俺が執行官……ってコト!?   作:爆死san

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『召使』について……

彼女って何かと義理堅い性格だよ。前にフォンテーヌに行った時、彼女の所の子供達にお土産を持っていたんだけど、その謝礼とかで、孤児院でやるパーティーに招待してくれたんだ。


つまりドットーレはやりやがったってことだ

 

 

 神の目──人生の最も険しい分岐点にて、その渇望が極致となれば、その渇望の主に降りる神の視線。

 

 それは単体のみで七元素のどれか一つを引き出せるようになる。

 

 加えて、身体能力の向上や元素の新たな知覚など、その恩恵は計り知れない。

 

 以前、俺の仲間がこんな事をぼやいていたのを覚えている。

 

 曰く、神の目を得るのは純粋な願いが必要なんだと。

 

 それで彼等はモラが欲しいとか、一生遊んで暮らしたいとか、故郷に帰りたいとか──実に子供じみた事ばかりを言っていたのを覚えている。

 

 俺も傍らで適当な相槌を打ちながら、聞き流していた。

 

 その時、駄弁っていた一人が、上から渡された命令書を気難しい顔で眺めながら聞いたのだ。

 

「──は何かお願いとかないの?」

 

「え~……私のお願い?」

 

 つまらない書類を机に放り、少し考え込む様子を見せる。

 

 そして、何かを思い付いたように口角を上げた。

 

「────────かなぁ?」

 

()()がその『お願い』を言う直前、一瞬だけ俺の方を見てきた。

 

 彼女のその仕草は遠回しで俺に何かを伝える時にやってくるものだ。

 

 つまり、彼女のその『お願い』は俺に言っていると同義でもあった。

 

「さっすが、我らが隊長殿~……嬉しいことを言うねぇ!」

 

「じゃあ、今度の配給のトレードお願いね。私、爆薬レーションはもう嫌だよ?」

 

「えぇ……でも、最近は何処も爆薬レーションばっかりなんだよー?」

 

「それをどうにかするのが仕事だねー」

 

「じゃあ、──も貸してよ! 何かあったら拳で解決してくれるから!」

 

「 ……えっ? 俺ってまさかの暴力要員?」

 

 本を読んでいた俺が突如として巻き込まれる。

 

 ──そんな何て事のない、かつてあった日常の風景。

 

 でも、何故だろうか──? 

 

 日々の積み重ねで記憶が擦り切れてしまったのか、或いはこの時に話していた仲間のようにその記憶さえもがなくなってしまったのか。

 

 しかし、その時の俺は彼女の目配せで、彼女が言いたいことを理解していた筈だ。

 

 なのに──今はどんなに思い出そうとしても、彼女が言った『お願い』が思い出せなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 視界が紫白の閃光に包まれた後、真っ先に感じたのは全身が痺れるような感覚だった。

 

 それはまるで、身体が雷に打たれたかの如く、体内の至るところに電流が駆け巡っているようにも思える。

 

「グッ……ウグッ……ガアッ……!」

 

「ハハ……マジかよ」

 

 苦悶の呻き声を漏らしながら、地に臥せるソレを見て、思わず乾いた笑みが漏れる。

 

 無論、これで仕留められるとは思ってはいなかったが……

 

「スゴいね。右半身が消し飛んでも、生きてられるんだ……」

 

「ウゥ……ウグッ……ッ!!」

 

 まるで胸の内側から爆ぜたかのように、その胴体の半分を喪った『月の狩人』が睨む。

 

 言葉は無かったが、その視線からは強烈な敵意と殺意を感じる。

 

「ウガッ……グゥッ……なんだ……コレは……?」

 

「同僚の力作でね。撃ち込んだ相手の内部で圧縮された高濃度のクーヴァキを炸裂させるって代物さ」

 

『月の狩人』がクーヴァキを吸収して力を得ているというのは、関連する事象が報告に挙がった事で分かっている。

 

 ただ、今の彼を見る限り、高濃度かつ爆発的な活性を帯びた場合は吸収よりも、自身のアビスによる反発が大きいのだろう。

 

 元々、クーヴァキはアビスに対しての浄化作用がある。

 

