したのだろう。
その男が向き合うように椅子に座った。
「私はこの当衛星基地司令のジェラード・ガルシアだ。話には聞いたよ。君がもう1機のパイロットなんだってね。」
なにか企んでいるような顔を向けていた。
「実は…先ほど、あの内の1機のパイロットがロックの解除に協力をしてくれてね。できれば…、君のもお願いしたいのだよ。あれのロックを解除して、解析とかしてくれるとうれしいのだが…。」
「今、僕たちが護衛の任務をしていると言いましたよね。なぜ、その護衛対象を売るようなことをしなくてはいけないんですか。」
ヒロが言い返すと、ガルシアは鼻で笑った。
「傭兵なぞ、金を支払えばいいだろう、いくら出せばいい?君たちに護衛を依頼した者より高く出すぞ。それに、君はコーディネイターだろう?」
「だから何なんです?」
「依頼のためなら、同胞とも平気で戦うコーディネイターは貴重なのだよ。脅威な力を持った者たちから我々を守ってくれるありがたい存在だよ。」
つまり、都合のいい道具ということか…。
その言葉に含むものを感じたヒロはむしゃくしゃしてきた。
さっきから何なんだ。
フォルテは勝手に逃げちゃうし。
この男たちの自分を「モノ」として見ている視線。
自分たちの都合のいい言い訳。
依頼のために戦うというのも、自分たちの都合のいいようにしているのも腹が立ち始めた。
さらにこの司令のファーストネームも、だった。
なんだよ、ジェラードって。
そりゃ、世の中、似たり寄ったりの名前の人はいっぱいいるけど、こんなところにいるなよ。
あの無精ひげの、皮肉を言ったり、自分をよくからかったりしたり、よく大酒を飲む、もういない男を思い浮かんだ。
「残念だよ…。」
ヒロは思わず、笑みを浮かべた。
「あなたたちえらい軍人が、力任せにしか物事を動かせない単細胞な人たちで。」
口の中も切れていたので、うまく喋れてか分からない。
本当はあんまりこんなことを言いたくはないが、言わずにはいられなかった。
その言葉を聞いた直後、ガルシアは怒りで顔を真っ赤にした。
近くにいた士官に再び殴られた
殴られた勢いで椅子が倒れ、そのまま、視界も90度傾いた。
「まったくコーディネイターというヤツは…!」
ガルシアが憎々しげに言った。
「私はあの戦艦の方に行って来る。あっちの方がはやく終わりそうだしな。…まあ、時間はゆっくりある。」
そう言い、立ち去って行った。
「さぁて。これから、どうするか…。」
フォルテは思案していた。ユーラシアの士官服を着ている。
ザフトが攻めてこないと確信し、兵士に緊張感がなくたるんでいるため、うまく要塞に紛れ込めることができた。
さてと、これからどうするか。
任務を全うするなら、ヒロもそうだが、マリューたちもなんとか連れ戻さなければならない。外には、ザフトの艦がいる。ここの連中は光波防御帯、通称「アルテミスの傘」に頼り切っている。
いつまでも張っているわけではないが、敵を感知するとすぐさま展開するため、ザフトも攻め落とせない。
さらに、この防御帯は実弾もビームも両方向、通さないシールドである。
つまり敵の攻撃も防ぐが、こちらも攻撃できないのである。
まるで亀だな…。
と、フォルテは思ったが、亀の方がマシと思い直した。あの生き物攻撃もしてくるし。
とはいえ、前回マリューから聞いたGの性能のことを思い出した。
あの中に…確か、これを突破できる機能をもったMSがいる。
それに向こうが気付いたらここは攻撃される。
早いところ済ませたいが…。どうすればいいか…。
一度、ミレーユに通信を入れるか、とも思ったが、そんな時間はない。
そうこう考えていると背後に気配を感じた。
たまたま通り過ぎる兵士ではない。
自分を狙っている。
バレたか…。
その背後にいた兵士が話しかけてきた。
「お困りのようですね…少々、よろしいでしょうか?」
アルテミスは周囲にいたローラシア級ガモフが遠のいたのを確認し、光波防御帯を解除した。
だが、彼らは気が付かなかった。1機近づいてくるのを。
「ミラージュコロイド生成良好…使えるのは80分が限界か。」
ニコルはブリッツのコクピットでモニターを見ながら独り言ちた。
