俺が執行官……ってコト!?   作:爆死san

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『傀儡』について②……

ファトゥスになったばかりの頃、彼女に礼儀作法とかティータイムのマナーとかを文字通り叩き込まれたよ……まあ、今はそれなりに役立ってるし、それについては感謝してるよ。


対傀儡用決戦謝罪姿勢、通称土下座

 

 

 ……おかしい、本来の寝床である実験設計局へと帰っている筈なのに憂鬱だ。

 

 いや、その理由なんてものは分かりきってはいるのだが。

 

 嫌でも脳裏に映る──彼女の激昂した姿が。

 

『スカラマシュ! アンタねぇ!! 私は何度も────』

 

『あら、この私に業務を投げ付けてきたポンコツじゃない』

 

 少なくとも、我らが怒りんぼうの『傀儡(サンドローネ)』様の想定される激昂パターンはこの二種類である。

 

 要するに普通に怒ってるか、冷静にブチギれているかということ。

 

 可能性として、六~七割程は前者であるのだが、残りの三~四割である後者となると、対応には骨が折れる。

 

 前者なら少なくとも、土下座する勢いで……というか、土下座もして俺が謝り倒せば、彼女の気を済ませられるだろう。

 

 しかし一度、後者の状態になれば、対応の難易度は倍以上に跳ね上がる。

 

 こうなると土下座はおろか、謝罪の言葉すら受け付けないどころか、もはや会話にならない。

 

 そして、彼女から掛けられる言葉と言えば、鋭い毒を交えた罵倒のみだ。

 

 ここまで来ると、彼女の命令を聞くなどして、必死に機嫌を取る事が求められる。

 

 ……とりあえず、出会したと同時に土下座は確定として……変に煽ててもそれはそれで逆効果だ。

 

 彼女が激昂している本題から、うまい具合に別の内容へと持っていく。

 

 ……と、頭の中で策を巡らせるのは簡単なのだが、実際にやるとなると、どれも成功するビジョンが見えない。

 

 コロンビーナと別れてから、今歩いているパハ島とレンポ島を繋ぐ砂浜に至るまで策を考え、脳内でシュミレーションし、失敗する。

 

 一つとして有効な手立てを確立すること無く、この三工程をひたすらに繰り返していた。

 

 そして、背後にいる()()も同様だった。

 

「……コロンビーナ」

 

「……」

 

 銀月の庭を出てからずっと姿を隠しながら、付いてきている彼女。

 

 どうも、俺が彼女から受けたおまじないは彼女が近距離に寄ってきた時に初めて効果を発するらしい。

 

 一方で、彼女の場合は何処からでも俺を知覚できるそうだ……まあ、それで困ったことは一度もないのだが。

 

「……分かってるだろ? この先以降は俺も君の事を庇いきれない。サンドローネならまだしも、『博士(ドットーレ)』も此処に来ているんだ。だから──」

 

「──やだ」

 

 背後に現れた彼女が腕を掴む。

 

 まるで子供が親の手を引くような力で捕まれる手を振り払えない。

 

「……我儘だって分かってるの。でも、私はスカラマシュと居たい。……ずっと一緒にいたいよ、寂しいのは嫌だよ」

 

「……っ!」

 

 前の俺なら軽い一言と共に振り払えていただろう。

 

 あくまで、最後に俺の望みが叶えば良い、況してや情に絆されるなど、以ての外だった筈だ。

 

 俺の望みが揺らいだ事はない、それは断言できる。

 

 けど、コロンビーナ……いや、彼女に限った話ではないか。

 

 ファトゥスになってからは、しょうもない事でサンドローネに怒られ、それを見ていたコロンビーナに笑われる。

 

 たまに、それを傍らで見ていた『隊長(カピターノ)』や『召使(アルレッキーノ)』が呆れ、『公子(タルタリヤ)』が爆笑する。

 

 俺もいつの間にか、あの意味もない日々が好きになっていたのかもしれない。

 

 カピターノが戻らなかった時のように、その日々が遠いものとなってしまったからこそ、何処かで懐かしんでしまっているのだろう。

 

 故に寂しい──俺も知らぬ間にそう思ってしまっている。

 

 離別なんて腐るほど体験してきた筈なのに、そんなのにはとうに慣れてしまった筈なのに。

 

 でも、これだけは分かる──彼女を連れて行ってはいけない。

 