 それに加えて、兵器レベルで爆発的な活性を帯びたクーヴァキが、自らの体内で解放されたとすれば、そのダメージは決して少ないものにはならない筈だ。

 

 現に『月の狩人』の体内では残留した高濃度のクーヴァキが彼の身体中を駆け巡り、あらゆる活動を阻害している。

 

 無論、時間が経てばそのダメージも回復し、残留クーヴァキも吸収されるだろうが、それでも時間を稼ぐには十分な一撃だ。

 

「……おのれ……ウグッ……俺が、こんなもので……っ!!」

 

「……おや、まだやるかい? 今度は残った胴体も吹っ飛ばしてあげようか?」

 

 これはブラフ、けれど目の前の敵がそれを知る由もない。

 

 もう既に残弾はないし、今も身体を駆け巡る痺れのせいで先程のようには動けない。

 

 だが、戦闘において相手の状態を見誤るのは致命的な悪手になる。

 

 それが虚勢であっても、それを知らぬ相手からすれば、憂慮すべきリスクとなり得る。

 

 更に、先程のように動けないという点に至っては相手も同じ状況──故に取る行動は一つだ。

 

「……おまえ……この借りは忘れないぞ……っ! 」

 

「俺は無理かな。それが無意味な貸しなら特にね」

 

「フン……っ!」

 

『月の狩人』の足元に赤黒い影が集まってくる。

 

 その光景に思わず身構えるが、『月の狩人』はその影に呑まれていく。

 

 そして、強い敵意の視線と共に、その身体が完全に影に沈むと、先程まで感じていた強烈なアビスの気配と共に彼の気配の一切が消えた。

 

 それに呼応するように、立ち込めていた淀んだ霧も消えていく。

 

「……引いたか。良かった……うっ──!」

 

 少し気を抜いた瞬間、腹の内側から喉へと、不快な鉄の味と共に濁流が迫り上がってくる。

 

 そして、それを抑えることもままならず、そのまま地面へと吐き出した。

 

「ゴホッ……ゴホッゴホッ!」

 

 口から吐き出される粘度の高い赤い液体──口内を満たす鉄の味に顔をしかめる。

 

 固い土を湿らせ、岩に付着したソレは赤黒く変色していく。

 

「はぁ……はぁ……やっぱり、前より短くなってるかな……」

 

 邪眼の高出力での連続使用──それは諸刃の剣でもある。

 

 持ち主の生命力を元素の引き出しに使う邪眼は、投入する生命力次第で、瞬間の出力において神の目を上回る事も出来る。

 

 しかし、それは並大抵の生命力ではなし得ない。

 

 所詮は紛い物の瞳である以上、持ち主の死を近付けて、初めてその領域に並べる。

 

 故にこれは取引における代償に過ぎない……むしろ、今回はこの程度で済んだことを幸運に思うべきだろう。

 

 ただ、そのスパンは確実に短くなっている……まるでタイムリミットが迫るように。

 

「でも……一矢は報いれたかな……」

 

 アントン、ヴァレリー、フィリップ、ユーリィ、マラート──今回のワイルドハントで多くの部下が死んだ。

 

 そんな彼等に親玉の右半分というのは不足かもしれないが……それでも勝ちは勝ちだ。

 

「はぁ……」

 

 口元にこびり付いた血を拭い、大きく息を吐く。

 

 冷たい空気が口内を満たす血の風味を緩和し、身体の内側も冷ましてくれる。

 

 戦闘の熱と共に動悸が落ち着いていくと、俺の中で一つの疑問が浮かぶ。

 

「……」

 

 ボルトハンドルを引くと、雷元素を帯びた空薬莢が仄かな紫の光と共に宙を舞う。

 

 そして、空の薬室へ、先程のようにクーヴァキを流し込んでみる。

 

 邪眼から放出された雷元素が空気中のクーヴァキと結び付き、薬室の内部で薄い紫白の光を帯びるものの、撃つ直前に感じたあの感覚は無い。

 

「……やっぱり、俺一人じゃこんなものか」

 

『月の狩人』に対して引き金を引く直前、流し込んでいたクーヴァキが突如として増えた感覚があった。

 