ブリッツはやがて姿を消した。レーダにすら映らない。
このシステムはブリッツに備え付けられた機能であり、この機体の大きな特徴である。
ステルスを利用して敵陣奥まで侵入し、奇襲や破壊工作を行う、まさしく「電撃」という名を冠したMSである。
いま、ブリッツは管制室にも気づかれることなくアルテミスの光波防御帯の展開時の中目で近づいた。そして、トリケロスを構え、衛星の岩壁に付けられたリフレクターに向け発射した。
アルテミスではドォンと地響きがした。
何が起きたか分からなかった兵士たちも、攻撃を知りパニックに陥った。
その振動はアークエンジェルのクルーたちにも伝わった。
アークエンジェル内では困惑していたユーラシアの兵たちを鎮圧したノイマン達がブリッジへ向かった。
マリューたちが軟禁されていた部屋にも振動は伝わった。
「ちっ、やられたな。」
ムウは毒づきおもむろに演技がかった声を上げた。
「うわー、今の爆発で亀裂が入った。空気が~…。」
そして、2人に小声で話した。
「叫べよ。ドアを開けさせるんだ。」
その言葉に理解したマリューも声を上げた。
ムウは声をあげながら、ドアの近くまで行き、待ち伏せをした。
ドアが開けられ人が入ってきた。
ムウは殴りかかろうと構えた瞬間、思わず見知った顔の2人だったので驚いた。
「わー、ちょっと待った。殴らないでー!助けに来ました。もちろん、本当の意味で。」
その姿にマリューもナタルも驚いた。
「あなたは…、ギースさん!何で…?そしてなんでフォルテさんと一緒に。」
「いや~、いろいろあって。」
「説明は後です。とにかくアークエンジェルまで案内しますよ。」
彼らはギースに案内され、アークエンジェルへと急いだ。
取調室でも何事かと騒ぎになった。
そこに2人の兵が入って来た。
「ザフトが攻めてきました!全員迎撃の準備に入れ、との命令です。」
そう言うなり、2人は中に入って、ヒロを掴み外に連れて行こうとした。
取り調べの担当をしていた者が止めようとした。
「この者に用があると、司令の命令です。我々が連れて行きます。」
そう言い、さっさと傭兵の少年を連れ、行ってしまった。
ヒロは2人に連れられながら、逃げる算段を考えていた。
今がチャンスであった。
その時、いきなり2人は立ち止まった。
片方が後ろ手の手錠を解除してくれた。
そして、もう片方がノーマルスーツを渡した。
「え?」
予想外の事にヒロは驚いた。
3人目の男がやってヒロを急がせた。
「早く、これを着て。君の機体はこの要塞の格納庫にあるけど、今、乗って来るから…。港近くで合流するぞ。ロック解除の番号教えてくれ。動かせない。…まったく、偽情報流すはずが、本当に来るとは…。」
いきなり指示され、何が何だか分からなかった。
「あなたたちは一体…?」
本当に信じていいのか分からなかった。
「まあ、いきなりで信じられないのは仕方ないが…、このままだと、あの戦艦もMSもここでおしゃかになるぞ。とにかく!港までは案内してやる。こっちだ。」
「あっ、はい!」
勢いにおされたのもあるが、ここから1人で脱出することもできない。
今はこの人たちに付いていくしかなかった。
先程ストライクのロックを解除していたキラも、近くにいたユーラシア兵を払いのけ、発進した。
先程、ガルシアから言われた「裏切り者のコーディネイター」。
その言葉がまだ耳に残っている。
その時、ジンも応援に駆け付けた。
(キラ!お前は無事だったのか。)
「フォルテさんこそ…、どっかに逃げて無事だったんでしょ。ヒロはどうしたんです?」
自然と口調がきつくなってしまった。
(なんか、言い方が冷たいな~。俺だって、考えがあってだなぁ…。ヒロはお助けマンたちが何とかしてくれるらしい。俺たちはアークエンジェルが脱出できるようにするぞ。)
キラはフォルテの言った言葉、お助けマンが気になったが、ブリッツがこちらに気付いたのか迫って来た。
キラはソードストライカーを装備したストライクで迎撃した。
その時、アークエンジェルでも、ちょうどマリューたちも戻ってきた。
「艦長!」
クルーたちは喜びの声を上げた。