 彼女の安全の為にも、彼女の願いの為にも。

 

 それが、今の彼女の意に反することであっても。

 

「……ごめんね。それでも、コロンビーナは俺達に付いてきちゃ駄目だよ」

 

「……」

 

 腕を掴む力が強くなる、彼女も俺の答えは分かっていたのだろう。

 

「そんな、悲しい顔をしないでくれよ。俺はコロンビーナには感謝してるんだ。今、こうして離れ離れになって、改めてあの日々が楽しかったんだって思えるんだ」

 

 式典で笑われて、出会した彼女にお菓子をあげて、彼女が深夜に不法侵入してきて、朝に部屋を吹っ飛ばされて謹慎を喰らって、お茶会をして、彼女にプレゼントをあげて──日々の変化に必ず彼女がいた。

 

 その変化が──大義も意味もない日々が、色あるモノに変えた……いや、変えてくれたんだ。

 

 なら、今度は俺の番だ。

 

 彼女が家に──月に帰りたいという願いを助けてやる。

 

 前に『富者(パンタローネ)』にも言われたが、確かにこれは女皇に対してのれっきとした背信行為なのだろう。

 

 だが、俺は別に女皇を信仰しているわけでもないし、忠誠なんて職位上の形式のみのものだ。

 

 仮に女皇からこの背信行為を咎められようと、俺に失うものなんて無い。

 

 ファトゥスとしての称号を剥奪されようが、どんな刑罰を与えられようが……俺から消えるのは時間だけだ。

 

「そんな楽しい日々をくれたコロンビーナには、自分の願いを叶えて欲しい。俺は貸しを残しておくのは嫌いだからね」

 

 だから──今はさよならを、また会えるその日まで。

 

「だからね、今はさよならをしよう。大丈夫、また会いに来るからさ……」

 

「……ホント?」

 

「ホントホント。嘘はついてないよ」

 

「……スカラマシュは狡い人だから」

 

「ちょっ……今、それを出す?」

 

「……フフッ、でも信じるよ。だって、私の大好きな友達で、私の騎士様だから」

 

 背後から細い腕が回ってくると同時に、彼女の体重が背中へと押しかかる。

 

「だから絶対……絶対だよ? また、会いに来てね?」

 

「約束するよ。また、会いに来る」

 

「うん……約束。もし破ったら……旅人に言いつけちゃうから」

 

「おっと、それは恐ろしいね……肝に銘じておくよ」

 

 ……いや、本当に恐ろしいな。というか、旅人に誓わせられた事……もしかして、聞かれてた? 

 

「じゃあ……またね、スカラマシュ」

 

 涙を堪え、それでも絞り出したような声で、彼女が言う

 

 そして、俺も彼女へと向き直り、言う──いつものように。

 

「またね、コロンビーナ。次はお土産も持ってくるよ」

 

「うん……っ!」

 

 そうして彼女が微笑むと同時に、足元の草花が薄く桃色に光ったように見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……貴方、いきなり何をしてるのよ?」

 

 サンドローネが珍しく困惑した声を漏らしていた。

 

 尤も、今の俺に見える景色というのは、金属の黒い床のみなのだが。

 

「土下座」

 

「そんなの見れば分かるわよ。というか、人の顔を見た瞬間に土下座って意味が分からないのだけれど?」

 

「これが俺の気持ちでございます」

 

 実験設計局に戻った直後、先ず聞いたのはサンドローネの機嫌だった。

 

 そして、ミハイル君は言った──それも遠い目で。

 

『……大変でした。ホントに』

 

 彼の本気で疲れた様子で吐き出されたその声に、俺は察した。

 

 これは現在進行形で彼女が激おこの極みである。

 

 つまり、激昂サンドローネってこと。

 

 ……いや、確かに申請書をドアに貼り付けて何処かに行くのはアレかなと、最初は悩んだ。

 

 でも、連日引き籠っているという事前情報に加え、俺自身がノックしても無反応、少し強引といえだ部屋に入ろうにも鍵が掛かっている。

 

 しかも、それは副官でも同じだと言う。

 

 流石の俺も、女性の部屋のドアを吹っ飛ばして入る蛮勇さは持ち合わせてはいない。

 

 故に苦肉の策で編み出したのが、ドアに申請書を貼り付けておくという案なのだが……

 