 まるであの瞬間に、俺以外の誰かがクーヴァキを注入していたかのように。

 

 そして、あのクーヴァキの感覚……あれは間違いなく──

 

「……いや、あり得ないな。そもそも、コロンビーナ達が離れるのを見届けていただろ」

 

 あの場に彼女が──コロンビーナがいる筈がない。

 

 それは考えるまでもない状況的な事実。

 

 現に今、俺がクーヴァキを注入しようとしても、この程度の出力しか出ない。

 

 無論、戦闘による消耗もあり、高い出力を出せないのもある。

 

 しかし、俺があのままクーヴァキを注入しても『月の狩人』にあそこまでのダメージは与えられなかっただろう。

 

 そのため、本来なら弾丸の炸裂と同時に、あの場から撤退をする用意をしていた。

 

 そして、今回よりも前にこれと似たことがあった。

 

『月の狩人』が復活したあの夜──ナシャタウンから放たれたレーザー砲が拡散した時、その一部は間違いなくこのヒーシ島の方へ飛来した筈だ。

 

 しかし、ヒーシ島の方へ行ったレーザーは何かに防がれたかのように霧散したのを覚えている。

 

 加えて、その時に間違いなく俺はコロンビーナの気配を感じた。

 

 しかし、その当時、本人はヒーシ島の銀月の庭から出ていない。

 

 況してや、今回なんて『月の狩人』の襲来により消耗している上に、彼女自身がこの場を離脱するのをこの目で見ている。

 

 だからこそ、この二つの現象に対して、説明が付かないのだ。

 

「……コロンビーナ」

 

 試しに彼女の名を呼ぶ──何時ぞやとは違い、聞こえるのは波風の音のみだ。

 

 其処に彼女の声はおろか、人の声すら聞こえる筈がない──

 

「『散兵』様!!」

 

 ──前言を撤回しよう、普通に誰かの声が聞こえた。

 

 南の方から走ってくる仮面を付けた三人の兵士。

 

 胸に特務隊の所属を示す徽章と、左腕の腕章には操り人形をモチーフとしたマーク──サンドローネの部隊のものだ。

 

「……おや、サンドローネに言われて来たのかい?」

 

「はい。先程、ワイルドハントの霧が収まるのを確認しましたので、『散兵』様を確保しなさいと」

 

 確保って……人を脱走者みたいに言わないで貰いたいものだ。

 

「いやいや、ちゃんと実験設計局に戻るつもりなんだけど……上陸したのは君達の部隊だけかい?」

 

「はい、『傀儡』様からのご命令です。『散兵』様を確保次第、現地での生存者捜索に従事せよと」

 

「相変わらず真面目だね……でも、今回ばかりは助かったかな。今回は……少し疲れたよ」

 

「併せてですが、『傀儡』様から言伝を預かっております。帰還後、速やかに医務室に行くようにとの事です」

 

「大袈裟だね。一応、こうして五体満足なんだけど?」

 

「それは分かりますが……これは内密にして頂きたいのですが、『傀儡』様は『散兵』様の安否を大変気にしなさっているご様子でした。なので、その……」

 

「分かった分かった……ちゃんと彼女の言う通りにするよ。サンドローネにも借りが出来ちゃったし、何よりも彼女の逆鱗にも触れたくないしね」

 

 何かと疑問は残ったままだが、結果的には彼女の試作品のおかげで切り抜けられたのだ。

 

 今回ばかりは彼女がそう言うのなら、大人しく従うというのが礼儀というものだろう。

 

「ご理解頂き、感謝いたします。連絡船をこの近くに停泊させております。此方へどうぞ」

 

「助かるよ」

 

 一礼した兵士の後に続き、未だ破壊の跡が残る岸辺を歩いていく。

 

 今回のワイルドハントでファデュイ駐屯部隊が被った最終的な損失は、『散兵』配下から戦死者27名、行方不明者2名。

 

『傀儡』配下から戦死者32名、行方不明者8名。

 

『博士』配下から戦死者3名、行方不明者19名──合計、戦死者62名、行方不明者29名。

 