「何なんですか、この衛星。」
サイが口を尖らせ、不満を漏らした。
それは一同、同じ気持ちだった。
マリューはシートに座り声を張った。
「ここでは身動きが取れないわ。アークエンジェル、発進します!」
「ラミアス艦長。後ろの港を開けてもらう。そっちから逃げるんだ。」
ブリッジにギースが入ってきて、マリューに言った。
残されていたクルーはギースに驚いた。集められた食堂で見かけなかったが、いつの間にいたのか。
「待ってください。まだ、ヒロとクリーガーが…。」
それも言わなければと話したとき、ギースが遮った。
「そっちの方も大丈夫だ…。ブランクはあるが、腕のいいパイロットが連れてきてくれる。」
「…だそうよ。」
マリューも少々、不思議がっていた。
とはいえ、何も事情を知らないクルーたちはギースの言葉が分からなかった。
アルテミスの格納庫では大騒ぎであった。
まさか、傘が突破されるなんて思ってなかったし、しかもすでに敵が内部まで侵入しているのである。
「とにかく、この機体だけでも守り抜け!早く、メビウスを発進させろ!」
もう1機が行ってしまった状況下で、あの傭兵が乗っていたとされるこのMSを守ることであった。
これさえあれば、いくらでも解析できる。
ここの指揮を任された士官が大声で指示を出していた。
そと彼は、1人パイロットスーツを着た者が立っているのに目が留まった。
「おい、お前も早くメビウスを発進させろ!」
そう怒鳴って命令した。
その時、そのパイロットは足で地面を蹴り、無重力のためその勢いの力に任せ、クリーガーのコクピットに移った。
「なっ?」
士官はいきなりの事で戸惑っていたが、クリーガーの両目に光が灯り、動き出したのを見て驚いた。
「おい!それは違う!戻れ!」
しかし、聞かず、バーニアを少し吹かせ、港に向かって行った。
「バ…バカな。」
スラスターからの風に飛ばされないようそばにある機材に、必死に掴んでいた士官は愕然とした。
機体を逃がしてしまったのである。
まさか…、さっきのは、拘束した傭兵か…。だが、違うはずだ。
なぜなら、パイロットスーツを着ていた者は女だったからである。
クリーガーに乗ったパイロットはバーニアを吹かせ、次々と落とされ爆発を避けながら、合流ポイントへ急いだ。
タイミングが重要だった。
大丈夫。動かすことはできる。
…間に合って。
心の中で願った。
まもなく合流地点だ。
まだ、彼は見えない。
間に合わなかったのか。
そもそも、もう来ているが、この状況で見失ったのか。
それともこの爆発に巻き込まれてしまったのか。
そう悪い方向へ考えていた、その時、非常口より扉が開き、人がそこからやって来た。
来た!彼だ!
パイロットは彼をクリーガーの手のひらに乗せ、そのまま進んだ。
うまくクリーガーに着地したヒロはクリーガーが動いているのに驚いた。
確かにさっきここまで案内してくれた人にロックの解除の仕方は教えたけど…、一体誰が乗っているのか。
コクピットが開き、ヒロは入った。
そこで乗っている人物に驚いた。
「ルキナ…さん。」
ヘルメットのバイザー越しから見えた。
「前が見えない!後ろに行って!このまま、アークエンジェルに向かうわ!」
ルキナはヒロをシートの後ろに行くように促した。
「えっと…。」
ここまでの一部始終のことが頭に入ってこなかった。
「早く!」
「はい!」
彼女の語気に押され、ヒロはシートの後ろに行った。
アークエンジェルは後ろの方へ旋回した。
それを見越したように反対側の港が開いた。
ストライクとジンを呼び戻させ、発進準備にかかった。
が、まだクリーガーが来ない。
しかし、このままだと、アークエンジェルも爆発に巻き込まれる。
マリューは彼が来るのを追いつくのを信じ、発進の号令をかけた。
間一髪、アルテミスの要塞から脱出した時、1機影が見えた。
クリーガーだ。
(艦長、遅くなりました。)
ヒロから通信が入った。
シートの後ろにいる。
パイロットシートにはルキナがいた。
ブリッジの一同は驚いた。
が、手を止めている暇はなかった。
すぐにアークエンジェルに着艦し、艦も全速でアルテミスを後にした。