 まあ、今はそんなことはどうでも良い。

 

 俺が謝り倒して激昂サンドローネに対処できるなら、幾らでも頭を下げるし、なんだったら土下座までしてやる所存である。

 

 つまり、俺の頭は軽いってこと。

 

「いや、説明になってないから……で、コロンビーナはどうだったのよ?」

 

「……ご存知で?」

 

「あまり私を甘く見ないでちょうだい。あんたが休暇申請を出してまでヒーシ島に行くって時点で、その目的なんて察しがつくわよ。しかも、ご丁寧に私の部屋のドアに申請書を貼っ付けてくれてまでね」

 

 ……意外だ、開幕から罵倒が飛んでくると思ってたのだが。

 

「……元気とまではいかないけど、前と変わらない様子だったよ」

 

「そう……」

 

 やはり、彼女もなんだかんだ言いながらも、コロンビーナに対して思うことがあるのだろう。

 

 やだなぁ、ツンデローネ様は……何て言ったら、それこそプロンニアのグーパンが飛んでくるので、心に留めておこう。

 

 つまり、俺は運が良かったってやつだ。

 

「まあ、本当はアンタの休暇申請のせいで面倒を掛けられた事を追及してやりたかったんだけど……さっきので興が削がれたわ。それはまたの機会してあげる、楽しみにしてなさい」

 

 ……前言撤回。全然、助かってなかった。

 

『楽しみ』のところ、口調は変に穏やかなのに、目は全く笑ってなかった。

 

「それよりもよ。アイツから報告書が挙がってきたわ」

 

「……アイツって誰?」

 

「はぁ? そんなのドットーレ以外に誰がいるって言うのよ」

 

 ですよねー……というか、ドットーレから挙がってくる報告書とか、絶対ロクな事が無いヤツだろ。

 

「で、アイツの報告書を要約すると、近い内に、先のワイルドハントの原因たる『月の狩人』が現れるとの事よ」

 

「……『月の狩人』? それってあのカーンルイアの?」

 

「あら、物知りね。そうよ、カーンルイア滅亡の切欠となった存在の一人。それが『月の狩人』」

 

「……ヤバイじゃん。それって勝ち目あるの?」

 

 あくまで聞き齧った程度ではあるが、当時の七神がカーンルイアの戦いに参加し、何名かは生きて戻ることはなかったそうだ。

 

 そして、カーンルイアの滅亡以後、世界各地で漆黒の軍勢が出現し、甚大な被害を出したと。

 

「アイツの報告書によると、『月の狩人』が現れると言っても、完全な状態ではないとの事よ。事実、今でも各地のワイルドハントの発生頻度もかつてに無い程に上がっているし、魔物の凶暴化などといった影響も出ているわ」

 

「……で、その件のドットーレ殿は?」

 

「さあ? 報告書を挙げる以外はいつも通りよ。業務も全部こっちに丸投げ。ホント、ムカつくわね……」

 

 彼女が言っていた魔物の凶暴化──その実例にヒーシ島で俺は出会している。

 

 だからこそ、彼が挙げてきたという報告書に偽りはないのだろうが……

 

 何故か、俺の腑に落ちないところが多々ある。

 

 そもそも、彼はどうやって此処まで詳細な情報を手に入れたのだろう。

 

 ただワイルドハントを弄くり回すぐらいでは、そこまでの情報を得ることなど出来ないと思うのだが……

 

 とはいえ、『月の狩人』がワイルドハントの増加や魔物の凶暴化に影響する以上、対処する他はない。

 

「はぁ……休み明けにこれまた面倒な……」

 

「そうね。私に至っては、隣の男からも面倒を掛けられたから尚更よ」

 

「その節は誠に申し訳ございません!」

 

 悪いことをしたら謝る──これ大事。

 

 本日二度目となる土下座が、彼女と傍らのプロンニアの前で炸裂したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 兵器を開発すること、それを使用するということにおいて求められる視点は異なる。

 

 前線に立つ兵士の要求として、想定されるどんな悪環境においても安定した作働率、強度及びに性能。

 

 開発する技術者はその声に対し、既存技術及びに新技術を用いて応える。

 

 無論、全ての声に応えることなど出来ない。

 

 予算も、媒体に投入できる技術というものにも限りがある。

 

 まあ、開発の『か』の字すら知らない一兵卒が分かっている事を目の前の彼女が理解していない筈がないのだろうが。

 