 後日、スネージナヤ本国にて、女皇陛下の名の下に本作戦で犠牲となった将兵の二階級特進が報じられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ、ちゃんと腕はくっついてる? 脚は? 指も欠けた所は無いわよね? 頭もちゃんと付いてるわよね?」

 

 ……戻って来て早々、いきなり何だってんだ。

 

 普段の余裕綽々の態度は何処へ行ったのか、我らが第七位の怒涛の勢いに思わず、顔が引きつってしまう。

 

「……少なくとも頭が取れたら死んでると思うんだけど?」

 

「あっ……う、うるさいわね! そんな所で揚げ足を取るんじゃないわよ! フン……心配して損したわ」

 

 あっ、良かった……普通にいつものサンドローネだった。

 

「……で、医務官は何て言ってたのよ?」

 

「えっ? ああ……打撲がどうこう言ってたかな。念の為に数日は安静にしてろってさ」

 

「あら、そう……運が良かったわね。両腕がまだ付いてて……プロンニア、カップと菓子を用意しなさい」

 

 サンドローネが傍らのプロンニアに命じると、ゆっくりと機構の巨人が彼女の側を去る。

 

 そして、数刻後に此方へと歩んできた彼のその掌の上には、紅茶が入ったカップと茶菓子が載っていた。

 

 向かいに座ったサンドローネが自分のカップを見ながら口を開いた。

 

「これは忠告だけど……あまり、無茶なことはしないことね。勿論、貴方がどうしようと勝手だけど……私はお茶会の顔ぶれが減るのは癪なのよ」

 

「ハハ……肝に銘じておくよ」

 

「なら、ちゃんと実践しなさい。言うだけなら誰にだって出来るわ」

 

「……アッハイ」

 

 紅茶に砂糖を一つ入れると、すぐに形が崩れ、赤褐色の液体へ溶けていく。

 

 カップを持ち、その液体を口にすると、甘味や苦味とは違うこの味は所謂、コク……というヤツだろうか。

 

 それと仄かに香ばしい香りが鼻腔へ拡がり、個性的な味わいがより際立つ。

 

 成る程、これが──

 

「──ダージリンってヤツだな」

 

「アッサムよ」

 

 もはや、間違えることを予測していたと言わんばかりの爆速訂正に思わず固まってしまう。

 

「フン……聞き齧った知識を出すんじゃなくて、まずそれを理解なさい。披露するのはそれからよ」

 

「……すみませんね、知ったかぶりかまして」

 

 そう言う彼女には、最初のような錯乱した行動を控えるように言ってやりたいが、言ったあかつきにはもれなくプロンニアの鉄拳制裁が飛んでくることだろう。

 

『君子危うきに近寄らず』という言葉があるように、平時で自ら地雷を踏みに行く真似はしないのだ。

 

「……それで、あの子は無事なの?」

 

「あの子って誰さ?」

 

「貴方ね……少しは察しなさいよ。……コロンビーナよ」

 

「あぁ……今の所はね。今は旅人と行動を共にしてるんじゃないかな?」

 

「そう……」

 

 口元はカップで隠れて見えないが、その目尻が先程の険しいものから、ほんの少し柔らかなものになったように見える。

 

 もう、ツンデレーネ様は相変わらず素直じゃ無いんだから──などと言ったら、念の為の安静が絶対安静に変わりかねないので、この場は紅茶で濁させて貰おう。

 

 そして、カップを置いた彼女がおもむろに口を開いた。

 

「……今回の一件、ドットーレの部隊のヤツが妙なことをしていたらしいの」

 

「妙な事?」

 

「まずは『百聞は一見に如かず』よ。プロンニア、無線機を持ってきて」

 

 彼女がそう命じると、機構の巨人はボロボロの黒い機材を手に載せ、それを卓上に置いた。

 

「これは現地から回収してきた無線機。機器の破損が激しい以上、完全な復元は出来なかったけど、ワイルドハントの発生当時の兵士達のやり取りが断片的に残ってるわ」

 

 サンドローネが機器のスイッチを押すと、そのスピーカーからノイズ混じりの声が聞こえてくる。

 

『おい──なに──して──!!』

 

『──か─せ─らの命────だ!!』

 

『──ン──ト──が───』

 