後ろには3機の追ってきたザフトのMSも追ってきたが、追いつけなかった。
本当に間一髪だった。
マリューは一息つくと、ギースの方を見た。
「そろそろ…、あなたたちの正体を教えてもらえるかもしれないかしら。」
ギースはやはり…という顔をし、通信越しにルキナを見た。
艦長室に彼らは呼ばれた。
部屋にはマリューら士官が座っていた。
ルキナは敬礼し、名乗った。
「…ユーラシア連邦特務部隊「アンヴァル」所属、ルキナ・セルヴィウス少尉です。」
「同じくギース・バットゥータ曹長であります。」
どうやらセルシウスは偽名だったらしい。
「へ~、君たちユーラシアの軍人だったんだ。だからアルテミスにあんな風に潜り込めたわけだ。もしかしてユーラシア連邦のアウグスト・セルヴィウス大将は…。」
ムウは納得しながら、尋ねた。
「…祖父です。」
「けど…ユーラシアの軍人なのに、なぜ私たちを助けたの?」
「たしかに…君たちもこの戦艦とMSのデータが目的で潜り込んだんだろ?」
マリューの質問にさらにムウはつっこんで尋ねた。
おもわずギースは苦笑し、答えた。
「…ユーラシアも大西洋連邦と同様、いろいろ事情があるのです。大尉なら、察してくれるとありがたいのですが…。」
「痛いところつくね~。」
どうやら、連合が一枚岩ではないように、国でもいろいろ思惑があるらしい。
「大尉!あんまりふざけないでください!」
ナタルが二人のやり取りに眉をひそめた。
彼女にとって、軍と一つとなって敵に立ち向かうもので、こんなバラバラで、なおかつ、こんな姑息なことをするのは許しがたいものであった。
マリューが息をついてふたたび話を戻した。
「とはいえ、あなたたちもヘリオポリスで巻込まれたことに変わりないわ。」
「艦長!このままにしておくのですか…。」
「とは言っても、この件に俺たちができることはないんじゃない?まあ、もし機密をとるようなそぶりを見せたら、わからないけど…。」
「それは大丈夫です。私たちも、データを盗んでも逃げる状況ではないので。」
ルキナがムウの言葉にきっぱりと答えた。
その言葉にムウは一本取られたなという顔をした。
「いててっ。」
ヒロはおもわず声をあげた。
消毒液が顔の傷にしみる。
「ちょっと、動かないで!まちがって目に入ったら、どうするの!」
ルキナに窘められてしまった。
『よかったなぁ~、ヒロ。最後にいいことがあって~。』
ジーニアスが意味ありげな言葉を向けた。
まったく、この機械は…。
「…本当にごめんなさい。」
「いや…、でも、これルキナさんのせいじゃないし…。」
「けど…。ひどい言葉も言われたでしょ?」
同じユーラシアの人間が行ったことにルキナは責任を感じたのか、今こうやって医務室にてヒロのけがの手当てをしてくれている。
「まあ、確かにモノとして見られたりしたけど…。それを言ったのも、思うのもその人だよ。それに、僕たちを助けた人もユーラシアの人でしょ?要塞の人たちがあんなだからと言って、ユーラシアの人間は全員悪いってならないよ。ルキナさんはルキナさん。そうじゃない?」
「…ありがとう。」
そう言い、ルキナは黙った。
「…ルキナさん?」
何か悪いこと言ったのかなと思い、呼んだ。
「えっと…、何か僕悪いこと言ったかな?」
「別に。…はい、終わり。」
「いてっ!」
かるく怪我のところを叩かれ、不意打ちを食らったヒロは悶えた。
「しばらく右まぶたの腫れはひかないから…。戦闘に出くわさないことを祈るのね、ヒロ・グライナー。」
そう言って、ルキナは医務室を出た。
たしかに、腫れているため、視界が悪い。これで戦闘になったら、戦いにくい。
と、言われ思っていたヒロであるが、ふと最後に言われた言葉を思い出した。
「あれ?いま…ねえ、今、名前言ったよね。」
確認しようと、医務室をでてルキナを追った。
ポツンと残ったジーニアスは『やれやれ、一体私はいつまでこれに付き合うのか。』とあきれ気味だった。
全世界のジェラードさん、ジェラルドさんごめんなさい。
とまずは謝ります。
偶然、名前を決めていたら、似たり寄ったりになったんです。(笑)