「……スゴいね。何をどうしてるのかさっぱりだ」

 

「部品の種類ぐらいなら、貴方にも分かるでしょ?」

 

「分かるけど、取り替えて得られる効果とかはさっぱりだよ」

 

 此処は彼女の部屋……というか、ここまで来ると工房と言っても過言ではない。

 

 何故、俺が此処にいるかと言うと、朝っぱらから銃を持って私の部屋に来いと、サンドローネに言われたから──それだけである。

 

 そして、部屋に入ると同時に銃を取り上げられ、今に至る。

 

「しかし意外ね……元々の状態が良いのもあるけど、1891式小銃にここまで拡張性があるなんてね」

 

「そうなの? 今みたいな改良とか無かったから、知らなかったな」

 

「フン……尚更、腹立だしいわね。こんな優良な素体を無駄にした連中が」

 

 そう文句を言いながらも、彼女の手の動きには寸分の狂いすら発生しない。

 

「貴方の銃に触れてみて改めて実感したけど、これの真価は資料にあった通りの耐久性、機能を必要最低限にまで削った事による信頼性ね。この点については現行の小銃は足元に及ばないわ」

 

「へぇ、確かに言われてみれば、これが故障したったって話は聞かなかったな」

 

 まあ、故障した兵士の殆どが既に死んでいるという場合もあり得るのだが。

 

 俺達は整備のやり方を知っていても、本体の修理法を熟知している訳ではないのだ。

 

「機能を削るって事は必ずしも悪いことではないの。それは同時に機能の後付けが容易になるってことでもある。現に最新技術で作られたパーツに換装してるけど、既存の部品とのガタツキも無いし、肝の元素親和性においても換装前よりも高い数値を出しているわ」

 

「……えっと、つまり?」

 

「クーヴァキが元素反応に対して影響を示すことは貴方も知ってるわよね? けれど、それを利用するには増幅された元素に耐え得る素体が必要になるの。貴方のこの銃はその素体になれる資質を備えている。なら、後はクーヴァキに対応できるように部品を換えてやればいいだけって訳」

 

「つまり、クーヴァキを利用出来るようになるってこと?」

 

「それだけじゃないわ。クーヴァキとの親和性が高くなれば、部品そのものにクーヴァキを蓄積する事も可能になるの。更に銃剣の素材にはヒーシ島で採取された虹結晶を使用しているわ。元素親和性の向上も相まって、強度も威力も前とは比較にならない筈よ」

 

 ……専門的な事はさっぱりだが、とりあえず性能がメチャクチャに上がったということらしい。

 

 というか、先程から長い解説をしてくれている彼女が今までで一番、イキイキしているように見える。

 

 やはり、技術者である以上、自分の技術を披露できる機会というのは得難いものなのだろうか。

 

「それと、試験的に貴方に試して貰いたいものがあるの」

 

 そう言って彼女は一発の弾丸を卓上へと置く。

 

「これは?」

 

「高圧縮クーヴァキ炸裂徹甲弾、通称『K弾』。口径はその小銃に合わせてあるわ。その実戦試験を貴方に依頼したいの」

 

「……威力なら射撃装置で試せば良くない?」

 

「兵器はあくまで使うためにあるの。そのデータは実際に使用されたものである方が好ましいのよ。無論、ボスコ二号で威力は確かめてるわ。それと同口径で現行の陸巡艇装備の12.7mm回転式重元素機銃の通常弾と遜色ない威力を発揮してくれたわ」

 

 ……つまり、小銃用の7.62mm弾で重機関銃の銃弾とほぼ同じ威力を発揮するということ。

 

 いや、なんて恐ろしいものを作ってるんだこの人は……

 

「それにその弾丸はクーヴァキの二次的な注入も出来るの。私が欲しいのは、人の手で二次注入を行った場合のデータ。残念だけど、ボスコ二号にそこまでの機能はないわ」

 

「はは……なかなか張り切ってるね」

 

「当然じゃない。これらのデータは全部プロンニアのアップデートにフィードバック出来るもの」

 

 まあ、そんなことだろうとは思ってたけども……

 

「さて、これで部品の換装は完了よ。持って動かしてみて頂戴」

 

「はいはい」

 

 彼女が差し出した銃を手に取り、各部を動作させる。

 