『な──で──かま──が──ま──ものに!?』

 

『か──らだ──が──た──けて──』

 

 そして、以降は声の代わりに激しいノイズと、魔物の咆哮と思われる絶叫が流れるだけだった。

 

「……これが回収された地域には、私とドットーレの配下の兵士がいた。でも、捜索に当たった兵士が現地の確認をしても生存者はおろか、死体すら見当たらなかったそうよ……両部隊共にね」

 

「通信から察するにドットーレ配下の兵士が何かしたのもそうだけど……随分な慌てようだ」

 

 彼らも執行官には及ばないとはいえ、有事の際を想定した訓練を経て特務隊に配属されている。

 

 イレギュラーな状況といえど、ある程度は自己対応出来ない限り、その任は務まらない。

 

 そんな彼らでさえ、慌てざるを得ない余程の事が起こった……そう考えるのが自然だろう。

 

「……ええ。だから、この件について問い詰めてやろうと思って、ドットーレに連絡してみたけど、一切の返事は無かった。いつも通りにね」

 

「確かに、そればかりはいつも通り過ぎて笑いも出ないね……」

 

 そもそも、彼にとって優先すべきは己のみであって、他人はあくまで駒、もしくは実験材料でしかない。

 

 彼がご執心の実験の過程で何人死のうが、一つの土地が焦土になろうと関係ないのだ。

 

 前に彼と任務を共にした事で改めて実感したが、こういう所は俺が執行官になる前から何も変わっていない。

 

 事実、この無線記録も手懸かりとしてならまだしも、証拠としては不適切だ。

 

 仮に問い詰める事ができたとしても、しらばっくれて終わりだろう。

 

「まったくホント、不快極まりないわ……それでよ」

 

 サンドローネが言葉を区切り、俺へと目線を合わせた。

 

「スカラマシュ、貴方には私に協力して欲しいの」

 

「具体的には?」

 

「今回の一件もそうだけど、ドットーレの行動の責任を追及する事は出来ないわ。そうするには証拠が全くと言っても良いくらいに足らないの」

 

 女皇の名の下に、執行官は自らの願望の為に行動する自由が与えられている。

 

 その為に、配下の兵士を使うことも出来るし、設備の使用や開発も例外ではない。

 

 その責を問えるのは、その過程で女皇に明確な背信を示した時。

 

 現在、ドットーレの行動はどんなものにしろ、執行官に与えられた特権の範疇を出ない。

 

 それで如何なる被害が出ていようと、彼が女皇に対して、明確な脅威となった訳ではないのだ。

 

「今、スネージナヤにいる執行官は『雄鶏(プルチネッラ)』、『富者(パンタローネ)』……そして『召使(アルレッキーノ)』。彼女には既に私の考えを話しているわ。同時に賛同もしてくれてる」

 

「……要は女皇に直接、働きかけるってこと?」

 

「執行官の行動は女皇陛下のご意志から逸脱してない限り、責めることは出来ないわ。でも、執行官の派遣はあくまで必要と判断されたからこそ。だから、アイツがこの地に必要ないことを女皇陛下に直接、伝えるのよ」

 

 成る程、彼女が考えは理解した。

 

 いくらドットーレといえど、女皇からの直接の命令には逆らえない。

 

 少しでもその意向にそぐわない姿を見せようものなら、女皇だけでなく、内務委員会も黙っていないだろう。

 

「今回の一件もそうだけど、ドットーレをこの地で好き放題にさせたら、何かある度に被害が甚大なモノになる。それに……潜在的な脅威は取り除いておきたいもの」

 

「成る程。確かにそれについては同意するところだね」

 

「……返事を聞く必要はないみたいね?」

 

「生憎、同僚に後ろから刺される事態はゴメンだからね」

 

「フッ……違いないわね」

 

 そう言って、彼女は珍しく楽しげな笑みを浮かべながら、空になったカップへ紅茶を注いだのだった。

 

 






『散兵』について➂……

以前、子供達の提案を受けて、彼をパーティーに呼んだことがある。私はあくまで切っ掛けを用意しただけだが、子供達もとても楽しんでいたし、私も有意義な時間だったと思っているよ。
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