 ボルトハンドルの感覚はほぼ前と一緒だ……いや、トリガープルも前と変わらない。

 

 一通り動かして見た限り、使用感に一切の変化はない。

 

「……スゴいな。前と全然、変わらないんだけど」

 

「フフッ、当然よ。そのパーツを一から作ったのは私だもの」

 

 まさかの彼女お手製のパーツだった……こればかりはパーフェクトだと言うべきだろうか。

 

「現行の装備の機能とかは付けなかったんだ?」

 

「貴方には不要でしょ?」

 

「まあ、そうだけど……」

 

「兵器ってのはなんでもかんでも機能を盛れば良い訳じゃないの。想定される使用者が求める性能を伸ばす、それが大原則なのよ。貴方みたいに戦い慣れている人間からすれば、その多機能さはかえって使いづらさの原因になるの」

 

 まあ、確かに現行の装備でも天候によっては装備が発生させたシールドが減衰してしまう、元素チャージの効率が悪いなどの問題が指摘されている。

 

 多機能で問題を起こすなら、機能を必要最低限にまで削り、それに特化させるというのも正解ではあるのだろう。

 

「でも、今の一般兵が貴方の装備で戦えと言われても難しいように、ある程度の多機能も求められる。まあ、貴方の方が特殊と言ってしまえば、それまでだけど」

 

 ……なんだろう、少なくともサンドローネ的には悪く言ってないのだろうけど、素直に喜べない。

 

「そうですかい──」

 

 ──その時、部屋のドアがノックされる。

 

「『傀儡』様、スターダストビーチの斥候から緊急の連絡が入りました」

 

「フェルニアね。良いわ、入って頂戴」

 

「はっ、失礼いたします」

 

 彼女の言葉と共に、少し息を荒げた一人の女性士官が部屋へと入ってくる。

 

「これは『散兵』様もこちらにおられましたか……お二人にご報告させていただきます。現在、スターダストビーチ周辺で大規模なワイルドハントが発生しております。ビーチは既に霧に呑まれ、その報を受けたナシャタウンも現在、混乱状態にあるとのことです」

 

「……ナシャタウンにいるエージェント達は?」

 

「現在は当方の関係者の保護及びに北国銀行の防衛及びに警備に充てております」

 

「あら、丁度良いわ。ナシャタウンのエージェントにはそのままでいるよう命令しなさい。スターダストビーチには私とプロンニア、スカラマシュが行くわ。貴女達は実験設計局の警戒レベルを引き上げて、侵攻に備えなさい」

 

「はっ、かしこまりました。『傀儡』様」

 

 敬礼と共にフェルニアと呼ばれた女性士官は部屋から去っていく。

 

「燃えてるね」

 

「当然よ。このためにプロンニアに徹底的な対策を組み込んだもの。この前の雪辱を晴らしてやるわ」

 

 では、此方はその熱意が空回りしないことを願うばかりである。

 

 しかし、このタイミングで大規模なワイルドハントの発生か。

 

 先日、聞いたドットーレからの報告書といい、どうもキナ臭い。

 

 かといって、それを問い詰める証拠も無ければ、当の本人とも連絡が付かないときた。

 

 あくまで、俺の推測に過ぎないが、このワイルドハントの裏で、おそらくドットーレは何かを準備している。

 

 ……それはこのワイルドハントと同等──いや、もっと恐ろしい事かもしれない。

 

 とはいえ、追及するにも、やはり情報が圧倒的に足らない。

 

 然れど、今の時点で優先すべきはワイルドハントへの対処だ。

 

 それについては隣の彼女が超が付くレベルでやる気の為、是非とも彼女に一任したいところである。

 

「スカラマシュ」

 

「何?」

 

「今度こそ、貴方に見せてあげる。私の実力をね」

 

「……そう。なら期待してるよ」

 

 以前は余計なことを言って、プロンニアに口を千切られそうになった。

 

 然れど、俺は学ぶ男──同じ過ちはしないのだ。

 

「スタンバっておくから、援護が欲しかったら言ってね」

 

「要らないわよ!」

 

 

 

 





『散兵』について……

初めて会ったときはね、不思議で面白い人だって思ったんだ。でも、今は面白くて、優しくて、暖かくて、でも、ちょっと狡くて……意地悪で、でも、やっぱり優しい大好きな私の友達だよ。
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